第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 虚神王の砦・前庭虚神王の砦蓮塔巨大聖堂イドクリスタルダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミー クリア後

虚神王の砦・前庭


砦の内部は、忘れられた古代の神々を
刻んだ石壁に覆われていた。
歴史から抹消された神の無言の怨嗟が
そこから滲み出し、巨大な空間を
満たしているかに思える。

D・S:
けっ。負け犬の恨み言かよ。そんな
奴らにくれてやる力なんざかけらも
ねーや!

カル:
それにしても、凄まじい妖気だ。
我々の足を止めるため、古今の様々な
化物が召喚されているらしい――

アビゲイル:
虚神の王とやらも必死のようですな

D・S:
関係ねーな。邪魔するヤツはどいつも
こいつも木っ端微塵にブチ砕いてやる!

ネイ:
ああ……ステキよダーシュ

ガラ:
そおかぁ? オレにはただの力押し
バカにしか見えねーが

D・S:
フ……バカはオメエだ。
俺たちの力が上がっていることに
気づかなかったのか?

ガラ:
ム、ムカツク言い方だなあ! ……お?
そう言えばムラサメのパワーが増して
いるような……

ネイ:
私の雷神剣もだぞ

イングヴェイ:
私の朱闘羅刀の力も高まっている……
これは?

D・S:
愛剣や鎧の類は、オメエらの意識に
引っ張られて、この世界で実体化した
代物だ。それが高次意識界に到達して、
真の力を解放し始めたのさ










アビゲイル:
ところで、気になりませんか?

D・S:
あ? 何が?

ヴァイ:
実は俺、すっげー気になってた

ヨルグ:
やっぱり? 俺も言い出せなくって

ヨシュア:
……時は満ちたか

D・S:
だから何が!?

アビゲイル:
鈍いですねD・S。もう記憶は戻って
いるハズでしょう? つまりですね、
私がこうしてここにいるなら、その男
の中に誰がいるのかというコトですよ

アンガス:
……

D・S:
……あっ! そういやアンガスって、
オメエが中に入ってたロボットだった
じゃねーか!

アビゲイル:
そうなのですよ。無口なので私も
すっかり忘れていましたが……

アンガス:
……ウウウ

突如、アンガスが唸り声を発し、己の
肩を抱いて巨体を震わせ始めた。

D・S:
何だ何だ!? 痛いトコを衝かれて
苦しみ出しやがったか!

ヨシュア:
いや……違う!

アンガスの身体に、輝く光の亀裂が
幾筋も浮かび上がる。溢れ出す光輝は
爆発的に勢いを増し、そして――。

アンガスの肉体は粉々に砕け散った。
その中から、ひとりの若々しい青年
剣士が姿を現す――。

ラーズ:
フッ……

D・S:
テ、テメエは――!

ネイ:
ラーズ王子!?

シーラ:
に……兄様!

ラーズ:
あぎゃあっ……じゃなくて、久しぶり
だな、D・S。この姿で顔を合わせる
のは、だが

現れたのはシーラの実兄であり、
かつてはD・Sの世界征服を阻む
勇者として、敵味方に別れて死闘を
演じた最大の好敵手ラーズ・ウル=
メタ=リカーナ――人呼んで竜王子
ラーズであった。

D・S:
どうしてテメエがここにいる!?
いくら何でも俺様がテメエなんざ
召喚するわきゃねーぞ?

ラーズ:
オマエの窮状を察してな、自らの
意志でこの世界に来てやったんだ。
感謝してくれてもいいんだぞ?

D・S:
んだぁ? 勝手に入り込んできやがっ
たクセに感謝しろだあ?

D・S:
チビ竜ならまだしも、その姿を見たら
腹が立ってきたぜ! 昔の決着をつけ
直そうじゃねーか! アレを引き分け
だと思われちゃたまんねーからな!

ラーズ:
それどころじゃないだろう?
ヨーコのコトはいいのか?

