ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

挑戦者 その6

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ジャイアンはポケモンセンターで休憩を取っていた。
 ポケモンセンターのジョーイはトレーナーにとって大切な存在である。
もちろんポケモンの体力回復、状態異常改善の手助けは
ゲームでもおなじみである。
そしてこの世界ではトレーナーに様々な情報を与える存在でもあった。
ジャイアンはそれにより、リオルの覚える技を教えてもらった。
聞き覚えの無い技でも、質問すればジョーイは必ず答えてくれる。
 「ありがとな、ジョーイさん!」
ジャイアンのお礼の言葉にジョーイは微笑んで答える。
(さて、あとはリオルがどれを使えるか……)
ジャイアンは今書き留めたメモをもとに思考を巡らした。

 この世界にはレベルという言葉が無い。
つまりレベルが数字としては表されていないと言うことだ。
そのポケモンがどのくらいの実力を持っているか、
それがこの世界においてのレベルなのだ。
例えば、ジャイアンは最初のうち
ココドラに「アイアンテール」などを命令していた。
そしてその技がまだ使えないことを知った。
そこでゲーム内では比較的初期段階の習得技である「メタルクロー」を
使うようになったのである。
文字では難しい話だが、ジャイアンは本能で理解していた。
そして技のレパートリーは、戦いを積み重ねるにつれて
増えていくことにも気づいていた。

「また修行?」
スズナの呆れたような口調に、ジャイアンは真面目に頷く。
「よくやるわねぇ……まあいいことだけど。
 ここのジムはあんたのポケモンじゃ厳しいだろうし……そうそう。
 この町のジムはかくとうタイプらしいわよ」



 ――のび太の家
三人はここに集まっていた。
何故かドラえもんが失踪した今、
三人はこの町を仕切る中心的な存在となっている。
その三人とは、義雄〔苗字不明、漢字適当〕、金尾タメル、
ズル木〔名前不明〕の三人である。

 「ドラえもんが失踪してからもう二日」
義雄の口調は絶望に満ちていた。
「ああ、もう何度も聞いたさ!」
ズル木は歯を食いしばって怒鳴る。「仕方ないじゃないか。
僕らがこの町を守らなきゃ」
「どうやって?」 金尾が口を挟む。
「僕らには何の道具もないよ。どうやってあんな怪物たちから町を守るのさ」
 金尾が言った言葉。それが、三人が集会を開いた理由だった。
 野生のポケモンたちが町へ侵入し始めていたのだ。
「ああ、せめて出木杉がいてくれればなぁ」
義雄はため息混じりに言う。
 三人はしばらく何も言わなかった。

 最後に出木杉が三人の前に現れたのは三日前。
その日、三人はのび太の家で発見した「あるもの」を考察すべく、
出木杉を呼んだのである。
話は四日前に遡る……



 「出木杉!これだよ」
四日前、義雄はのび太の部屋を開けざまにそう言った。
 義雄の指先には質素なデザインのドラえもんの道具。タイムテレビがあった。
それは義雄がドラえもんの留守中にたまたま発見したものだった。
 「さ、ドラえもんが来ないうちに速く!」
 「何かわかったことがあったら言ってくれよ!」
その時の三人はすっかり出木杉に頼りっきりだった。
 金尾がスイッチを押して、タイムテレビが起動した。
そこに写っていたのは朝の場面――のび太がドラえもんに起こされていた。
ポッポを見て驚くのび太。
「どうやら、この世界に始めてポケモンが現れたときのものらしいね」
出木杉は呟いていた。
やがて映像の中のドラえもんが、今ポケットを持ってないことを示した。
その後二人は部屋を出て、画面から消えた。
「ここまでなんだ……何かわかったことはある?出木杉?」
「…………」
「出木杉!? どうした?」
「ん、ああいや、なんでもないよ」
出木杉はそう答えた。
 三人はその時、気づいていなかった。
出木杉が画面を見ながら、悪魔のような笑みを浮かべていたことに……



