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ドラえもん&ダイゴ VS ドラミ━━━

「行け、メタグロス!」
「頼むよゲンガー!」
ダイゴはメタグロス、ドラえもんはゲンガーを繰り出す。
「ダイゴさん……」
「ああ、わかっている。いきなりいくぞ」
ドラえもんもダイゴも、ドラミのポケモンに対する見解は一致していた。
エレキブルは見た目通りエレブーの進化形。
マンムーはその名前と特徴からイノムーの進化形だろう。
となると、エレキブルを撃破できる地震を持つメタグロスに浮遊できるゲンガー、この2体で戦うのがベターだろう。
「最速ゲンガーの恐ろしさを教えてやるっ!」
ドラえもんのゲンガーの目がエレキブルを捉え、怪しく光る。
だがその催眠術を受けたのはエレキブルではなく、交代によって出されたサンダーだった。
「交換……飛行タイプか」
ダイゴが舌打ちするが、普通のトレーナーなら当然の対応だ。
おそらくマンムーは守ってくるだろう。
だが、地震攻撃を止めるわけにはいかない。
「メタグロス、じし……」
「マンムー、こごえるかぜよ」
ドラミの命令を受けたマンムーがメタグロスより先に、その体から冷気を放出する。
冷気はゲンガーとメタグロスを襲うが、ダメージはさほどではない。



「まさかその見た目で私のメタグロスより速いとはな。だがやることは変わらん!」
メタグロスがダイゴの命令を受け、ジャンプする。
そしてその巨体を地に叩き付けた。
マンムーが地震攻撃を受けて大きくのけぞっている。
ダメージはそれなりに大きいようだ。

『これでこちらがかなり有利になったはず』
だがそんなダイゴの期待とは裏腹に、ドラミのサンダーはラムの実で眠り状態を回復させてしまった。
「なんの対策も無しにサンダーに変えたりはしないわよ」
「ま、ゲンガーだから当然か」
ゲンガーが出会い頭に使ってくる技なんて、怪しい光か催眠術くらいなものだ。

そんなドラミとダイゴの高度なポケモン戦術に付いていけず、ドラえもんは二人の顔を見比べるだけである。

「勝負は……」
「次のターン……」
攻撃力の高いサンダーはゲンガーがまた催眠術をくらわせるはず。
となると、こちらは俄然有利だ。
『ゲンガーとサンダーの速度はほぼ互角……』
その瞬間、ダイゴが思わず息を飲んだ。

「しまった!」

真っ先に動いたのはドラミのサンダー。
サンダーから電気が放たれ、ゲンガーの体を襲う。



「電磁波、だと……くっ!」
そう、ゲンガーは凍える風によって素早さを下げられていたのだ。

初歩的なミス。

ダイゴは目の前に現れた未知のポケモンに気をとられてしまったのだ。
『だが、地震がヒットすればマンムーは……』
しかし、ダイゴの期待は脆くも打ち砕かれる。
マンムーの体は不思議な力で守られ、地震の衝撃を全て打ち消していたのだ。
「まもるはダブルバトルの基本ですよ、ダイゴさん」
ドラミが挑発するように言い放つ。
ゲンガーも痺れていて催眠を打てないようだ。

「ドラミ、お前やりこんでいるなっ!」
ドラえもんが顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らす。
「お兄ちゃん、ポケモンなんて所詮ゲームよ。私達ロボットならデータ予測なんか簡単じゃない」
「え……」
ドラミの言葉に、ドラえもんは妙な引っかかりを感じた。

『もしかしたら、これがドラミのウィークポイントなのかもしれない』

ドラえもんはダイゴに近づき、ボソボソと呟く。
ダイゴは正面を向いたままそれに頷いた。
「何の相談かは知らないけど、私には通じないわ」
「それは」
「どうかな?」
優位を見せつけるドラミに、ダイゴとドラえもんが同時にニヤリと笑みを返した。



