ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ルビー その4

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とある町のとある建物の中。
一人の男が水晶玉に手をかざし、何やら呟いている。
「やはり私達にとって障害になるのは、この少年少女達か」
男は水晶玉に映る少年達を見ながら、眉間にしわを寄せる。
と、その時、誰かが扉を叩いた。
「いきなりすいません。僕です」
「ダイゴか。入れ」

男とダイゴは、物音一つしない部屋の中で会話をする。
「・・・というわけで、今のところ作戦は順調に進んでいます」
ダイゴが言い終えると、男は啜っていた紅茶を飲み終え、言った。
「そうか。では引き続き、よろしく頼む」
「はい。わかりました」
ダイゴが男に一礼し、部屋を出ようとする。
「頼んだぞ」
男は更に念を押し、ダイゴはまた一礼すると部屋を後にした。
そして部屋に残った男は、薄ら笑いを浮かべながら自分に言い聞かせるように
呟いた。

「ついに、私達の計画を実行する時がきたな。ここまで辿り着くのにどれだけの時間と
金を使っただろう?・・・この世界を、我が手中に・・・ハハハハ」

太陽がじんじんと照りつける真昼間。男は入れた紅茶を啜りながら、
一人笑っていた。



≪ジャイアンサイド≫

俺が今いるのは、キンセツシティの横の海を超えた所。
ジムリーダーも余裕で倒したし、絶好調だぜ!
…だけど、なんなんだよこの草。
多い上に長くて先が見えない。ゲームでは自転車でいけない所だったな。
俺は草を掻き分け掻き分け、先へ進む。
それは出口の見えない迷路――いや、出口のない迷路にすら思える。

「はぁ・・・はぁ・・・」
それから1時間は歩いただろうか?俺は遂に迷路を抜けた。
体中に草がまとわり付き、もはや人間の姿を保っていない。
そして、休むことなく俺は先へ進む。

俺の向かう場所。天気研究所。
既にそれは目の前にある。
ここでやる事。マグマ団をぶっ倒すことだ。
俺は豪快に扉を叩き、入るやいなや何かを言おうとする。
――だが、俺の口は動かなかった。
何かを言おうとしてポカンと口を開けたまま、動かない。
そこにある光景に圧倒されたからだ。

俺が見たのは十数人の下っ端。そして、そいつらを率いているスネ夫。



≪ジャイアンサイド≫

「スネ夫!お前・・・」
それは紛れもなくスネ夫だ。下っ端達を統率している。
「ジャイアン、か」
スネ夫は全く動じない。
どういうことだ?まさか、スネ夫がマグマ団に?
中々動こうとしない口を鞭打ちながら、俺は言った。
「スネ夫、お前まさか・・・マグマ団に入ったのか?」
今でも目の前の光景が信じられない。
俺は、眉一つ動かさずにスネ夫の返答を待つ。

「ああ、そうだよ。で、何?」
顔色一つ変えずに言い放つスネ夫。俺は必死に言葉を探した。
「なんで・・・なんでマグマ団なんかに入ったんだ!」
「答える義務はない。だが、あえていうならば僕に適っているから、かな」
何がなんだか、わからない。わからない・・・。
だが、俺の体は無意識のうちに動いていた。
懐のボールに手をかけ、放り投げる――

「何がなんだかしらねえが、お前の目を覚ましてやる!いけ、タツベイ」
「そうこなくっちゃね・・・出ろ、ジュカイン!」

この勝負。絶対に負けられない。



≪ジャイアンサイド≫

「先手必勝!タツベイ、火の粉だ!」
「よけろジュカイン。そしてドラゴンクロー!」
タツベイの火の粉を軽々避けるジュカイン。
そして、そのまま俺のタツベイに一撃を食らわせる。
「タツベイ!」

――強い。前戦った時とはまるで別人だ。
カイリキーも倒され、残るはバシャーモだけだ。
「頼む、バシャーモ!ブレイズキック!」
「ドラゴンクロー!」
パワーで勝っていたバシャーモが押し勝ち、攻撃はジュカインにヒットする。
「使えない奴め・・・いけ、クロバット!」

「クロバット、翼で打つ!」
効果抜群の攻撃を何度も食らうバシャーモ。今にも倒れそうだ。
もう、駄目だ。俺は、勝てない・・・。
俺が敗北を悟った、まさにその時――
急にバシャーモの体が輝き、その場を明るく照らした。
「これは・・・バシャーモの特性、もうかだ!」
ピンチ時に炎技の威力があがる特性。
…そうだ、俺はまだ負けちゃいない。

