ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ポケモンとのび太とノートと その17

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ドラえもんはそう言い、部屋の中に入ってきてパチンと灯りのスイッチを入れた。
部屋が一気に明るくなり、人型、ダルマ型の二つの影のシルエットが出来る。

人型の影の口が動く。
のび太「いや、僕も今来たばかりだよ。
っていうかなんだい?
僕を突然呼び出して。」
のび太は言った。
ドラえもん「まあまあ。
二人っきりで話したい事もあるもんだよ。
まあなんだい。これでも食べて機嫌直してよ。
チョウジ特産のいかりまんじゅう。美味しいよ。」
ドラえもんはのび太をなだめながら、自分の手の様に丸いまんじゅうを差し出す。
のび太は怪訝そうな顔をしていたが、やがてそれを手に取り、口に入れた。

ドラえもんは満足そうな笑顔を浮かべ、話を切り出す。
ドラえもん「のび太君。
君の望み通りロケット団の連中の被害は最小限に抑えたよ。
負傷者はたくさんいるけど死者はコウただ一人だ。」
のび太は口をもぐつかせながら話を聞く。
のび太「それは良かった。
敵も味方も傷つく人は少ない方がいいもんね。
まあ、コウっていう人は残念だったけど……」
のび太はまんじゅうを呑み込み言う。
その時、ドラえもんの目がキラリと光った。



ドラえもん「そう!
話はコウについての事なんだけど……。
くだらないと思うけど少しで良いから聞いてくれないかい?」
ドラえもんが言う。
話し方は穏やかだが、何か、威圧感というか、「聞かなければただじゃおかない」。そんな空気をかもしだしていた。
それを感じてか、感じずか、のび太は椅子に深く腰をかけ、話を続けてのジェスチャーをする。
ドラえもんはそれを確認し、礼を言って話し始めた。

ドラえもん「まず、僕が不自然と思った点の一つ、コウの死に方から話していこう。

以前にも話したと思うけどこの世界の人間は、外部からの人間、すなわち僕らから直接的でも間接的でも、何らかのフラグを立てられなければ、「勝手に」死亡したり居なくなったりするのは有り得ないんだ。
簡単に言うと、
1・僕らが死ぬ様に仕向ける。
2・僕らが直接殺害する。
以上の二点以外の理由で、キャラが死ぬのは有り得ないという事だよ。
そしてコウは殺されたのではなく、自らの不注意からの死亡。

それは1の「何者かがコウが死ぬ様に仕向けた。」ということを示唆しているのは分かるね?」
ドラえもんに訊かれ、のび太は頷く。
ドラえもんは続けた。



ドラえもん「そして、その死亡フラグを満たせるのはゲーム外の人間だけだから、コウが死んだフラグを立てたのは僕らの誰かか、もしくは時間犯罪者ということになる。
そしてそのフラグを立てたのは十中八九時間犯罪者だろう。
以上の事からある事実が浮かび上がる!
時間犯罪者はあの日、コガネ内でコウに遭遇しているということだ!」
ドラえもんの声が静が支配するこの部屋に響く。
のび太が何事か口を開こうとした。
声が裏返りそうで出る気がしない。
のび太は爪を噛む。
暗がりでよく見えないが、鬼人の様な目付きで相対している。
のび太の反応を待たず、ドラえもんは続ける。
ドラえもん「だが、ここでまたある疑問点が浮上する。
それは「果たしてあの完璧な包囲網とロケット団の見張りをかいくぐり、コガネ内に侵入できるか?」ということ。
答えはほぼ不可能。
皆コガネに内に戻った奴は居ないと言っている。
故にコガネには幹部と僕らしか居なかった事になる。
僕はラジオ塔前に居たしからコウに接触するのは不可能。
ジャイアンもスネ夫も幹部と闘っていたから不可能。
すると、コガネ内にいた人物でアリバイが無く、コウと接触出来るのは……」
ドラえもんはのび太を睨んだ。
ドラえもん「君しか居ないんだよ………のび太君。」



