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挑戦者 その4 - (2007/01/16 (火) 21:25:45) のソース

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 のび太はポケモンセンターでため息をついていた。 
前の町からここまでの道のりは、体力のないのび太にとって地獄だった。 
途中でハヤトが業を煮やし、エアームドにくわえさせて飛んだことも。 
「のび太、休憩はすんだか?」 
ハヤトが気楽に話しかけてきた。 
 のび太が頷くと、ハヤトは「よし」 と微笑んだ。 
「じゃあもうジム戦できるな」 
「ちょ、ちょっと待ってよ」 のび太は冗談じゃないという風に首を振る。 
「明日でいいじゃないか。 それより、町を回ってみようよ!」 
 のび太に懇願され、ハヤトはしぶしぶ頷いた。 
 ――この町は一見派手で、そこらじゅうにネオン付きの看板がたてられている。 
人々もどこか陽気で、活気にあふれていた。 
 のび太はすっかりここの空気に飲まれ、気持ちが浮かれてきていたが 
「? どうしたの、ハヤテ」 「ハヤトだ」 
と素早く返したハヤトだったが、その顔は険しかった。 
「俺はこういう騒がしいところは嫌いなんだ」 
ハヤトは腕を組みながら、人ごみを避けていった。 
 のび太はせかせかとその後をついていった。 
そんなふうに歩いているうちに、二人はジムの前に来ていた。 
 ジムは赤と黄色に装飾され、周りの建物より一際派手にある。 
「……ジムリーダー、マチス。イナズマアメリカン……」 
のび太は入り口の看板を棒読みする。 
「ふん。ジムにこんな装飾などしやがって……」 
とハヤトは嘲り、その場を去ろうとした。 
 だが、 

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ハヤトははっとして振り返る。 
 そこはジムの脇の路地裏だった。 
「……のび太、来てみろ」 
ハヤトはのび太の制止を無視し、ずんずん入っていった。 
 空が夕闇深くなるにつれ、路地裏は急速に暗くなっていった。 
「どうしたのさ、ハヤt」 「静かに! 何かきこえるだろ」 
 のび太はいつものノリが遮断されたことにイラッときたが〔確信犯〕 
素直に耳をそばだてた。 
 ……やがて微かな、鳴き声が聞こえてきた。 
「鳥、かなあ」 「ああ、あれはムックルだ」 
(流石ひこうジムリーダーだなぁ) とのび太は感心した。 
 やがて二人はその音源を見つけた。 
ムックルが二体のコイルと一体のパチリスの攻撃をくらっている。 
三体の電撃が放たれるたびに、ムックルは悲痛な叫びをあげた。 
(あの、ムックルかわいそうに。いじめられて、ん?) 
のび太が呆気にとられている間に、ハヤトが飛び出していた。 
「エアームド、奴らを追い払え!」 
 ハヤトが繰り出したエアームドがコイルに突撃する。 
コイルは反撃するが、 エアームドとはレベルの差がありすぎた。 
「エアームド、スピードスター!!」 
 エアームドの閃光がもう一体のコイルを吹き飛ばす。 
「エアームド、最後は」 「おうおう、てめえ!!」 
 突然怒鳴られ、ハヤトは路地の奥を見た。 
バイクにまたがったスキンヘッズ三人が立っていた。 