「勝負はこれからだ!いくぜ、バシャーモ!」



≪ジャイアンサイド≫

バシャーモは、ありあまる力を発揮せんばかりに炎を吐く。
そして、その炎は俺の心に火をつける。
「バシャーモ、ブレイズキック!」
「クロバット、翼で打つ!」
大きな力がぶつかり合い、爆風が生まれる。
そして、立っていたのは・・・
「やったぜ、バシャーモ!」

「くそ、舐めやがって・・・出ろ、ライボルト!」
出てきたのはライボルト。反撃の烽火をあげるかの如く、辺りに雄叫びを響かせる。
「どいつが来ても同じだ!ブレイズキック」
勢いをつけて、ライボルトに向かっていくバシャーモ。
だが、攻撃は届かなかった。
「ライボルト、十万ボルト」
バシャーモは攻撃を当てる前に強力な電圧を受け、倒れた。

「バシャーモ!バシャーモ!」
力を使い果たし、鈍い音を立てて倒れこむバシャーモ。
「頼む、起き上がってくれ!このバトルは負けられないんだ!」
俺は必死にバシャーモに呼びかける。
「フン。起き上がれるわけが・・・何!」
俺の思いが通じたのか――バシャーモは傷だらけの体にも関わらず立ちあがった。
「よっしゃあ!このまま一気にいくぜ!」

未だ続く激戦。いつの間にか、辺りは熱気に包まれていた。



≪ジャイアンサイド≫

俺は負けない。俺の親友のために。
そして、俺のために頑張ってくれてるこいつ等のためにも!
「バシャーモ、電光石火からブレイズキックだ!」
電光石火による加速から、強烈な一撃をお見舞いするバシャーモ。
ライボルトは壁まで吹っ飛ばされ、戦闘不能になる。

「くそ!まさかここまでやられるとは・・・だが、これで終わりだ!
いけ、ユレイドル」
「バシャーモ、スカイアッパーでぶっ飛ばせ!」
バシャーモは自らの手に力を込め、それをユレイドルに当てようとする。
だが、残り僅かという所で、俺の望みは潰えた。
「お遊びはここまでだ。ユレイドル、地震!」

辺りを揺らし、バシャーモに重い一撃を与えるユレイドル。
ユレイドルを目前にして倒れこむバシャーモ。

「倒れるな!」
俺の口が自然と動く。
「あともう少し、もう少しだけ、頑張ってくれ!頼む!」
すると、バシャーモは閉じていた目をキリッと見開き、攻撃の体制に入った。
「これで最後だ!バシャーモ、フルパワーでオーバーヒート!」
この一撃だけじゃ、ユレイドルは倒せない。
そんなことは、わかってる。
だけど・・・せめて、スネ夫の心に届いてくれれば!

いよいよ最終局面を迎えた戦い。誰もが次の瞬間を待ち望んでいた。



≪ジャイアンサイド≫

バシャーモから紅の強烈な炎が放たれる。
そして、ユレイドル目掛けて一直線に進んでいく。
「スネ夫!俺は!俺は・・・!」
なぜだろう?今、俺の目にうつる全ての動きがスローで見える。
フルパワーで攻撃し、よろけ出すバシャーモ。
強烈な炎を前に、慌てるユレイドル。
ユレイドルに命令を出さず、口を開けて炎の行方を見つめているスネ夫。

「お前はマグマ団なんかじゃない!俺の親友だ!」
俺は大きく息を吸い、言った。
そして、次の瞬間には炎がユレイドルにヒットしていた。
研究所全域を覆う爆風。
しばらくして煙が晴れ、戦いの行方をあらわにする。
――俺の予想通りだ。バシャーモは倒れ、ユレイドルはギリギリ持ちこたえている。
スネ夫はユレイドルを戻し、言った。
「・・・帰るぞ、お前達」
「どういうことですか?勝ったのは幹部様ですよ?」
驚いた表情で聞く下っ端に一喝するスネ夫。
「うるさい!・・・帰るぞ」

スネ夫に俺の思いは届いたのか。そんな事はわからない。
俺はスネ夫の去った方向を向き、立ち尽くしていた。



≪スネ夫サイド≫

あのバトルから1日。僕はひたすら考えていた。
僕はどうすべきだったのか、これからどうするべきなのか・・・。
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。

「お前はマグマ団なんかじゃない!俺の親友だ!」
あの時、ジャイアンの言った言葉が僕の脳内で強く響く。
ジャイアンの言葉を聞いて、僕は何を思った?
いきどころの無い思いが、ムラムラと沸いてくる。

ふと、僕は窓越しに外を見る。
――雨。あの時、ジャイアンとのバトルの時と同じ雨。
僕は窓にうつる自分の顔を見る。
なんか、今までとどこか違うような顔だな。

そして、僕は再び考えを巡らせる。
果たしてあれで良かったのか?わからない。
そしてこれからどうするべきなのか?わからない。
僕の行動は僕の意思に適っているものなのか?わからない。
僕はジュカインの入ったボールを見つめ、呟く。

