けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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「澪ちゃん、どうしたの?」


児童玄関で雨が止むのを待ってたら、後ろから突然声を掛けられた。
振り返ると、りっちゃんだった。クラスでも人気のある、元気で明るい女の子だ。

時折話し掛けてくるけれど、私は緊張して恥ずかしくて、言葉を上手く返せない。
だからいつも、りっちゃんに申し訳なく思っている日々が続いている。
そんなりっちゃんは、いつも調子で私に声を掛けてきたのだった。
急激に体温が上昇して、顔が熱くなるのが自分でもわかる。


「あ、傘がないの?」
「う、うん」
「私もないんだー」


言いながら、りっちゃんは私に並んだ。
屋根の縁から、水滴がポタポタとリズムを刻むのを、ただじっと見つめてる私。
しばらく静かだった。私は、緊張してドキドキして、何も言えなかっただけ。
なんでりっちゃんを前にすると、こんなにも熱くなってくるんだろう。
わからない。だけど、緊張とか恥ずかしさで、りっちゃんの顔を直視できない。

雨は止みそうにない。


「澪ちゃん、算数のテスト何点だった?」


私は立ったままだったけど、りっちゃんはその場に座っていた。
りっちゃんは私を見ずに、私と同じように屋根の外の降りしきる雨の世界を見つめていた。
静かなのは私もどぎまぎするから、そう思って話題を出してくれたのだろう。
私はその好意になんとかすがりつこうとして、返した。


「ひゃ、百点」
「またー? この前も百点だったよね澪ちゃん」
「た、大したことないよ」
「百点で大したことなかったら、何処まで行けば大したことになるの! すごいよ澪ちゃん」


りっちゃんはいつもそうなんだ。私を笑顔で褒めてばっかり。
長い髪も、顔も、点数も、性格も……全部全部、りっちゃんは笑って褒めるんだ。
すごいねって。綺麗だねって。私は、そんなこと言われて恥ずかしくないわけないのに。
今までだってずっと同じこと言われてきて、嬉しくなんかないはずなのに……。

りっちゃんにだけは、褒められて嬉しかった。
同じこと――髪も点数も、いろいろとたくさんの人に褒められてきたけど。
りっちゃんに言われたのが、一番嬉しかった。なぜか、頬が綻ぶのだった。

なんでだろう。
わかんない。
りっちゃんだから、なのかな。


「雨、止まないね」
「うん」
「電話して、お迎えきてもらう?」
「えっ」


児童玄関には、公衆電話があった。確かに電話すれば、家の誰かが迎えに来てくれる。
だけど私は、それをやりたくなかった。だってりっちゃんに会ってしまったから。
二人だけの時間を、終わりにさせたくなかったんだ。


「家に、誰もいないよ」
「そっか。よかった」
「よかった?」
「だって、澪ちゃんが迎え呼んだら、澪ちゃんと話せないじゃん」


りっちゃんは白い歯を見せた。
二人だけの時間を終わらせたくなかったの、私だけじゃなかった。
私は暖かい気持ちになって、笑った。


「りっちゃん」
「なあに?」
「ありがとう」
「う、うん。どうしたの急に」


理由は言わないでおこう。
私が笑ってるだけで、りっちゃんが笑ってるだけで嬉しいから。

雨さん、止まないでね。
もうちょっとだけ、りっちゃんと二人きりでいさせてね。
雨も悪くないって思った。


あめあめふれふれ、もっとふれ。


  • カワイイじゃねーかw -- 名無しさん (2012-01-22 15:25:53)
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