けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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mioritsu

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「カレー食べたい」

膝の上に乗せた雑誌をパラパラと捲りながら律は呟いた。
小さな呟きだったが隣でテレビのチャンネルを変えつつぼんやりしていた私の耳にはしっかりと届いた。
しかし……カレーかあ、それはまた。

「唐突だな」
「食べたいって思ったんだからしょうがないだろ」

まあ何か食べたいって考えは割と唐突に浮かぶものだからなあ。
それに律のカレーは美味しいし、いいかなあ。
何カレーにするんだろうなあ。
甘口がいいなあ。

未だ頭はぼんやりとしていて、うまく頭が回らない。
今日はそういう日なんだろう。仕方がない。
そんなよく分からない理論も簡単に納得出来る。
それくらい、何もしたくない気分だった。

「澪、作って」

ぼんやりし過ぎて今にも寝そうな私の脳みそが、律の一言で急に冴えてくる。

「えっ……私が作るの」
「ん」

驚きの表情を律に向ければ、満面な笑みが返ってくる。
いやいや、なんで私がそんなことしないといけないの。

「やだ」
「なーんでさ」
「律が作ればいいだろ」
「『澪が作った』カレーが食べたいんだよ」

なんだそれは。カレーなんて誰が作っても……いや、律が作ったのはママのよりも好きだしなあ。
それに私が作るより律が作ったほうが美味しいしなあ。
……ああ、そっか。

「じゃあ私は『律が作った』カレーが食べたい」
「……そうきたか」

ふふふ、今日の私は一味違うんだ。何もしたくないことに全力だからな。
……自分で考えてて意味が分からない。

「甘口でよろしく」

更に追い打ちとばかりに一言添えれば、律は諦めたように笑った。

「……しょうがないな」

うん。しょうがないんだよ。今日に限っては。

「楽しみにしてる」
「お、おー。りっちゃんシェフに任せとけ!」

私の言葉におチャラけた口調で返事をしつつも、律は照れたように笑っていた。
何でだろうとぼんやり眺めていると、その視線に気づいた律が口を開く。


「澪が私の作ったご飯食べたいっていうの、珍しいよな」

それがなんか、すっげー嬉しい。と律は言った。


そうだったっけ。言われてみれば……確かにそうかもしれない。
普段の私はあんまりそういうこと言わないもん。恥ずかしいし。

でも今は、何時もの私じゃないから、言えちゃうんだ。

「律のご飯、好きだよ」
「へへ、そっかそっか」

……思ったことを言葉にするって大事だなって、律の嬉しそうな顔を見て思った。
だから。

「だから早く作って、お腹すいた」
「…………いい雰囲気が台なしだ!」

思ったことを素直に伝えたら、怒られた。
まあ律も怒りたい気分だったんだなあ、なんてよく分からない理由をつけて納得する。

「はあ。まあいいや……んじゃ、作ってくる」
「ん、いってらっしゃい」

律が台所に行くのを眺めたあと、再びテレビに視線を戻す。
特に見たいものはなかったからリモコンを手に取り、テレビを消す。

なんだか……手持ち無沙汰だ。
律がさっきまで見ていた雑誌をペラペラと捲ってみる。
あれ、これ見たことあるなあ。ため息をつきつつ雑誌を閉じて、意味もなく天井を眺める。


律はまだかなあ。いやでも、さっき作りにいったばっかりだしなあ。
……お腹すいたなあ。隣に律がいないの、なんか寂しいなあ。
そんなことをぼんやりと考える。


しばらくすると台所の方から、いい匂いがしてきた気がする。
その匂いにアテられたのか、私のお腹がぐぅと鳴ったような気がする。



カレーが出来るまで、あと少し。
律が帰ってくるまで、あと少し。



おわる。

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