ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ドラーモン作大長編 その7

最終更新:

akakami

- view
メンバー限定 登録/ログイン

注:鬼畜出木杉

森の中
一人の女が走っていた。
特徴的な青い装束はアクア団のものだと分かるが、一般的な形と少し違う。
彼女はアクア団幹部、イズミ。
「まさか子供相手に遅れを取るとは……」
天気研究所で会った二人の子供。
彼らの連携に思わぬ敗北をしてしまい、こうして逃走している。
『次は必ず倒してやる』
イズミはそんな事を考えていた……そう、だから注意力も散漫だったのだ。
ふいにイズミの腰に何かが巻き付く。
「きゃぁっ!」
イズミはそのまま宙に持ち上げられる。
「こ、これは……つるのムチ……」
ホウエン地方ではお目にかからない珍しい技だ。
「野生の、ポケモンじゃ…ないわね」
「ご名答」
ぱちぱちと拍手の音がする。
暗闇から現われたのは10歳くらいの少年と、ムチを出しているモンジャラ。
「子供のいたずらは相手を見てからするものよ、私は……ああうっ!」
イズミの体を締め付ける力が増す。
「その子供に負けてこんなところを逃げ回ってるのは誰なんですか?」
少年が笑う。
「貴様……アクア団の幹部に対して……」
イズミが燃えるような目をして睨み付ける。
そんなイズミを冷ややかに見つめる少年の後ろから一人の少女が現われた。



注:鬼畜出木杉

「出木杉様、お呼びでしょうか」
「ああツツジ、待ってたよ。君も一緒にここにいてくれ」
『ツツジ?行方不明になったカナズミのジムリーダーがなぜ?』
イズミはツツジと出木杉という少年の関係がさっぱり分からず困惑する。

二時間後。

イズミをムチで拘束したまま、出木杉は何もせずにただ座っていた。
ツツジは出木杉の真意が分からず、ただ待っているだけだ。
「そろそろかな」
出木杉が宙に吊られているイズミを見上げる。
「出木杉様、いったい何が……」
ツツジは怪訝そうに質問する。
「このイズミって女は高飛車でプライドが高いんだ」
そう言って笑う出木杉の目は冷たい。
「そう、君と同じタイプなんだよ、ツツジ。こういうタイプには普通に言っても何も聞いてくれない」
そう言うと出木杉はどこからかステンレス製のボールを取り出した。
「だから話を聞いてくれるようにしないと」
出木杉の言葉と手に持つ容器の関係が分からずにツツジは首を傾げる。
「イズミさーん、元気ですかー!」
出木杉が上で縛られているイズミに声をかける。
「わ、わた……しを……、はな…せぇ…」
明らかにイズミの様子が変だ。
その様子を見てツツジも出木杉のやりたいことを理解した。
『出木杉様、容赦ないですわ……素敵……』



注:鬼畜出木杉

出木杉がモンジャラに命令し、イズミを出木杉の前に差し出す。
「苦しそうですね、イズミさん。何かご希望がありましたら遠慮なくおっしゃってください」
イズミは顔を紅潮させながら小さくつぶやく。
「……ィレ…」
「聞こえませんよ」
「…トイレに……」
出木杉がニヤリと笑い、ステンレスのボールを置いた。
「はい、トイレ」
イズミの目が憤怒で染まる。
「ボクの部下になってくれたら拘束を解いてあげるよ」
「そ、そんな取引……んんっ」
イズミの思考力はすっかり低下している。
とにかくこの場を切り抜けたいがために、つい口走ってしまった。
「部下にでも何でもなるからぁっ!」
「だぁめ」
出木杉がイズミのズボンと下着をまとめて勢い良くずり下げた。
「あっあぁぁぁっ!」
極限まで敏感になった部分が外気に触れ、ついに我慢していたものが放物線を描く。
「やぁぁっ、と、とまらないっ、んんんんんーーーっ!」
「はははは、ステンレスってすごい音出すよね」
自らを制御できずにいるイズミ、その目はすでにこの場を見ていない。
「『大人のくせに』こんなところでおしっこしちゃうなんて、だらしないなぁ」

イズミはアクア団本隊と再び合流した。
その心に新たな主人を抱いて……



カナズミシティ。
ドラえもんとしずかはデボン社長にお使いの達成を報告して、デボンコーポレーションを後にした。

トウカシティでのジム戦は二人の圧勝で終わった。
しずかのサーナイト、ドラエモンのヤミラミ&エアームドはすでにセンリのポケモン達を大きく上回っていたのだ。
ハジツゲへの寄り道、物拾いによる不思議なアメの入手。
しずかに関してはスネ夫との戦いによる経験蓄積も大きい。

「がくしゅうそうち、貰っちゃったね」
「それにみんなの分のポケナビもね。これさえあれば皆と連絡が取れるわ」
一休みするためポケモンセンターに寄った二人。
ポケモンを預ける際にジョーイが思い出したように声を上げた。
「ドラエモンさんとシズカさんですね、昼にユニオンルームで待ち合わせしたいとの連絡を受けております」
二人は顔を見合わせる。
「ん?もしかしてのび太くんかな?」
「じゃあどこかの町にいるのかしら!」
時間は昼前、二人はユニオンルームに入室した。