 三人は集会が無駄だったことに落胆していた。
結局いい案など何一つ思いつかないままである。
 だが、三人が去り際に、好機は訪れた。
「やあ、みんな」
のび太の家の玄関があき、少年が現れる。
 その姿に気づくと、三人は表情が徐々に変化していった。
落胆から、歓喜へと……
「出木杉!」
一番玄関に近かったズル木が口をあんぐり開ける。
「戻ってきてくれたのか?」
「ああ。でも、すぐに行かなきゃなんだ。
 君たちに頼みがある。それを伝えにね」
出木杉は三人に説いた。
 ……その説明は、三人を驚愕させる。
「まさか、この現象を引き起こしたのが」
「あいつだなんて」
「これが真実なんだ」 出木杉は頷きながらはっきりと言う。
「そして、これから言うことを理解して実行してほしい」
出木杉はその計画を話し出した。

 ――半日ほどの修行で、ジャイアンはリオルの戦い方を把握していた。
朝が来て、ジャイアンはジムの前で立っている。
スズナが隣で、買いだめした道具を持っている。
「回復用の道具は買えるだけ買ったわ」 スズナが告知した。
「よし、じゃあ行くか」
ジャイアンはジムの扉を開けた。



 ジャイアンの目の前には一人の少女が立っていた。

「お前がこのジムのリーダーなのか?」
ジャイアンの問いに少女は少しむっとする。
「そうです! わたしはこのジムのリーダー、スモモです!
 ……ジム戦をしに来たのですか?」
ジャイアンは頷く。
「それじゃあ、さっそく始めま」 
「待てぃ!!」

突然ジムの扉から男四人がずかずかと入ってくる。
「スモモさん、ジム戦なら我々が」 
「スモモさんの代わりに戦うのが師匠との約束です!」
(な、何だこいつらは?)
と、ジャイアンが眉をひそめている間にスモモの顔が紅潮していった。
「隣の道場で待っていてください!」
スモモが大声で叫ぶが、男たちは首を振る。
「いえ、それでは約束を破ってしまいます! 何か手伝えることは」
「じゃあ審判して下さい!」
 スモモの決断に男たちは一斉に動き出すが、たちまち止まって睨みあう。
「どうしてお前たちが動くんだ? ここは長男の俺が」
「この際長男とか関係ないだろ」
「全くだ。だが言っておこう。スモモさんは俺を見て指示を出していた! 
だから俺が」
こんな具合に言い合う男三人。
 ジャイアンは混乱しながら、一人言い合いから外れている男に声をかける。
「なああんた。こいつらはみんな何なんだ? リーダーのファンクラブか?」
するとその男は笑って首を横に振る。
「いえ、僕たちはスモモさんと同じく、ある方の弟子仲間なんです」



「僕たちは四兄弟で、僕が一番末っ子なんです。
 僕たちは一人のかくとうポケモン使いのところで修行していました。
 スモモさんも僕たちと同じく修行を……
 しかしその修行は師匠の失踪によって突如終わりを迎えました。
 僕たちは師匠と、スモモさんの修行を手伝ってやるように約束させられています。
 だから僕たちはこうしてスモモさんのジムを隣の道場から見守っているのです」

ジャイアンは早口で伝えられた長文の内容をゆっくりと噛み砕いてから理解した。
 スモモが兄弟たちのいざこざを止めて、ジャイアンを向く。
「用意はいいですね? ジム戦を始めます」
ジャイアンは頷く定位置に着いた。
 どうやら審判も決まったようだ〔兄弟はそっくりで見分けがつかなかったが〕。
審判のコールで試合が始まる。
「アサナン!」 
「行け! テッカニン!」
二人のポケモンがフィールドに現れる。

