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DP3 その1 - (2006/12/11 (月) 22:40:53) のソース

プロローグ#1

最早お馴染みのNINTENDO DS用ソフト、
ポケットモンスター ダイアモンド&パールが発売されてから二ヶ月。
未だ冷め止まぬポケモン熱は、とある空き地をも熱くしていた。

ポケットモンスターの醍醐味、通信対戦。
「バクオング! ハイパァーボォイス!」
と、子供にしては太い声で熱くなっている、恰幅の良い少年の名は、剛田 武。
通称ジャイアンである。彼の歌声は個性的で、どんな偉大な音楽家でも真っ青だ。

「くっそ~! また負けたぁ……」
と、情けない声を漏らすのは、
丸眼鏡がトレードマークのMr.もやしっ子。
その名は野比 のび太。

「ホントのび太はゲームの才能がないなぁ。
 今の勝負で128連敗だよ? いや、逆にこれも立派な才能かな? ハハハ」
と、口を尖らせながら――いや、この口は生まれつきか?――しゃがれた声で皮肉るのは、
そのトゲトゲリーゼントは最早凶器、骨川 スネ夫。

「そんなこと言ったらのび太さんが可哀想よ。
 あと100回くらい勝負すれば、のび太さんだって一回くらい勝てるはずよ」
と、馬鹿にしているのか、していないのか……
そんな、よく解らないフォローを入れたのは、おさげがよく似合った女の子、
皆の人気者、源 静香。

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プロローグ#2

空き地のシンボルとも言える三つの土管を中心に、四人は思い思いに集い、
今日もポケモンD&Pで遊んでいる。

ジャイアンに敗北し、スネ夫に皮肉られたのび太。
肩を落としてボソッと呟く。
「もし現実にポケモンがいたら、きっと僕が一番強いよ……」
負け惜しみだ。
のび太お馴染みの負け惜しみ。
何を根拠にそう言っているのか解らない。いや、それ以前に、まず意味が解らない。
現実にはポケモンはいない。

そんなのび太の聞こえるか聞こえないかの呟き――のび太自身も聞こえまいと思った呟きを、
この男、スネ夫は聞き逃してはいなかった。
「何言ってんだよのび太。現実にポケモンが存在しても、のび太が一番弱いに決まってるよ。
 のび太は何をやってもダメだからね」
彼の皮肉は、そのトゲトゲリーゼントよりも研ぎ澄まされていると言っても過言ではないだろう。
ちなみにジャイアンは聞き逃していたために、話に入れない感じだ。

そんなスネ夫の鋭すぎる言葉のリーゼントに心が折れたのか、のび太は泣きながら空き地を飛び出した。

「もし現実にポケモンがいたら――」
そんなのび太の言葉は違った形で実現することになる。

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第1話『ポケモンの世界』#1

とある住宅地の一角。
趣味の悪い桃色の屋根に、無駄に多い窓、ベニヤ板にしか見えない外壁に、アンバランスな間取り――
不可解な点を挙げれば切りが無いこの家こそ、野比家である。

そんな奇怪な家の二階、のび太の部屋。
今日もソレは起動している。
「さて、おやつのドラ焼きでもたべようかな。ぐふふふ」
言わずもがなだが、ソレの名称はドラえもん。
機械仕掛けの青いタヌキ。もとい青いネコ。
未来の世界から送り込まれたネコ型ロボットである。
その自慢の四次元ポケットから、ありとあらゆるとんでも兵器を繰り出す姿は、ある意味ポケットモンスターだ。

ドラえもんがおやつのドラ焼きを一つ、また一つ口へと放り込む。
そしてついには、のび太の分のドラ焼きにまで手をつけてしまった。
その時――

「ドラえもぉぉ~ん!」
のび太だ。
またのび太が泣きながら帰ってきた。

のび太のドラ焼きを頬張りながら、ドラえもんは狼狽した。
理由と頬張っている物はイコールで結ばれる。

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第1話『ポケモンの世界』#2

階段を一段飛ばしでドタドタと上がり、勢いよく自室の襖を開けるのび太。
そして聞いてもいないのに、自分が泣いている訳をドラえもんに話しはじめた。
「ジャイアン達が――。それでスネ夫が――」
感情が高ぶっているためか、ドラえもんが機械のくせに喉にドラ焼き詰まらせていることに気づかないのび太。