ジャイアンとスネ夫は、未来のしずかと戦っていた。
しずかが最初に出したポケモンは見たことの無い赤いポケモンとキュウコン。
それに対してジャイアンはラグラージ、そしてスネ夫は新たなポケモン、ランターンを繰り出していた。
ポケモンを見て、スネ夫は即座に敵の戦術を見破った。
「ジャイアン、まずはキュウコンを叩くよ」
「あん?あっちの変なポケモン倒すのが先だろ。手が大砲になってるぜ」
ジャイアンはその性格通り、直線的な戦術しか知らない。
だが、スネ夫は敵の技構成まで手に取るようにわかる。
「ジャイアン、キュウコンは状態異常攻撃が厄介だ、先に倒してしまおう」
「そういや怪しい光やら催眠術やら、面倒な技を持ってたな」
スネ夫はもう一方のポケモンを確認する。
人型で炎タイプ、おそらく……
『あれはおそらくブーバーの進化形だろう。単体攻撃タイプならあまり怖くはない』
だが、キュウコンの持つであろう鬼火や催眠術は厄介だ。
食らうわけにはいかない。
『まあ、おそらく交換するだろうが……』
相性面を考慮すると、しずかは2体とも交換してくる可能性が最も高いだろう。
それでも先手は取れる。



先に動いたのはしずかだ。
「キュウコン、さいみんじゅつ!」
キュウコンから発せられる催眠波がジャイアンのラグラージを眠りに落とす。
「交換しなかったのかい、それは判断ミスだよ!」
スネ夫がしずかにそう言い放つが、しずかは気にしない。
「ブーバーン、ふんえんよ!」
ブーバーンと呼ばれたポケモンは高熱の噴煙を吐き出し、全体に攻撃する。
ラグラージもランターンも大したダメージにはなっていないが、スネ夫はその攻撃の意味をすぐに悟った。
「貰い火か……」
キュウコンの特性、貰い火を発動させるための攻撃のようだ。
だが攻撃力が上がるのは炎タイプの技、こちらは耐性がある。
「何を考えているかは分からないけど、遠慮なくいかせてもらうよ!」
ランターンの最強技、ハイドロポンプがキュウコンに放たれる。
だが、その攻撃はわずかのところで外れてしまった。
「くそ、やはり命中率が難点か」
「キュウコンには光の粉も持たせてあるしね」
あっさりと手の内を晒すしずか、その顔には余裕すら見える。
「くそ、余裕かましやがって……」
ラグラージを眠らされたジャイアンも悔しそうな顔をしてしずかを睨む。



「大丈夫、まだこっちの優位は変わらないよ」
スネ夫はジャイアンをたしなめるが、内心は若干の危機感が生じていた。
これはルールやマナーに則った普通のポケモンバトルではない。
と、いうことは……
「ジャイアン、次は……」
耳打ちするスネ夫の言葉に、ジャイアンは耳を疑った。
「そんなことして、いいのかよ……」
「ああ、多分しずかちゃんの次の手はアレだからね」
スネ夫の提案に、渋々ながらジャイアンも了承する。
しずかが動いた。
「キュウコン、ランターンにさいみんじゅつ!」
再びキュウコンが催眠術を放った。
眠らされるランターン。
だが、隣のラグラージは目を覚ましていた。
ジャイアンがニヤニヤと笑う。
「ねむけざましを使わせてもらったぜ」
「2体眠らせてくるってことは、ルール無用なんだろ?」
スネ夫が会心の笑みを浮かべる。
しずかが催眠術を使うことを見越してジャイアン道具を使うよう指示したのはスネ夫だ。
『ゲームの事なんか何も知らない女の子だ、そんなマナーとかは知らないはずだ』
それならこちらもCPUトレーナー相手の時のように遠慮なく道具を使うまでだ。
回復の薬のストックもある。



