「ポケモンとのび太とノートと その20」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ポケモンとのび太とノートと その20」(2007/06/03 (日) 01:49:15) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
[[前へ>ポケモンとのび太とノートと その19]]
暗い暗い闇の中。
僕はずっとその中を泳いでいた。
いや、正確には僕は泳げないから、漂っていたと言った方が正しいかな。まぁそれはどうでもいいけどね。
ところで、僕はどの位の距離を、何時間、何日、いや何ヵ月泳いでいたのだろう。
それは僕には、全く分からなかった。
見当もつかなかった。
ただ、あの忌まわしい記憶は残っている。
シジマさんや海パン野郎達を躊躇無く殺していった事を。
僕は突然、言いようもない感じ(罪悪感って言うのかな)に襲われ身震いした。
何故あんなことをしたんだろう。
心が痛くなった。
その時だった。
突如目の前の闇を突き破り、一筋の光が差しこんだ。
その光は形を変えてゆく。
それは人の形をしている。僕の大好きな人。
僕はそれが誰か知っていた。
「しっ、しずかちゃん!」
僕は叫びをあげ、しずかちゃん元へ無我夢中に泳ぐ。正確にはもがく。
しかし泳げども距離は縮まらない。僕は自分の水泳の才能を呪ったが、そんな事はどうでもいい事だった。
しずかちゃんは言った。
しずか「………たさん……びたさん……のび太さん。」
----
のび太「しずかちゃぁぁーーーーん!」
彼女の囁きで、僕はもがきのペースを早めた。
いつのまにか涙が溢れ、顔はぐちゃぐちゃになっていた。
しずかちゃんはそんな僕に、一瞬微笑みを浮かべると僕の方へ(まるでタケコプターでもついてる様に)飛んで来た。
のび太「しずか……ちゃん?」
僕は囈の様に言う。
すると、しずかちゃんはもう一度僕に微笑みを投げ掛け、耳元で一言囁いた。
しずか「のび太さん……。
皆を……皆を……助けてあげて……。」
しずかちゃんはそう言うと僕の元から離れ、上の方へ(闇の中で言うのもなんだけど、まぁ僕の頭がある方が上だろ。常識的に。)飛んでゆく。
のび太「しずかちゃぁぁーーん!」
僕は懸命にしずかちゃんを追いかける。
のび太「しずかちゃん!
皆を……皆を救うってどういう事!?
ねぇ!しずかちゃん!
待ってよぉー。ねぇったらぁ!」
僕はかつて無い程の必死さでしずかちゃんを目指す。
涙と鼻水で化粧された顔は、かなり不細工なものになっていたであろう。
しかし僕は泳いだ。
しずかちゃん目指して。
僕の心の一つの輝き、そして光。それを目指して。
僕は光を求め、重いまぶたを開いた。
----
舞台は戻って自然公園。
のび太「………うーーん……。」
今にも起き上がろうとするのび太にゲンガーは唖然とする。
ゲンガー「な……何故こんなに早く起きれるんだ……。」
ドラえもん「僕は始めから思ってた。
君を捕まえる事は出来ないってことをね。
だから、ボールを囮にして『はっかのみ』をのび太君に投げ与えたんだ
かなりリスキーな作戦だけど成功して良かったよ」
ドラえもんの言葉を聞き、ゲンガーはぎょっとする。
ここでわざわざのび太を起こしたということは、次に来る策はただ一つ。
ゲンガー『俺をボールに回収する気だなッ!』
ヤバイ、これはマジでヤバイ。
奴があの眼鏡猿を起こしたのは、自分の『所有者』であるのび太に自分をボールに回収させる為だろう。
ボールの中に入れば如何に自分のレベルが高かろうと無力な存在。
眼鏡猿の所有権は解除してしまったから、もう一度、あのルールを満たさない限り奴を操る事は出来ない。
故にボールに収められたらもう終り。
絶対絶命のピンチだ。
しかし、まだ希望が潰えた訳では無い。
ノートのルールにより、のび太はここに至るまでの過程の記憶が全く無い。
----
故に、今すぐこの状況を理解する事は到底不可能だろう。
奴の単純な性格は、タンバまでの追跡、数日間を共にした日々で良く分かっている。
自分の話術なら、『かなしばり』が解ける残り数十秒位なら上手く時間を稼げるだろう。
解けたら即、あぼーんさせれば良い。
ゲンガーは簡単に作戦を立てると、まだ寝起きたばっかりののび太の元へと近づいた。
ゲンガー「おい、のび太!ヤベエぜ、お前がタンバで人殺したのがバレてんぞ。皆俺達を許さねえって言ってるぜ。どうするよ?」
とりあえず、今の状況を誤魔化す為に嘘の情報を流さなければ。
安い策だが、寝起きのまだ働いてない脳味噌には効果抜群だろう。
それを見たジャイアンはヤバイと思い、のび太に指示を飛ばす。
ジャイアン「おーい!のび太!騙されんな!早くそいつをボールに戻「アーーーーー、アーーーーー。
なんて言ってるのか聞こえないなぁ。アーーーーー。」
ジャイアン「あの野郎……。
ワザと大声を上げて、俺の声をかき消してやがる……」
ジャイアンは唇を噛む。
単純だが、時間を稼ぐには最良の手だ。
成程、最初にのび太に接近したのもこの為か。
ジャイアン「おーい!のび太!聞こえるだろうよぉーッ!のび太ぁぁ!」
----
ゲンガー「ワーーーーー、ワーーーーー。キシシシシシ。あのデブゴリラ。無駄なのによぉ。」
尚も声を上げるジャイアンを見てゲンガーはあざ笑う。
