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[[前へ>出木杉の未来大冒険 その9]] ポケモンリーグの大広間、そこで自分と対峙する老人に尋ねる。 「僕には信じられない・・・何故、あなたがスネ夫君の仲間に?」 老人、カツラは答えない。 そして、モンスターボールを取り出した。 「やるしかないのか・・・トドゼルガ、頼んだよ!」 炎タイプの使い手であるカツラには水タイプのトドゼルガが一番だ。 それに対してカツラはキュウコンを出すと、さっそく仕掛けてきた。 キュウコンが放つ不気味な光、“怪しい光”によってトドゼルガは混乱する。 混乱して自分を攻撃するトドゼルガに対して、次にキュウコンが使った技は“誘惑”だった。 違う性別のポケモンの特攻を2段階下げる誘惑、♀のトドゼルガは♂のキュウコンに見事に魅了されてしまった。 混乱によって攻撃が失敗し、成功しても能力を下げられたためたいしたダメージを与えることが出来ないトドゼルガは、相性では有利なキュウコンに敗れてしまった。 つづいて僕はサンダースを出し、先程トドゼルガにくらわされたダメージがあるキュウコンを一撃で倒した。 だがその後出てきたウインディが強すぎた・・・サンダース、ポリゴンZの2体を倒してまだ半分以上も体力を残している。 この後にはまだファイアーも控えている・・・僕は悟った、カツラに勝つことは出来ない・・・・・・ 勝負を諦めた僕は別の方法を考えた、カツラに戦いをやめさせることだ。 カツラはグレン島でも、1の島でもとてもいい人だった、信者の仲間になったのは何か理由があるはずだ。 たとえば、誰かに弱みを握られているとか・・・・・・あああああ! 僕は記憶の片隅にあったあることを思い出すと、リザードンを出して命じた。 「リザードン、煙幕だ!」 煙でカツラの視界を防いだ撲は、その隙にこの部屋の端にある小部屋へ駆け込んだ ---- 数分後、小部屋から出てきた僕にカツラは尋ねた。 「逃げたかと思えば、また帰ってくるとは・・・何がしたいんじゃ?」 「カツラさん、あなたに会わせたい人がいます。」 僕がそういうと、先程まで僕の影に隠れていた老人が姿を現した。 服も体もボロボロになったその老人、名をフジという・・・そして、その老人はカツラの親友でもある。 フジの姿を見たカツラは目を丸くし、次の瞬間フジに駆け寄って彼と抱き合った。 「少年・・・出木杉じゃったかな? どうしてフジを?」 泣きながら問うカツラに僕は言った。 「あの小部屋には隠された地下室があったんです、そこにフジ老人は捕らわれていました。」 僕は思い出したのだ、あれは信者がポケモンリーグを乗っ取った後、1の島で見たニュースだ。 そのニュース番組の中で、キャスターはこんなニュースを報道していたのだ。 『シオンタウンでボランティアハウスを経営するフジ老人が行方不明なりました。 警察は何者かが金銭目的で誘拐した可能性があるとして捜査を続けています。』 あの時、修行のことと裏切り者の推理で頭がいっぱいだった僕はこのニュースをあまり気に留めなかった。 でも先程、ふとそのニュース、そしてグレン島でカツラがフジ老人との友情について厚く語っていたことを思い出し、こう推理した。 “もしかしてスネ夫はフジ老人に誘拐し、それを人質にとってカツラを部下にしているのではないか・・・” そしてその予想通り、フジ老人は監禁されていた。 「これでもう僕と戦う理由はなくなりましたよね、カツラさん。」 僕の問いにカツラは首を縦に振った。 「じゃあ早くここから出てください、あなたをこれ以上まきこむわけにはいかない。」 この問いに対して、カツラは首を横に振る。 「そういうわけにはいかん、ここまできたらわしもお前を手伝うぞ。」 