だがそんなスネ夫の奸計を見ても、しずかはうすら笑いを浮かべたままだ。
「構わないわよ、スネ夫さん。もっと卑怯な手を使いなさいな」
自分達が知っているしずかからは聞いたことのないような言葉。
やはり彼女は自分達の知るしずかではない。
「へへ、じゃあ遠慮なくやらせてもらうよ」
スネ夫はスピーダーをラグラージに使う。
ブーバーンが再び噴煙を使ってくるが、やはりダメージは大したことはない。
『このまま回復とスピーダー使用を繰り返せば、やがてキュウコンの速さを超える』
そうなれば地震一発でケリがつく。


━━━━━

「かみなり!」
ドラミがサンダーに命令する。
だが、ドラえもんのゲンガーは麻痺しているにも関わらず攻撃を守って防いだ。
「お兄ちゃん、最初の威勢はどうしたのかしら」
ドラミの挑発にもドラえもんは眉ひとつ(眉はないが)動かさない。
そんな兄の様子に気をとられたドラミは、ダイゴの苦しそうな顔に気付けなかった。
「すまん、メタグロス……だいばくはつっ!」
メタグロスにパワーが集中し、凄まじい爆発を起こした。
その破壊力に、サンダーもマンムーも戦闘不能になってしまった。



「私の知っているダイゴさんなら、自らポケモンを瀕死にさせるような技は使わない……」
どうやらドラえもんの入れ知恵のようだが、それだけではない。
『メタグロスに大爆発を覚えさせていたということは、ダイゴさんも裏では甘い男ではないようね』
どうやらダイゴという男の人物像を修正しなければならないらしい。
「じゃあ次はこのポケモンよ……スイクン、フリーザー!」
ドラミが繰り出したのは、イズミから奪ったスイクン、そしてジンダイのフリーザーだ。
「伝説のポケモン2体を相手に、果たして勝てるかしら?」
「その台詞、まるで力に溺れているかのようだぞ」
ダイゴはそうドラミを卑下すると、メタグロスに変わる新たなポケモンを出した。
「いけ、アーマルド!」
ボールから硬い甲羅に覆われた巨獣が姿を現す。
アーマルドは高い攻撃力を誇るポケモンだ。
「このアーマルドはピントレンズ装備だ。伝説のポケモンとはいえ急所に攻撃が当たればどうなるかな」
その言葉が本当か嘘かは分からないが、アーマルドのタイプ一致岩技を食らえばフリーザーとて危ない。
『挑発に、乗るしか無いわね』



「フリーザー、れいとうビームっ!」
フリーザーの冷凍ビームが炸裂し、アーマルドの体力を著しく削る。
「そしてこれでトドメよ、スイクン!」
続けてスイクンのハイドロポンプがアーマルドに直撃する。
「ハッタリを効かせた割にはあっけない…………!?」
そうこぼしたドラミの眼前には、水しぶきの中から悠然と現れるアーマルドが飛び込んできた。
ダイゴが口を開く。
「守るでもよかったんだ、だが今はこらえるでなくては、な……」
体力が僅かのアーマルドがカムラの実を食べ、素早さを上昇させる。
そして、蚊帳の外だったドラえもんがぽつりと呟いた。
「ゲンガー、だいばくはつ」
ゲンガーが大爆発を起こし、その体力と引き替えにドラミのポケモン達に多大なダメージを与える。
「そ、そんな……」
爆風から目を多いながらドラミが叫んだ。
まさか大爆発を連続で使ってくるとは思わなかったのだ。
『容赦なし、といったところかしら』
ダイゴもドラえもんも、並々ならぬ覚悟で挑んできている。
ポケモンを犠牲にする戦術を使うとは思わなかった。
おそらく次のターン、素早さの上がったアーマルドの一撃でフリーザーは落とされるだろう……



