第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 クリア後 ヴィンスの迷宮ダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミー

ヴィンスの迷宮


井戸を通じて一行が実体化したのは、
奇怪な色彩が渦巻く異様な世界で
あった。遥か彼方に見えるのは、
この世界の境界を形作るべく空間に
描かれた巨大な呪紋――それは即ち、
彼らの立つこの場所が切り取られた
時空、封印された次元であることを
示していた。

D・S:
ここは……俺の意識界からも
かけ離れた、封印された空間らしいな

ガラ:
へええ……こりゃまた、この世の果て
みてーな場所に来ちまったもんだな

サイクス:
これほど巨大な空間を、次元的に完全
に封印するとは……それを為した者は、
一体どれほどの力を持っているのだ?
これはまるで、全知全能の御業――

アビゲイル:
フム……どうやらこの世界では、時間
も完全に停止しているようです。後ろ
の転移フィールドから元の場所には
戻れそうですが、どうします、D・S?

D・S:
ここで時間を費やしても、意識界の
ほうでは時が進まねえってことか……
なら、チョイと探索といくか

カル:
封印か――もしやあの怪物を隔離する
ために造られた場所であるのなら、
ここは……










人がこの世に創り出されるより前、
彼は天界において最も高い位にあった。
神の御座の隣に在り、無数の天使を
束ねる長として、その姿は明星の如く
輝いていた。

その柱の前で、一本の剣が輝き始めた。
あたかも、秘密を解き明かした者を
祝福するかのように――。

剣の名はコルブランド。
それが相応しき所有者の手の中で、
真の姿に変わろうとしていた。

王のみが手にすることのできる剣――
聖剣エクスカリバーへと。










ある時、神は言った。土くれから自ら
の似姿を造り、それに命を与えて
“人間”と呼ばれる新たな存在を創造
すると。そしてこうも言った。
「彼ら人間は我が子である。天使よ、
彼らに仕えよ。彼らを敬い、善なる道
へと導け」と。

秘密を知る者よ、王よ。
その知識に従い、我を求めよ。










彼はその言葉の意味するところをこう
捉えた。お前たち天使は神の子では
ないのだ。お前たちは神の召使い、
奴隷なのだ、と。

汝、力を知るなら、我を求めよ。
我は神の敵を討ち滅ぼす牙。
汝の敵を貪る牙なり。










後から生まれた土人形に、天使長たる
己が従わねばならぬ理不尽。そして
何より、自分たちが神にとって道具で
しかなかったという思いが、誰よりも
神を敬愛し崇拝してきたはずの彼の
心に二度とは消せぬ影を落とした

汝、力に溺れるなら、我を求めること
なかれ。過ぎたる力は災いを呼び、
我は汝を貪るであろう。










神は全能である。故に神は過ちを犯す
ことはない。だが彼は、神が人間の位
を天使の上に定めたことを大いなる
過ちと見なした。即ち、天使たちが
絶対の存在と信じ続けた神は、逆説的
に決して全能ではないと証明された。

勃発する内乱に国土は荒れ果て、
災いを呼ぶ者と運命づけられた自らの
息子との死闘の果てに、彼はついに
王国とその命をも失うこととなった。
定めに従い、我はこの時より人間の
世から姿を消した――。










神が全能でない以上、天使の長たる
自分とどれほどの差があろう?
ならば天に輝く至高の御座は、神の
過ちを正すことのできる自分が座る
べきではないのか――。

過ぎたる力は時に――否、必ず高き
理想をも変質させる。彼もまた、
その例に違うことはなかった。
虚栄は他者の忠告を排し、嫉妬は
友情と忠誠すら憎悪へと導いた。
彼は友を、妻を失い、そして理解者を
喪っていった。










彼は天使の半分を率い、神に反旗を
翻した。天界は二つに割れ、炎の如き
反乱天使の剣は神の座の目前にまで
攻め上った。

かつて我は、ある王の手の中にあった。
彼は戦乱に明け暮れる王国を平定し、
異教徒の侵攻を退けるために我を
振るった。彼の手には常に、我と
勝利が握られていた。










しかし、神の力は強大だった。天より
降り注ぐ雷は反逆者たちの白き翼を
灼き、彼の軍勢はひとり残らず地へと
落とされた。その姿さえも奪われ、
醜き堕天使として遥か次元の底へ――
業火渦巻く地獄へと。

我は手にする者に力を与え、
その敵を貪る鋭き牙。
しかし時に、我を手にする者をも貪る
両刃の剣。










決して抜け出すことのできぬ、封印
された地獄の檻で、神への呪詛に身を
焦がす堕天使たちは悪魔と呼ばれる
存在へと姿を変えた。かつて天使長で
あった彼もまた、悪魔を統べる王と
してその地に君臨した。自らの存在
こそを、神の全能を否定する最大の
証拠として――。

彼の名を知る者、次なる柱へと進め。
そこで汝は出会うであろう。
年経た古き蛇、汝を惑わそうとする
赤き龍に――。

我は力。
力無き人間がため、神がこしらえた
正しき者の牙。










土塊から創り出された者、人間よ。
汝ら、いと脆弱なる者どもよ。
我を求めよ。我を求めよ。

十番目の柱に触れた瞬間、一陣の風が
一行の間を駆け抜けた。乾ききった、
古びた墓室の匂いを孕んだ風が――。

石柱の上に忽然と、ひとりの男の姿が
現れていた。その男は全身を拘束具に
似た、黒革の異装で包み隠している。
唯一覗いた生身である右眼が、深淵の
闇を宿してD・Sを見下ろしていた。

D・S:
テメエは――?

サタン:
忘れたのか、吾輩を? 闇のアダムよ。
この悪魔王サタンを――

D・S:
サタン?

サタン:
吾輩は永劫とも思える時、この場所で
お前を待ち続けてきた。創造神が作り
上げたこの忌々しい封印空間で――

カル:
悪魔王サタン……ではやはりここは、
神への反逆者を幽閉するための
次元監獄――

サタン:
口惜しいことに、吾輩の力では神の
縛鎖を解き放つことはできん。
だが、D・Sよ――

サタン:
お前の力を手にすれば、吾輩は再び
自由になれる。この地で増大させた
悪の勢力を伴い、再度天界へ――あの
御座へ攻め上ることができる!

サタン:
さあ、力を貸せ、闇のアダムよ!
吾輩とともに神を滅ぼし、我らが悪の
宇宙を創り上げようではないか!

D・S:
……俺様を狙う奴らってのはこんなの
ばっかりだな。やーなこった、アホウ!

サタン:
……やはり話を聞くようなタマでは
ないか。だが、それでこそ闇のアダム、
吾輩の求めし力よ!

サタンの姿が、内側から膨れ上がった
ように見えた。事実、その内圧は
全身を拘束する装束を膨張させ、
その伸縮の限界を超えようとしていた。

装束が爆発的に弾ける、その瞬間――
そこに隠されていたサタンの本性が
露となる。

サタン:
宇宙最強の我が力、とくと味わうが
いい! そしてひれ伏せ! D・S!
我がものとなれ!



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最終更新:2020年10月31日 21:30