そう言ったカツラはフジ老人をポケモンリーグの外に避難させると、再びこの部屋に戻ってきて僕の手を硬く握り、戦う決意を見せた。 ---- カツラが僕たちの仲間に加わった、これで5対3となり、僕たちが優勢になった。 僕とカツラが他の仲間の加勢に行こうとしたその時だった、上の階にいるスネ夫が突然大声で叫びだした。 「おい! 出木杉、のび太、静香ちゃん、そして裏切り物のカツラ! よく見ておけよ、これが負けた者の運命だ!」 スネ夫はそう言うと、バトルに負けてその場に座り込むジャイアンの目の前にハッサムを出す。 ハッサムは大きな鋏がついた腕を大きく引いた。 「や、やめろ!」 ジャイアンが叫んだが、ハッサムは全く動じない。 そして、ジャイアンの胸を真っ直ぐ貫いた。 一瞬の出来事だった、だれもその場を動くことができず、だれも止めることができなかった。 胸から大量の血を流し、ジャイアンは・・・死んだ。 「ハハハハハ! この絶望に満ちた死体の顔、こりゃあ傑作だ!」 あまりに酷い光景を見て沈んだ僕の心に、スネ夫の悪魔のような高笑いが深く刺さる。 僕らは、改めてそこにいる少年がかつてのスネ夫ではないことを思い知らされた。 「さあ、次は誰がこの豚ゴリラのようになってくれるのかな?」 スネ夫の悪魔のような問いが広い部屋に響き渡る・・・それに答えるかのように、ひとりの人物が足を踏み出した。 先程までカンナと戦っていた少女、源静香だ。 「静香ちゃん、危ないよ!」 僕とのび太が静香を止めようとする、だが彼女は僕らの手を振り払った。 「みんなばっかり危険な目にあわせるわけにはいかない・・・だから私が行く! それに、私は信じてる・・・スネ夫さんはきっと自分の過ちに気付いてくれるって・・・」 彼女の瞳には固い決意が宿っていた・・・それでも止めようとする僕たちの前にマチスとカンナが立ち塞がった。 僕とのび太をマチスが、カツラをカンナが足止めし、静香に近づくことを許さない。 階段を上った静香は、1人孤独にスネ夫に立ち向かっていった。 ---- 静香を救い出す、そのためには一刻も早くマチスを倒さなければいけない。 のび太も考えは同じようだ・・・僕らはマチスにダブルバトルを挑んだ。 戦いの前に、僕はマチスに訪ねた・・・何故信者に加担したのか、と。 マチスはカツラと違って、英語混じりの不自然な日本語で快く答えてくれた。 「あれはミーがクチバに帰ってきて何日かたった時のことだった・・・ ミーの前に1人のボーイ、骨川スネ夫が現れて興味本位でバトルを挑んできた。 だが問題はそのバトルだった・・・スネ夫はあえて水タイプのポケモン一体でバトルを挑んできた、しかもミーはスネ夫に敗れてしまった。 ミーのプライドはズタズタになった、そんなミーにスネ夫は言った “僕についてこい、そうすればお前はもっと強くなれる”とな・・・ ミーはその問いにイエスと答えた、スネ夫は約束どおり、サンダーという強力なポケモンを与えてくれた・・・・・・これが全てだ。」 最後までこの話を聞いた僕は、マチスに対して怒りの感情を抱いていた。 強くなりたい・・・そんな己の欲望のためにスネ夫の悪しき野望に加わった彼が許せなかったのだ。 だが殴り合っても巨漢の彼には勝てない、この怒りはポケモンバトルで晴らすことにした。 マチスは先程のび太との戦いで2体、のび太は3体のポケモンを失っている。 よって今僕たちの手持ちは合計6体、対するマチスは4体だ。 数の上では僕らの方が有利なのだが、勝負は五分五分だ。 相手を麻痺させて確実に先手を取れるようにするマチスの戦法、そして彼の手持ちのレベルの高さが僕らを苦しめた。 そしてこちらが残り3体、向こうが2体となり、敵がサンダーを出そうとしたまさにその時だった、再び上の階からあの悪魔の叫びが聞こえたのは。 ハッサムが静香に迫る、だが静香は全く動揺していない。 ハッサムが腕を振り上げたその時、静香は僕らに向かって微笑みながら言った。 「必ず・・・スネ夫さんを救ってあげてね。」 まるで天使のように微笑みながら、静香は息絶えていった。 ----