ゲンガー『さて、そろそろ『かなしばり』が消えるな。
そしたらまず眼鏡を消し去って……。ん?』
そこまで考えて彼は気づいた。目の前の少年の顔に。
涙でぐしゃぐしゃになり、憎しみを込めてこちらを睨んでいることに。
そして、一番ゲンガーの精神を揺さぶった事は、彼の手にモンスターボールが握られていた事だった。
ゲンガー「テメエッ!何を!」
のび太「何をって……?見たら……見たら分かるだろ……
時間犯罪者……お前を……封じ込める!」
有り得ない。この状況で奴がこんな行動をとれるのは有り得ない。
第一、ここに至るまでの記憶は無いし、ジャイアンの指示も全て聞こえなくした。なのに何故……
のび太「僕は……夢を見た。
しずかちゃんの夢を。君が……君がしずかちゃんをッ!だから……君は……僕が封じ込めてやる!」
のび太はモンスターボールをゲンガーの方へと傾ける。
ゲンガー「ガキがぁぁーーーー!調子に乗るんじゃねぇーーーーッ!」
ゲンガーの激昂が天に轟いた瞬間、彼の肩がすぅっと軽くなった。
ドラえもん「ヤバイ!『かなしばり』が解けた!」
ドラえもんも叫ぶ。
ゲンガー「食らえッ!シャドーボールッ!」
のび太「戻れ、ゲンガー!」
----
凄まじい光が辺りに発生する。
その光に驚き、ゲンガーは目を瞑る。
そして彼は光が消えると、再び目を開いた。
目の前に、あのにっくき眼鏡猿は居ない。
ゲンガー「キシシシシシ。
キシシシシシ!」
ゲンガーの笑いが響く。
彼は辺りを見回すが、回りには最早誰もいない。
ゲンガー「みんな……みんな消し飛びやがったぁッ!
キシシシシシ!雑魚共めッ!」
ゲンガーは笑った。笑う事しか出来なかった。
何故なら……彼は今檻の中の『無力な存在』だから。
あの瞬間……、始めに光弾を放ったのはゲンガーだった。
しかし、それがのび太にぶつかるかぶつからないかの瞬間、『あなをほる』で回りこんだジャイアンのイノムーが、二人の間に割って入ったのだ。
イノムーが吹っ飛ばされた次の瞬間……ゲンガーは無事ボールに回収されたのである。
舞台は戻る。
時間は止まっていた。
誰もすぐには動かなかった。
本当に終わったのか?そんな考えが皆を包んでいた。
しかし、しばらく時が経ち、ゲンガーが飛び出して来ない事を確信すると、スネ夫はヘナヘナとその場に腰をおいた。
スネ夫「……お……終わった……」
----
スネ夫に釣られたか、皆緊張の糸が解け、その場にヘタリ込む。
ジャイアン「勝ったのか……?
勝ったのか?俺達は?」
ドラえもん「勝ったよ……僕達は……」
ジャイアン「そうか………」
ジャイアンもすっかり骨無しになっている。
するとヘタリ込む三人の前に、目を赤くした少年がやって来た。
そいつは言った。
のび太「皆……皆……ごめん……本当にごめん……
今まで何が起こってたか分かんないけど……
タンバの……タンバのシジマさんを殺したのは……僕なんだ……」
ジャイアン「なんだっ(ry」
思わず叫ぼうとしたジャイアンの口をドラえもんが塞ぐ。
そしてドラえもんは言った。
ドラえもん「それは本当かい?」
ドラえもんの問いに、のび太涙を拭き無言で懐から小さい何かを取り出す。
それは紛れも無く、タンバジムバッジ、ショックバッジだった。
のび太は続ける。
のび太「……誰にも……勝てなくて……僕が……泣いてた時……ノートを拾ったんだ……
そして……僕は……」
ドラえもん「それ以上言わなくていい。」
ドラえもんはそう言い、のび太にハンカチを差し出した。
ドラえもん「大丈夫だよ、のび太君。僕らは……君を許すよ」
----
のび太「ドラえもぉぉぉん!!」
のび太はドラえもんに抱きつき、体を任せた。
溢れる涙を止める事は出来なかった。拭えど拭えど止まらない。
ジャイアン「泣かせやがる………」
スネ夫「うん……」
二人も貰い泣きしていた。
その時、
?「いやぁ、友情という物は美しい物だねえ」
見知らぬ男がこちらを見て拍手をしていた。
その姿はピッチリとしたスーツに包まれた、さながら戦隊もののヒーローのようだった。
スネ夫「誰だい?君は……?」
男「君に答える義務があるかい?」
スネ夫は素直な疑問を述べたが、男に即打ち消されてしまった。
その言葉にカチンときたのか、ジャイアンが男に詰め寄る。
ジャイアン「オイオイ……
お前が何処の誰だか知らないけどさ、何様のつも……」
ジャイアンの言葉はそこで止まった。
男の拳がジャイアンの体に当て身を食わせたのだ。
のび太「ジャイアン!」
驚きを隠せない一同に、一方男はトランシーバーのような物で誰かと会話する。
男「アー、こちら……。これから容疑者の確保に入る。
作戦開始!」
次の瞬間、
スネ夫「プギー!」
謎の光線に当たり、スネ夫が倒れた。
----
ドラえもん、のび太「スネ夫ーッ!」
のび太とドラえもんは反射的に光線の出どころを見る。
そこには、男と似たような格好をした女がそこに立っていた。
手には光線銃が握られている。
ドラえもん「一体これは何……」
男「おやすみ。」
男は光線銃を取りだし、その引金を引いた。
その場に二人の人間が倒れた。
男「よし、回収だ。」
男はのび太の元へと歩み寄り、その手から乱暴にモンスターボールを奪い取る。
のび太は薄れゆく意識の中、必死に意識を保ち彼らの話を聞いていた。
男「えー、もしもし?
