露角洞
左右に設置された柱の間に、目に
見えない凄まじい力場をD・Sは
感じ取っていた。
D・S:
テメエら、これ以上進むんじゃねえ
小石を拾い、前方に放る。瞬間、柱の
間に巨大な電光が疾り、小石は空中で
蒸発した。それが人間であったなら、
瞬時に黒焦げの肉塊と化すだけの、
超高圧電流がそこに流れていた。
ヴァイ:
ふええ……
D・S:
残りのクリスタルがここに電力を
供給してやがら。仕方ねえ。この上は
後回しだ
アンガス:
……ガッ、ピー、ガガガッ!
突然アンガスが白目を剥き、動かなく
なった。全身が硬直し、時折痙攣が
疾り抜ける。
ヴァイ:
わーっ、アンガス!? どうしたっ!
ヨルグ:
いかん! ヴァイ、そっちを持て!
ヴァイ:
うお重てええ! 何食ったらこんな
重くなれるんだ!
D・S:
電気に当てられたのか? ショック
状態みたいだな
D・S:
ここはまだ高電圧が生きてやがるな。
他に回るぜ
最後の水晶がD・Sの法印で括られて
白く輝いた瞬間、岩洞に満ちていた
エネルギーの緊張がふっと途切れた。
D・S:
霊子炉を増幅する機能が切れたぜ
ヴァイ:
じゃあ、破界門も閉じんのか?
D・S:
いや、進行は遅くなってるだろうが
あそこまで開いてればあとはメインの
霊子炉だけでも充分だ。早くシーラを
助け出さなきゃならねえ
D・S:
もう、岩洞のエネルギーは俺の手の
中だ。転送機を作動させて、天守閣に
乗り込むぜ!
ヴァイ:
おい! 水の中に宝箱があるぜ!
ヨルグ:
しかし、潜って取るわけにもいかんな
ヴァイ:
ああいうのに限って、いいお宝が
隠されてたりするんだよな
D・S:
コイツまでロスみたいになってきや
がった。やれやれだぜ
扉が閉まると、背後から水音が勢い
良く響いた。小部屋は再び注水された
ようだった。
扉が開いた時、宝箱との間を阻んで
いた水は完全に引いていた。
ヴァイ:
やりぃ! 謎は全て解けた
D・S:
扉を開けただけだろが。強いて言う
ならこの場所を見つけた俺様がエライ
ヨルグ:
どっちもどっちだよ……案外似た者
同士なのか? このふたり?
扉を開こうとすると、その奥で仕掛け
が作動する音が聴こえた。続いて、
ごぼごぼと水が排出されていく音が
聴こえてきた。
最終更新:2020年10月31日 21:10