しばらく待つと、転送による光の柱が現れる。
「よう、二人とも元気か!」
二人の前に現れたのは意外な人物。
「じ、ジャイアン!!」
ジャイアンが通信を求めてくるとは意外だ。
「そっちは……カナズミか。俺はヒワマキにいるんだ」



「ヒワマキ……」
しずかがポケナビで地図を見ると、キンセツの川を渡った先の町の様だ。
「剛さん、のび太さんを見なかった?そっちの方にいるはずなんだけど……」
ジャイアンがにやりと笑う。
「ああ、我が心の友のび太くんだろ?お前達への伝言預かってるんだ」
「ジャイアン、のび太くんに会ったのかい!」
ドラえもんの目から涙があふれる。
二度も川に落ちる不運さもアレだが、それでも野垂れ死にしていないのは不幸中の幸いだ。
「のび太はここのジムバッジをゲットして、今キンセツに向かってるはずだ。空を飛んでるからもう着いてるはずだぜ」
ドラえもんはその話を聞いて大泣きに泣いた。
「うおーんおんおん、のび太くんが、のび太くんが…そんなに立派にぃぃぃ~」
「ドラちゃん、良かったわね」
しずかまでもらい泣きしている。
「つーことで確かに伝えたぜ、俺は先に行くからな!」
その時、しずかが重要なことを思い出す。
「確かスネ夫さんがキンセツに向かってるはず……」
それを聞いたドラえもんは顔を青くする。
「そうだ、スネ夫にインネン付けられてなきゃいいけど……」
しかしジャイアンはガハハと笑って答えた。
「ああ、心配するな。のび太がスネ夫ごときに負けるわけねーよ」



ジャイアンの妙な太鼓判に、不安ながらも納得する二人。
何がジャイアンののび太に対する評価を上げたのか、ドラえもんにはさっぱり分からないのだが。
「あ、ジャイアン!これ持っていって!」
ドラえもんが転送システムでジャイアンに道具を転送する。
「んー?なんだこりゃ」
「それはポケナビ。今度からはエントリーコールで連絡を取り合おうよ」
ジャイアンはひとしきり操作の説明を受け、ユニオンルームから消えた。

「ジャイアンはああ言ってたけど……」
「やっぱり心配だわ」
二人は顔を見合わせる。
「のび太くん(さん)だからねぇ…」
二人は急いでカナズミを後にする。


キンセツシティ。
のび太が到着したとき、キンセツではとある噂が持ちきりだった。
「よう、ジョギングマン。生きていたかい!」
のび太に気付いたギタリストのテリーがやってくる。
テリーの話では、キンセツに「露出ボーイ」が現れたらしいのだ。

キンセツ都市伝説
「露出ボーイ」
前から見ても横から見ても同じ髪型をしている少年が下半身全裸で走り回る。
昔、サイクリングロードで自転車を奪われた少年の霊だと言われている

「うーん、そんな変な髪型の奴なんているの?」
のび太の疑問はもっともである。
「さあな、大方アフロヘアーだったなんてオチじゃねえの?じゃあな」



テリーと別れたのび太。

その姿を物陰から見つめるのはスネ夫だった。
「のび太のやつ、相変わらずバカ面しやがって……」
あいつのペットのドラえもんには散々な目にあわされた。
仕返しにもならないが、奴でもいじめてウサ晴らしをしてやろう。
「やい、のび太!」
聞き知った声にのび太が振り向くと、そこには懐かしい友人がいた。
「スネ夫ー!元気だった?」
再会の喜びに駆け寄り、思わず手を取ろうとしたが、そんなのび太を力一杯突き飛ばすスネ夫。
「な、なにするんだよ!」
「今ボクはすごくムシャクシャしてるんだ!のび太、お前と遊んでやるよ」
そんなスネ夫をしげしげと見つめるのび太。
「前から見ても横から見ても同じ髪型……」
スネ夫の肩がビクンと震える。
「まさか、スネ夫が露出ボーイ……なんてことはないよね」
「のび太ァッ!お前コテンパンにしてやるよォォォッ!」
スネ夫の顔が般若のようになり、懐のモンスターボールに手を掛けた。
キンセツのギャラリーがそんな二人を見物に集まる。

後にキンセツ史に語られる事となる「ジョギングマンと露出ボーイ、真昼の決闘」である。



衆人環視の中、二人はポケモンを繰り出した。
「いけ、ヌケニン!」
「頑張れ、ケッキング!」
スネ夫のヌケニンに対してのび太が出したのはケッキング。
「ケッキング、あくびだ!」
ケッキングのあくびがヌケニンの眠気を誘う。
「お、ボクの(もともとはジャイアンのだけど)ナマケロを進化させたんだな、のび太にしては上出来だけど……」
スネ夫のヌケニンは毒毒でケッキングを猛毒に侵す。
「そんな2ターンに1回しか動けない奴なんか恐くないぜ!」
次のターン、動けなくなったケッキングはヌケニンに砂をかけられてしまい、毒で体力を消耗する。
「なんだ、全然たいしたことないな」
余裕のスネ夫。
あくびの効果でヌケニンは眠ってしまったが、どうせ攻撃技は切り裂くか欲しがるが関の山だろう。
しかし、のび太のケッキングが覚えている攻撃技はただひとつ。
「ケッキング、だましうちだ!」
悪タイプ、しかも砂かけの影響を受けないだまし討ちがヌケニンにヒットする。
「な、なにいっ!」
「やった、倒したぞ!」
偶然なのか戦略なのか、とにかくヌケニンを撃破されてしまった。
スネ夫は歯噛みしながら2体目にテッカニンを出す。