タイムパトロールですか?たった今容疑者を確保しました。
時代と次元は……」
のび太『タイムパトロールだって!?』
のび太は驚く。
女「待って、この子まだ意識があるわ!」
ヤバイ。
のび太の血の気が引く。
男「じゃあ、もう一発撃って早く眠らしちゃいなよ」
ビビビビビビビ。
それはのび太の聞いた最期の言葉になった。
----
ボールを回収し終えた二人は、迎えのタイムマシーンに乗り元の時代へと引き返していた。ついでにノートも回収してきた。
女が言う。
女「あの子達はどうしたの?」
計器を確認しながら男は言う。
男「別の班が動いてる。
記憶と時間を少々操作して現実世界に返してやるんだってさ。
多分彼らが次に目覚めるのは彼らの寝床だよ。」
女「そう。」
女は一息つく。
男「それにしても、最後にアイツを封じ込めたあのボールは凄かったな。
23世紀の科学顔負けだよ。
『モンスターボール』って言ったっけ?
同じ名前の秘密道具があった気がするけど」
男はゲンガーの入ったモンスターボールを手に取り、呟く。
女「時間犯罪者の記憶の操作は?」
女は再び疑問をぶつける。
男「『ゲームの記憶』だけ消し去ってるよ。
後、暴れないように力を弱くしておいた。
奴も23世紀に戻れば裁かれるんだろうな
おっと……」
突如、タイムマシーンの機体が揺れ動く。
女「どうしたの?」
男「時間の乱気流にはいっちまったみたいだ。大丈夫、すぐに……おわっ!」
女「きゃあああああ!」
----
機体が大きく傾き二人は壁に体を叩きつけられた。
しかし一息つくと、また逆に叩きつけられる。
まるで箱の中に入れられて振り回されているようだった。
女「きゃあああああ!」
男「慌てるな!すぐに収まる!」
数分後、男の言う通り機体の揺れは収った。
二人はホッと一息つく。
女「イタタタタ……。
あんな時の乱気流は久しぶりに体験したわ。」
女は肩を押さえながら呟く。
男「そうだな……。くそっ、俺は膝をうっちまった……。ああああッ!」
男は突如すっとんきょうな声を上げた。
女「どうしたの?」
女の問いに、男は無言で計器を指さした。
女はそれを見て真っ青になる。
なんと計器がメチャクチャに壊れていた。
これでは航行不能だろう。
男「畜生!ここまで……ここまで来たのに……!」
女「嫌よ!私死ぬの嫌よ!
ねぇ!どうするのよぉ!」
男「慌てるなッ!
あ…………機体が……崩れてゆく……」
女「きゃあああああ!」
二人の健闘も虚しく、二分後船は時間と次元の波へと飲まれていってしまった。
----
「うーん……、はっ、ここは?」
明るい陽射しを浴び、『彼』は目を覚ました。
ここが何処かは分からないが、何とか自分が生きている事は分かる。
タイムマシーンが途中航行不能に陥った事は覚えている。
それと、自分が23世紀で犯罪を犯し、逃げてきた事も。
とりあえず、彼は意識をはっきりさせようと、顔を洗いに近くの水場へと足を運んだ。
「ん?やけに体が軽いな」
彼は自分の身の軽さに違和感を感じつつも、顔を洗いに水場へ顔を寄せる。
その瞬間、
「なんじゃこりゃあああああああ!!!!」
水面に映った自らの姿を見て、彼は100デシベルに達するか達しないかの声を張り上げた。
「え?え?どうなっちまってるんだ?」
彼は水面を除き込む。
その姿は幽霊や死神の様な類の姿をしていて、お世辞にも人間と呼べる様な物ではなかった。
「何だよコレマジで。こんなんじゃあまともに外も歩け……イテッ。」
すると、失意に沈む彼の上から何やら冊子の様な物が落ちてきた。
「イタタタタ、なんだよコレ……。」
彼は反射的にそれを見て拾いあげた。
黒いノートだ。
彼はこのノートをパラパラと捲り呟く。
----
「俺……このノート知ってる……。
使い方も……ルールも……。」
『彼』は呟く。『彼』は知らない事だが、どうやら「ゲームの記憶」を消されても「ノートの記憶」は残っていたらしい。
そして、自分は今『宿主』になる人間を探さなければならない事も何となく知っていた。
?「よーし、ケーシィしか居ないけど頑張るぞー
僕が一番乗りで現実に帰るんだ!」
ヤベッ、誰か来る。
『彼』はノートを掴み、そそくさと物陰に隠れる。
数秒後、『彼』の前を如何にも頭が悪そうな少年が音痴な鼻唄を歌いつつ、通り過ぎていった。