「教えてくれよ、ジュカイン」



≪ジャイアンサイド≫

あのバトルから1日。俺はポケモンの特訓をしている。
俺のせいで、スネ夫は・・・。スネ夫は、マグマ団になっちまった。
もしあの時、俺がバトルに勝って、スネ夫を連れ戻していたら・・・。
考えれば考えるほど、自分に腹が立つ。

「バシャーモ!ブレイズキックでそこら辺の木を倒せ!」
バシャーモは、次々と木を倒していく。
そして、最後の一本・・・だが、バシャーモの足は動かない。
疲れたような素振りを見せるバシャーモ。
「何やってんだよ!さっさと倒せ!」
俺がそう言うと、バシャーモは力を振り絞って最後の木を倒した。

ピチャン!
俺の顔に、一滴の雫が落ちる。
――雨。あの時、スネ夫とのバトルの時と同じ雨。
雨は次第に強まり、雨音が大きくなる。
「戻るぞ、バシャーモ!」
俺はバシャーモをボールに戻し、ヒマワキシティのポケモンセンターに戻る。

未だ止みそうにない雨。俺はじっと外を見ていた。



≪のび太サイド≫

「はぁ・・・はぁ・・・」
僕は今、長い草が生い茂っている道を通りぬけたところ。
トレーナーにも絡まれて、かれこれ1時間ぐらいかかっただろうか?
通りぬけた今、ペリッパーを使うという手を思いついたのは秘密だ。
それからしばらく歩いて、僕は天気研究所の近くにきた。

「ん?何だろ、あれ・・・」
丸くて青い、二頭身の物体。まさか、ドラえもん?
「ドラえもーん!」
僕は全速力で走り、ドラえもんのいる所まで辿り着く。
「あ・・・のび太君!」
ドラえもんも僕に気付き、映画のシーンさながらの状態になった。

「久しぶりだね、ドラえもん!」
「そうだね、のび太君」
キンセツシティでポケナビを改造してもらって以来だ。
「あのね、ドラえもん・・・」
僕が今までの旅のいきさつを話そうとするが、ドラえもんの手によって止められる。
小さくて丸い手。ストップの意を表しているのだろう。

「のび太君、ポケモンバトルしようよ」



≪のび太サイド≫

なんでいきなり勝負なんだ?
僕は喋ろうとした口をポカンと開けながら、ドラえもんをまじまじと見つめる。
「いいでしょ?のび太君」
別に断る理由なんてない。話は勝負の後でいいか。
「ま、まぁいいよ」
僕は勝負を受けることにした。

「えっと、一番手はどれでいこうかなぁ」
ドラえもんが懐のボールを選んでいる時。
ドガーン!
辺りに爆音が響き、爆風でドラえもんが飛んでいく。
叫び声は爆音にかき消され、ドラえもんは草の茂っている所に飛んでいった。
「ドラえもーん!」
叫んでみても、返事はこない。気絶しているのか?
いや、それよりもだ。煙で影しか見えないけど、僕の前には何かがいる。
僕はその何かを見るために、煙が晴れるのを待つ。

ヒュウー。そんな効果音と共に、風が吹く。
そして、その風は煙を晴らし、僕の目の前の何かをあらわにする。

それは紛れもなく、伝説のポケモン・ミュウツーだった。



≪のび太サイド≫

これは夢か?僕は目の前の光景が信じられない。
ガクガクと震える右手で、ほっぺたをつねってみる。
――痛い。ということは、これは現実。夢じゃない。

「少年、私と戦え」
不意に、どこからともなく声がする。恐らく隠れているのだろう。
僕は返答しようと口を動かすが、それは声にならない。
気味が悪くなって、黙りこくってしまう事を余儀なくされる。
「どうした、早くしろ」
僕は怖くなり、無理矢理言葉を出した。
「あ、あ、はい。コノハナ!」
手が震えているせいか、手からボールが滑り、それは後ろへ飛んでいく。
「ミュウツー、スピードスターだ!」
「う、うわっ!」
僕は間一髪、攻撃を避けた。だが、後ろのコノハナは一発で戦闘不能になっている。
「この程度か・・・」
どこか失望感を漂わせる声。
そしてミュウツーが消え、声の主も去ったようだ。

僕はガックリと膝を落とし、コノハナをボールに戻す。
ふと、僕はある事を思いついた。この辺りには隠れる場所なんてない。
あるとしたら――ドラえもんの飛ばされた所だけ!
僕は走り、ドラえもんの飛ばされた場所を見る。
「いない・・・ドラえもんがいない!」
まさか、あの声の主はドラえもんだったのか?

不可解な謎を抱えながら、僕はヒマワキシティへ向かった。



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