[[前へ>出木杉の未来大冒険 その9]] ポケモンリーグの大広間、そこで自分と対峙する老人に尋ねる。 「僕には信じられない・・・何故、あなたがスネ夫君の仲間に?」 老人、カツラは答えない。 そして、モンスターボールを取り出した。 「やるしかないのか・・・トドゼルガ、頼んだよ!」 炎タイプの使い手であるカツラには水タイプのトドゼルガが一番だ。 それに対してカツラはキュウコンを出すと、さっそく仕掛けてきた。 キュウコンが放つ不気味な光、“怪しい光”によってトドゼルガは混乱する。 混乱して自分を攻撃するトドゼルガに対して、次にキュウコンが使った技は“誘惑”だった。 違う性別のポケモンの特攻を2段階下げる誘惑、♀のトドゼルガは♂のキュウコンに見事に魅了されてしまった。 混乱によって攻撃が失敗し、成功しても能力を下げられたためたいしたダメージを与えることが出来ないトドゼルガは、相性では有利なキュウコンに敗れてしまった。 つづいて僕はサンダースを出し、先程トドゼルガにくらわされたダメージがあるキュウコンを一撃で倒した。 だがその後出てきたウインディが強すぎた・・・サンダース、ポリゴンZの2体を倒してまだ半分以上も体力を残している。 この後にはまだファイアーも控えている・・・僕は悟った、カツラに勝つことは出来ない・・・・・・ 勝負を諦めた僕は別の方法を考えた、カツラに戦いをやめさせることだ。 カツラはグレン島でも、1の島でもとてもいい人だった、信者の仲間になったのは何か理由があるはずだ。 たとえば、誰かに弱みを握られているとか・・・・・・あああああ! 僕は記憶の片隅にあったあることを思い出すと、リザードンを出して命じた。 「リザードン、煙幕だ!」 煙でカツラの視界を防いだ撲は、その隙にこの部屋の端にある小部屋へ駆け込んだ ---- 数分後、小部屋から出てきた僕にカツラは尋ねた。 「逃げたかと思えば、また帰ってくるとは・・・何がしたいんじゃ?」 「カツラさん、あなたに会わせたい人がいます。」 僕がそういうと、先程まで僕の影に隠れていた老人が姿を現した。 服も体もボロボロになったその老人、名をフジという・・・そして、その老人はカツラの親友でもある。 フジの姿を見たカツラは目を丸くし、次の瞬間フジに駆け寄って彼と抱き合った。 「少年・・・出木杉じゃったかな? どうしてフジを?」 泣きながら問うカツラに僕は言った。 「あの小部屋には隠された地下室があったんです、そこにフジ老人は捕らわれていました。」 僕は思い出したのだ、あれは信者がポケモンリーグを乗っ取った後、1の島で見たニュースだ。 そのニュース番組の中で、キャスターはこんなニュースを報道していたのだ。 『シオンタウンでボランティアハウスを経営するフジ老人が行方不明なりました。 警察は何者かが金銭目的で誘拐した可能性があるとして捜査を続けています。』 あの時、修行のことと裏切り者の推理で頭がいっぱいだった僕はこのニュースをあまり気に留めなかった。 でも先程、ふとそのニュース、そしてグレン島でカツラがフジ老人との友情について厚く語っていたことを思い出し、こう推理した。 “もしかしてスネ夫はフジ老人に誘拐し、それを人質にとってカツラを部下にしているのではないか・・・” そしてその予想通り、フジ老人は監禁されていた。 「これでもう僕と戦う理由はなくなりましたよね、カツラさん。」 僕の問いにカツラは首を縦に振った。 「じゃあ早くここから出てください、あなたをこれ以上まきこむわけにはいかない。」 