現実?帰る?意味が分からない。
「あのガキは……とりあえず、跡をつけてみよう。
現実に帰るとか気になる事を言ってたし……。
頭悪そうだから……もしかしたら利用出来るかもな!キシシシシシ。」
彼はこっそりとのび太の跡をつける事にした。
彼がタンバでのび太少年にノートを与えるのはまだ未来の話。
そして、彼が今までこのシチュエーションを何度体験してきたかは、最早誰も知らない事であった。
そして彼は知らない。自分は今、無限の時の中で同じ事を無限に繰り返している事を。
----
そして舞台は現実世界に戻る。
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ。
のび太「うーん。」
今日もけたたましく鳴るアラームの音。
のび太はそれを止めるべく、手を伸ばした。
カチッ。
スイッチを押された目覚まし時計は急におとなしくなる。
のび太「おやすみ……」
のび太は再び夢の中へとGO BACKする。
のび太は気づいていないが、今は8時。小学校ではとっくに遅刻の時間だ。
そして彼はまた気づいていない。目の前の鬼に。
「のぉびぃたぁ……!」
鬼が怒りを浮かべた声を上げるが、のび太は
のび太「うーん、行けっ、ケーシィ……
ああ、テレポートばっかしないで戦ってくれよぉ。」
ママ「のび太ぁぁ!!!!」
のび太「うあああああああああ!」
ママの雷が落ち、のび太はトーストをくわえ家から飛び出した。
ドラえもん「やれやれ……のび太君は……」
ドラえもんは小さくため息をついた。
----
のび太はすすきヶ原町を学校目指し、爆走する。
のび太『最高速度で……この角度を……曲がるッ!
のび太、いっきまーす!』
しかし残念ながらアムロ・のび太は角を曲がりきることは出来なかった。
突如、横から来た誰かにぶつかったからである。
「オフッ!」「スップリングッ!」
のび太はその衝撃で吹き飛ばされた。
のび太「イタタタタ……。誰だよ……。
ん?ジャイアン?」
のび太の顔が青ざめる。
ジャイアン「のび太ぁぁ!」
のび太「ひいいいいッ!」
のび太は死を覚悟した。
その時、
出木杉「やぁ、野比君に、タケシ君じゃないか。」
ジャイアン「出木杉ィ。」
ジャイアンは思わずのび太への攻撃を止めた。
ジャイアン「出木杉が遅刻なんて珍しいな。」
出木杉「今日は起きるのが遅くてね。
変な夢も見たし。」
ジャイアン、のび太「変な夢?」
のび太とジャイアンは気になり、訊く。
出木杉「いやぁね、皆でポケモンの世界に行くって夢さ。
余り覚えてないんだけど。」
----
ジャイアン「なんだぁ、その夢w」
ジャイアンは笑い出す。
出木杉「まぁいいよ、笑ってくれても、所詮夢だし。ああ、それと野比君」
出木杉はのび太の方を向く。
出木杉「僕の後ろからやす夫君とはる夫が来るんだ。どうせ遅刻するんだし、もう少し待ってようよ!」
スネ夫「まさか、優等生の出木杉がそんなことを言うとはね。」
嫌味な言葉と共に現れるスネ夫。
のび太「スネ夫!」
スネ夫は続ける。
スネ夫「ちなみに僕の後ろからはしずかちゃんが来るよ」
ジャイアン「なあんだ、皆遅刻してんじゃねえか。」
ジャイアンの言葉に、今度は皆が笑った。
そして数分後。
ジャイアン「よーし、皆揃ったな。じゃあ、学校目指してしゅっぱーつ。」
総勢七名の遅刻者は学校を目指し歩き始める。
誰もゲームの事を覚えていない。
学校には遅刻しているが、皆はこのふとした日常に幸せを感じていた。
のび太も、そんな日常がいつまでも続けばいいなと思った。
『キシシシシシ。』
のび太「ん?」
のび太は何か聞こえた気がして立ち止まった。
ジャイアン「おーい、のび太、何してんだよ置いてくぞ~」
スネ夫「全くのび太はノロマだな。」
のび太「待って、今行く~」
のび太は走り出した。
のび太『気のせい……かな?』
こうして青い空の下、彼らの日常はまた静かに過ぎてゆくのであった。
&size(large){あとがき}―ポケモンとのび太とノートと完―
----
&size(medium){あとがき}
605 名前:ポケモンとのび太とノートと ◆C1aEnJaUS2 [sage] 投稿日:2007/06/01(金) 22:12:05 ID:???