D・S:
うっ……わあった。確かにテメエと
どーのこーのやってる場合じゃねえや

虚神がD・Sの精神世界に侵入した折、
ラーズはいち早くこれに気づき、竜の
血脈を受け継ぐその高い霊質を用いて
独自にこの世界への潜入を果たした。

だが、かつての強敵であるラーズの
侵入は、結果としてD・Sの精神防壁
に“敵”として認識されるに至った。
万全の対策を整えていた虚神とは異な
り、さしたる手妻を持たぬラーズは
防壁から生み出された異分子迎撃の
ための猟犬に追われる対象となったの
であった。

これに対し、ラーズは己の人格を、
D・Sの内宇宙に存在するアンガスの
イメージの中に封入して追撃を逃れた。
そしてアンガスとして受肉し、現時点
まで気配を絶って行動し続けたので
あった。

ラーズ:
……正体を現せる条件はただひとつ、
D・S、オマエの精神が法と秩序に
傾き、俺に対する無意識の敵対認識が
弱まることだった――

ラーズ:
その傾向に導くため、侍大将殿には
苦労をかけてしまった。ヨシュア、
改めて礼を言わせてもらう

ヨシュア:
いいえ……俺の行動など、何ほどの
影響も与えておりませんよ、王子――。
全てはD・Sの資質でした

D・S:
ヨシュア、オメエ知ってたのかよ?

ラーズ:
彼を責めないでくれ。アンガスに身を
潜める直前、私の竜船で拾い上げた
ヨシュアにメッセージを託したのだ。
オマエに仲間との協調を育ませろ、と

D・S:
……そうか! だからテメエ、自分の
使命があるっつってちょくちょく姿を
消しやがったのか! でも後半は女の
ケツを追っかけ回してただけだったが

ヨシュア:
そ……そんなコトは……うう……

カイ:
こらっ! D・S!
ヨシュアにヒドイことゆうなっ!

D・S:
チッ、女ってのはコレだから……。
それとラーズ、テメエの竜船だと?

ラーズ:
あれは俺の霊質をこの世界で実体化
させたものだ。召喚時にはぐれかけた
仲間を拾うためにイメージしたもの
だが、それなりに役立っただろう?

D・S:
くそぉ……このボンボン王子に借りを
作ったみてえで胸クソ悪りぃぜ……

サイクス:
……すると、私を追い回していた
あの猟犬は――

ラーズ:
恐らく俺という標的を見失った異分子
迎撃のための成長型プログラムだろう。
卿の越次元に反応して、追尾モードに
入ってしまったのだろうな

D・S:
俺の防壁プログラムか……道理で
手強かったハズだぜ

ヴァイ:
へん。肝心の虚神には無反応なクセに

D・S:
あっテメエ、言わんでいーコトを!

ラーズ:
さあ、ここからは俺の封神剣が存分に
振るえる! 一気に攻め上るぞ!

D・S:
テメエも勝手に仕切るなっ!
主人公は俺様だぁ!

D・S:
ところでよ、アビゲイル

アビゲイル:
はい?

D・S:
コイツの中身は誰なんだ?

アビゲイル:
おおっ! そー言えばアンガスとは
私が身分を偽って侍衆に仲間入りした
時に着込んでいた外骨格ロボットの
ハズでした!

ヨルグ:
ええっ? あ、でも、そう言えば……

ヴァイ:
よく見ると同じような顔してる!

アビゲイル:
うっかりしていました。
私としたことが……

D・S:
テメエはいつもうっかりだっての。
おい、アンガス! テメエは誰だ!?

アビゲイル:
……ひょっとするとD・S、貴方の心
の中にあったアンガスの記憶が、この
世界で受肉したのかも知れませんよ

D・S:
そんなコトあんのかあ?

アンガス:
……(にいっ)

D・S:
ホントにそうなのか?
こりゃあ俺様もブッたまげたな――

ヴァイ:
つまり、本物のアンガスってワケ?
ワァオ! 良かったなアンガスぅ!










D・S:
ここまできて、逃げ出してられっかよ!










記憶の奥底から浮かび上がってきた
魔力の方程式――それはD・Sが独自
に編み出した呪文・爆霊地獄の作用の
根幹を成す理論であった。この方程式
が魔力回路を効率化することによって、
以前のものとは比べものにならぬ、
真の爆霊地獄がD・Sの手に蘇る――。

D・S:
そうか……俺としたことが、肝心な
駆式をド忘れしてやがったのか――。
ククク……ここからの爆霊地獄は
強力だぜぇ。分解してやるぜ、神め!



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最終更新:2020年10月31日 21:28