のび太「何!?ドラえもんは僕が時間犯罪者って言いたいの!?」
のび太は膨れっ面をして言う。

まだ………まだ誤魔化せる。決定的な証拠は無い。

のび太は爪を噛み続ける。うっすら血が滲んでいた。

ドラえもん「いや、君が時間犯罪者と言ってる訳じゃない。
ただアリバイが無いからあの日何をしていたのか聞きたいんだ。」
ドラえもんが言ってくる。

のび太「………場所何て分からないよ。迷ってたんだから……。」
のび太は小さく答えた。
ドラえもんが畳み掛けてくる。
ドラえもん「誰とも会わなかった?戦わなかった?」
のび太「会ってないよ。戦ってないよ。」

ドラえもん「ふーん。
誰とも会わなかったの。おかしいなあ。
じゃあさ、君の首の後ろにある傷。
それはどうやって出来たの?
何処かにぶつけた様な傷じゃない。
何か鋭利な刃物で切り裂かれたみたいだね。」
のび太「なっ………!」
やられた。
のび太はそう思った。
ドラえもんはのび太に歩み寄る。
ドラえもん「その傷は侵入前には無かった。
君、絶対中で誰かと戦ってるよね?
嘘をついた理由。今度はそれを聞かせて貰うよ。
まあ、理由は分かりきっているけどね。
君は僕の策にハマったんだよ。」



言い逃れ出来ない。
のび太はそんな状況に陥った。

のび太はポケットに手を突っ込み暫し黙っていた。
そして小さくポツリと言った。
のび太「………だから。」
ドラえもん「は?聞こえない」
最初、ドラえもんは聞き取る事が出来無かった。
しかし、のび太の中でプツンと何かがふっ切れ突然狂った様に笑いだした。
そして今度ははっきり聞こえる様に言った。
のび太「俺が……俺が時間犯罪者だからだよ。
ドラえもん。」



俺は時間犯罪者だ。

のび太の冷たい声、それに伴う薄気味悪い笑いが室内に響く。
目付き、顔付き、かもしだすオーラ。全てがのび太少年のそれとは違う。

間違い無い。正真正銘、コイツは時間犯罪者だ。

今まで求めていた敵。それに辿り着いたドラえもん。
丸い額にはうっすら汗の様な物が見える。

身構えるドラえもんに、のび太が言った。

のび太「ドラえもんよ……。
まあ、そう身構えなさんな。とりあえず、一つ話をさせろよ。」
ドラえもん「……話はこのままで聞く!」
のび太が言うが、ドラえもんは臨戦体制を崩さない。
手にはボールが握られている。
今にも攻撃を開始しそうな勢いだったが、ドラえもんがそれを実行することは無かった。
のび太の口から思いもよらない衝撃的な言葉が飛び出したからだ。

のび太「おお、恐えなあ。
まあ、俺の話を聞いてくれ。
お前の言う「遠隔で人を殺す方法」を教えてやるよ。」



ドラえもん「なにッ?」
思わずドラえもんも足が止まる。
のび太はキシシシシシと笑った。
自分の会話のペースに相手をひきずきこめれば完璧に有利になれる。
それをのび太は熟知していた。

のび太『もう殺すのは確定だから別に見せても構わないだろう。』
のび太は机からノートを取り、ドラえもんに見せる。
のび太は言った。
のび太「全てのタネはこのノート。
信じられねえだろうが、このノートに人の名前と手持ちポケモンを書けばソイツは死ぬ。
死因、死亡時間も書けばその通りになる。
便利だろ?」
ドラえもんのドングリ眼が見開かれる。
にわかには信じ難かった。
そんなものは22世紀にも存在しない。
だが、それは高確率で本当の事だろう。
そう考えれば、しずか、コウ、ミカン、ヨシト等の死亡が全て納得のいくものに変わる。
そして自分達が生きているのも。
ドラえもんはのび太の言葉の衝撃に驚きを隠せなかった。

