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「…び太君……のび太君……のび太君起きて……」
だれかの声が聞こえてくる、でも反応しようとは思わない。
今、この心地よい場所から出たくない、もっとこの場所にいたい……

「のび太君、起きろおお!」

突然の叫びによって、野比のび太は現実世界へと引き戻される。
「もー、夢がいいとこだったのに……
そんなに大声出して起こすことはないだろう、ドラえもん。」
少年のび太は、目をこすりながら文句を言う。
それに対し、猫型ロボットのドラえもんはこう答える。
「君が何回起こしても起きないからだよ! 今何時だと思ってるんだ!」
ドラえもんの手元にある時計には、現在の時刻が午前7時40分であることが表示されている。
まずい、このままじゃあ遅刻してしまう!

眠気を吹き飛ばし、驚異的なスピードで着替えをすましたのび太は猛スピードで階段を駆け降りる。
そして台所へ向かうと、食パンを一つ取り出して口にくわえる。
「こら、朝ごはんぐらいちゃんと食べなさい!」
母、野比玉子の怒声を背にのび太は玄関を飛び出した。

のび太が通う『トキワトレーナーズスクール』の門限は8時、急がなくては……
のび太は食パンを口に押し込みながら必死で学校へと向かう。
学校が見えてきた、時計には7時59分の文字が示されている。
まだ間に合う、急げ!



廊下を猛スピードで駆け、3年生の教室へと向かう。
教室に入ったら元気よく挨拶しよう! そうすれば怒られないかも……
「おはようございまーす!」
明るく挨拶をすると、そこには目を丸くしているクラスメイトたちの姿があった。
どうやら、挨拶は完全に裏目に出たようだ。
静まり返った教室の中に、先生の声が響く。
「ほう、野比……こんなに遅れてくるとは、私の授業など受ける必要がないということかな?」
「い、いえ、決してそんなことは。」
のび太の言葉など先生の耳には全く入っていない。

「じゃあ質問だ、カイリキーがヤミラミに空手チョップをしました。
さて、これは効果抜群でしょうか?」
意外と簡単な質問だった、のび太は胸を撫で下ろしながら答える。
「そんなの簡単ですよ……ヤミラミは悪タイプ、だから効果は抜群です。」
何の迷いもなく答えると、教室がさらに静まり返った。
そして次の瞬間、物凄い勢いの笑いが教室を包んだ。
「野比、ヤミラミにはゴーストタイプもあるんだぞ……」
そういえばあったな……と、のび太は今頃になって思い出した。
そして次の瞬間先生が発する言葉、何度も聞かされているのび太には予想がついていた。

「バカモーン、廊下に立っとれー!」

皮肉にも、予想通りのび太は廊下に立たされてしまった。
廊下に歩いていくのび太に、今だやむことのない笑いの渦が降りかかっていた。



廊下に立たされたのび太は、今朝のことを思い出していた。

―――猛ダッシュで学校に辿り着いたのび太の目に映ったのはあまりにも悲しい光景だった。
校門は既に閉められ、その鍵を持つ生徒指導の神成さんは校舎内へと戻っていた。
諦めて溜まるか、と校門の上から無理やり入ろうとしたのび太。
だが、その選択が間違いだった。
運悪く、後ろを向いた神成さんにその光景を見られてしまったのだ。
「こらー、何をしている!」
その迫力から『雷さん』の異名を持つ神成さんの怒りのいかずちがのび太を貫いた。

結局のび太は生徒指導室で30分程度の説教を受けてから教室へ向かった。
そしてその結果が、先程のザマだ。
もうこれで今年度20、いや30回目くらいだろうか、廊下に立たされたのは……

授業の終了を告げるチャイムがなり、のび太はようやく教室に戻してもらった。
次の授業はポケモンの生態を学ぶポケモン学、のび太が最も嫌う教科だ。
ポケモン学を担当している藤山は、その寂しい頭故に、『ハゲ山』というニックネームを密かにつけられている。
ポケモン学の授業はとてもつまらない、楽しみといえばハゲ山の頭を見て笑うくらいだ。
それにも飽きたのび太には、ハゲ山の声が安らかな子守唄にしか聞こえない。
……そういえば、昨夜は遅くまで漫画を読んでいたなあ。
眠りを欲する己の細胞に身を任せ、のび太はゆっくりとまぶたを閉じる。

