投稿日:2010/08/12(木) 04:04:24
ロミオ役が澪になった時、嬉しい反面、不安で仕方なかった。あんなに美人でファンクラブもある彼女に、またファンが増えるのはもう間違いない事だから。
消えろ、消えろ。こんな嫉妬心。こんなのあたしらしくない。
消えろ、消えろ。こんな嫉妬心。こんなのあたしらしくない。
練習を重ねれば重ねるほど、澪はロミオに入り込んでいった。それはもう見とれてしまうほどに格好良く。前日、澪の家で二人で台詞の確認をした。明日本番だってのに、心のもやもやは消えてくれない。
「あぁ、ロミオ。あなたはなぜロミオなの?」
澪、なんでそんなに綺麗でこんなにもあたしを悩ませるんだ。
「──飛び越えてみせましょう…って、律?」
泣いてるの?そう澪に言われるまで気づかなかった。
「あっ、あれ!?あたしってば名女優だから、ジュリエットの気持ちに入りすぎて……」
「律!」
「あっ、あれ!?あたしってば名女優だから、ジュリエットの気持ちに入りすぎて……」
「律!」
もう、ごまかせないや。涙声でこんな冗談言ったって澪には隠せない。
「澪がロミオで、あたしがジュリエットなんてやっぱりおかしいよ!釣り合わないもん…澪は綺麗だしどんどん格好良くなっていくし。」
「律…」
「そんなの見たら、みんな澪好きになっちゃうよ!」
「律…」
「そんなの見たら、みんな澪好きになっちゃうよ!」
心に抱えた不安が涙になって溢れて来る。泣きじゃくるあたしを不意に澪が抱きしめてくれた。
「律は馬鹿だな。心配なんてしなくていいよ。わたしは何処にも行かない。だって──」
"私たちは愛し合っているのです"
澪はこの台詞を力強く、ステージから客席へと言い放った。その後、隙を見て舞台袖に視線をくれた彼女に、あたしは最高の笑顔をお返しした。