この問いに対して、カツラは首を横に振る。 「そういうわけにはいかん、ここまできたらわしもお前を手伝うぞ。」 そう言ったカツラはフジ老人をポケモンリーグの外に避難させると、再びこの部屋に戻ってきて僕の手を硬く握り、戦う決意を見せた。 ---- カツラが僕たちの仲間に加わった、これで5対3となり、僕たちが優勢になった。 僕とカツラが他の仲間の加勢に行こうとしたその時だった、上の階にいるスネ夫が突然大声で叫びだした。 「おい! 出木杉、のび太、静香ちゃん、そして裏切り物のカツラ! よく見ておけよ、これが負けた者の運命だ!」 スネ夫はそう言うと、バトルに負けてその場に座り込むジャイアンの目の前にハッサムを出す。 ハッサムは大きな鋏がついた腕を大きく引いた。 「や、やめろ!」 ジャイアンが叫んだが、ハッサムは全く動じない。 そして、ジャイアンの胸を真っ直ぐ貫いた。 一瞬の出来事だった、だれもその場を動くことができず、だれも止めることができなかった。 胸から大量の血を流し、ジャイアンは・・・死んだ。 「ハハハハハ! この絶望に満ちた死体の顔、こりゃあ傑作だ!」 あまりに酷い光景を見て沈んだ僕の心に、スネ夫の悪魔のような高笑いが深く刺さる。 僕らは、改めてそこにいる少年がかつてのスネ夫ではないことを思い知らされた。 「さあ、次は誰がこの豚ゴリラのようになってくれるのかな?」 スネ夫の悪魔のような問いが広い部屋に響き渡る・・・それに答えるかのように、ひとりの人物が足を踏み出した。 先程までカンナと戦っていた少女、源静香だ。 「静香ちゃん、危ないよ!」 僕とのび太が静香を止めようとする、だが彼女は僕らの手を振り払った。 「みんなばっかり危険な目にあわせるわけにはいかない・・・だから私が行く! それに、私は信じてる・・・スネ夫さんはきっと自分の過ちに気付いてくれるって・・・」 彼女の瞳には固い決意が宿っていた・・・それでも止めようとする僕たちの前にマチスとカンナが立ち塞がった。 僕とのび太をマチスが、カツラをカンナが足止めし、静香に近づくことを許さない。 階段を上った静香は、1人孤独にスネ夫に立ち向かっていった。 ---- 静香を救い出す、そのためには一刻も早くマチスを倒さなければいけない。 のび太も考えは同じようだ・・・僕らはマチスにダブルバトルを挑んだ。 戦いの前に、僕はマチスに訪ねた・・・何故信者に加担したのか、と。 マチスはカツラと違って、英語混じりの不自然な日本語で快く答えてくれた。 「あれはミーがクチバに帰ってきて何日かたった時のことだった・・・ ミーの前に1人のボーイ、骨川スネ夫が現れて興味本位でバトルを挑んできた。 だが問題はそのバトルだった・・・スネ夫はあえて水タイプのポケモン一体でバトルを挑んできた、しかもミーはスネ夫に敗れてしまった。 ミーのプライドはズタズタになった、そんなミーにスネ夫は言った “僕についてこい、そうすればお前はもっと強くなれる”とな・・・ ミーはその問いにイエスと答えた、スネ夫は約束どおり、サンダーという強力なポケモンを与えてくれた・・・・・・これが全てだ。」 最後までこの話を聞いた僕は、マチスに対して怒りの感情を抱いていた。 強くなりたい・・・そんな己の欲望のためにスネ夫の悪しき野望に加わった彼が許せなかったのだ。 だが殴り合っても巨漢の彼には勝てない、この怒りはポケモンバトルで晴らすことにした。 マチスは先程のび太との戦いで2体、のび太は3体のポケモンを失っている。 よって今僕たちの手持ちは合計6体、対するマチスは4体だ。 数の上では僕らの方が有利なのだが、勝負は五分五分だ。 相手を麻痺させて確実に先手を取れるようにするマチスの戦法、そして彼の手持ちのレベルの高さが僕らを苦しめた。 