第一話っぽいの、その3

「これがいいわ」
家具売り場でレイさんがベッドに座る。
「部屋は狭いんです。そんなベッド置けるわけないじゃないですか。諦めてください」
六畳の部屋が二つのアパートで、三人が生活しなくてはならないのだ。家具は最小限に抑えなければ、狭くて仕方がない。
「そう…残念だわ」
表情がないので、その残念さがいまいち伝わってこない。
有希さんは私たちの後ろをずっと着いて歩くばかりで、何も提案してこない。
レイさんのように好き勝手言わない分、邪魔にならなくていい。
一通りの家具を揃え、大きな袋を抱えて一旦アパートに戻る。
片付けもそこそこに、晩ご飯の為に近くのファミレスに移動する。
「これと、これと、それにこれと、これ」
有希さんがメニューを見ながら、4ついっぺんに頼む。
「そんなに食べるんですか?」
有希さんは私を見返し、小首をかしげた。
「まあ、止めはしませんけど」
「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」
レイさんはレイさんで店員を困らせている。
「そんなメニューは、置いてませんよ、レイ姉」
「肉…嫌いだから」
「知りませんよ、そんなこと」
結局似たものということで、メニューにあったうどんで我慢してもらった。
食事を始めて驚いたのは、有希さんの食欲。頼んだ4人前の料理を、本当に一人で平らげた。
しかもそれだけでは飽き足らず、私のカレーもモノ欲しそうに見ていたのは、驚きを通り越して呆れた。
食事を終え、アパートで再び荷物を整理する。
大きなものは郵送で数日後に届くようになっているので、今日片付けるのは小物だけ。
それでも片付くまでに、夜まで掛かった。
部屋が片付いて、重要なことに気がつく。
「ああ、ふとん…」
ふとんも持ち帰らずに、郵送を頼んでいた。そのため、今日使うふとんがない。
この際、一旦それぞれの家に帰って、明日以降本格的に姉妹としての生活を始めても良いが。
「毛布があった」
有希さんが一枚の毛布を持ち出した。
どこにあったのか、それとも有希さんが知らないうちに買っていたのか。しかし、たった一枚だ。
「毛布一枚では、まだ寒いですよ」
有希さんは毛布を持ったまま止まってしまった。
「こうすれば、暖かいわ…」
「きゃっ!?」
と、毛布を奪ったレイさんが、私に覆いかぶさる。そして有希さんも一緒に、一枚の毛布でくるりと包んだ。
「何するんですか、狭いです」
「でも、暖かい…」
レイさんが呟く。毛布をギュッと掴んで、離すつもりはないらしい。
「有希姉も何か言ってやってください」
「ルリ。姉さんの言うことは聞くべき。それに、これが最善の方法であることは、間違いない」
有希さんもレイさんの肩を持つつもりらしい。
私は観念してため息を吐いた。
「暖かいわ…三人でいると、すごく…」
姉さんが呟くように、たった一枚の毛布でも、いつものベッドよりも暖かく思えた。

第一話っぽいの、完





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