ケッキングは動けないので、テッカニンは影分身で回避率を上げる。
「こいつで補助効果積んで全滅させてやるよ!」
加速で素早さが上がる。
「次は剣の舞だ!」
攻撃力まで上昇したテッカニン。
しかしまたもやのび太はスネ夫の想像を覆した。
「ケッキング、アンコール!」
「ええええええ!」
ギャラリー達も唸る。
皆は影分身後の積み技を予測したのび太の戦術に唸ったのだろう。
『いや、きりさくをアンコールして次にジュペッタだすつもりだったんだけど……』
のび太はケッキングを引っ込め、トロピウスを出した。
剣の舞を続けるテッカニンに対して空を飛んで攻撃、またもや一撃で倒してしまった。
「な、なんだこの展開は!のび太のくせに、のび太のくせに!」
スネ夫は怒り狂い、エースのゴルバットを繰り出した。
「あやしいひかりだ!」
ゴルバットの光を見たトロピウスが混乱し、自らを攻撃してしまう。
「ピー助、言うことを聞いてくれよ!」
そんなトロピウスにゴルバットのエアカッターが急所を直撃する。
トロピウスは再び自らを攻撃し、その巨体を沈めた。
「ピー助、ピー助……」
「ほら、さっさと次のポケモンを出せよ!ウスノロ!」
スネ夫の怒りはおさまらない。



のび太が次に出したのはドククラゲだ。
「のび太、色違いなんてお前にはもったいないな」
スネ夫がせせら笑う。
ドククラゲの素早さは早いが、ゴルバットを倒せる技は持っていない。
「ほら、何でもこいよ!まきつくのか?ようかいえきか?」
挑発するスネ夫にのび太が叫んだ。
「れいとうビーム!」
冷気の光線を受け、ゴルバットが凍り付く。
「ジャイアンから貰ったれいとうビームの技マシンを使ったんだ!」
「ぐぐ……ジャイアンの奴め、余計なことを!」
スネ夫の手持ちはジュカイン、マルノーム、そしてキノココ。
弱点を突かれずに戦えるのは皮肉にものび太から奪ったマルノームだけだった。
「マルノーム、お前の元主人をぎゃふんと言わせてやれ!」
冷凍ビームを耐えてのしかかり、マヒさせることに期待するしかない。
しかしのび太の偶然はスネ夫の期待を打ちのめした。
「そうだ、確かジュペッタに技マシンでサイコキネシスを覚えさせたんだっけ!」
渾身ののしかかりはジュペッタには効果がなかった……

結局終わってみればのび太の圧勝。
「ちきしょー、覚えてろよのび太!」
スネ夫は小悪党の捨て台詞を残して去っていく。
その目にはのび太に対する怒りとは別のものが秘められていた。
「ジャイアンめ、目の前にいなくてもボクの邪魔をするのか……許せない!」



サファリゾーン。
ジャイアンは草むらで必死の捜索をしていた。

冷凍ビームを持つラグラージ、火炎放射を覚えたバクーダ。
この2体のおかげで苦もなくヒワマキのジムリーダー・ナギを倒したジャイアンはサファリゾーンに来た。
ここにはある用事があったからである。

「はぁはぁ、なんで捕まんねーんだよ……」
これで四回目の挑戦、かれこれ100個以上サファリボールを投げていることになる。
「くそっ、手強い奴だぜ。そういやゲームでもなかなか捕まらなかったっけ」
そう思い返すジャイアンの前に新たなポケモンが現れた。
「へへ…いやがったな」
大きな角、青光りする硬い外殻。
男の子の夢、甲虫王者ム…ヘラクロスである。
「おーりゃー!」
ジャイアンはサファリボールを投げるが、ヘラクロスはすぐボールから出てしまう。
「このっ!このっ!」
何度も何度も挑戦するが捕まらない。
そしてヘラクロスは去り、ジャイアンは21度目の捕獲失敗を喫した。

「ああ捕まんねえ!どうなってんだよ全く!」
休憩所でイライラしているジャイアンに他の客も生きた心地がしない。
彼は毎回ここに現れ、辺りの物に当たり散らして帰っていくのだ。
たまらずに一人の男がジャイアンにアドバイスする。「あのー、もっと近づいてボールを投げれば……」
その言葉にジャイアンはポンと手を叩く。
「そうだった、近づけばよかったんだ!」



