けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

20-200

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mioritsu

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律が初めて私の家に泊ったのは、私が9歳、律が10歳の時だったんだ。
その晩、律ったらとにかくはしゃいじゃってさ。
「遅くまで起きて二人でいっぱいお話しよう!」って持ちかけたりもしてきたけど、マ……いや、お母さんが許してくれるはずもなくて、結局9時にはベッドに入ることになったんだ。
当時の私はまだお母さんが隣にいないと不安で寝つけなかったんだけど、その時は律が手を握ってくれてさ。
その手が暖かくって、凄く安心して眠りにつけたのを覚えてる。

だけど夜中過ぎ頃かな、私は目を覚ましちゃったんだ。怖い夢を見ちゃってさ。
そう、とっても怖い夢だった。両親に親戚、学校の友達、そして律。
そういった私の大切な人たちが、皆私をおいて何処か遠くへ行ってしまって、ひとりぼっちになっちゃう夢。


あれは怖かったなあ、本当に。秋の肌寒い頃だったのに、私ったら汗びっしょりでさ。
「あれは夢だったんだ」
そう理解するのにそう時間はかからなかったけど、やがて私はある事に気がついたんだ。
隣に寝ていたはずの律がそこにいない。
私は最初何が何だか解らなかった。あれは夢で、私はその夢から醒めたはずなのに、私の大切な人、律がそこにはいないんだから。
「りっちゃん?」私はその大切な人の名前を呼んだ。返事はなかった。
部屋の中は暗くて、それで私の不安は一層つのった。
「りっちゃん?ねえ、りっちゃん……?」私はもう一度名前を呼んだ。返事はない。
私はついに泣き出した。声を出して泣いた。
それから毛布に包まりながら、目をかたく閉じ、必死に眠りにつこうと試みた。「これは夢の続きなんだ、寝てしまえば、きっと夢から醒めて、その時りっちゃんは私の隣で眠っているはずだ」
私はそう考えたんだ。だけど、眠れるはずもなかった。


怖い、哀しい、淋しい……そういった感情が一気に押し寄せ、私の心はぺしゃんこに潰れてしまいそうだった。
その時、ドアが開く音がした。私は頭まで引っ張りあげていた毛布を払って、そちらを見た。
「あ、みおちゃん起きてたんだあ」
そこには私の大切な人、律が立っていた。
私はその声を聞いた瞬間、ベッドから立ち上がって一目散に律の所まで駈けていき、抱きついた。
「うわっ!?みおちゃんどうしたの?」
「りっちゃん…りっちゃあん!」
「みおちゃん、泣いてるの?……ねえ、何があったのか教えて、みおちゃん」

それから私は律にすべてを話した。怖い夢を見たこと、目を覚ますと律がいなかったこと、それによって私がどれほど不安を感じたか、それらすべてをね。
私が話はじめる折にスタンドをつけたから、話を聞いてる最中の律の表情はよく解った。
律は真剣な表情で私の話を聞いてくれた。
思えば、律のそういう真剣な表情を見たのもあの夜が最初だったな。


「ごめんね、みおちゃん。私トイレに行ってたんだ。暗かったから場所がちょっと解らなくなっちゃってさ、それで時間がかかっちゃったんだ……」
律は申し訳なさそうにそういった。
「そんな……りっちゃんは悪くないよ」
事実、私の方が律に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだったんだ。いきなり抱きついたり、おまけに服も涙で濡らしちゃったりしてさ。
「よし、決めた!」
少し黙った後で、律は出し抜けにそう言った。
「私、もっとたくさんみおちゃんの家に遊びにくる!」
「……え?」
「私がどこかに行っちゃったのかも、なんて心配をみおちゃんができないくらいいつでもそばにいてあげる!」
びっくりしたよ。まさかそんなこと宣言されるなんて思ってもみなかったからさ。
でもさ、私を気づかってくれてる律の優しさが、私はとっても嬉しかったんだ。


「だ、だったら……」
「お?」
「私もりっちゃんのお家にたくさん行く!りっちゃんにも私がどこかに行っちゃうかも、なんて思われないように!」
「そっか!よし、決まりだ。たくさん、たくさん二人一緒にいるぞー、おー!」
「お、おー!」
「おー!」
「おー!」
その時にはもう、私の中から恐れや不安といった感情はすっかり消え失せてたよ。
そこにあるのはただ一つの感情、永遠とも呼べるものを誓いあった「大切な人」が与えてくれた安らぎ、それだけだった。

そして私たちは再び眠りについた。
律は先ほどよりもずっと強く、少し痛いくらいに強く、私の手を握ってくれた。
だけど、私にはその痛みが何よりも心地良くて、私はすぐに眠りについた。
翌朝、私が目を覚ますと、もちろん律はそこにいた。結局、一晩中手を繋いだままだったので手が痺れていた。
私はなおも手をはなさず、寝息を立てている律に向かって言った。
「ありがとう、りっちゃん」

End
以下、蛇足



「まあ、今では夜にベッドの上で泣くのはもっぱら律の方なんだけどな」
「澪先輩、台無しです……」


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