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ポケモンリーグの中に入った瞬間、みんな口をポカンと開けて立ち尽くしていた。
本来、小さい部屋がいくつも続いていたポケモンリーグ、それが今では大きな一つの部屋に統一されていたのである。
僕たちが通う小学校の運動場より広い部屋だ、驚くのも無理はない。
しかも部屋の両端には豪華な装飾が施されている階段があり、二つの階段はどちらも上にある20畳ほどの広間に続いている。
「それにしても、静かだね。信者も全くいないみたいだし・・・」
のび太の言う通り、この部屋にはいま僕たち以外の人間は1人もいないようだ。

「じゃあ俺たち、もうこの戦いに勝ったのか?」
「いや、それは違うよ。今から始まるんだ、最後の敵との戦いが・・・」
ジャイアンの言葉に僕が反論する。
「なんだって? じゃあ誰なんだ、その最後の敵って言うのは。」
「勿論・・・信者を従え、あのスネ夫君の事件の犯人で、僕に成りすましてのびた君の前に現れた人物のことさ。
そして今その人物は、この部屋の中にいる!」
衝撃的な僕の一言でみんなが騒ぎ出した。
「一体誰なの、そんなことをした人は・・・」
静香が恐る恐る聞いてきた。
もう覚悟は決めたんだ・・・僕はゆっくりと腕を上げ、人差し指を目の前にいる1人の人物に突きつけた。
「裏切り者は・・・君だったんだよ!」
僕の人差し指の先には、未来からやってきた猫型ロボットの姿があった。



僕の言葉を受けてすぐ、ドラえもんが反論してきた。
「どう言うことだよ出木杉君! まさか僕が秘密道具を使えるから、それだけの理由じゃないだろうね。」
「その通り。今から僕が説明するから、みんなには落ち着いて聞いて欲しい。」
みんなが緊張した面持ちで黙り込むのを確認すると、僕は語り始めた。
「さっき言ったこととちょっと矛盾しているかもしれないけど、やっぱり裏切り者を決めた最大の理由は、彼がいつでも秘密道具を扱える点にあるんだ。」
ここで何か反論があるかも知れないと思ったけど、だれも喋ろうとはしなかった。
みんなかなり緊張しているようだ・・・僕は再び話を続けた。

「じゃあ最初に、裏切り者がどうやって信者を味方につけたかを説明しよう。
じつは数週間前に、ちょっとした事件があったんだ・・・ヤマブキシティの警察署の資料室からあるテープが盗まれたんだ。」
「そのテープ、内容は一体何だったの?」
以外にも最初に口を開いたのを静香だった、僕は冷静に続きを語る。
「そのテープにはかつてのロケット団ボス、サカキの演説が録音されていたんだ。」
“サカキ”その名前を聞いた瞬間、全員の顔が一瞬強張った。
「勿論犯人裏切り者。通り抜けフープなんかを使えば簡単だっただろう。
で、何故こんなものを犯人が盗んだかと言うと・・・ドラえもん、ちょっとポケットを拝借するよ。」
僕はドラえもんのポケットを借りると、中から一つの怪しげな機械を取り出した
「これは声紋キャンディ(僕が名付けた)といって、マイクに声を吹き込むとキャンディが作られ、これを舐めるとしばらくの間舐めた人の声は吹き込んだ人物の声と同じになる。
そしてこれは機械に録音された声・・・そう、テープの音声でもキャンディを作ることが出来るんだ。」
「裏切り者はこれを使ってサカキの声のキャンディを作ったってことね。 でもなんでそんなことを?」
「信者たちのサカキへの忠誠心は絶対的なものだった。
それを利用しようと考えた裏切り者はキャンディを使ってテープを作ったんだ、ロケット団の次のボスを裏切り者にするという遺言テープをね・・・」
そう、犯人は僕たちだけでなく信者をも騙していたのだ、その姑息な手段によって・・・