これでポケモンとのび太とノートは終了です。
たびたびの猿さんには焦りましたが、最後まで投下出来て良かったです。
この作品を書き終えれたのも、単に初心者である自分を助けてくれた皆さんのお陰だと思います。
本当に今までありがとうございました。
[[前へ>ポケモンとのび太とノートと その19]]
暗い暗い闇の中。
僕はずっとその中を泳いでいた。
いや、正確には僕は泳げないから、漂っていたと言った方が正しいかな。まぁそれはどうでもいいけどね。
ところで、僕はどの位の距離を、何時間、何日、いや何ヵ月泳いでいたのだろう。
それは僕には、全く分からなかった。
見当もつかなかった。
ただ、あの忌まわしい記憶は残っている。
シジマさんや海パン野郎達を躊躇無く殺していった事を。
僕は突然、言いようもない感じ(罪悪感って言うのかな)に襲われ身震いした。
何故あんなことをしたんだろう。
心が痛くなった。
その時だった。
突如目の前の闇を突き破り、一筋の光が差しこんだ。
その光は形を変えてゆく。
それは人の形をしている。僕の大好きな人。
僕はそれが誰か知っていた。
「しっ、しずかちゃん!」
僕は叫びをあげ、しずかちゃん元へ無我夢中に泳ぐ。正確にはもがく。
しかし泳げども距離は縮まらない。僕は自分の水泳の才能を呪ったが、そんな事はどうでもいい事だった。
しずかちゃんは言った。
しずか「………たさん……びたさん……のび太さん。」
----
のび太「しずかちゃぁぁーーーーん!」
彼女の囁きで、僕はもがきのペースを早めた。
いつのまにか涙が溢れ、顔はぐちゃぐちゃになっていた。
しずかちゃんはそんな僕に、一瞬微笑みを浮かべると僕の方へ(まるでタケコプターでもついてる様に)飛んで来た。
のび太「しずか……ちゃん?」
僕は囈の様に言う。
すると、しずかちゃんはもう一度僕に微笑みを投げ掛け、耳元で一言囁いた。
しずか「のび太さん……。
皆を……皆を……助けてあげて……。」
しずかちゃんはそう言うと僕の元から離れ、上の方へ(闇の中で言うのもなんだけど、まぁ僕の頭がある方が上だろ。常識的に。)飛んでゆく。
のび太「しずかちゃぁぁーーん!」
僕は懸命にしずかちゃんを追いかける。
のび太「しずかちゃん!
皆を……皆を救うってどういう事!?
ねぇ!しずかちゃん!
待ってよぉー。ねぇったらぁ!」
僕はかつて無い程の必死さでしずかちゃんを目指す。
涙と鼻水で化粧された顔は、かなり不細工なものになっていたであろう。
しかし僕は泳いだ。
しずかちゃん目指して。
僕の心の一つの輝き、そして光。それを目指して。
僕は光を求め、重いまぶたを開いた。
----
舞台は戻って自然公園。
のび太「………うーーん……。」
今にも起き上がろうとするのび太にゲンガーは唖然とする。
ゲンガー「な……何故こんなに早く起きれるんだ……。」
ドラえもん「僕は始めから思ってた。
君を捕まえる事は出来ないってことをね。
だから、ボールを囮にして『はっかのみ』をのび太君に投げ与えたんだ
かなりリスキーな作戦だけど成功して良かったよ」
ドラえもんの言葉を聞き、ゲンガーはぎょっとする。
ここでわざわざのび太を起こしたということは、次に来る策はただ一つ。
ゲンガー『俺をボールに回収する気だなッ!』
ヤバイ、これはマジでヤバイ。
奴があの眼鏡猿を起こしたのは、自分の『所有者』であるのび太に自分をボールに回収させる為だろう。
ボールの中に入れば如何に自分のレベルが高かろうと無力な存在。
眼鏡猿の所有権は解除してしまったから、もう一度、あのルールを満たさない限り奴を操る事は出来ない。
故にボールに収められたらもう終り。
絶対絶命のピンチだ。
しかし、まだ希望が潰えた訳では無い。
ノートのルールにより、のび太はここに至るまでの過程の記憶が全く無い。
----
故に、今すぐこの状況を理解する事は到底不可能だろう。
奴の単純な性格は、タンバまでの追跡、数日間を共にした日々で良く分かっている。
自分の話術なら、『かなしばり』が解ける残り数十秒位なら上手く時間を稼げるだろう。
解けたら即、あぼーんさせれば良い。
ゲンガーは簡単に作戦を立てると、まだ寝起きたばっかりののび太の元へと近づいた。
ゲンガー「おい、のび太!ヤベエぜ、お前がタンバで人殺したのがバレてんぞ。皆俺達を許さねえって言ってるぜ。どうするよ?」
とりあえず、今の状況を誤魔化す為に嘘の情報を流さなければ。
安い策だが、寝起きのまだ働いてない脳味噌には効果抜群だろう。
それを見たジャイアンはヤバイと思い、のび太に指示を飛ばす。
ジャイアン「おーい!のび太!騙されんな!早くそいつをボールに戻「アーーーーー、アーーーーー。
なんて言ってるのか聞こえないなぁ。アーーーーー。」
ジャイアン「あの野郎……。
ワザと大声を上げて、俺の声をかき消してやがる……」
ジャイアンは唇を噛む。
単純だが、時間を稼ぐには最良の手だ。
成程、最初にのび太に接近したのもこの為か。
ジャイアン「おーい!のび太!聞こえるだろうよぉーッ!のび太ぁぁ!」
----
ゲンガー「ワーーーーー、ワーーーーー。キシシシシシ。あのデブゴリラ。無駄なのによぉ。」
尚も声を上げるジャイアンを見てゲンガーはあざ笑う。
ゲンガー『さて、そろそろ『かなしばり』が消えるな。