 「テッカニン、かげぶんしん!」
ジャイアンの指示でテッカニンは旋回を始める。
テッカニンの通る道に次々と幻影が置かれ、アサナンを取り囲む。
 だが、アサナンは動じず、あぐらをかいたままだ。
(くそ、余裕こきやがって)「テッカニン、れんぞくぎり!」
 幻影たちは次第に揺らぎ、やがてアサナンの背後へ本物が突進する。
「めざめるパワー!」
スモモの言葉と共にアサナンが全方位に光球を発射する。



「!! テッカニン、上がれ!」
間一髪、テッカニンは急上昇して光球を避けた。
(全方位への攻撃。こっちはなかなか近づけない。それなら)「あなをほるだ!」
 テッカニンが地面に突入し、表から姿を消す。
「アサナン、みきり」
 スモモは冷静に判断して指示を出した。
「へへ、無駄だぜ」ジャイアンはにやりと笑みを浮かべる。
「俺のテッカニンのあなをほるは一筋縄じゃいかないからな!」
 ふと、アサナンの直下が軋む。
 落とし穴だ。
 アサナンの体が地中に沈み「ねんりき!」
スモモの声が響き、アサナンは止まって逆に浮き始めた。
アサナンが完全に中に浮かんだところで、スモモが声を上げる。
「これで地面からも離れた。もうあなをほるは効きません」
「かもな! でもこれはどうかな? テッカニン、れんぞくぎり」
「みきりで――」 アサナンが苦痛を上げ、スモモは指示を止める。
 テッカニンが一瞬で穴から飛び出し、アサナンを斬りつけたのだ。
スモモの見てる間に二撃、三撃がアサナンを襲う。
「な、なんでそんなに速く!?」
「あなをほりながら加速していたんだ」
 ジャイアンが説明すると同時に、アサナンが地に倒れる。
「アサナン! 立って!」
スモモは懇願するが、アサナンは力尽きる。

 審判はテッカニンの勝利を決定した。



「なかなかやりますね!」
スモモはアサナンをボールに戻しながら言う。
「次は、ルカリオ!」
スモモのボールがその青い闘士を繰り出した。
「テッカニン、れんぞくぎりだ!」
かなりの速度に上がったテッカニンが矢の如く突撃する。
 矢が標的に当たる瞬間だった。

「カウンター!」 スモモの鋭い指示が飛ぶ。
ルカリオは半身を反らし、片手でテッカニンを捕らえる。
 鋼の拳がテッカニンを吹き飛ばした。
壁に叩きつけられるテッカニンを確認しながら、ジャイアンは絶句する。
(い、今のテッカニンの速度はほとんど最高潮だったぞ。
 それを軽々とよけるなんて――)
ジャイアンが顔を上げた瞬間、思考までもが途切れた。
 そこにいるスモモはさっきまでとは別人だった。
リーダーとしての風格がその小さい体からひしひしと感じられる。
 ……ジャイアンはいつの間にか震えている自分に気づいた。
ただ、それは恐れではなく驚きに近かった。
(……すげえや。こいつこんなに強かったのか)
 審判がテッカニンの敗北を決定する。
ジャイアンは震えを堪えながらテッカニンを戻す。
「随分とすごいポケモンがいたもんだな」
ジャイアンはボールをしまいながらスモモに語りかける。
「お前まで変わったように思えるぜ。よっぽど思い入れがあるポケモンなんだろうな」
スモモは素直に頷いた。
「思い入れはあります。……このルカリオ、師匠が残したポケモンだから……」



 ジャイアンはそれ以上言及するのは止めた。
「次のポケモンを出しますか」
スモモの問いにジャイアンは応える。
「当ったり前だ! 負けっぱなしで終われるか!」
「大丈夫ですか? 震えてますよ」
「こ、これは武者震いだ!」
ジャイアンは必死で否定しながらボールを取り出す。
「行くぜ、リオル!」
ボールから小さい勇士が姿を現す。
 ジャイアンの新たな仲間は、その場の空気を変えた。