「これで信者が裏切り者に加担した理由は説明できただろう、さあどうだい?
そろそろ自分が裏切り者だと自白する気になったかい?」
僕の問いに、のび太が横から口を挟んだ。
「確かに出木杉は信者が裏切り者に従った理由を見事に証明したよ。
でもいまのはドラえもんが裏切り者だという証拠にはならない! 君がさっき説明したことは、秘密道具を盗み出せば僕たちにだって出来るはずだ!」
「のび太君、僕はドラえもんが裏切り者だなんて一言も言っていないよ。」
「え、どういうこと?」
僕の予想外の言葉にのびたが驚く。
―――遂にこの時が来たのか・・・みんなには、特にのび太には残酷な事実を明かすときが・・・

「ドラえもんが裏切り者であるわけがないんだ、今からそれを証明してあげるよ・・・」
そういった次の瞬間、僕は懐からナイフを取り出すと、間髪いれずにドラえもんの懐にそれを突き刺した。
あまりにも一瞬の出来事だった・・・だれも僕を止めることはできなかった。
「で、でででで出木杉!お、お前・・・・・・ん?」
最初に異変に気付いたのはジャイアンだった。
ナイフで刺されたドラえもんの体、突然液体のようにドロドロと溶け始める。
だれもがその摩訶不思議な光景を呆然と眺めていた、そして変化を終えたドラえもんの体は、ピンク色の小さな生物に変わっていた。
「これは・・・メタモン?」
のび太が呟いた通り、その生物は名をメタモンというポケモンの一種だ。
そしてメタモンの得意技は“変身”・・・つまり先程までのドラえもんはメタモンが化けていた偽者だったのだ。
「ドラえもんはメタモンだった・・・なら本物は何処にいるんだよ!」
「本物はもうこの世に存在しない・・・このメタモンの持ち主、裏切り者に殺されたのさ。」
「そんな・・・でも、裏切り者はドラちゃんでもないし、私たちでもない・・・なら一体誰なの?」
「裏切り者の正体は・・・・・・


               僕たちと一緒にこの世界に来た仲間、骨川スネ夫だ。」



スネ夫・・・その名前が出た瞬間場が凍りついた。
だが早速その凍りついた場は、ジャイアンの大声でかき消された。
「何言ってるんだよ出木杉!スネ夫はもう死んだんだ・・・お前はあいつの死体を見たじゃないか!」
ジャイアンは・・・いや、他の二人も信じられないようだ、無理もないだろう。
僕だって最初にこのことに気付いたときはなかなか信じることが出来なかったんだから。
「君たちは不自然だと思わないのかい?メタモンだったドラえもんが僕たちと会話を交していたことを。」
「確かにそうね・・・一体何故か教えてくれない?」静香が問う。
「言われなくてもするさ・・・ここで先程出てきたこの道具、声紋キャンディに再登場してもらおう。
裏切り者・・・いや、スネ夫君はドラえもんの声を収めたテープも用意してキャンディを作ったんだ。
そして彼を殺害した後、メタモンを彼に化けさせる。そして“透明マント”という道具を使って常にその背後に立ち、喋れないメタモンの変わりにこのキャンディを使ってドラえもんの声で喋っていたんだ。
ドラえもんは機械音声だから、直接彼の口から言葉が発せられていないことに気付きにくかったのさ。」
「なるほど・・・でも、スネ夫は死んだはずじゃあ?」
「あの死体もメタモンによるフェイクさ、その証拠にあの死体はヤマブキへの輸送途中に消えているんだ。
死体を調べられたら困るから回収したんだろうね・・・ああ、ちなみにのび太君が見た僕もメタモンだよ。」
「何てことなの・・・ なぜ、スネ夫さんはこんなことを?」
「僕には分からない、でもそれは彼の口から聞けるんじゃないかな?
もうこれ以上隠し通すのは無駄だよ・・・教えてくれないかい、スネ夫君。」
僕がそう言うと、突然何もない空間からマントが宙に放たれ、死んだはずだったスネ夫が現れた。
「まさかここまでの天才だったとは・・・出木杉、どうやら僕は君を見くびっていたようだ。
いいよ、教えてあげよう。全てをね・・・・・・」