『こんだけ挑戦してて知らなかったのかよ!』
休憩所の利用者達は呆れながらも揃って胸を撫で下ろした。

ジャイアンは再び辺りの捜索を始めた。
「やべえな、残り歩数が少ないはずだ……こうなったら!」
ジャイアンはその場で目まぐるしく動きだした。
歩数節約の方向転換、端から見ればかなり異様な動きだ。
「うおおおおおっ!」
ジャイアンの動きがさらに素早くなってくる。
右後左右左前右前後左前……まるでファミコンの隠しコマンドを打ち込む指のようにジャイアンは動く!
「!…出たか!」
そのヘラクロスは今までで最も立派な角の個体だった。
ジャイアンはふらふらしながらそのヘラクロスと対峙する。
『近づく、近づく……』
本来は気付かれないように徐々に間合いを詰めなければならないのだろうが、生憎ジャイアンにそんな器用な事はできない。
「とにかく近づけばいいんだろ!」
ジャイアンは一気に間合いを詰める。
ヘラクロスはそんなジャイアンに驚いて思わず頭を下げた。
その角は突進してくるジャイアンの腹にめりこむ。
「はうっ!……か、カウンター」
ジャイアンは薄れゆく意識のなか、ヘラクロスにサファリボールを叩きつけた。
意識を失ったジャイアンのそばでヘラクロスを収めたボールの動きが止まる。
そしてサファリゾーンのアナウンスが挑戦終了を告げたのだった。



デコボコ山道。

出木杉、ツツジ、アスナの3人はとある岩山の傍にいた。
「出木杉様はこんなところに何の用があるのかしら?」
「知らないよ。けど出木杉様がこんな場所にただ遊びにくるとは思えないし」
そんな二人の会話を遮るように出木杉のポケナビが鳴る。
「ああ、イズミさん。……そうですか、わかりました。引き続き監視をお願いします」
ポケナビを切ると、岩山をジロジロと見て歩く。
「確かここらへんに……あったあった!」
出木杉が何やら印象のようなものをかざすと、岩山が割れて大きな穴が現れた。
「な、なんなの…これ」
「出木杉様、これは一体……」
驚く二人に出木杉が説明する。。
「ここはあのマグマ団のアジトだよ」
そう、比較的目立ちやすい場所にあるアクア団アジトと違い、マグマ団アジトの場所を知る人は少ない。
「さっきイズミから連絡があってね、彼らのボスはおくりびやまにいるそうだよ」
そう、出木杉は知っていた。
おくりびやまで二つの集団があるものを強奪しようとしていることを。
「となると、次はここでフラグを立てることになるんだが……それは僕がやろうと思ってね」



何を言っているか分からないが、とにかくすごい事なのだろう。
言いようのない神秘性を感じたツツジとアスナは、うっとりとした目で出木杉を見つめる。
「じゃあ用意したアレを出してください」
ツツジとアスナは十数個のモンスターボールを放り投げた。
現われたのはゴローンの大群。
出木杉に促されて次々と洞窟に消えていく。
「そんなことしたら感付かれてしまいますわ!」
心配したツツジが訴える。
しかし出木杉は中止しようともしない。
「ツツジ、このアジトには事もあろうに野生のゴローンが徘徊してるんだよ」
出木杉はにやにやと笑いながらインカムを付ける。
このインカムで受信機を付けたゴローン達に遠隔でも命令が可能だ。
「バカな組織だよねぇ。アジトの中に味方以外のポケモンを野放しにしているんだから」
出木杉がゆっくりと息を吸い込む。
ツツジとアスナは次に発せられる言葉を想像して身震いした。
「……だいばくはつ」
中で凄まじい衝撃音が響き、入り口から砂煙が吹き出した。
「これで帰るところがなくなったマツブサは『あそこ』に行くしかない。アオギリの奴はイズミが連れてくるだろう」



キンセツシティ。
ドラえもんとしずかはのび太のいるこの町に到着していた。
早速ポケモンセンターに向かいのび太の呼び出しを頼んだが……
「ノビタ様はこちらにはいらっしゃいませんね」
二人は心配そうに顔を見合わせる。
そんな二人に受付が思い出したように何かを探し始める。
「確か……ああ、ありました。お二人に伝言を預かっております」
「伝言だって?」
ドラえもんが驚いたのは伝言があることではない。
のび太に伝言を残すような要領の良さがあったことに驚いたのだ。
『本当にあののび太くんが?』
そんな疑問を尻目に受付が伝言を読む。
「夕方に帰る、待っててくれ。だそうです」
二人は不安だったが、とりあえず夕方まで待ってみることにした。

夕方。
センターの前で待っていると、のび太がトロピウスに乗って空から降りてきた。
「ドラえも~~ん!」
手を振るのび太に二人も応える。
「のび太くん!」
「のび太さ~~ん!」
のび太はトロピウスから飛び降りると、ドラえもんに抱きついて泣き始めた。
「うう、ドラえもん会いたかったよ……」
「よしよし、のび太くんはよく頑張ったよ」
伝言を残した要領の良さとはうって変わったのび太の様子に、ドラえもんは何となくほっとした。



