ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ルビー その11

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熱戦の続くドームを照らす夕焼け。
空は茜色に染められていた。

ドーム観客席。
「凄いや、二人とも……」
目を丸くして闘技場を見るのび太。
今戦っているのは出木杉とミツルだ。
お互い2匹のポケモンを失っていて、互角の戦いを見せている。
「まさか、あの出木杉と互角に戦えるほどだったとはね」
スネ夫が呟いた。

「いけ、エネコロロ!」
「サーナイト!」
出木杉はサクラビスとボーマンダ、ミツルはロゼリアとレアコイルが瀕死状態だ。
「サーナイト、サイコキネシス!」
「シャドーボールだ」
繰り出される両者の攻撃。
だが、どちらの攻撃も相手の体力を奪いきることは出来なかった。
『スピードはサーナイトの方が上だ。次のサイコキネシスで確実にエネコロロは倒せる』
頭の中で次のターンの計算をする出木杉。
だが、その予想に反して先に動いたのはエネコロロだった。
「シャドーボール」
黒い玉はサーナイトに直撃し、その体力を奪った。



「……そんな!どういうことだ?」
驚く出木杉。
すると、ミツルが口を開いた。
「僕はエネコロロにカムラの実を持たせていたんですよ」
カムラの実。ピンチの時に素早さをあげる効力を持つ木の実だ。
出木杉はチッと舌打ちすると、次のボールを放った。
「いけ、ネンドール」
出てきたのは土偶、ネンドール。
「エネコロロ、シャドーボール」
「地震だ!」
エネコロロはネンドールにダメージを負わせるも、地震攻撃で倒されてしまう。

「出ろ、チルタリス!」
ミツルが次に選んだポケモンはチルタリス。
それを見て、出木杉は口元を歪ませた。
「ふふ……ネンドール、大爆発だ!」
出木杉がチルタリス相手にとった行動は大爆発。
これが決まればミツルは残り1匹、こちらは残り2匹で有利に立てる。
――のだが、ミツルの戦略はその上をいっていた。
「そんな……」
口をポカンを開け、立ち尽くす出木杉。
そこには力尽きたネンドールと、無傷のチルタリスがあったのだ。



立ち尽くす出木杉を見て、ニヤニヤと笑うミツル。
「あなたが大爆発をする前に、僕はチルタリスにまもるを命令してたんですよ」
「し、しまった……」
出木杉は自らの判断ミスによって、ネンドールを無駄死にさせてしまったのだ。
試合は完全にミツルペースだ。

ドーム観客席。
「あの出木杉が押されてるなんて……」
信じられない、という表情のスネ夫。
スネ夫だけじゃない。のび太としずか、それにジャイアンも驚いていた。
無理もないだろう。皆の中で一番強い出木杉が苦戦しているのだから……。

舞台は闘技場へ。
「いけ、リザードン!」
まんまと嵌められて困惑している出木杉が出したのはリザードン。
『リザードンなら効果抜群の攻撃は受けないハズ。ドラゴンクローで倒してやる』
出木杉はリザードンでチルタリスを倒し、レックウザで確実に最後のポケモンを倒すつもりなのだ。
『最後は最高のポケモンで決めてやるさ』
出木杉はレックウザの入ったボールを眺めながら、薄ら笑いを浮かべた。



「ドラゴンクロー!」
リザードンの攻撃がチルタリスを襲う。
だが、チルタリスも負けじと技を出す。
「チルタリス、歌う!」
歌うは命中率の低い技だが、運良くリザードンに当たってしまう。
「ふふ、眠ってるんじゃ何もできないね」
勝ち誇ったような笑みを浮かべるミツルだが、出木杉は動じない。
いや、寧ろ笑っているように見えた。
「リザードン!」
出木杉が叫ぶと、リザードンの眠気は消えていく。
「なるほど、眠気を覚ます木の実というわけか……」
眠気を覚ましたリザードンの二撃目が決まり、チルタリスは倒れた。

「凄いね、君。まさか、僕の最後のポケモンを出す事になるとはね」
チルタリスを戻し、最後のボールに手をかけるミツル。
そして、それを空高く放り投げた。
「これは……!」
そのポケモンの威容に驚く出木杉。
会場全体に響き渡る咆哮と共に出てきたのはミツルの切り札、カイリューだった。



巨大な両翼を羽ばたかせ、砂埃を巻き上げるカイリュー。
その威圧感は凄まじかった。
『凄い、このカイリュー……』
カイリューの巨体に臆しながらも、出木杉は指示を降す。
「リザードン、ドラゴンクローだっ!」
効果抜群の攻撃を食らうカイリューだったが、そんなに効いていない。
カイリューは素早さこそ低いものの、破壊力と耐久力はかなり上位にランクインするほどなのだ。
その上、ミツルはカイリューに食べ残しを持たせている。
「カイリュー、電磁波から空を飛ぶだ!」
リザードンに電磁波を浴びせ、空高く飛翔するカイリュー。
対して、リザードンの攻撃は空を切ってしまう。
「今だカイリュー、空を飛ぶ攻撃!」
空中からリザードン向かって勢い良くぶつかるカイリュー。
リザードンはかなりのダメージを負った。

ドーム観客席。
「かなりやばいぞ。リザードンは電磁波によってマヒさせられているし、あっちには食べ残しがある」
真剣な眼差しで勝負を見つめるスネ夫。
電磁波などの相手の動きを抑制する技や、空を飛ぶのようなターン数をかけさせる技は食べ残しと相性がいい。
それは、対ジャイアン戦で同じ戦法を使ったスネ夫が一番良くわかっていた。
「このままじゃ、出木杉が負けるかもしれない。あの出木杉が……」