━━━━

戦いはスネ夫の計算通りに進んでいた。
ダブルバトルで道具が使えるのはかなりのアドバンテージだ。
「ラグラージ、じしんだあっ!」
ラグラージの2度目の地震がキュウコンとブーバーンにヒットし、2匹を沈める。
スネ夫のランターンは守っていて無傷だ。
「さあ次のポケモンを出しなよ、しずかちゃん」
スネ夫が勝ち誇った笑みを浮かべる。
だが、しずかは相変わらず笑みを隠そうとはしない。
「な、何を笑ってるんだよ!」
その表情にイライラを募らせたジャイアンがそう言い放つ。
しずかはニヤニヤと笑いながら、腰に付けてあるモンスターボールを足元に取り落とす。
「全く、子供のくせに調子に乗って……貴方達なんか、この1体のポケモンだけで十分なのよ……」
しずかは足元のボールを乱暴に足で払うと、手に持ったボールを二人に見せつけた。
「まさか、それ1体で戦うつもりかよ。バカにしやがって!」
ジャイアンが余裕のしずかに喚き散らす。
だが、スネ夫だけはその言葉がハッタリではないと感じていた。
しずかが他のポケモンを必要としない程の強さを持っている……
『一体、あれにはどんなポケモンが入っているんだ?』



「いいからさっさと出せよ、俺達はのび太を助けるんだからな!」
強気に吠えるジャイアンを、やれやれといった感じで受け流すしずか。

「じゃあ遠慮なく」

しずかがゆっくりとボールを放った。

一瞬の光と共に、そこから現れたポケモンはその黒い巨体を宙に浮かべている。

スネ夫はその正体を知っていた。
「あれは…………闇の旋風……」

「そうよ、XD-001……その名は、ダークルギア」

しずかが無言で手を振る。
その瞬間、黒いルギアが凄まじい衝撃波を発生させた。
「うわああああぁぁぁぁぁっっ!」
「これは、ダークストームっ!」
ダークルギアの一撃でラグラージとランターンは壁に叩き付けられ、瀕死になってしまう。
ジャイアンがガクガクと膝を震わせる。
「一撃、たったの一撃だって……そんな、バカな」
スネ夫が体の砂を払いながら唇を噛み締める。
「ダーク技は通常ポケモンに効果抜群なんだよ……くそっ」
「しかも、このダークルギアはレベル100、ポケモンXDのダークルギアより圧倒的に強いわよ」
その言葉は、スネ夫とジャイアンの戦意を喪失させるのに十分なものだった……



しずかのダークルギアの圧倒的な力。
それはすぐ近くで戦っているダイゴとドラえもんにもショックを与えていた。
「あんなポケモン……反則だよ!」
ドラえもんが絶望の声を上げる。
例えドラミを倒したとしても、あのポケモンに勝てるとは思えない。
「さすがに、手詰まりか……」
ダイゴも肩を落とす。

そんな2人の横を影が横切った。

「……シズカ?」
源しずかが、単身階段を駆け上がっていく。
「私が、私がのび太さんを呼んでくるわ!」
今まで何もできなかったしずか。
だがこの状況に及んで、いてもたってもいられなくなったのだ。
「しずかちゃん、頼むよ!」
ドラえもんもそんなしずかを見て再び気合いを入れ直す。
だが、ドラミがそれを許すはずがない。
ドラミが新たに呼び出したファイヤーと、再び現れたエレキブルが行く手を遮ろうとする。
「行かせないわよ……」
「いや、行かせてやって」
未来のしずかがそう口にする。
『のび太さんが出木杉を倒す姿を、目に焼き付けなさい』
ドラミのポケモンの間を駆け抜けるしずか。

そして、その姿は通路の奥に消えていった。



ポケモンリーグ・チャンピオンの間。


出木杉とのび太の戦いは当初の予想を裏切り、のび太の優位、いや一方的な展開で進んでいた。
のび太がドククラゲに代えて出したポケモンはラプラス。
しかも、しあわせトランプを持つのび太が扱うことによって最悪の化物となる「ねむねご絶対零度」ラプラスである。
ラプラスの絶対零度は「当たりさえすれば」伝説のポケモンといえど、耐えられるものではない。
ルギアを一撃で葬り、返す刀でホウオウをも撃破した。
このまま戦えば、幸運を味方につけたのび太の勝利に終わるだろう。