センター内で3人は今までの経緯を語り合う。
「それにしても、またのび太くんがいなくなってたから心配したよ」
ドラえもんがため息を吐く。
「いったいどこにいっていたの?」
「それはねしずちゃん、トウカシティでジム戦をやっていたのさ」
「ジム戦?」
ドラえもんとしずかは顔を見合わせる。
「ほら、ここから先は波乗りの秘伝も必要になると思って取りに行ってたんだ。空を飛ぶじゃ行った町にしかいけないしね」
のび太はキンセツのテッセンからジムバッジを受け取ると、コトキタウンを経由してトウカへ行ったのだ。
「これでボクも二人と一緒に旅ができるよ!」
ドラえもんが思わず涙を流す。
「のび太くん、本当に立派になって……」
こうして3人は再会を果たし、翌日キンセツシティを旅立っていった。

119番道路。
スネ夫は朝から釣りを続けていた。
ポイントを変えながら何度も何度もチャレンジしているが、目当てのモノはちっとも釣れない。
「おっ、引いてる!」
スネ夫が竿を上げると糸の先にはまたもやキバニアが。
「くそ、ヒンバスが釣れるまで諦めないぞ!」



翌日。
あっさりヒンバス釣りを諦めたスネ夫はヒワマキシティで心地よい朝を迎えた。

「さて、やってみるか」
この町にきたスネ夫はひとつやってみたい事があった。
それはこの町で入手できるある技マシンだ。
「ジュカインはイマイチ技のタイプにバリエーションが少ないからな」
今の技はリーフブレード、高速移動、追い打ち、電光石火。
正直戦闘力が心許ないのだ。
「この目覚めるパワーを使ってみて、いいタイプの技が出ればいいんだけど……」
できれば特攻の高さを生かせる炎か電気あたりが出れば御の字だ。
早速ジュカインに使用してみる。

「めざパドラゴン……」

特攻は生かせるがあまりにも使えない。
スネ夫はガックリと肩を落とした。

ヒワマキジム。
ここのジムリーダー・ナギは飛行タイプの使い手。
草と虫タイプ主体のスネ夫にはいささか分が悪い。
「とりあえずゴルバットとマルノームでやるしかない……」
「どうしました?戦いの前に考え事かしら」
ナギがにこやかに語りかけてくる。
「やるしかない、やるしかないさ」
スネ夫はモンスターボールを構える。



「いきなさい、チルット!」
「ゴルバット、捻り潰せ!」
二人はポケモンを繰り出す。先攻はもちろんゴルバットだ。
「かみつく!」
ゴルバットがチルットに噛み付くが倒すには至らない。
「チルット、しんぴのまもりよ!」
「ちっ、チルットは捨て駒かよ」
スネ夫は舌打ちする。
「戦術、といっていただきたいわね」
ゴルバットに噛み付かれて戦闘不能になったチルットに代わり、ナギはトロピウスを繰り出す。
「ふ、ふん!そんなポケモンなんか恐くないさ!」
スネ夫がエアカッターを命令する。
風の刃がトロピウスを引き裂くが、なんとか耐えきった。
「勝負を急いでいるようですね」
正直、トロピウスでは分が悪いがナギは顔色を変えない。
「トロピウス、あまいかおりを!」
「ふん、もう一発エアカッターが当たれば終わりだよ」
スネ夫の言う通り、次のターンのエアカッターがトロピウスに止めを刺した。
「これで2体目、やっぱボクって強いな!」
そんなスネ夫にナギが語りかける。
「ポケモンバトルとはそんなに単純なものではありませんよ。レベル差をトレーナーの力で埋めることだってできるのですから……」



「次はこのポケモンです!」
ナギが出したのはペリッパー。
「ふん、またやっつけてやるよ!」
ゴルバットのエアカッターがペリッパーに命中する。
「ペリッパー、ちょうおんぱ!」
超音波がゴルバットを混乱させ、自らにダメージを与えてしまう。
「し、しまった!」
その間にいい傷薬でペリッパーの体力を回復させるナギ。
「ふん、そんな悪あがきを……」
混乱しているゴルバットだが、今の状況ならさして心配することはないだろう。
スネ夫は引き続きエアカッターを命令する。
「まもりなさい!」
運よくペリッパーのほうに放てたエアカッターも完全に防がれてしまった。
次のターンに自らを攻撃したゴルバットは、ペリッパーの翼で打たれてやられてしまう。
「そ、そんな……ゴルバットが」
「油断と満身があなたを敗北させたのですよ」
スネ夫はのび太との戦いを思い返す。
自分はグズだったのび太の成長ぶりに焦り、憤慨して我を忘れてしまった。
状態異常ポケモンの使い手としてこれは致命的だ。
「そうか、わかったよ。ボクがあいつらに負けたワケが……」
スネ夫の顔を見てナギがにっこりと微笑んだ。



その後、スネ夫は苦戦するもなんとか勝利した。
(チルタリスに対してジュカインのめざパドラゴンが役に立ったことはスネ夫の計算外だったが)

ジムバッジを得てスネ夫は手持ちのポケモンを見つめる。
「対ジャイアンに特化しすぎちゃってたかな。ちょっと考えないと……」
スネ夫は自分の攻略ノートを見つめる。
草タイプ2体、虫タイプ2体、毒タイプ2体ではあまりにもバランスが悪すぎる。
この近辺でゲットできる有用な戦力は……
アブソルは出現率が低いので狙うのは得策ではない。
比較的ゲットしやすくて、即戦力になるポケモン。
「ん、こいつなら……」
コイツをゲットして、ヒワマキで……
スネ夫の脳がフル回転し、決断を下す。
「よし、まずはコイツをゲットしてやる」
スネ夫はいい釣り竿を持って120番道路に向かった。



木の実爺さんの家。
のび太達一行はここで一時の休息をしていた。
「やっぱりのび太くんは強いね」
「そりゃ僕はこの先の町からやってきたからさ!」
のび太は自慢げに語る。
「それよりもしずちゃんのマッスグマ達もすごいよ、あんなにたくさん道具を拾ってくるんだから」
のび太も旅中ではしずかのアイテムの力を借りている。
ふと疑問に思ったドラえもんはのび太に質問する。
「そういえばのび太くん、一個モンスターボール使ってないよね」
のび太は指摘されたボールを取り出す。
「これね、全然使えないポケモンなんだ」
ボールから出てきたのはヒンバス、みじめに床を跳ね回っている。
「こ、これは……なんか汚いね」
「まるでのび太さんみt……」
しずかがとんでもない毒を吐いたような気がしたが、のび太は気にせず続ける。
「ちょっとは使ってみたんだけど、全然技を覚えなくて……」
「……のび太さん、このポケモン私にくれない?」
しずかの提案にのび太は戸惑う。
こんな汚いポケモンをなぜしずかは欲しがるのだろう?
さっぱり分からないが、とりあえずマッスグマの内一匹と交換することにする。
しずかはぶつぶつと「うつく……上げれ……ロスね」などと呟いていた。



ミナモシティ。
ジャイアンはこの町の片隅で隠れるように行動していた。

町に着いたジャイアンを待っていたのは手荒い歓迎だった。
「あのガキ、確か手配リストにあった……」
「そうだ、天気研究所の……」
町をぶらついていたアクア団員達に発見され、ジャイアンは追われる身となってしまう。
ミナモシティはアクア団のアジトがあることで有名な町だったのである。

「このままじゃやべえな……」
ミナモデパートの中で途方に暮れるジャイアン。
ゲームでは手持ちだけで余裕でアジトを潰せるだろうが、天気研究所のような事になってはマズい。
「誰か他の奴が来るまで待つわけにも行かないし……」
「剛田君、剛田君じゃないか!」
名前を呼ばれ不意に振り向くと、そこには見知った顔が立っていた。
「お前…出木杉じゃんか!」
出木杉はにこにことしながら再会の喜びを讃えあう。
「それにしてもお前がこんなところまで来ていたなんてな」
「ああ、カイナシティで潜水艦が奪われたんでここまでやってきたんだよ」
『そういえばそんなイベントがあったな』
出木杉はちゃんとゲームのシナリオのままに進めているようだ。



ジャイアンは今までの経緯をかくかくしかじかと説明する。
「……というわけで困ってたんだよ」
出木杉は少し考え込み、口を開いた。
「じゃあ、僕らでアクア団をやっつけよう!」
「でも出木杉、お前強いのか?」
その質問に出木杉は自らのモンスターボールを投げる。
「バシャーモ、フーディン、スターミー、それにピカチュウか……すげえな、お前!」
『お前のようなフルアタ馬鹿に分かるように編成したんだよ』
出木杉は心でそう思いながらポケモンをボールに戻す。
「よし、じゃあアクア団をぶっ飛ばしてやろうぜ!」
ガハハと笑いながら階段を下りていくジャイアン。
その様子を見ている出木杉のそばにイズミが現れた。
「あのガキ、調子にのって……」
「イズミさん、あの馬鹿に対する怒りは分かりますが、計画を忘れないように……」
冷水のような出木杉の言葉にイズミは思わず跪く。
「期待してますよ」
出木杉がイズミの額に唇を触れる。
イズミは顔を赤らめながら去っていった。
「まったく、プライドが無くなっても女は女だな」
出木杉はジャイアンの後を追った。



アクア団アジト。
「以外と攻めにくい場所にあるもんだな」
入り口が波乗りでしか入れないため侵入が難しい地形になっているのだ。
そう感心しているジャイアンの前を先行する出木杉が合図する。
『おっとと』
出木杉の指示は完璧で、敵の巡回ルートも完全に把握していた。
「すげえな出木杉!」
「結構やりこんだからね。けどここからは戦闘は避けられない。敵を瞬殺するつもりでいくよ」
二人は物陰から躍り出た。
気付いたアクア団員がサメハダーとグラエナを繰り出す。
「かみなりパンチ!」
出木杉のフーディンが矢のように飛び出し、サメハダーをパンチ一発で沈める。
「負けてられっか、バクーダ!かえんほうしゃっ!」
バクーダの吐く火炎がグラエナを焼く。
「どうだ、出木杉!…って」
ジャイアンは呆然とした。
このポケモン達の持ち主であるアクア団員が泡を吹いて倒れているのだ。
「バトルは終わったからね。ちょっと気絶してもらったよ」
「かみなりパンチかよ……すげえなそのフーディン」
「ああ、かなり鍛えてあるからね」
『ん?フーディンはかみなりパンチなんて覚えたっけ?』
ジャイアンの疑問をよそに、二人は次の部屋に向かった。



岐路で出木杉が提案する。
「とりあえず多数が侵入したと見せ掛けるように二手に別れよう」
「おうよ、じゃあ後で合流な!」
ジャイアンは奥の方に走っていく。

「さて、ボクも行動を開始しないと」
出木杉はジャイアンの向かった方向と逆に足を進める。

「なかなか手強いな……」
ジャイアンは巨大な機械のある部屋でアクア団員と睨み合いを続けていた。
ラグラージが濁流でズバットを押し流す。
「よし、これで最後だ!」
濁流に押し流され、アクア団員が貯水池に落とされる。
「ん……あれが潜水艦か!」
潜水艦の発着デッキでは出木杉がアクア団員と戦っている。
その間に潜水艦は徐々にその姿を沈めていった……

アジトの外。
「ちくしょう、逃がしちまった」
「剛田君、ここで逃げられてしまうのはゲームと同じじゃないか」
そういえばそうだ。
「なーんだ、安心した…」
安堵の言葉を述べるジャイアンの背後で爆発音がした。
アクア団アジトの岩山は数度の爆発音の後、入り口から砂煙が吹き出す。
「お、おい、こんなのゲームじゃ…なかったはず……」
『イズミがやってくれたようだ。そして僕の手の中には……』
出木杉の手にはマスターボールが握られていた。



ヒワマキシティ。
ヒワマキジムでのジム戦を終えたドラえもんとしずかは、のび太やナギも含めて四人で食事を取っていた。
「それにしても、シズカさんは強いわね」
ナギが感心する。
マッスグマ達のおかげで有り余る資金力を持っていたしずかはサーナイトに10万ボルト、マリルリに冷凍ビームを覚えさせていたのだ。
おかげで飛行タイプ対策は完璧、ジム戦も簡単に勝利することができた。
「ドラえもんさん、でしたか?貴方も強力なポケモンを持ってらっしゃったわね」
「いやぁ、えへへ」
ドラえもんはジム戦の前に120番道路でエアームドを育成中になんとアブソルをゲットしている。
ジム戦で勝利した際に得た燕返しの技マシンを使用して技にバリエーションを持たせてもみた。
「さて、今からどうしよう」
のび太の提案に皆が考え込む。
「ここからミナモの間だとサファリゾーンやおくりびやまがあるわね」
「じゃあ順番に回っていこうか。急ぐ旅でもなし」
ドラえもんの決定に皆が頷く。

「じゃあ行ってきます、ナギさん」
「頑張ってね、ノビタくん」
ナギはノビタの頭をそっと抱き寄せた。

そんなナギに黒い影が忍び寄っていることを皆は知らない。



注:鬼畜出木杉

ヒワマキジム。
のび太達を見送ったナギは一人の少年の訪問を受けていた。
「……以上がこのヒワマキジムでのジム戦ルールです」
ナギが一通り説明すると、少年は手を挙げる。
「質問ですが、ジムリーダー側からの棄権はないんですよね?」
その質問の意図が分からないが、とりあえずナギは答える。
「ええ、体調管理もトレーナーの務めですから、故意に傷つけられでもしない限りは……」
その質問を聞いて少年が手を差し伸べる。
「では、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします、えっと……デキスギさん」

二人は対面し、軽く一礼をするとポケモンを繰り出した。
「いきなさい、チルット!」
チルットを出したナギに対し、出木杉が出したのは……
「か、カビゴンですって……」
ホウエンには生息しないポケモンにナギが驚く。
『この子、カビゴンを持っているなんて……いったいどうやって?』
チルットの乱れ突きが炸裂するが、ほとんどダメージが通らない。
しかもカビゴンは丸くなり、さらに防御力を上げた。
「このカビゴン、強すぎる!」
しかもカビゴンは食べ残しを口に入れ、体力は完全回復してしまった。



注:鬼畜出木杉

出木杉が説明する。
「このカビゴン、レベルは高いんですが攻撃技は持ってないんですよ。戦いは長引きそうですね」
ナギは困惑する。
攻撃技を持たないポケモンでどうやって勝つというのだろう?
『相手のペースに惑わされてはいけないわ、できることをしなければ……』
ナギはチルットに歌わせ、カビゴンを眠らせる。
その間に少しでもダメージを蓄積させておこうとしたのだ。
だがカビゴンの持つ食べ残しの効果でまるで意味がない。
「あ、あなた!このようなふざけた戦い方など……ひっ!」
ナギの抗議相手である出木杉は一人の女性の胸に顔を埋めている。
「バトル中に、な、何をしているのです!」
出木杉は面倒そうに答える。
「だって、ん…時間かかりそうでしょ。これくらいいいだろ」
胸を差し出す女も答える。
「ナギ、別にいいでしょ?戦いを放棄したわけじゃないんだか、んああっ!」
出木杉の愛撫に敏感に反応した女性、ナギはその顔に見覚えがあった。
「あ、アスナ、さん……貴女いったい……」
アスナはその問いに答えず、ただ出木杉に身を委ねている。
「とにかく、今すぐそんな事はやめなさい!」
「けど戦闘中に女性の胸を揉んではいけないというルールはなかったですよね」



注:鬼畜出木杉

臆面もなくそんな屁理屈を言ってのける出木杉にナギは恐怖した。
『この子おかしい、何かおかしいわ!』
逃げようとするナギに出木杉が釘を刺す。
「まさかジムリーダーたるものが戦いを放棄するなんて事はないですよね」
ナギの足が止まる。確かに彼の破廉恥行為以外は普通のバトルだ。
相手のトレーナーに手を出したわけでもない。
「バトル自体は普通にするんですから、それから逃げるなんて事はあっちゃいけないですよねぇ」
「そ、そうだけど……」
そうか、そのために最初の質問をしたのか。
ナギにそれが分かっても、すでに遅かった。

ナギのチルットは悪あがきで自らが倒れるまで懸命に戦った。
その間、ナギはアスナの絶頂の叫びを4度も聞いている。
『やめて、やめて、そんな事は……』
目の前の出来事にすっかり現実感をなくしたナギは、それでも2体目のトロピウスを繰り出す。
「まだ2体目……」
そう、ナギは全ての手持ちが悪あがきで自滅するまであの二人の情事を見せ付けられるのだ。
「え、二人……じゃない……」
そう、出木杉の股の間にもう一人。
「つ、ツツジさん……いやあああああっ!」



注:鬼畜出木杉

それから数時間。
出木杉の体を二人の女性がただ悦ばせる。
カビゴンは技ポイントが尽きる寸前に次のカビゴンに入れ替えられ、ナギのポケモンは一度も攻撃を受けることがなかった。

「あ、ああっ、私、私……バトル中、なのに…んんっ!」
ナギは知らず知らずのうちに自らの胸元に手を差し入れていた。
アスナが荒い息を突きながら声をかける。
「ナギ、もう我慢できないんでしょ?私たちのところに来なさいよ……」
ナギは自分がいる場所が現実か夢か、そんなことすら分からなくなっていた。
ただわかるのは、自らの胸を自分で慰めていることだけ。
「いらっしゃい」
ツツジの声にふらふらと立ち上がるナギ。
『私、もう……』
魂の抜けたようなナギの胸に出木杉が顔を埋める。
「いっしょに、いこうか……」
自分だけでは得られないその快感にナギは身を委ねた。

その日からヒワマキの空を飛ぶナギは見られなくなった。



送り火山。
のび太達はしずかにせがまれてこの山にやってきた。
「確かここって幽霊が出るんだったよね……」
のび太はガクガクと震えながらドラえもんの後を付いて回っている。
『ジュペッタを手持ちにしてるのに、なんでビビッてんだろ?』
ドラえもんはそう思いながらも、久しぶりにのび太に頼られてまんざらでもなかった。
「あっちよ、あっちだわ!」
しずかが光の差すほうを指差す。

「やっと行きやがったか、あいつら。3人揃ってうだうだと……」
スネ夫はひとり、ここで捜し物をしていた。
「うーん、ジャイアンに取られてなけりゃいいけど……」
そんなスネ夫の前にヨマワルが現れる。
「ちっ、またかよ。ゴルバット!」
ゴルバットが現れ、怪しい光で混乱させる。
ヨマワルは自らとゴルバットの攻撃を受け、掻き消えるように消えてしまった。
「ちっ、ゴーストタイプだからゲットすりゃよかったかな?」
残念がるスネ夫の前でゴルバットの様子が変わっていく。
「こ……これは、まさか!」
光とともに現われたのは4枚羽のコウモリ、クロバットだ。
「や、やった!ついに進化したぞっ!」
スネ夫は喜び勇んでさらに奥に踏み入っていった。




送り火山、外観。
しずかは草むらに分け入って何かを探している。
「なかなか見つからないわね……ドラちゃん、のび太さん、手伝っ…」

「ああ、なんだか癒されるね。ドラえもん」
「うん、癒されるね。のび太くん」
二人は野生のチリーンの前で骨抜きになっている。

「仕方ないわね、私だけで探しましょ」
しずかは草むらのさらに奥に分け入る。
「ん、あれね!」
草むらから赤い尻尾が出ている。
「行きなさい、マッスグマ!」
その声に驚いた赤い尻尾の持ち主が姿を現す。
「やっぱりかわいいわ、ロコンちゃん……マッスグマ、ほしがる!」
マッスグマは最弱の攻撃でロコンを攻撃する。
レベルの差もあり、ロコンはその一撃で体力を大きく削る。
「ごめんなさいね、ハイパーボール!」
しずかの投げたボールがロコンを捕らえる。
「やったわ、ロコンちゃんゲットよ!見て、のび太さん!」
振り向くと、相変わらず二人はチリーンに癒されていた。

「しずちゃんはロコン、ドラえもんはチリーンかぁ」
送り火山でゲットした二人をのび太は羨ましそうに見ている。
そんなのび太を尻目に、しずかはロコンに飴を食べさせ、ドラえもんはただ癒されていた。

記事メニュー
目安箱バナー