そしたらまず眼鏡を消し去って……。ん?』
そこまで考えて彼は気づいた。目の前の少年の顔に。
涙でぐしゃぐしゃになり、憎しみを込めてこちらを睨んでいることに。
そして、一番ゲンガーの精神を揺さぶった事は、彼の手にモンスターボールが握られていた事だった。
ゲンガー「テメエッ!何を!」
のび太「何をって……?見たら……見たら分かるだろ……
時間犯罪者……お前を……封じ込める!」
有り得ない。この状況で奴がこんな行動をとれるのは有り得ない。
第一、ここに至るまでの記憶は無いし、ジャイアンの指示も全て聞こえなくした。なのに何故……
のび太「僕は……夢を見た。
しずかちゃんの夢を。君が……君がしずかちゃんをッ!だから……君は……僕が封じ込めてやる!」
のび太はモンスターボールをゲンガーの方へと傾ける。
ゲンガー「ガキがぁぁーーーー!調子に乗るんじゃねぇーーーーッ!」
ゲンガーの激昂が天に轟いた瞬間、彼の肩がすぅっと軽くなった。
ドラえもん「ヤバイ!『かなしばり』が解けた!」
ドラえもんも叫ぶ。
ゲンガー「食らえッ!シャドーボールッ!」
のび太「戻れ、ゲンガー!」
----
凄まじい光が辺りに発生する。
その光に驚き、ゲンガーは目を瞑る。
そして彼は光が消えると、再び目を開いた。
目の前に、あのにっくき眼鏡猿は居ない。
ゲンガー「キシシシシシ。
キシシシシシ!」
ゲンガーの笑いが響く。
彼は辺りを見回すが、回りには最早誰もいない。
ゲンガー「みんな……みんな消し飛びやがったぁッ!
キシシシシシ!雑魚共めッ!」
ゲンガーは笑った。笑う事しか出来なかった。
何故なら……彼は今檻の中の『無力な存在』だから。
あの瞬間……、始めに光弾を放ったのはゲンガーだった。
しかし、それがのび太にぶつかるかぶつからないかの瞬間、『あなをほる』で回りこんだジャイアンのイノムーが、二人の間に割って入ったのだ。
イノムーが吹っ飛ばされた次の瞬間……ゲンガーは無事ボールに回収されたのである。
舞台は戻る。
時間は止まっていた。
誰もすぐには動かなかった。
本当に終わったのか?そんな考えが皆を包んでいた。
しかし、しばらく時が経ち、ゲンガーが飛び出して来ない事を確信すると、スネ夫はヘナヘナとその場に腰をおいた。
スネ夫「……お……終わった……」
----
スネ夫に釣られたか、皆緊張の糸が解け、その場にヘタリ込む。
ジャイアン「勝ったのか……?
勝ったのか?俺達は?」
ドラえもん「勝ったよ……僕達は……」
ジャイアン「そうか………」
ジャイアンもすっかり骨無しになっている。
するとヘタリ込む三人の前に、目を赤くした少年がやって来た。
そいつは言った。
のび太「皆……皆……ごめん……本当にごめん……
今まで何が起こってたか分かんないけど……
タンバの……タンバのシジマさんを殺したのは……僕なんだ……」
ジャイアン「なんだっ(ry」
思わず叫ぼうとしたジャイアンの口をドラえもんが塞ぐ。
そしてドラえもんは言った。
ドラえもん「それは本当かい?」
ドラえもんの問いに、のび太涙を拭き無言で懐から小さい何かを取り出す。
それは紛れも無く、タンバジムバッジ、ショックバッジだった。
のび太は続ける。
のび太「……誰にも……勝てなくて……僕が……泣いてた時……ノートを拾ったんだ……
そして……僕は……」
ドラえもん「それ以上言わなくていい。」
ドラえもんはそう言い、のび太にハンカチを差し出した。
ドラえもん「大丈夫だよ、のび太君。僕らは……君を許すよ」
----
のび太「ドラえもぉぉぉん!!」
のび太はドラえもんに抱きつき、体を任せた。
溢れる涙を止める事は出来なかった。拭えど拭えど止まらない。
ジャイアン「泣かせやがる………」
スネ夫「うん……」
二人も貰い泣きしていた。
その時、
?「いやぁ、友情という物は美しい物だねえ」
見知らぬ男がこちらを見て拍手をしていた。
その姿はピッチリとしたスーツに包まれた、さながら戦隊もののヒーローのようだった。
スネ夫「誰だい?君は……?」
男「君に答える義務があるかい?」
スネ夫は素直な疑問を述べたが、男に即打ち消されてしまった。
その言葉にカチンときたのか、ジャイアンが男に詰め寄る。
ジャイアン「オイオイ……
お前が何処の誰だか知らないけどさ、何様のつも……」
ジャイアンの言葉はそこで止まった。
男の拳がジャイアンの体に当て身を食わせたのだ。
のび太「ジャイアン!」
驚きを隠せない一同に、一方男はトランシーバーのような物で誰かと会話する。
男「アー、こちら……。これから容疑者の確保に入る。
作戦開始!」
次の瞬間、
スネ夫「プギー!」
謎の光線に当たり、スネ夫が倒れた。
----
ドラえもん、のび太「スネ夫ーッ!」
のび太とドラえもんは反射的に光線の出どころを見る。
そこには、男と似たような格好をした女がそこに立っていた。
手には光線銃が握られている。
ドラえもん「一体これは何……」
男「おやすみ。」
男は光線銃を取りだし、その引金を引いた。
その場に二人の人間が倒れた。
男「よし、回収だ。」
男はのび太の元へと歩み寄り、その手から乱暴にモンスターボールを奪い取る。
のび太は薄れゆく意識の中、必死に意識を保ち彼らの話を聞いていた。
男「えー、もしもし?
