太陽塔


塔の頂上近くの祭壇に、その内側に
暗く燃える炎を宿した宝玉が浮遊して
いた。以前入手した魔紅玉に似て
いたが、それの秘めた魔力は桁違いに
巨大なものだった。

D・S:
こいつぁ凄え……隠蔽された地にある
答ってのはこれのことか!

シェラ:
! もしやこの塔……いや、遺跡全体
が気象をコントロールする装置だった
のか? と、すれば……この玉の魔力
を利用して、魔のオーロラが造り――

その刹那、宝玉に歩み寄ろうとする
一行の前に、陽炎のように揺らめく影
が出現した。

それは輪郭のぼやけた、何か巨大な
人型のものを投射した幻影であった。
青白く燃える姿の、肉食獣に似た貌の
中でその双眸が赫々たる光を放つ。

D・S:
チ……万一に備えて護衛を置いていや
がったか。コイツ――相当な妖気だぜ!

消え去る寸前、青い影は薄く嗤った
ように見えた。この程度なのか、と。
次の瞬間、幻影は弾け、後には何の
痕跡も残さずに消失した。

ヴァイ:
実体でもねえくせに、手強かったな

D・S:
クソヤロウめ――今のは様子見だぜ。
思念体をここに送り込んで、俺たちの
戦闘力に探りを入れやがった――

ボル:
それでは、今の影の本体が……!?

D・S:
鏖帝や妖魔三姉妹と同じ穴のムジナ、
カルを操ってる魔物かも知れねえ――
あるいは神、か?

D・S:
何にしろ、これで邪魔は入らねえ。
ここで全力で止めなかったこと、必ず
後悔させてやるぜ!

D・Sが手を差し伸べると、宝玉は
にわかにその輝きを強めた。内部では
一定の周期で炎が勢いを増し、それが
生み出すエネルギーの律動がD・Sに
注ぎ込まれていく――。

D・S:
コイツは――! 翼龍の心臓の時と
同じだぜ……体中の細胞にエネルギー
が注入されてるみてえだ!

記憶の中に散乱する呪文の断片が、
活性化された脳細胞に凄まじい速さで
紡ぎ直されていく。失われていたはず
の知識が、傷が癒されるかの如くに
再生していくのが感じられる。

D・S:
禁呪の知識が蘇ってるのか……?
ククク、こりゃ凄え。カルよ、俺に
逆らうとヤベえことになるぜ――
フハハハハハ――ッ!

この時、大宝玉の波動に影響された
のか、温存していた魔紅玉がD・Sの
懐で弾けた。漏出する魔力は同質の
宝玉に吸収され、さらに強くD・Sの
脳細胞を刺激する。もうひとつの禁呪
が蘇り、知識の呪文書に刻み込まれた。

大宝玉は次第に収縮し、やがて内包
する魔力を全てD・Sの肉体に注入
して消滅した。

D・S:
この呪文の熱量さえありゃあ、あんな
氷の塔なんざずくずくの廃墟にして
やれるぜ……一発限りになりそうだが、
それでも充分だ。よし、戻るぜ!



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最終更新:2020年10月31日 21:23