「お、おいお前!」
審判がジャイアンを指して叫ぶ。
「そのポケモンをどこで手に入れたんだ!?」
「ど、どこって……出しちゃいけないポケモンなんてあるのかよ!?」
「そうじゃない。そのポケモンは」 「誰がなんと言おうと俺はリオルを」
「落ち着いて下さい!」 
四男が間に入り込み、ジャイアンを制した。
「いいですか、そのポケモンは僕らのよく知っているポケモンなだけです。
 師匠が昔、所持していたポケモンなだけです!」
「それだけじゃないだろうが!」
四兄弟全員が会話に参加していた。「そいつはここで」
「みんな戻りなさい!!」
スモモの声が鋭く会話を止める。
「どんなポケモンを使おうと関係ないです。そのポケモンを使って下さい」
 四兄弟は渋々とその場を去っていった。



「……なあ、本当に使っていいんだろうな?」
「もちろんです!」
スモモは強気で応えるが、ジャイアンは気になっていた。
スモモの顔がどんどん紅潮していくことが。
 ジャイアンは仕方なく、始めることにした。
「リオル、でんこうせっか!」
まずリオルが動き、相手に迫る。
常人〔ポケモン〕ならまずついていけないスピードだが、
「みきり!」
ルカリオは半歩引くだけで攻撃を避ける。
「メタルクロー!」 「こらえるだ!」
引き際の力が相乗した鋼の爪がリオルを突き立てる。
だが相性がいいため、リオルはそれほどダメージを受けていない。
「リオル、いったん離れるんだ」
リオルはルカリオを視界に収めたままさがろうとした。
「でんこうせっか!」
一瞬で、ルカリオはリオルの横に並ぶ。
「はっけい!」
ルカリオの手刀がリオルの首を突撃する。
 リオルは唸り、それでもその場に立った。
 その上で光る爪。ジャイアンは咄嗟に叫んだ。
「カウンター!」 「メタルクロー!」
リオルは体を反らしたが、ルカリオのリーチはそれを凌駕していた。
 リオルはメタルクローを頬にくらい、バランスを崩す。
ルカリオはそこに、さらに一撃加えた。



苦痛を上げるリオル。
「次で終わります」
スモモは宣言したが、ジャイアンは答えない。
 なぜなら――
「ルカリオ、メタルクロー」
 ジャイアンの思考では――
ルカリオの鋼の爪がリオルに迫り
 既に勝利への道が開かれていたから――

「こらえる!」
 リオルはその一撃を堪えた。
予想外の反抗に一瞬止まるルカリオ。
その一瞬こそ、ジャイアンの待っていた瞬間。

「きしかいせい!!」
 リオルは窮地から湧き出た力に満たされた。
鋭い一撃がルカリオに入る。
 ルカリオは音もなくその場に崩れた。



「これがバッジです」
スモモはジャイアンにバッジを渡した。
「それと、忠告があります。
 あのリオルには気をつけてくださいね」
ジャイアンは頷きながら、振り返る。
「見ろよスズナ。バッジ手に入れ――」
「――んぁ?」
 観客席にいたスズナは明らかに目覚めた瞬間だった。
そしてジャイアンは同時に思い出した。
スズナが大量に回復の道具を持っていたことに。

「だから~見ていなかったのは謝るわよ」
スズナはポケモンセンターでジャイアンに謝っていた。
「それにバッジは手に入れたんだからいいでしょ」
「……まあそりゃそうだけど」
と曖昧に答えるジャイアンのところに声がかかる。
「あの、そこのトレーナーさん」
ジョーイだ。ジャイアンは振り返る。
「あなたのモンスターボール、一つ空なんだけど」
「へ?」
ジャイアンが不思議そうな声を上げてる時に、センターの扉が開く。
「号外です」
新聞配達員らしき少年がジョーイさんに新聞の号外をわたした。
「あら、大変。『伝説の下着ドロ復活!!』ですって。怖いわねぇ。
 ……あれ?」
ジョーイさんの目の前からいつのまにかトレーナー二人の姿は消えていた。



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