この後、のび太がこの日二回目の廊下に立たされる罰をくらったのは言うまでもない。



下校時間を告げるチャイムが鳴る、やっと学校から解放されたのだ。
今日も嫌な一日だったな、とのび太は深い溜息をつく。
「近頃この辺りで起きているポケモン消失事件に巻き込まれないように、さっさと家に帰るように。
それじゃあみんな、さようなら。」
「「「さようなら」」」
先生との挨拶が終わり、ようやく帰宅時間となる……のび太を除いては。

「ハァ、どうして僕がこんな目に……」
本日あった様々な出来事の罰として、のび太は教室の掃除をしてから帰ることになっていた。
これ以上罰が増えたら困る……不本意ながらものび太は真面目に掃除をしていた。

そんなのび太に、1人のクラスメイトが声をかけた。
「おやおや、のび太は今日も居残りかい?」
彼の名は木鳥高夫、通称『ズル木』のび太と同い年の少年だ。
「そんなんだからお前は2回も昇級試験に落ちるんだよ、ハハハハハ!」

そんな様子を見ていたほかの少年がズル木に近づいていく。
「お前だってまだ3年生じゃないか、ズル木!」
大声で叫ぶ彼の名前は剛田武、ジャイアンと呼ばれるガキ大将だ。
「そうだそうだ、ジャイアンの言うとおりだぞ。」
ジャイアンの意見に賛成するこの少年は骨川スネ夫、2人とものび太と同い年だ。
「君たちは僕が2年連続体調不良でテストを受けられなかったことを知っているだろう?
僕は本来なら今頃5年生、君たちみたいな落ちこぼれとは違うんだよ!」
その言葉を聞いたジャイアンの中で、何かがプツン、と切れた。
「ズル木、てめええええ!」
怒り狂い、ズル木の胸ぐらを掴むジャイアン……そんな彼にズル木は言う。
「やめろよ、ここで僕を殴ったら今度こそ退学だよ?」
その言葉を聞いたジャイアンはズル木から手を放し、のび太に何か囁くと教室を出て行った。
スネ夫とズル木もそれに続き、教室に残されたのはのび太1人となった。



放課後、のび太は真っ先に学校から少し離れた空き地へと向かった。
教室でジャイアンに、放課後ここに来るように言われたのだ。
ジャイアンは大事な話があると言っていた……何を言い出すか分からないので、正直不安だ。

空き地にはすでにジャイアンとスネ夫の姿があった。
のび太の到着を確認したジャイアンは話を始める。
「よし、全員揃ったな……じゃあ今から大事な話をする、よく聞けよ。」
ジャイアンの顔はいつになく真剣である、のび太とスネ夫も気を引き締める。
「正直俺たち3人は今、崖っぷちに立たされている。
昇級試験に2年連続滑り、問題行動も多い……このままじゃあ退学もありえる。」
ちなみに、ジャイアンたちの問題行動とは野球で近所のガラスを割ったり、立ち入り禁止の場所に入ったりしていることだ。
のび太の問題行動はもちろん、遅刻と居眠りである。

「俺たちが無事に4年生になるためには、先生たちの評価を再び上げるしかない。
そこで、俺たちで今起きているポケモン消失事件を解決しようと思う!」
あまりにもの唐突な提案に、のび太とスネ夫は口をポカンと空けていた。
ポケモン消失事件……最近ここトキワシティで起きている事件だ。
朝起きると突然自分のポケモンがいなくなっていた、という怪奇現象である。
それを自分たちで解決して評価を上げる……凡人には考えることもできないアイデアだ。

「で、でもポケモン消失事件は警察でも手を焼くような事件なんだよ。
それに、もしかしたら犯人と戦闘になるかもしれない、でも僕たちはポケモンを持っていない……」
のび太の弱気な一言を聞いたジャイアンは、恐るべし言葉を発した。

「それなら問題ねえ……今日、俺たちで学校のポケモンを盗み出すんだ。」

―――この時、運命の歯車は既に回り始めていた。



       学校制度について
この国の児童は7歳になったとき、トレーナーズスクールか普通の小学校のどちらかに進むことができる。
小学校の方は現実世界と全く同じ6年制、その後3年間中学校に通って義務教育は終了だ。
ここでは、トレーナーズスクールの制度について説明する。