……だが、運命の車輪は別の方向へと向かいはじめる。


不利を悟った出木杉が、ついに禁断のポケモン・ミュウツーを繰り出した、その時。
「のび太さん、出木杉さん、もうやめて!」
開く扉の音と共に、二人の戦いに割って入った声。

それは二人の少年のいさかいの元であり、出木杉を黒く変えるきっかけを作った……源しずか。

「しずちゃん、無事だったんだね!」
のび太が想い人の健在を確認し、胸をなでおろしている。
だが出木杉は彼女がここにいること自体が信じられない。
「そんな、バカな……君は部屋に拘束していたはずだ!」



あそこのキーは暗証番号になっているので、脱出できるとすれば四天王かマユミのいずれかが裏切ったとしか考えられない。
「裏切り……だと……また君は僕に残酷な現実を見せつけるというのか、源しずかぁぁっ!!」
仮に彼女らが裏切ったとしても、それはしずかの責任ではない。
そんな現実すらも見えなくなった出木杉は絶叫する。
そんな出木杉に必死で呼びかけるしずか。
「違うのっ!それは違うっ!」
「うるさぁいっ!」
いつも理知的な笑みを浮かべていた出木杉の顔は、憤怒の表情でしずかとのび太を睨みつける。
「僕のプライドをズタズタにしたのび太、そしてバカのくせに僕と張り合おうとするのび太……
ボロ雑巾のようにしてやるよぉっっっ!」
出木杉のミュウツーが主人の思念を受け、のび太としずかに向けて手をかざす。
「まさか僕らを直接、攻撃……」
「僕は、僕はお前らのいないこの世界で絶対者となるんだ、排除してやるっっ!」

「いけません、出木杉様っ!」
「なっ、なんだ貴様っ!」

かつての友人に牙を剥こうとする出木杉を押さえたのは……なんと、マユミだった。



「もう止めてください、出木杉……」
「離れろ、離れろマユミっ!」
必死で拘束から逃れようとする出木杉だが、女性とはいえ本気の力で押さえるマユミには敵わない。
「アイツらを……僕のプライドを踏みにじったアイツらを!」
「違うんです。彼女は『我々が捕えたシズカ』ではありません……」
マユミの言葉に、不意に力が抜ける出木杉。
「なん、だって……?」
マユミは、そんな出木杉を優しく抱きながら自分が見たことを話し始めた。


出木杉とのび太が戦いを始めた後、マユミはセキュリティ室で戦況を確認していた。
ここからなら施設全ての状況をチェックできるのだ。
だがマユミが見たものは想像だに出来ない状況、そして真実だった。

監視カメラに残されていたのはイズミを倒すしずかと、付き従う黄色いタヌキ。
そして出木杉が戦っているチャンピオンの間の前での衝撃的な真実。

全てを知ったマユミも、源しずかと同じように二人の少年の戦いを止めるために再びここに帰ってきたのだった。


「そんな……バカな……」
マユミの言葉を聞いたのび太は、思い出したように懐から何かを取り出す。
その巾着の中には、すっかり数が減ったトランプケースが入っていた。



「これは、しあわせトランプ……」
のび太も使ったことがある、ひみつ道具だ。
これの所有者はカードの枚数分だけ幸運を得ることができる。
だが、最後に残ったジョーカーは今までの幸運と同等の不幸を持ち主にもたらす恐ろしいデメリットもあるのだ。
「残ったカードは、3枚……」
後2回の幸運の後に、のび太はすさまじい不幸を身に負うことになる。
ゾッとする事実を確認し、のび太がへなへなと崩れ落ちる。
出木杉が力無く呟く。
「おかしいとは思っていたが、道理であんな戦術が通用するわけだ」
某バトルタワーで一撃必殺技で3タテされた経験もある出木杉、のび太の戦術も何の疑問もなく受け入れてしまっていた。
「だから出木杉、貴方が二人と戦う理由はありませんよ……」
「マユミ……?」