スネ夫は冷静に・・・いや、冷酷に語り始めた。
「全ての始まりは・・・そう、あのゲームセンターの事件さ。
あの事件で僕は信者と戦った。そこで僕が闘った男・・・彼は大して強くはなかったが、衝撃的な一言を聞かしてくれた・・・
“自分くらいの力を持った信者は500人以上いる、それらを一つにまとめることが出来れば、この世界を征服することだって簡単だ”という一言をね。」
全ての始まりはあの時だったのか・・・僕があのとき彼の変化に気付けていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
僕のそんな後悔の念を気にせず、スネ夫は話を続ける。

「この時はまだ、僕にも良心というものがあったのかな。
僕はこのことをドラえもんに報告した、これ以上信者を野放しにするのは危険だ、とね。
だがこの時、彼はとんでもない手段を思いついてしまったんだ。
“透明マントと通り抜けフープを使って、恐らく警察署にあるはずのサカキの声が収録されている資料を盗み出し、あの機械でキャンディを使って自分を次期後継者にする。
そして彼らに二度とカントー地方の平和を脅かさないように命令する“
そう、僕の計画の基盤を作ったのはドラえもんだったのさ。」
ドラえもんがそんな計画を立てなければ、スネ夫がこんな事件を起こすこともなかった・・・僕は全く悪くない彼を少し恨んでしまった。

「ドラえもんのこの話を聞いた瞬間、僕に悪魔が舞い降りたのさ。
“その計画を使えば、この世界を自分の物にできるかもしれない”という発想だ。
悪魔の赴くままに僕はドラえもんを殺害し、ポケットを奪い取った。
そして出木杉が言ったとおり、メタモン、透明マント、キャンディの三つを使ってドラえもんになりすました・・・」
今、二つのことが分かった。
一つはスネ夫の動機がこの世界の支配であること。
もう一つはやはりドラえもんは死んでいたということだ。
ドラえもんはもう帰ってこない、改めてその事実を知らされたのび太たちは、何を言っているかよくわからない叫び声を上げながら泣きだした。
そんな彼らを、スネ夫は冷たい目で見下ろしていた・・・



「グレン島での会議の後、僕はトキワへ向かった。
邪魔なドラえもんは放っておいて自分だけセキエイ高原へ向かい、信者を率いてポケモンリーグを制圧した。
だがこの時また大きなミスを犯してしまった、ドラえもんをセンターに置きっぱなしにしていた上に、出木杉に目撃されてしまったことだ。
さいわいメタモンが寝ていたフリをしていたから喋らない理由が出来たが、お前はこれで僕の正体に一歩近づいてしまった・・・そうだろう、出木杉?」
「その通りさ、あのミスは痛かったね。」
本当はあまりそのことは気にしていなかったのだが、そんな返答をして話をこれ以上ややこしくしたくなかったのでこう答えた。

「修行から帰ってきた出木杉とのび太がイブキを連れてきたときは驚いたよ、おかげでチャンピオンロードで君たちをつぶす計画が駄目になってしまった。
そしてこのポケモンリーグに足を踏み入れた瞬間、お前は突発的な考えで僕の存在に気付いてしまった。
運も実力のうち・・・というけど、まさかあんなところでいきなり真実を見つけ出されるとは・・・
やっぱり、お前は警戒に値する人物だったよ、出木杉英才!」
これだけ絶賛されているのに、僕は全く嬉しくなかった。

スネ夫は全てを語り終えた・・・だが一つ、僕には気になる点があった。
「一つだけ解けていない謎があるんだ、数週間前に起こった信者の発電所襲撃事件、あの動機が分からないんだけど、教えてくれないかい?」
「いいだろう、教えてあげるよ。
発電所を襲った動機・・・それはこいつにあるのさ。」
スネ夫が指をパチンとならすと、部屋の隅にある小さな小部屋から突然1匹のポケモンが飛んできた。
黄色い体に電撃をまといながら飛ぶ鳥・・・伝説のポケモン、サンダーだ。



