要石の洞窟
その洞窟は暗かったが、空気の流れや
音の反響から、先に長く続いていると
感じられた。方角的にも、内陸部へ
向かうのはこのルートに相違なかった。
D・Sの予想通り、地龍神殿の本体を
破壊した今、そこにはもはや要石の
幻影は存在しなかった。結界は消え、
内陸部へと続く洞窟が口を開けている。
眼前に半透明の、巨大な岩塊の幻影が
通路を塞いで浮かび上がっていた。
それは幻でありながら、硬質な触感を
持って存在していた。小揺るぎもせぬ
幻影の壁に阻まれ、彼らはそこから
先に進むことはできなかった。
ブラド:
ぬうう……ワシが押してもビクとも
せぬとは……
D・S:
強い結界が施されてやがる。現実の
物質を投射して、虚像の連続体を
造り上げているな。幻影だが、遮る
ことができねえって寸法だ
ヴァイ:
つまり、どういうこった?
D・S:
凄まじい速さで幻影が更新されて
いるのさ。投射の一瞬だけ実体の
特性を維持するだけだが、それが
連続して行われるから通れねえ
D・S:
噛み砕いて言やあ、高速で往復する
振り子だ。空気は通り抜けられても、
ある程度の大きさを持つ固体は邪魔
されちまう。つまり俺たちだな
ヴァイ:
???
D・S:
すぐ虚像が更新されちまうから、
破壊も移動も不可能。およそ厄介な
結界だぜ
ボル:
突破不可能ということでござるか?
ヴァイ:
それじゃ、どうすんだよ?
D・S:
慌てるな。この手の強力な呪法は、
それなりの環境を整えたうえで、かつ
近距離からしか封印をくくることが
できねえ。当然のリスクってワケだ
D・S:
この近辺に岩塊――要石の実体が
あるハズだ。それも大規模に呪力を
増幅してやがるから、それなりに
祀られているに違いねえ
D・S:
それさえ見つけて叩き壊せば、
幻影を消すことができるだろうぜ
D・S:
だとすりゃ、考えられるのはあの神殿
の中なんだが……
ヴァイ:
入れないんだよな
D・S:
どうにもまだ、海岸線の探索が不完全
な気がしてならねえ。先にそっちを
確かめてみることにしよう
D・S:
だとすりゃ、考えられるのはあの神殿
の中だよな
ヴァイ:
今度は入れるハズだぜ。行ってみよう!
ヴァイ:
頭数が足りねえんだよな
D・S:
とにかく、もう一度あそこに行って
みようぜ
D・S:
妙な化け物が出るようになってきや
がったな。竜船の魔操兵もどきとは、
ちょっとばかり違うようだぜ
ヴァイ:
敵――の配下かな?
D・S:
かもな。モノリスの言ってた、力が
必要ってのはこのことか……?
最終更新:2020年10月31日 21:07