      トレーナーズスクールについて
トレーナーズスクールは小学校と同じ6年制、ただし、2年生からは上の学年に上がるには昇級試験に合格する必要がある。
ちなみに、進級試験に3回連続で落ちた生徒は退学となり、小学校に通うことになる。
↓各学年の特徴
1年生・・・小学校1年と同じように、履物のそろえ方やトイレの使い方なんかを学ぶ。
勉強はほとんどなし、よって進級試験もない。
2年生・・・ポケモンの名前を覚えたり、バトルの相性を覚えたりする。
進級試験はとても簡単で、のび太でも一発合格出来たほどだ。
3年生・・・ポケモンのタイプや生息地、技などについて学ぶ。
進級試験はやや本格的になっており、のび太たち3人は2回落ちている。 
4年生・・・4年生になると、学校からパートナーポケモンを一体貰うことができる。
ここからバトルの簡単な戦術を学び、コンテストについても少し学ぶ。
5年生・・・5年生はポケモンの詳しい特徴について学ぶ。
バトルやコンテストについてもさらに深く学ぶ。
6年生・・・6年生の学習内容は5年生と対して変わらない。
卒業後に向けて、ポケモンに関わる様々な職について勉強するのが付け加えられている。
トレーナーズスクールを卒業した生徒は社会に出てもよいし、トレーナーズハイスクールに進むこともできる。

トレーナーズハイスクールについてはまた次回       



ポケモンを盗む?
ジャイアンのあまりにも唐突な提案に、のび太たちはしばらく黙り込む。
そして、ようやくスネ夫が喋りだした。
「ポケモンを盗む……それもトレーナーズスクールから?
いくらなんでも無理に決まってるじゃないか。
スクールの防犯システムの凄さは、ジャイアンだって分かってるでしょ?
それにもしバレたら、僕たち絶対退学だよ?」

スネ夫の意見に、のび太もそうだそうだと同意する。
だがジャイアンは諦めなかった。
「大丈夫、俺には作戦があるんだ。
それに、お前たちだって欲しいだろ、ポケモン。」
その通り……のび太もスネ夫も、今一番欲している物はポケモンなのだ。
自分と同時期に入学した生徒たちは、特別な事情があるズル木を除いては皆4年生以上。
つまり、彼らはみんなポケモンを貰っているのである。
かつて同級生だった者が、4年生になってポケモンを手に入れる。
そんな光景を見てきたのび太とスネ夫にとって、スクールの初心者用ポケモンとは特別な意味を持つのだ。



「ねえジャイアン、どんな作戦を考えているんだい?」
スネ夫が尋ねる、どうやら彼はもう誘惑に負けてしまったようだ。
「簡単さ、俺たちにはドラえもんっていう心強い味方がいるじゃないか。」
それを聞いたは『あっ、なるほど!』と声を上げる。
だれもが知っている事だとは思うが、ドラえもんは未来から来たロボットなのだ。
ドラえもんは未来の不思議な道具を持っていて、その力は現代では奇跡と思われることを簡単に成し遂げることができるのだ。


「ただし、この作戦を成功させるにはのび太の協力が必要不可欠だ。
のび太、やってくれるか?」
突然ジャイアンに話をふられたのび太は驚いた。
この作戦を成功させるには、ドラえもんの身近にいるのび太の協力が必要なのだ。
しかしのび太は正義感が強い人間である、この犯罪行為に加わるにはいささか抵抗があった。
だがポケモンが欲しいのも事実である、のび太は少し躊躇いながらも言った。

「うん、僕も手伝うよ……」

「よーし、これでメンバーは揃ったな!」
……といっても三人だが。
「でも、ドラえもんがこんな計画に手伝ってくれるとは思わないよ?」
のび太が疑問を投げかける、ドラえもんの真面目な性格は皆よく知っている。
「そんなの分かってるよ! わざわざ協力してもらわなくても。こっそりスペアポケットを持ってこればいいじゃないか!」
つまり、のび太はこの日もう一つ犯す罪が増えたことになる。
だが彼の決意は揺るがない、その目には決意の色が宿っていた。

「じゃあ今日の深夜3時、学校の校門前に集合だ!」
ジャイアンの一言で、僕たちは別れて自宅へと向かった。



―――星たちが輝き始める頃、野比のび太は目を開けた。
時計を見ると、そこには現在の時刻が2時25分であることが示されている。
のび太の見事な寝たふりに騙されたドラえもんは心地よく眠っている。
押入れの中にあるスペアポケットをこっそり拝借し、息を殺して玄関へ向かう。

「おせーぞのび太ぁ!」
まだ集合時間はきていないのに、すでに校門では2人が待ち構えていた。
3人とも気持ちが高ぶっている、そんな感じだった。

「じゃあ早速例のものを……」
ジャイアンに指示されたのび太はスペアポケットから二つの道具を取り出す。
壁の手前と向こうを穴を開けて結ぶ通り抜けフープと、だれからも気にかけられないようになる石ころ帽子だ。
「ちゃんと三つあるな……じゃあ行くか!」