突然のサンダー登場に絶句する僕らに、スネ夫は自慢げに語り出した。
「僕は信者を統一した後、伝説のポケモンを手中に収めたいと考えた。
フリーザー、ファイアーは昔と同じ場所にいたのだが、サンダーは発電所が金銀の時から人の手に渡ったのでどこかへ行ってしまったんだ。
どうしてもサンダーを諦めきれなかった僕はある話を小耳に挟んだ。
“大量の電気がある場所に、サンダーは舞い降りてくる”という伝説だ。
だからカントー全土に電気を送っている発電所を乗っ取り、電気の供給をストップさせて発電所内に蓄えさせた。
そしてカントー全土が停電で暗闇に覆われている間にサンダーは現れ、僕は見事その捕獲に成功した、というわけさ。」

今の話で衝撃的な事実が一つ、明らかになった。
僕は恐る恐るそれをスネ夫に尋ねた。
「と、いうことは、君の手持ちにはいま伝説のポケモン三匹全てがいるということかい?」
スネ夫からは意外な返答が帰ってきた。
「確かに、伝説の三匹は全て捕獲した・・・でも、それは僕の手持ちには含まれていないのさ。」
「どういうことかい?」
「伝説のポケモンを全て手持ちに加える、それもいいだろう。
でももし君たちと僕が戦うことになった時、いくら伝説の三匹を所持していても4体1では勝ち目はないし、仲間をつけたとしても君たちとははるかに実力の差がある。
だから僕は3人の強力な部下、将来この組織の幹部になる人間をスカウトした。
三匹はその部下たちに預けたよ。」
「伝説のポケモンを扱えるほど実力の持ち主・・・その部下とは一体誰なんだ?」
「いいよ、紹介してあげよう・・・
出てこい、僕の部下たちよ!」
スネ夫がそう言うとさきほどサンダーが出てきた部屋から3人の人物が現れた。
2人は始めてみる人物、1人はよく知っている人物だった。



スネ夫は1人ずつ部下を紹介する。
「一人目は電気ポケモンの使い手マチス、サンダーの持ち主だ。」
1m90㎝ほどの大きい体に迷彩柄の服を着ている金髪の男、クチバシティのジムリーダーマチス。
僕がクチバジムに挑戦したときは留守で代理を立てていたので見るのは初めてだ。
何故彼が信者に加担しているのかは分からない。

「二人目は氷ポケモンの使い手カンナ、フリーザーの持ち主だ。」
メガネをかけた30代後半くらいの女性、現四天王最強といわれるカンナ・・・こちらも見るのは初めてだ。
ポケモンリーグの戦いで行方不明になっていたが、まさかスネ夫の部下になっていたとは・・・

「そして三人目は君たちも良く知っている男カツラ、ファイアーの持ち主だ。
かつてグレン島で死闘を演じたカツラ・・・あんなにいい人物だったこの老人が何故信者の味方になったのか、僕は残念かつ不思議な思いを抱いている。

電気、氷、そして炎・・・伝説のポケモンのタイプの使い手ではカントー地方最強の豪勢なメンバーを紹介したスネ夫は満足そうだ。
「ところで、なぜ僕がさっきからこんなペラペラと話しているか分かるかい?」
その問いに答える者はいない、スネ夫は狂ったように笑いながら言った。
「それはなあ、何も知らずにお前たちが死んでいくのはかわいそうだと思ったからだよ!
ああ、僕はなんて優しいんだろう・・・お前たちもそう思わないかい?」
この瞬間、改めて悟った“スネ夫は本気で自分たちを殺すつもりだ”と。
「さあ、僕に最初に殺されたいのはだれかな?」
スネ夫がそう言いながら階段を登っていくのを見て、先程まで静かだったガキ大将が口を開いた。
「許せねえ・・・オレは絶対にお前を許さない、スネ夫!
オレがお前の相手だ!みんなは他のやつを頼む!」
ジャイアンが階段を駆け上り、上の広場でスネ夫と対峙する。
のび太はマチスと、静香はカンナと、そして僕はカツラと下の広場で向かいあう。
―――今、最終決戦の火蓋が切って落とされた