タイムパトロールですか?たった今容疑者を確保しました。
時代と次元は……」
のび太『タイムパトロールだって!?』
のび太は驚く。
女「待って、この子まだ意識があるわ!」
ヤバイ。
のび太の血の気が引く。
男「じゃあ、もう一発撃って早く眠らしちゃいなよ」
ビビビビビビビ。
それはのび太の聞いた最期の言葉になった。
----
ボールを回収し終えた二人は、迎えのタイムマシーンに乗り元の時代へと引き返していた。ついでにノートも回収してきた。
女が言う。
女「あの子達はどうしたの?」
計器を確認しながら男は言う。
男「別の班が動いてる。
記憶と時間を少々操作して現実世界に返してやるんだってさ。
多分彼らが次に目覚めるのは彼らの寝床だよ。」
女「そう。」
女は一息つく。
男「それにしても、最後にアイツを封じ込めたあのボールは凄かったな。
23世紀の科学顔負けだよ。
『モンスターボール』って言ったっけ?
同じ名前の秘密道具があった気がするけど」
男はゲンガーの入ったモンスターボールを手に取り、呟く。
女「時間犯罪者の記憶の操作は?」
女は再び疑問をぶつける。
男「『ゲームの記憶』だけ消し去ってるよ。
後、暴れないように力を弱くしておいた。
奴も23世紀に戻れば裁かれるんだろうな
おっと……」
突如、タイムマシーンの機体が揺れ動く。
女「どうしたの?」
男「時間の乱気流にはいっちまったみたいだ。大丈夫、すぐに……おわっ!」
女「きゃあああああ!」
----
機体が大きく傾き二人は壁に体を叩きつけられた。
しかし一息つくと、また逆に叩きつけられる。
まるで箱の中に入れられて振り回されているようだった。
女「きゃあああああ!」
男「慌てるな!すぐに収まる!」
数分後、男の言う通り機体の揺れは収った。
二人はホッと一息つく。
女「イタタタタ……。
あんな時の乱気流は久しぶりに体験したわ。」
女は肩を押さえながら呟く。
男「そうだな……。くそっ、俺は膝をうっちまった……。ああああッ!」
男は突如すっとんきょうな声を上げた。
女「どうしたの?」
女の問いに、男は無言で計器を指さした。
女はそれを見て真っ青になる。
なんと計器がメチャクチャに壊れていた。
これでは航行不能だろう。
男「畜生!ここまで……ここまで来たのに……!」
女「嫌よ!私死ぬの嫌よ!
ねぇ!どうするのよぉ!」
男「慌てるなッ!
あ…………機体が……崩れてゆく……」
女「きゃあああああ!」
二人の健闘も虚しく、二分後船は時間と次元の波へと飲まれていってしまった。
----
「うーん……、はっ、ここは?」
明るい陽射しを浴び、『彼』は目を覚ました。
ここが何処かは分からないが、何とか自分が生きている事は分かる。
タイムマシーンが途中航行不能に陥った事は覚えている。
それと、自分が23世紀で犯罪を犯し、逃げてきた事も。
とりあえず、彼は意識をはっきりさせようと、顔を洗いに近くの水場へと足を運んだ。
「ん?やけに体が軽いな」
彼は自分の身の軽さに違和感を感じつつも、顔を洗いに水場へ顔を寄せる。
その瞬間、
「なんじゃこりゃあああああああ!!!!」
水面に映った自らの姿を見て、彼は100デシベルに達するか達しないかの声を張り上げた。
「え?え?どうなっちまってるんだ?」
彼は水面を除き込む。
その姿は幽霊や死神の様な類の姿をしていて、お世辞にも人間と呼べる様な物ではなかった。
「何だよコレマジで。こんなんじゃあまともに外も歩け……イテッ。」
すると、失意に沈む彼の上から何やら冊子の様な物が落ちてきた。
「イタタタタ、なんだよコレ……。」
彼は反射的にそれを見て拾いあげた。
黒いノートだ。
彼はこのノートをパラパラと捲り呟く。
----
「俺……このノート知ってる……。
使い方も……ルールも……。」
『彼』は呟く。『彼』は知らない事だが、どうやら「ゲームの記憶」を消されても「ノートの記憶」は残っていたらしい。
そして、自分は今『宿主』になる人間を探さなければならない事も何となく知っていた。
?「よーし、ケーシィしか居ないけど頑張るぞー
僕が一番乗りで現実に帰るんだ!」
ヤベッ、誰か来る。
『彼』はノートを掴み、そそくさと物陰に隠れる。
数秒後、『彼』の前を如何にも頭が悪そうな少年が音痴な鼻唄を歌いつつ、通り過ぎていった。
現実?帰る?意味が分からない。
「あのガキは……とりあえず、跡をつけてみよう。
現実に帰るとか気になる事を言ってたし……。