マユミは泣いていた。

マユミは最初こそ、出木杉のもたらす快楽と恐怖に従っていた。
だがマユミには役割上、全ての情報が集まってくる。
彼の狂気の内に隠れた心情も……
そんな情報を見ているうちに、マユミはいつしか出木杉に同情心を抱くようになっていたのだ。
そして、以前の出木杉が友人をとても大切に思っていたことも知っている。



「のび太さん、出木杉さん、もうひとりの私を止めて……」
泣きながら叫ぶしずかを見て、のび太がポケモンを収める。

「出木杉、行こう」

決意を込めた瞳で出木杉を見据えるのび太。
マユミとしずかの話が本当ならば、今ドラえもんと戦っているしずかは未来の妻ということになる。
そのしずかがこんな行動に踏みきったのも、のび太自身が大人になっても不甲斐なかったのが原因の一端だ。
そんなのび太に言われるまでもなく、出木杉もマユミから離れる。
「僕も、やったことの落とし前くらいはつけないとな……」

元から持っていた性癖なのか、それとも特殊環境で精神をやられていたのか。
今となっては分からないが、出木杉は本能のままに行動した。
自分の内面に存在する暗い感情、それは未来のしずかにも同様に存在しているのだろう。
だから自分を利用し、このような謀略に打って出たのだ。

出木杉のような優等生にも、しずかのような優しい少女にも……

人間には、光と影がある。

「僕も、あのしずかちゃんも、それを受け入れ立ち向かわなければならない」

のび太は思う。
未来は常に変わるものだ、とドラえもんは言っていた。
それが今この時なのではないかと……



「行くよ出木杉、しずちゃん!」
のび太としずかはチャンピオンの間の入口に走っていく。

「出木杉、様……」
「様はもういいよ。さっきも付けてなかったじゃないか、マユミさん」
確かに、あまりにも突然の事で敬称を付けるのさえ忘れていた。
マユミさんと呼ばれ、マユミは目頭を押さえる。
そんな出木杉の顔からは以前の凛とした爽やかさが戻っていた。
「これを……」
涙を拭ったマユミが出木杉の手に渡したのはいくつかのモンスターボール。

「これは、貴方が名前を付けた「あのポケモン達」です」

マユミの言葉に、出木杉が目を見開く。
基本的にデフォルトの名前でプレイする出木杉だが、このポケモン達には名前を付けていたのだ。
「そうか、このポケモンを……」
「出木杉、ミュウツーよりもデオキシスよりも、このポケモン達のほうが貴方の力になってくれるはずです」
マユミはボールを抱える出木杉の両手にそっと手をかけると、ニコリと笑った。
「私はずっと、あなたを弟のように見守ってきたわ。頑張ってね」

出木杉がどんな行為を強要しようと、マユミはあえてそれを受けてきた。
彼女を動かしていたのは性の快楽でも恐怖でもない。

そう、それは母性愛だ。



出木杉の背負う悲しみや葛藤を見抜いていたマユミ。
この少年の本質をのび太達より、しずかより分かっていたただ一人の女性なのだ。

「行ってくるよ、マユミさん」
ボールを腰に備え付けた出木杉は、のび太達の後を追おうとマユミに背中を向ける。
そんな出木杉の前に回りこんだマユミは腰をかがめると、そっと唇を合わせた。
「お姉さんからの……勇気の出る、おまじないよ」
「……ありがとう」
出木杉は照れ臭そうに笑うと、マユミの横を駆け抜けていった。

「いってらっしゃい……私の大切な出木杉英才」

マユミはその場に崩れ落ち、そして泣いた。


マユミとしずか。
2人の存在が、野比しずかの計画を失敗に終らせることになった。


そして、のび太は「出木杉とともに」未来のしずかと対面する……