そしてこちらが残り3体、向こうが2体となり、敵がサンダーを出そうとしたまさにその時だった、再び上の階からあの悪魔の叫びが聞こえたのは。 ハッサムが静香に迫る、だが静香は全く動揺していない。 ハッサムが腕を振り上げたその時、静香は僕らに向かって微笑みながら言った。 「必ず・・・スネ夫さんを救ってあげてね。」 まるで天使のように微笑みながら、静香は息絶えていった。 ---- ジャイアンに続き、静香までもがスネ夫に殺されてしまった。 呆然と彼女の死を眺める僕に対して、のび太は顔を真っ赤にしながら叫びだした。 「スネ夫! 僕は、僕はお前を許さない!」 全速力で階段目掛けて走っていくのび太。 おそらく、今の彼は誰にも止められないだろう。 僕はのび太を止めるかわりに、彼に手持ちの回復アイテムを全て授けた。 彼ならスネ夫を倒すことが出来る、そう思って彼に全てを託したのだ。 僕は再びマチスとの戦いに戻る・・・つもりだった。 しかし、残りの手持ちが同じ上にサンダーを残している彼に勝つのは難しいだろう。 そこで僕はカンナと戦っているカツラに合流した。 ダブルバトルなら、勝機があるかもしれないと考えたのだ。 こうしてカツラと僕、カンナとマチスのダブルバトルが始まった。 ちなみに、偶然にも全員の残りポケモンが2体ずつだった。 僕はリザードン、カツラはウインディを出した。 対するマチスはマルマイン、カンナはラプラスだ。 最初に動いたのは最速のマルマイン、10万ボルトでリザードンの体力を削った。 次はリザードン、僕はカツラに目で合図をした・・・そしてリザードンに全体攻撃の地震を命じた。 マルマインとラプラスはダメージを受けたが、ウインディは受けない。 僕の合図を受け取ったカツラがまもるを命じていたのだ。 最後に行動したラプラスは同じく全体攻撃の波乗りを使った。 ウインディにダメージを与え、リザードンを倒したが、同時に味方であるマルマインも倒してしまった マルマインを倒されたマチスがカンナに文句を言い始めた。 どうやら予想通り、マチスとカンナにはお世辞にもいいコンビとは言えないようだ。 これなら勝てるかもしれない・・・そう思い出した僕の目の前にマチスがボールを投げた。 そして、伝説のポケモンサンダーが電気を纏いながら姿を現した。 ---- サンダーの迫力に怖気づく僕に、カツラがこっそりと耳打ちした。 「マチスの手持ちは後一体、ここはサンダーを狙い撃ちで倒してしまおう。」 その言葉を聞いた僕はいやらしい笑みを浮かべて囁いた。 「なら、この手はどうでしょうか・・・」 僕の言葉を聞いたカツラは同じように微笑んだ。 僕はボーマンダを出し、マチスへ向かって言った。 「このボーマンダは最強のポケモンです、あなたの信頼する伝説のポケモンとやらが倒せますかねえ?」 僕の挑発的な一言に釣られたマチスは、ウインディを倒せる状況なのにボーマンダを攻撃した。 まさに伝説というべき攻撃が、ボーマンダの体力を大幅に削った。 次にウインディが、ボーマンダに手助けを使った。 そしてボーマンダのターンが回ってくると、僕はしてやったりという笑みを浮かべた。 僕の命令を受けたボーマンダがサンダーに岩雪崩を使う。 効果抜群に、手助けによる威力の上昇、そしてチイラの実によって上がった攻撃力がサンダーを一撃で倒した。 己の敗北を目の当たりにしたマチスは崩れ落ちる。 「そんな馬鹿な・・・サンダーが、最強のはずだったサンダーが!」 そんなマチスに僕は告げた。 「あなたが冷静にウインディを攻撃していたら。手助けもチイラの実も発動しなかった。 結局あなたはサンダーの力に溺れ、その力を過信しすぎたんですよ。」 マチスは己の過ちに気付くと、初めて笑みを浮かべた、そして・・・ 「スネ夫との契約条件だ、負けたらミーは死を受け入れる・・・・・・」 マチスは懐から拳銃を取り出し、自らの手で胸を打ちぬいた。 胸から大量の血を流しながらも、マチスは笑みを崩すことはなかった。 「デキスギ、最後にユーと戦えてよかった。 おかげで、心地よく眠りにつけそうだ・・・」 それが、戦闘狂マチスの最後の言葉だった。 ---- マチスが倒れ、1人になってしまったカンナはラプラスの波乗りでウインディを倒す。 そして状況を2対2に戻すために、最後の一体フリーザーを繰り出した。 カツラもウインディの代わりにファイヤーを繰り出す。 これで伝説の3鳥全てが現れたことになる。 今フィールドに出ている4体の中で、一番素早いのは僕のボーマンダだ。 だがそのボーマンダは、一発攻撃を受ければ倒れてしまうだろう。 この状況を打開した上に戦闘に勝つ方法は一つしかない。 ここで敵の片割れを一撃で倒し、尚且つファイヤーももう1匹を一撃で倒す展開だ。 つまり、うかつに攻撃に出ると僕はその後の攻撃で全滅してしまう可能性があるのだ。 今この状況で全滅は許されない、しかし道具は全てのび太に渡してしまった。 なら手段は一つしかない・・・僕はボーマンダに“まもる”を命じた。 幸運なことに、カンナのポケモンは2体ともボーマンダを攻撃してくれた。 ファイヤーでラプラスを倒したカツラは、その様子を見て言う。 「どうしたカンナ、ここでまもるがくることなどお主ならたやすく読めたはず。 そもそもお主はどうしてあの少年に加担するんじゃ?」 カツラの説教にも似た言葉を受けて、カンナは初めて発言した。 「私だって・・・私だって好きでこんなことやってるわけじゃない・・・・・・」 今のカンナの呟き・・・ もしあれが本心から出た言葉なら、カンナがスネ夫に就いたのには理由があることになる。 そして僕はおそらく、その理由を知っている・・・ 「4の島。」 僕がそう呟くと、カンナの顔色が明らかに変わった。 「そうか、そういうことじゃったのか・・・」 カツラも今の出来事で事情を察したようだ。 「わしがフジを人質に取られていたように、お主も人質を取られとったのか。 お主の故郷、4の島の島民たちを・・・」 カツラの言葉を聞いたカンナは一言、 「よく分かったわね。」 と呟いた。 ---- 4の島は今、島を覆うように巨大な竜巻いくつもが発生し、連絡手段も全て絶たれている。 だがもし、それがスネ夫の手段だったとしたら? そう、スネ夫は4の島の住民全員の命を利用してカンナを仲間に引き入れたのだ。 「カンナ、やはりお主も本心で戦っているわけではなかったのか。 なら、これ以上無駄な戦いはやめようではないか・・・・」 カツラが差し伸べた手を、カンナは払いのけて言った。 「戦いをやめる? そんなこと出来るわけないじゃない! あの少年がポケモンに命令すれば、一瞬で4の島は竜巻に襲われて崩壊するのよ! 私が戦い続けなければ、4の島のみんなが死んじゃう・・・」 カンナの目から涙がこぼれる・・・その姿を見た僕はこう言う。 「カンナさん・・・もしここで僕らが勝てば、4の島もこの世界も救うことができる。 だから・・・僕が、僕があいつを倒せばあなたが苦しむ必要はない!」 僕が微笑むと、カンナも軽く微笑んで見せた。 初めてみたカンナの笑い顔は、先程見せた静香の微笑みに負けず劣らず美しかった。 カツラとカンナは、持っている回復アイテムを全て僕のポケモンに使ってくれた。 「これでお主のポケモンは全回復じゃ、だがわしらのポケモンはボロボロじゃ。」 カツラの言うとおり、二人の手持ちは大ダメージを受けている伝説のポケモン2匹のみだ。 それに、2人自身にも悩みによる精神的な疲れやバトルによる肉体的な疲れがある。 おそらく、これ以上戦うのは厳しいだろう。 2人の思いを受け取った僕は、のび太の援護をするために二階へ上がった。 だが2階に上がった瞬間目にしたのは、バトルに負けたのび太の姿だった。 そんなのび太に向かってスネ夫は叫ぶ。 「お前は僕を裏切った・・・絶対に、絶対に許さない! ガブリアス! やれええええええ!」 スネ夫の命令を聞いたガブリアスは、のび太のほうを向いて破壊光線の準備をする。 のび太は一歩も動けない、僕も一歩も動けなかった・・・ 次の瞬間、ガブリアスの破壊光線がのび太の体を跡形もなく消し去った。 呆然と立ち尽くす僕の手のひらに、のび太の服と思われる黄色い布切れが落ちてきた。 ---- なぜだろう・・・のび太と修行していたときの記憶が頭をよぎった。 あの日、僕は思い切ってのび太に問うてみたのだ。 「ねえのび太君、君ってちょっと僕のことは避けてないかい?」 ずっと気になっていたことだった・・・無礼な質問だということは承知の上だ。 「やっぱり、わかる?」 のび太の問いに僕は首を縦に振ると、のび太は話を続けた。 「そのー、言いにくいんだけど・・・・・・静香ちゃんが・・・」 思わぬところで静香の名前が出てきたので僕は驚いた。 「実は僕・・・静香ちゃんのことが好きなんだ。 でも、静香ちゃんは出木杉のことが好きなんじゃないかなって思って・・・ それで・・・僕、君に嫉妬してたんだ。」 のび太が静香に好意を抱いているのは、彼の日頃の態度から感づいていた。 だがのび太が僕を恋敵と思い込み、敵視していたというのは意外だった。 「大丈夫、僕は今のところ静香ちゃんは友達としか思ってないよ。 それに・・・静香ちゃんには僕より君の方が似合っていると思うよ。」 僕の言葉に嘘はない、静香とのび太はお似合いの2人だろ心から思っている。 すると、その言葉を聞いたのび太は突然謝ってきた。 「出木杉、ごめん・・・僕は何でも自分より優れている君に嫉妬して君をいやな奴だと勝手に決め付けてた。 本当の君は、こんなにいい奴だったのに・・・」 涙を流しだしたのび太に僕は一言、“気にしなくていいよ”と言った。 ―――そののび太は先程、思いを寄せていた静香の仇を討とうとして・・・死んだ。 修行中、のび太と交した言葉の一つ一つが僕を苦しめる。 勉強もスポーツも音楽も工作も、何でも完璧にこなし、皆から天才と呼ばれてきた僕。 そして、天才と呼ばれるゆえに皆に少し距離を置かれていた僕。 そんな僕に、真正面からぶつかってきてくれたのび太。 僕が、初めて親友だと誇れる人物だったのび太。 そして、そんなかけがえのない親友を殺したスネ夫。 床に落ちているジャイアンと静香の死体、そして手のひらの布切れ・・・ それを見て僕はこう思う・・・”スネ夫が憎い” 生まれて初めて、心から誰かを憎いと思った瞬間だった・・・・・・ ---- ―――これが、僕が歩んできた物語の全てだ。 タイトルを付けるとすれば、「出木杉の未来大冒険」なんていう感じだろうか。 ここまでの物語と違い、これから訪れる未来・・・・・・ そう、この物語の結末はまだ誰にもわからない・・・ “神のみぞ知る”と言ったところだ。 手のひらには先程取り出したモンスターボールがある。 正面には、僕の敵にしてこの物語のラスボスであるスネ夫が立っている。 僕はその冷酷な瞳を睨みつけ、手のひらのモンスターボールを硬く握り締める。 下でこの勝負を見守るカツラとカンナ。 チャンピオンロードで信者たちと必死で戦っているであろうイブキ。 彼らが守ろうとしているこの世界、ポケットモンスターという架空の世界のカントー地方という場所。 それらのために戦い、散って行ったジャイアン、静香、のび太。 そして、スネ夫への憎しみ。 様々な思いに動かされ、僕はモンスターボールをフィールドへ投げた。 [[次へ>出木杉の未来大冒険 その10]] ----

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