しかし、その驚きは次第に怒りに変わる。
コイツはゲームとはいえ、その殺人ノートでしずかちゃんを殺した。
スネ夫、ジャイアンにも恐怖を与えた。
目の前にいるのび太はやはり消されてすり変わっているのだろう。
と、言うことはコイツはのび太の命も奪った事になる。
ドラえもん「絶対に許せない!」
ドラえもんは怒りを爆発させた。



そしてその怒りにより青い顔はトマトの様に赤くなる。

ドラえもん「許せなーい!!絶対に許せなーい!」
ドラえもんはボールに手をかける。顔は鬼の様な形相。

しかし、それに臆する事なくのび太は言った。
のび太「キシシシシシ。今更もう手遅れだよ。
お前の名前は……」
のび太は自らのポケットをまさぐる。
そして一枚の紙を取り出した。
のび太「既にこれに書いてあんだよ!キシシシシシ……。」
のび太が取り出した紙。
それは先程書いていた名前の未完成なノートの切れはし。
しかし、今のそれは血の濁点が振られ完全な物になっていた。

ドラえもんのは青ざめ、元の色を取り戻した。
ドラえもんは力無く膝をつく。
のび太はゲンガーを繰り出し言った。

のび太「お前に残された時間はあと10秒。おっと、自分はロボットだから効かないなんて甘い考えを抱くなよ。
死、終わりは平等。
これはこの世の全ての物に言える事だ。」
ノートの効果発揮まであと、5秒。
4秒。
3秒。
2秒。
1秒。
0。

のび太「時間だ。死ね。」




………………………。





のび太「?」
時間は間違い無く40秒経った。
ドラえもんは普通なら死ぬハズ。
しかし何故。何故。
のび太「何故テメエは………何故テメエは死なねえんだあああ!!!!」
のび太の叫びが響く。
信じられ無かった。
確実に書いたのに生きているハズが無い。
でも、目の前の青狸は死ぬどころか、苦しむ様子さえも見られない。

のび太『ヤバイ。ここまでバラしたのに何故死なない!』のび太は焦る。

ドラえもんも訳が分からない。
ドラえもん『奴の驚きっぷり。かなりイレギュラーな事態なんだろう!』
ドラえもんはこれを千載一遇のチャンスと考えた。
ドラえもん「うがあああああ。」
ドラえもんはのび太に飛びかかる。

ドラえもんの球状の手がのび太の顔面に伸びようとしたとき、のび太は我に帰った。

のび太「安物ロボットの癖に俺に触れんじゃねえええッ!
シャドーボールだ!」
のび太の本体は、ドラえもんに向けて漆黒の球を放った。



スネ夫「ジャイアン、あれ、どういう事だと思う?」
宴の中、とうとう住民から相手にされなくなったスネ夫はジャイアンに話しかける。

ジャイアン「は?はには?はんのほろら?」
それを聞くジャイアンの口の中には大量の食べ物が詰め込まれている。
これではまとも会話にならないので、スネ夫は先にそれを呑み込むように促す。

口の中のを物を異に収めたジャイアンは下品なゲップを上げ、言った。
ジャイアン「で、何のことだ?」
スネ夫「さっきドラえもんが言ってた事だよ!」

ジャイアン「ああ、のび太が時間犯罪者だとかいうアレか。」
ジャイアンは、興味は無いよとばかりに呟き、食事に戻った。
スネ夫「……………能無しが。」

実は二人は、既にドラえもんから二つの事を言われていた。


一つ目はのび太が時間犯罪者であるかも知れないということ。
二つ目は、今日を境にドラえもんが行方不明になる、若しくはドラえもんが明らかに誰かに襲われて壊れているのを発見した場合、のび太を時間犯罪者として優先的に疑え、というものである。