そして今日空き地であった出来事を散々話したのび太は、いよいよ本題に入る。
「だからね、現実にポケモンが存在すれば、僕が一番強くポケモンを育てられることを証明したいんだ。
 何か道具出してよドラえも~ん」

そんなのび太の言葉に、ドラえもんの頭脳――コンピュータがフル稼働する。
(道具を出すことは可能。しかし、のび太君の意味の解らない理由で道具を出すわけには・・・・・・。
しかし、問題が一つ。僕はのび太君のドラ焼きを・・・・・・。
クソッ! コレを断れば、必ずドラ焼きをネタに何か言ってくるだろう。それはかなり癪だ。
ここはドラ焼きの話題に持ち込まないためにも・・・・・・)
「しょうがないなぁのび太君は」
ドラえもんはそう言うと、毎週金曜お馴染みの、タタタタン♪の効果音の後に、
不本意ながらも道具を出した。

「ポケモンボールー」

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第1話『ポケモンの世界』#3

ドラえもんが繰り出した謎の道具、ポケモンボール。
直訳するとポケモンの玉。このネーミングセンスはいまいちな感がある。
そしてその外観は、一見すると、ゲーム内では二百円のモンスターボールそのものだ。

「わかった! このボールの中にポケモンが入ってるんだね? ドラえもん」
「いや全然違うよのび太君」
「ああ・・・・・・そう・・・・・・」
ぐーんと上がったテンションが、がくっと下げられたのび太。

そんなのび太を余所に、ドラえもんはポケモンボールを簡単に説明する。
「この道具は現実にポケモンを呼び出したり、また、生み出したりする道具じゃないんだ」
「えぇ~。ならそんな道具いらないよドラえもん」
「話はちゃんと最後まで聞いてよのび太君。
 この道具はね、使用すれば、逆に自分自身がポケットモンスターの世界へ行くことができるんだ」
「えぇ!? なら最高の道具じゃないかドラえもん!」
のび太の気持ちの切り替え速度は神の域に達していた。神が気持ちの切り替えをすることがあるのかどうかは別として。

「で? これはどうやって使うの?」
早くポケモンに会いたくて仕方がないというのび太に対し、ドラえもんは至って冷静に答弁する。
「使い方は簡単。ポケモンボールの真ん中がスイッチになってるから、そこを押してみなよ」
のび太の心は落ち着かず、胸が騒ぎ立てている。
その様が顔に表れて、少し気持ち悪い顔になっていることに気づかないほどに。
「じゃあ押してみるよ? ドラえもん」
のび太はそう言うと、早速スイッチを押した。

ポチッとな。

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第1話『ポケモンの世界』#4

ポケモンボールが、ゲームのモンスターボールと同様にパカッと開く。
するとのび太は光の粒子と化し、ポケモンボールに吸い込まれてしまった。
その光景は、さながら、ゲットされるのび太という感じか。

光の粒子は、謎の空間を飛び回る。この時点では、のび太の意識はない。
この状態はデータの変換作業――即ち、現実の世界ののび太というデータを、ポケモンの世界ののび太というデータに変換しているのだ。
こうすることで、ポケモンの世界での様々なルールを強制的に守らせることができる。
このルールの内容は、物語が進むにつれて紹介していこう。

のび太が意識を取り戻す。
「ここは・・・・・・」
最初に目に映ったものは雲一つない青い空。
のび太は仰向けに大の字になっていた。暫くボーっとしていると、
「意識が戻ったみたいだね」
と、超高性能マシーン、ドラえもん。
いつの間にかコチラヘ着いていたようだ。
のび太はムクリと起き上がり、とりあえず辺りを見回す。
森の中? 目の前には澄んだ湖が広がっている。
「ドラえもん。ここがポケモンの世界なの?」
「そうだよ。気づかないのかい? のび太君。ここは――」

ここはシンジ湖のほとり。

ポケモンの世界。
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