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「てめえ、兄貴のポケモンに何しやがるんでぇ!!」 
どうやら手下の一人が口を出した。 
「兄貴の遊びを邪魔しやがって、このy」 「遊びだと!?」 
二人目の手下の言葉を遮って、ハヤトが怒鳴る。 
「ひこうポケモンを何だと思っているんだ!!」 
「はん、ひこうがどうした?」 一際大柄のスキンヘッズがハヤトを睨む。 
「ただの雑魚だろうが」 
その言葉で、ハヤトはきれた。 
「エアームド!!! あのはげを八つ裂きにしろ!!!!」 
エアームドは猛スピードで突進する。 
はげ共は、失礼、スキンヘッズたちは間一髪でよけ、その場に倒れる。 
「てめえ!! 俺のパチリスちゃんになにかあったら殺すぞ!! ゴラァ!!!」 
リーダー格の奴は〔のび太が爆笑してることも知らずに〕怒声を上げた。 
「五月蝿い!! これでも食らえ!!」 
 ハヤトはリュックからピッピ人形を取り出し、投げつけた。 
「ピ、ピッピちゃん!! ぶぉっ!! ぉぉ」 
 スキンヘッズは〔鼻から〕 大量出血し、その場に倒れた。 
「あ、兄貴いぃ!!」 
手下たちはリーダーに駆け寄る。 
手下たちは兄貴に触れようとするが、ハヤトの殺気に満ちた目線に気づいた。 
「ち、ちくしょう!! 覚えてやがれ!」 
 手下たちは自分たちのコイルを戻し、一目散に逃げていった。 
 その場に一瞬沈黙が流れた。 

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 のび太は隠れていた物陰から出た。 
「ハヤト、もうかえろ」  
「HEY! おめえら!」 
そういいながら、ジムの裏口からイナズマアメリカンが出てきた。 
「人のジムの裏でなに暴れてるんだYO! 
近所からJANJANうるせえうるせえCALLが来るじゃ」 
 ハヤトはマチスの口早な言葉を無視して振り返った。 
「A-HA-? てめえどこへっと!」 
マチスは地面に横たわるスキンヘッズに気づいた。 
「……HEY,YOU」 
マチスに呼び止められ、ハヤトは立ち止まる。 
「暴れてたのはこいつだろ。だったらSORRY。こいつは俺の部下なんだ」 
急に頭を下げるマチスに、ハヤトは目を見開く。 
「いや、いいんだ。俺はただ」 
「こいつは俺と違ってTHINKしたらすぐにMOVEしちゃう馬鹿だから」 
その言葉と、マチスがちらりと地面にのたばるムックルを見た瞬間、
ハヤトの微笑みは消えた。 
 ハヤトはキッとマチスを睨む。 
「貴様もひこうを愚弄する気か!!」 
「HAHAHA! 俺は何ともいってないぜ」 といいつつマチスは
明らかな蔑みの目をハヤトに向ける。 
 しばらく二人は睨みあい、、やがてマチスがスキンヘッズを持ち上げた。 
「じゃあな。FRY BOY」 
マチスはパチリスが入るのと同時に戸をしめた。 
 ハヤトは舌打ちして振り返った。 

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「ねえハヤト!」 「ハヤテだ」 「ハヤテ……あれ? ねえハヤテ! 」 
「ハヤトだ」 「ねえハヤト」 
なんて会話を繰り返すうちに、二人はポケモンセンターにたどりついた。 
 だが突然目の前に何かが舞い降りてきて、二人は立ち止まった。 
「あれ、さっきのムックルだ」 
 のび太は興味津々に抱えた。 
 そのままのび太たちはセンターの中に入る。 
「僕らをついてきたのかな。……あれ?」 
のび太はムックルを観察しているうちにあることに気づいた。 
「このムックル、メールがついているよ」 
ハヤトはやっとその言葉で振り向いた。 
「誰かのポケモンなのか?」 「うん、多分」 
 二人はいすに腰掛け、メールを開いた。 
 それは手書きで、こう書かれている。 
 SOS ―――― 
 のび太は固まった。「ねえ、これ」 
「ああ、これを出した人は」 ハヤトも緊張した面持ちで呟いた。 
「ねえ、これは助けてほしいんだよね? だったら」 
「落ち着け、のび太。 今はあのジムを勝利することが先だ」 
 ハヤトはそう言うが、のび太はあいた口がふさがらないままだ。 
「いいか、この先何かがおきれば絶対旅に関わってくるはずだ。
その前にここを出なきゃ意味ない」 
 ハヤトはそう言うと、自室へ帰っていった。 
のび太はやっとの思いで手紙を畳む。 
「……あれ、ムックル?」 

 ハヤトは突然後ろからつつかれ、振り返る。 
「何だ、どうしてお前ここに!?」 
ハヤトは叫んだが、ムックルは去ろうとしなかった。 

注釈:ハヤテはピッピ人形をジムを去るときに持ってきたようだ

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 朝、のび太はハヤトの部屋の戸を叩いていた。 
「ねえ、本当に行かないの?」 
「ああ、誰が行くか。 あんなとこ」 
ハヤトは頑として譲らず、仕方なくのび太は一人でジムに向かった。 
 派手派手しいジムの戸を、のび太はおどおどと開ける。 
「こんに――」  
のび太の言葉は大きなノイズに掻き消される。 
 ジムに入った途端、周りのトレーナーたちが祝砲を放ったからだ。 
「っわわぁ!!」 のび太は反射的に叫び、耳を塞ぐ。 
「HEY,BOY!!」 
 ジムの奥で、マチスが呼びかけてきた。 
「YOUだけかい? あのFLY BOYは来てないのか?」 
 のび太はひどくおびえた表情で頷く。 
「MMM, まあOK. LET'S BATTLEね!」 
 マチスはそう言うと定位置につく。 
のび太もそれに倣った。 
(……うわぁ、外野が睨んできてる……) 
のび太は柄の悪いトレーナーたちの視線をビンビンに感じていた。 
「GO! ライチュウ!!」 
マチスはポケモンを繰り出した。 
(相手はでんきだ。 それなら) 「いけ、ドンメル!!」 
 ドンメルが繰り出され、戦闘が始まった。 

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「ライチュウ! でんこうせっか!!」 
マチスの指示で、ライチュウが光の如くドンメルに突撃する。 
すばやさの低いドンメルは簡単に捕らえられるが、致命傷ではない。 
「ドンメル、マグニチュード!」 
ドンメルは地面を揺らす。 
その場が大きく振動し、ライチュウは一撃でひんしになった。 
 マチスは力なく横たわるライチュウを戻す。 
 それと共に、外野からブーイングが飛んでくる。 
「卑怯者―!!」 「でんき相手にじめん出しやがって!!」 
「そ、そんな無茶な……」  
のび太の反論は尻すぼみに消えた。 
「NO PROBLEM, NO PROBLEM!!」 
マチスが叫び、外野は静かになる。 
「じめん相手ならこいつだ!」 
マチスは次のポケモンを繰り出した。 
 青い体から二本の触覚を出す姿。 
地面の上で力なくはねるそのポケモンは、チョンチーだった。 
のび太はその危機を察した。 「ドンメル、マグニチュード!」 
「チョンチー、地面にみずでっぽう!」 
チョンチーは先手で水を放ち、その体は宙に浮く。 
その直後地面が揺れたが空中では関係ない。 
「やばい!! ドンメル動け!」 「SLOWLY! みずでっぽう!!」 
のろいドンメルは容赦なく放水を浴びる。 
ドンメルは悲鳴を上げ、力尽きたように倒れた。 

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「ドンメル、戻れ」 
のび太は急いでドンメルを戻し、のこりの一体を繰り出した。 
「いけ、ハスボー」 
ハスボーがフィールドに現れる。 
「ハスボー、すいとるだ!」 
ハスボーはチョンチーに飛び掛った。 
「チョンチー、みずでっぽう」  
チョンチーは放水し、ハスボーに当たるが相性はよくない。 
ハスボーはチョンチーをくわえ、すいとり始めた。 
「チョンチー、ふりはらえ! じたばただ!!」 
チョンチーは技を放つが、ハスボーはなかなか離れない。 
「ハスボー! 絶対離すなよ!!」 「SIT! 何としても離れさせろ!!」 
チョンチーはじたばたを繰り返すが、ハスボーは倒れない。 
何故ならすいとるで回復し続けているからだ。 
 やがてチョンチーは息も絶え絶えになった。 
「く、……チョンチー、あまごいだ!!」 
マチスは指示を変え、チョンチーは最後の力を振り絞っていく。 
やがて天井に雨雲がたちこめ、雨が降り出す。 
それと共に、チョンチーは力尽きた。 
 その時、ハスボーの身に変化が起きる。 
「ハスボー!?」 のび太は目を見開いてそれを見ていた。 
ハスボーは光だし、見る間に姿形が変化していく。 
 ハスボーは進化したのだ。 

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「ハスボーがハスブレロになった!」 
のび太は歓喜するが、マチスは舌打ちする。 
「SIT! 地味に決めやがって、そのうえ進化まで……BUT, 次でTHE ENDね!!」 
マチスは次のポケモンを繰り出す。 
 出てきたのはあの三位一体のポケモン、レアコイルだ。 
「一気ににいかせてもらう!! レアコイル、かみなり!!」 
「ハスブレロ! 避難だ!!」 
上空の雨雲が光り、稲妻が落ちる。 
 一瞬であたりに煙がこもった。 
「……避けても無駄。 RAININGだとかみなりはHIT率100%。逃げ場は無いぜBOY」 
「……どうかな?」 のび太は不思議と強気だった。 
煙がはれ、のび太の予想は的中する。 
「!! レアコイル!」 マチスは叫んだ。 
見るとレアコイルはハスブレロの少し上を、危うそうにふらついていた。 
「かみなりが直撃したのさ!! ハスブレロを追ったかみなりにね!! 」 
そう、ハスブレロはあの一瞬で、レアコイルの下に隠れたのだ。 
「それに僕のハスブレロの特性はすいすいなんだ!!」 
 マチスは舌打ちし、レアコイルに指示をするがレアコイルは様子が変だ。 
「SIT!! 今のかみなりで磁力がおかしくなりがったみたいだ…… 
 だがハスブレロに決定打は無い!! このままなら回復を待って」 
「そんな時間はないよ。 ハスブレロ、しぜんのちから!!」 
マチスは瞬時に理解した。  
 ハスブレロは雨がたまってできた池の上にいたのだ。 
しぜんのちから、つまりバブルこうせんはレアコイルを連打する。 
相性は普通。 だが、何度もくらえば…… 
 磁力がいかれたレアコイルは泡にまみれて墜落する。…… 

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「俺の負けだ」 マチスはあっさり認めた。 
「FLY BOYに伝えといてくれ。お宅のひこうを中傷して、
つまりけなして悪かったと」 
マチスはバッジを渡す際、のび太に伝えた。 
 もっとものび太はトレーナーたちの視線が怖くてよくきいていなかったが。 

 のび太はバッジを受け取り、センターへ戻ってきた。 
「勝ったのか」 ハヤトにきかれ、のび太は頷く。 
「すごかったんだよ、ハヤテ!」 「ハヤトだ」 
のび太のふるいつものやり取りにハヤトが答える。 
 のび太はポケモンを預け、ハヤトにジム戦を話した。 
マチスのポケモンやそれをどう倒したか……ハスブレロへの進化など。 
最後にのび太はマチスの言葉を思い出した。 
「そうそう、マチスに何か君に伝えてくれって言われた」 
「ほう。あいつが……何て言ってた?」 
「えーとね……」 
のび太は頭をひねったが、何しろ不良たちの視線がきになっていたため、
思い出すのに苦労した。 
ようやく思い出した言葉はこれだ。 
「……そうだ。 
 ひこうおたくは重症だな、けなして悪かったって!!」 
  
 因みにのび太はたまに確信犯になる。 
ハヤトが神速でセンターを出て行ったときににやりと笑ったのは、
もしかしたら……
 
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