ジャイアンはそれを笑い飛ばしたが、スネ夫は正直それに何処か思い当たる節があった。

なんというか頭が良くなった、そんな感じである。



だが、その疑念も実際はあって無いような物。
しかし、有り得ない事では無いのでとりあえず注意する必要はあると思い、ジャイアンに相談しようとした訳だ。


しかし、そのジャイアン。
食事に必死でスネ夫の話を聞いてくれない。
今も軽くあしらわれたばかりである。


スネ夫「ジャイアン、ジャイアン?」
話をしたいスネ夫はジャイアンの背中を擦り呼び掛ける。
しかし、食事中のジャイアンは止められない。
ジャイアンはスネ夫に一発裏拳を食らわすと
スネ夫「ボッ!」
と言いスネ夫はその場に倒れた。
ジャイアンは依然と栄養補給を続ける。

スネ夫「イテテテテ…………」
スネ夫『このゴリラいつか殺す』
スネ夫は鼻を押さえて立ち上がる。
鼻からは鼻血が出ている。拭かねば。
スネ夫がティッシュを探していると、誰かが手を差しのべてきた。
「鼻血が出てるよ。はい、ティッシュ。」
スネ夫「ん?ああ。」
スネ夫はなんの違和感も無くそれを受取り、鼻に詰め鼻血を止める。
一通り作業が終わったスネ夫は礼を言うために顔を上げた。

スネ夫「ありが……わわっ!」
スネ夫は一風変わった叫びを上げると目の前の人物の名前を言った。

スネ夫「のっ、のび太!!」



スネ夫は思わず後退りし、唾を呑み込む。

噂をすれば影。
そんな諺がぴったりな状況だった。
しかも、こののび太、心なしかいつもののび太と違う気がする。


のび太は後退りするスネ夫を追う様に一歩こっちに踏み出してくる。

のび太に今の話を聞かれたかな?
もしも、もしも聞かれていて、もしもドラえもんの考え通りなら……。


ケサレル。


スネ夫「うああああッ!」
恐怖によりスネ夫は後ろに飛び退いた。
その勢いで尻餅をつく。
ジャイアンはまだ気づいていないようだ。

のび太は尚も近寄ってくる。
そしてスネ夫にのび太の手がのびる。

スネ夫『マッ、ママァァーッ!』
スネ夫は目を瞑った。

のび太の声が静かに響いた。



のび太「スネ夫……。ティッシュ返して。」



スネ夫「へ?」
スネ夫はふぬけた声を上げた。

のび太は更に手をつきだす。
のび太「返してよ、ティッシュ。」

スネ夫「ええ、ん、ああ。
ほら。」
予想外(?)の言葉に一瞬動揺したスネ夫。
おぼつかない手付きでティッシュをのび太に返す。

のび太にそれを渡すとき、スネ夫はある者の存在に気づいた。
真ん丸二頭身の体に青色ボディ。
それは間違い無く

スネ夫「ドラえもん……。」
だった。

スネ夫を見下ろしのび太は言う。
のび太「スネ夫さ、なんで僕にそんなにヒビってるの?
あ、まさか……

僕の事を時間犯罪者と思ってるの?」
スネ夫はその質問に目が泳いだ。
そんな単刀直入に言うとは。
なんと答えればいいのか流石のスネ夫も分からない。



黙り込むスネ夫の返答を待たず、のび太は言った。
のび太「大丈夫だよ。
さっきドラえもんと話したんだ。誤解はすっかり解いたよ。
ねぇ、ドラえもん。」
ドラえもんはコクリと頷く。

スネ夫は予想だにしない展開にポカーンとしていた。

のび太「あ、それだけ言いに来たから、じゃ、行こう。ドラえもん。」
のび太はドラえもんを連れて去って行った。
スネ夫はただそれを呆然と見つめることしか出来なかった。




スネ夫達のいる場所から少し離れた所で、アカネはいかりまんじゅうをほうばっていた。
そして、彼女の手が19個目のまんじゅうに伸びた時、あることに気付いた。
アカネ「あれ?ウチのボールが一個足りん……」



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