通り抜けフープを使って校舎内に進入した3人は、石ころ帽子をかぶって警備室に向かう。ポケモン保管庫には防犯カメラがある、その電源を警備室で落とすことができるのだ。
警備室には警備員が1人いた。
ジャイアンが後ろからこっそり忍び寄る、石ころ帽子のおかげでまったく気付かれない。
事前に科学室から拝借していた薬品の匂いをかがせ、警備員を眠らせる。
「こうしていると、まさに犯罪者になった気分だね。」
スネ夫が言う……実際そうなのだが。

これで姿が映ることもない、後はポケモンを盗むだけだ。
三人は慎重にポケモン保管庫へ向かう、そこに罠があるとも知らずに……



ポケモン保管庫に三人が一歩脚を踏み入れたその時! 突然防犯ブザーのような音が校舎中に響き渡った。
「なんだなんだ、何がどうなってるんだ?」
ジャイアンが驚きの声を上げる。
実はこの部屋にはもう一つ、赤外線センサーという物があったのだ。
このセンサーは鍵を開けずにこの部屋に入った者に反応する。
通り抜けフープを使って入った三人もその対象になったということだ。

「まずい、これだけ騒がしかったらさっきの警備員が起きるかもしれない。
実際はあの薬品をかがせた者は丸一日は眠り続けるのだが、彼らはそのことを知らなかった。
それに、突然の出来事に気が動転しているのだ。

「とにかく、警備員が起きる前に早くここを出よう。」
「でも、ポケモンは?」
「その辺にあるのを適当にとって行け!」
三人は近くにあるモンスターボールを一個ずつ取り、急いで部屋から脱出した。

「ハアハア……ここまで逃げれば大丈夫かな?」
ジャイアンが呟き、他の2人もそれに同意する。
……彼らはいま、昼間集まっていた空き地まで逃げて来ていた。
そろそろ体力の限界を迎える三人は走るのをやめ、その場に座り込んだ。



「しかし、今思うとモンスターボールを6っこずつ持ってきたほうが良かったね……」
スネ夫が後悔するように言う。
勿論、今更もう一度ポケモンをとりに行く気力などないのだが。
「まあいいじゃない、ポケモンも無事手に入ったことだし…
そうだ! 手に入れたポケモンが何かまだ見ていない!」
のび太がこの一言を聞いた三人は早速モンスターボールを取り出す。

「じゃあまず俺のポケモンから……出て来い、俺のパートナー!」
ジャイアンのボールから放たれたポケモンはヒトカゲ、炎タイプのポケモンだ。
ヒトカゲが好きだったジャイアンは満足気に笑い、ヒトカゲと語り始める。

「今度は僕のポケモンだ……強いポケモン、来てくれよ……」
スネ夫のパートナーはミズゴロウ、水タイプのポケモンである。
スネ夫は微妙な表情を浮かべる……
ミズゴロウは進化すればかなり強くなるが、ビジュアル面に少々難があるのだ。

ジャイアンはヒトカゲ、スネ夫はミズゴロウ……
どちらも、使いやすくてかつ強くなる初心者向けのポケモンだ。
なら自分にもきっと彼らのようにいいポケモンが出るはず……のび太はそう考えていた。
「いでよ、僕のパートナー!」
のび太は勢いよくボールの中身を放つ……これから起こる惨劇も知らずに。
ボールから現れたそのポケモンを見て、三人は言葉を失った。

「コイキング……」

のび太がボソリと世界最弱のパートナーの名前を呟いた。
普段ならこの状況を笑い飛ばすジャイアンとスネ夫も、さすがに何も言わなかった……いや、言えなかったというべきだろうか。
のび太はコイキングショックを背負ったままトボトボと家へ帰っていった。
のび太を慰めていたジャイアンとスネ夫もやがてそれぞれの家へ帰っていき、何事もなかったかのように夜は過ぎていった。



       トレーナーズハイスクールについて
トレーナーズハイスクールは、トレーナーズスクールを卒業した人ならだれでも通える上級学校である。
一年生、二年生といった学年などの区切りはない、最大5年まで通うことが許されている。
また、入学時に学科を一つ選ぶことになっており、選んだものについて勉強する。