頭悪そうだから……もしかしたら利用出来るかもな!キシシシシシ。」
彼はこっそりとのび太の跡をつける事にした。
彼がタンバでのび太少年にノートを与えるのはまだ未来の話。
そして、彼が今までこのシチュエーションを何度体験してきたかは、最早誰も知らない事であった。
そして彼は知らない。自分は今、無限の時の中で同じ事を無限に繰り返している事を。
----
そして舞台は現実世界に戻る。
ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ。
のび太「うーん。」
今日もけたたましく鳴るアラームの音。
のび太はそれを止めるべく、手を伸ばした。
カチッ。
スイッチを押された目覚まし時計は急におとなしくなる。
のび太「おやすみ……」
のび太は再び夢の中へとGO BACKする。
のび太は気づいていないが、今は8時。小学校ではとっくに遅刻の時間だ。
そして彼はまた気づいていない。目の前の鬼に。
「のぉびぃたぁ……!」
鬼が怒りを浮かべた声を上げるが、のび太は
のび太「うーん、行けっ、ケーシィ……
ああ、テレポートばっかしないで戦ってくれよぉ。」
ママ「のび太ぁぁ!!!!」
のび太「うあああああああああ!」
ママの雷が落ち、のび太はトーストをくわえ家から飛び出した。
ドラえもん「やれやれ……のび太君は……」
ドラえもんは小さくため息をついた。
----
のび太はすすきヶ原町を学校目指し、爆走する。
のび太『最高速度で……この角度を……曲がるッ!
のび太、いっきまーす!』
しかし残念ながらアムロ・のび太は角を曲がりきることは出来なかった。
突如、横から来た誰かにぶつかったからである。
「オフッ!」「スップリングッ!」
のび太はその衝撃で吹き飛ばされた。
のび太「イタタタタ……。誰だよ……。
ん?ジャイアン?」
のび太の顔が青ざめる。
ジャイアン「のび太ぁぁ!」
のび太「ひいいいいッ!」
のび太は死を覚悟した。
その時、
出木杉「やぁ、野比君に、タケシ君じゃないか。」
ジャイアン「出木杉ィ。」
ジャイアンは思わずのび太への攻撃を止めた。
ジャイアン「出木杉が遅刻なんて珍しいな。」
出木杉「今日は起きるのが遅くてね。
変な夢も見たし。」
ジャイアン、のび太「変な夢?」
のび太とジャイアンは気になり、訊く。
出木杉「いやぁね、皆でポケモンの世界に行くって夢さ。
余り覚えてないんだけど。」
----
ジャイアン「なんだぁ、その夢w」
ジャイアンは笑い出す。
出木杉「まぁいいよ、笑ってくれても、所詮夢だし。ああ、それと野比君」
出木杉はのび太の方を向く。
出木杉「僕の後ろからやす夫君とはる夫が来るんだ。どうせ遅刻するんだし、もう少し待ってようよ!」
スネ夫「まさか、優等生の出木杉がそんなことを言うとはね。」
嫌味な言葉と共に現れるスネ夫。
のび太「スネ夫!」
スネ夫は続ける。
スネ夫「ちなみに僕の後ろからはしずかちゃんが来るよ」
ジャイアン「なあんだ、皆遅刻してんじゃねえか。」
ジャイアンの言葉に、今度は皆が笑った。
そして数分後。
ジャイアン「よーし、皆揃ったな。じゃあ、学校目指してしゅっぱーつ。」
総勢七名の遅刻者は学校を目指し歩き始める。
誰もゲームの事を覚えていない。
学校には遅刻しているが、皆はこのふとした日常に幸せを感じていた。
のび太も、そんな日常がいつまでも続けばいいなと思った。
『キシシシシシ。』
のび太「ん?」
のび太は何か聞こえた気がして立ち止まった。
ジャイアン「おーい、のび太、何してんだよ置いてくぞ~」
スネ夫「全くのび太はノロマだな。」
のび太「待って、今行く~」
のび太は走り出した。
のび太『気のせい……かな?』
こうして青い空の下、彼らの日常はまた静かに過ぎてゆくのであった。
&size(large){―ポケモンとのび太とノートと完―}
----
&size(medium){あとがき}
605 名前:ポケモンとのび太とノートと ◆C1aEnJaUS2 [sage] 投稿日:2007/06/01(金) 22:12:05 ID:???
これでポケモンとのび太とノートは終了です。
たびたびの猿さんには焦りましたが、最後まで投下出来て良かったです。
この作品を書き終えれたのも、単に初心者である自分を助けてくれた皆さんのお陰だと思います。
本当に今までありがとうございました。
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: