英国の地方自治体における監査は、地方自治体職員による内部監査と、地方自治体及び国から独立した機関である監査委員会(Audit Commission)による外部監査に分けられる。
(1) 内部監査
内部監査は通常、各地方自治体の財政部局に所属する職員によって実施される。その役割は、定期的な収支状況のチェック、財政上の不正行為を防止するための会計上の検査、予算と実際の支出状況の比較などであるが、内部監査は法的義務事項ではない。
(2) 外部監査
(a) 監査委員会(Audit Commission)
地方自治体における外部監査の実施は法的義務事項であり、「1982年地方財政法(Local Government Finance Act 1982)」により1983年に設置された監査委員会(Audit Commission)がイングランド及びウェールズの地方自治体(パリッシュ及び警察、消防機関を含む)の外部監査について責任を有している。同委員会は独立した法人格を有しており、国務大臣から任命される委員長及び副委員長を含め最大18名の委員から構成される。また監査委員会は独立した会計を有しており、委員会が設定した基準に基づき、監査を行った団体から手数料を徴収することとなっている。なお、イングランドにおける国会及び国の省庁の監査は国家監査事務局 (National Audit Office)が、またスコットランドにはスコットランド監査局 (Audit Scotland)、北アイルランドには北アイルランド監査事務局 (The Northern Ireland Audit Office)があり、ウェールズについては、従来は監査委員会の所管であったが、2005年4月に国家監査事務局と監査委員会のウェールズ部分が統合されたウェールズ監査事務局(Wales Audit Office)が設立されている。
(b) 役割
外部監査の役割は、財政上の不正行為の防止、適正な会計処理の確保、不法な支出の指摘などであるが、なかでも、重要性を増している役割は、地方自治体の業務全般を金銭的効率性(Value for Money)の観点からチェックすることである。また、「1992年地方自治法(Local Government Act 1992)」に基づき地方自治体間の業績の比較や地方自治体内の業績の経年変化に用いるための業績指標(Performance Indicators)が作成されることとなった。しかし、2002年よりこの監査委員会の業績指標は政府が策定する指標と統合され、監査委員会が独自の指標を作成することはなくなった。
また、監査委員会は包括的地域評価制度(CAA)制度を実施している(9-2参照)。
(c) 監査の実施
イングランドにおける地方自治体に対する実際の監査は、監査委員会が任命した外部監査官によって行われる場合と監査委員会との契約に基づいて民間の公認会計士によって行われる場合の2つがある。