       学科について
全部で5つの学科がある。
バトル科・・・バトルについての戦略や知識などを極める。
最も人気があり、クラス数は最大の15クラスもある。
コンテスト科・・・近頃のコンテストブームに便乗して作られた新しい科。
名前の通りコンテストについての様々な知識やポロック等の菓子に研究したりする。
作られたばかりにも限らず、生徒数はバトル科の次に多い。
ポケモン学科・・・ポケモンの生態についての研究を行う、いわゆる生物学。
多くの有名な学者を輩出している、有名なオーキド博士などもここの出身である。
ポケモン世界学・・・ポケモン界の歴史や、伝説のポケモン、歴代の有名トレーナーなどについて学ぶ。
基本的に地味なので、あまり人気がない学科である。
ポケモン医学科・・・ポケモンの医者やポケモン看護婦(いわゆるジョーイさん)になる資格を取る学科。
資格はポケモン医療専門学校でも取ることができるのだが、こちらのほうが学費が安いので人気がある。



「のび太君、起きろ!」
「うわああああ!」

ドラえもんに布団を取られ、のび太は叩き起こされた。
「ほら、早くしないとまた遅刻するよ?
全く、いつになったら1人で起きられるようになるんだか……ブツブツ……」
ドラえもんの愚痴を聞き流しながらのび太は急いで支度をする。
そして昨日と同じように食パンを口に放り込み、すぐさまに学校へ向かった。

校門に着いた時刻は7時58分、今日は何とか間に合うことが出来た。
だが教室に入った瞬間、すぐに宿題をしていないことに気付いた。
もう先生が来る時間だ、間に合わない……
のび太が今日も廊下に立たされることを想定して落ちこんでいる時、突然意外な放送が入った。

「ただいまから、緊急職員会を始めます。
生徒の皆さんは、教室で自主勉強をしてください……」

緊急職員会? 何かあったのかな……
疑問に思いつつも、この機会を逃すわけにはいかないのび太は早速宿題を始めた。
だが鉛筆を握ると突然、物凄い眠気がのび太を襲った。
今までにここまで一度もここまで眠くなったことはない……一体何故?
結局一文字すら書くことが出来ずに、のび太の意識は途絶えていった。



1時間目に続き、2、3、4時間目もずっと自主勉強となった。
のび太はその間、ずっと眠り続けていた。

先生が激しくドアを開けたときの音で、のび太はやっと目を覚ました。
時刻は12時、ちょうど給食前の時間である。
周りの生徒たちはザワつき始めるが、のび太は以前眠そうな顔をしている。
だが次に先生が発した言葉は、のび太の眠気を一瞬で吹き飛ばした。

「これだけ授業を潰したので隠しておくわけにもいかないから言っておく。
―――昨日の深夜、この学校に泥棒が入った。
盗まれた物はポケモン保管庫にあった3個のモンスターボール、いずれもレベルの低い初心者用ポケモンだ。
犯人の手口はいっさい不明、ただ今調査中だ。
以上、これ以上は教えられん。」

周りの生徒がさらに騒ぎ始めた、それと同時にのび太の眠気も吹き飛ぶ。
学校に忍び込み、モンスターボールを盗んだ犯人……まぎれもなく自分のことだ。
激しい眠気のせいですっかり忘れていた、昨晩自分を含む3人がやった罪のことを。
この眠気も、昨夜全然寝る時間がなかったからだろう。
同じ犯行仲間であるスネ夫と目が合った、彼はこっそりと合図する。
『あんまり不自然な態度をしていると、バレちまうぞ』と。
彼の言うとおり、のび太はあくまで今回の事件に驚く一生徒を演じておいた。

結局この日授業はまともにできず、のび太の宿題も見られずにすんだ。
複雑な雰囲気の中下校時間を迎えたのび太は、早速ジャイアンたちに声をかけられる。
今日も、空き地に集合するそうだ。



トキワシティの空き地には3人の少年が集っている。
のび太、ジャイアン、スネ夫……トレーナーズスクールからポケモンを盗んだ真犯人である。
そしてその盗賊が、ポケモン消失事件を解決するという善行のために作戦を立てているというのだからなんとも不思議な話である。

「じゃあ集合時間は夜12時、場所はこの空き地でいいね。」
スネ夫の提案にすかさずのび太が口を挟む。
「異議あり! 集合時間はまた夜なの? 睡眠時間が減っちゃうじゃないか。」
「……あのなあのび太、昼にそんなことしてたら目立つし、ポケモンを持っているのが見つかるかもしれないんだぞ。
それに消失事件が起きているのは全部夜だ、昼に操作したって意味がないんだよ。」
のび太のわがままな反論にあきれながらスネ夫は説明した。
その言葉を受けたのび太は、『そんな、貴重な睡眠時間が……』と嘆いていた。

―――そして時は11時30分、のび太は昨日と同じように目を覚まし、空き地へ向かった。
その手に、スペアポケットとコイキングのモンスターボールを持って。

やはり、空き地にはすでに他の2人が来ていた。
のび太はみんなにタケコプターを配り、スネ夫は家から持ち出したポケッチ3個を配る。
今回の作戦はそれぞれ別行動で上空から手がかりを探し、何かあったらポケッチで連絡を取り合うというものだ。
彼らが出発しようとしたまさにその時、突然近くから声が聞こえて来た。

「何してるの、武さん、スネ夫、のび太さん……」

近づいてきたその少女の名は源静香、のび太たちと同い年でトレーナーズスクール4年生だ。



源静香の家は、この空き地のすぐ近くにある。
ふと目が覚めた彼女は、気分転換に窓を開けて外の景色を見ていた。
そこでのび太たち3人の姿を見かけた彼女は、何故こんな時間に彼らがここにいるのか気になった……普通はそうなるだろう。
そして着替えてからのび太たちに会いに来た、というわけだ。

静香がそのことを伝えると、のび太たちの表情は真っ青になっていた。
偶然姿を、それも同い年の少女に見られるとは……運がなかったとしかいいようがない。
「静香ちゃんには、隠せないな……」
3人は覚悟を決めて全てを話した。
ポケモン消失事件を解決するために集まっていることも、ポケモンを盗み出したこともだ。

静香はとても真面目な少女である、すぐに自分たちが泥棒であることを先生に報告するだろう……
そう考えていた3人に対し、静香は意外な言葉を口走る。

「やっぱり……ポケモンを盗み出したのはいけないことだと思う。
でも、ポケモン消失事件を解決するために努力しているのはとてもいいことだと思うわ。
だから私は、あなたたちが事件を解決するまでこのことを誰に喋らない。
そのかわり、この事件が解決したら自分の口から先生たちに喋ってくれるって……誓ってくれる?」
静香の問いに、3人は首を縦に深く振った。

「……それともう一つ、条件があるわ。」
静香が少し間をおいてから言った。
「私にも手伝わせてほしい。
ポケモンだってちゃんと持ってるし、邪魔にはならないと思うの。」
最初は反対した3人も、静香の瞳に宿る固い決意を見て断ることをやめた。
こうして、のび太たちに源静香という仲間が加わったのであった。

―――のちに固い絆で結ばれる4人……彼らが初めて仲間となった瞬間であった。



野比のび太に、思わぬ幸運が訪れた。

ことの経緯はこうだ。
急遽仲間になった静香の分のポケッチがないので、静香は一番頼りないのび太と2人行動にしてはどうか、とスネ夫が提案した。
全員それに賛成し、静香はのび太と行動することになった。
何を隠そう、のび太は昔から静香に淡い恋心を抱いていた。
その静香と2人で行動……のび太は自分が頼りないと言われたことにも気付かず舞い上がっていた。
そんなのび太とは対照的に、静香は冷静に上空から地上の様子を見ている。

しばらくして、突然静香がのび太に声をかけた。
「ねえのび太さん、あれ見て!」
静香の示す先にいたのはラムパルド、こんな大きなポケモンが何故こんな時間まで外にいるのだろうか。
しかもこのラムパルド、空に浮いて移動しているのである、傍から見ればかなり不自然な光景である。
のび太はすぐにジャイアンとスネ夫にも連絡を取った。

ジャイアンとスネ夫が合流し、ラムパルドを引き続き追跡する。
やがてラムパルドはある建物のなかに入っていく、その建物を見てのび太たちは驚愕する。
「ここ、僕たちの学校じゃないか……」

ラムパルドを追って、のび太たちも校舎内へ入っていく。
勿論、通り抜けフープと石ころ帽子を使ってだ。
昨日の事件で警備員への信頼をなくした学校は教職員を警備においている、なぜラムパルドの進入に気付かないのだろうか……
と、その時! のび太が派手に転んでしまった。
すると、何者かが声を上げた。
「誰だ! 誰かそこにいるのか!」
その声を聞いた静香が呟く。

「今の、間違いなく藤山先生の声だった……」
警備担当のハゲ山こと藤山が今の音に気付いて、ラムパルドに気付かないというのはありえない。
一体この学校で、何が起きているというのだろうか。