「トドメだ、カイリュー!」
二発目の空を飛ぶが決まり、ついにリザードンが沈む。
「くそっ……」
うつむきながら歯ぎしりする出木杉。
巧みな戦術によってリザードンの攻撃は抑制され、ほとんど何も出来ないまま倒されてしまったのだ。
しかも、ミツルのカイリューは食べ残しによってその体力を回復させている。

「戻れ、リザードン」
リザードンをボールに戻す出木杉。
そして、最後のボールに手をかける。
レックウザの入ったボール――マスターボールに。
「最後はお前だ……レックウザッ!」
とぐろを巻き、体を捻らせながら現れる緑色の竜――
出木杉の切り札、レックウザがフィールドに解き放たれた。
「へえ……そんなポケモン持ってるんだ」
感心するように言うミツル。
「コイツが僕の切り札さ。そう簡単には倒せないよ」
「さあ、どうかな?」
自信あり気に言う出木杉に対し、ミツルが挑発する。
「なら、試してみるか……!」
それと同時に、レックウザが動いた――



「レックウザ、ドラゴンクロー!」
猛スピードでカイリューに突っ込み、重い一撃を与えるレックウザ。
さすがのカイリューも、この攻撃はかなり辛いようだ。
「へえ、中々強いね……カイリュー、電磁波だ!」
攻撃を終えたレックウザに電磁波を浴びせるカイリュー。
そして、更に指示が降される。
「ドラゴンクロー!」
今度はカイリューがレックウザに攻撃する。
「レックウザ!」
悲鳴を上げ、苦しむレックウザ。
「ドラゴンクローだ!レックウザ!」
出木杉が指示を出すも、レックウザは動かない。
その周囲には電光が走っていた。
「……くそっ!」
チッと舌打ちをする出木杉。
そう、レックウザが動けないのは麻痺状態によるものだ。
「モタモタしてる内に決めさせてもらうよ!トドメのドラゴンクロー!」
レックウザ向かって突っ込んでくるカイリュー。
それと同時に、出木杉は顔をうつむける。
『この一撃を食らえば、レックウザは倒れる。僕の負けだ……』
次の瞬間、カイリューはレックウザに手刀を振り下ろした。



「やったか!」
歓喜の叫びを上げるミツル。
だが、カイリューの攻撃はヒットしていなかった。
「よし!」
さっきまでとは一変、笑顔になる出木杉。
レックウザの周囲にはキラキラと煌びやかに光る粉が鏤められていた。
「これは……光の粉かっ!」
「ご名答。ようやく発動してくれたか……」
そう、出木杉がレックウザに持たせていたのは光の粉。
持たせると、相手の命中率が下がるという代物だ。
「これで……僕の勝ちだ」
歯噛みするミツルを他所に、言い放つ出木杉。
「いや、これでも僕の勝ちだ。ドラゴンクロー一発じゃカイリューは倒れない」
ミツルの言い分はもっともだ。
食べ残しによってカイリューの体力はかなり回復している。
「君は大きな見落としをしている。このターン、レックウザは2度攻撃できる……」
「2度攻撃?そんなの先制技でもなければ……そうか、先制技か!」
出木杉の意図を悟り、敗北を確信するミツル。
次の瞬間には攻撃命令が降されていた。
「レックウザ、ドラゴンクロー!」
まず、第一撃目。そして……
「これで終わりだ……しんそく!」
猛スピードで風を切り、カイリューにぶつかるレックウザ。
その瞬間、カイリューはその巨体を地へ落とす。
「勝者、出木杉!」



ドーム観客席。
皆が待っている中、颯爽と走ってきたのは出木杉だった。
「遅れてごめん。何とか勝ったよ」
激戦の後だというのに、何事もなかったかのような表情で話す出木杉。
「これで僕とのび太と出木杉の準決勝進出が決まったわけだね」
スネ夫が言う。
その後も暫く会話が続いたが、それはアナウンスの言葉によって途切れる。
「準々決勝最終試合、ダイゴ選手とリン選手、闘技場へ」
のび太達は仲間の戦いに見入っていてすっかり忘れていたが、次はダイゴVSリン。
一同は気が気でなかった。

「ワー!ワー!ワー!ワー!」
右サイドからダイゴが、左サイドからリンが入場する。
「どうしよう……ダイゴさん、勝てるのかな?」
不安気な顔をするのび太。
いくら元リーグチャンピオンといえど、相手はあのリンだ。
勝てる確率よりも負ける確率のほうが高いかもしれない。
「今は黙って試合を見ようよ、のび太。僕達は見ることしかできないんだ」
真剣な眼差しで闘技場を見つめるスネ夫。
そんな緊迫した雰囲気の中、ついに試合が開始される。
「準々決勝最終試合、始め!」



ダイゴとリン、二人が同時にボールを放つ。
「エアームド!」
「ファイヤー!」
リンのポケモンを見た瞬間、ダイゴは舌打ちをする。
『チッ、相手が悪いか……』
エアームドは火炎放射一発で葬られてしまった。

「次は……ボスゴドラッ!」
鋼の鎧を纏い、どっしりと構えるボスゴドラ。
だが、リンは臆することなく攻撃命令を降す。
「ファイヤー、火炎放射」
ファイヤーから放たれる灼熱の業火。
だが、それはボスゴドラの体力の半分も奪えなかった。
「甘いよ……岩石封じ!」
体中に岩がヒットし、悲痛の叫びをあげるファイヤー。
その燃え盛る両翼は羽ばたくのを止め、力無く落ちていった。



「いきなさい、サンダー」
リンが次に繰り出してきたのは、伝説の鳥ポケモン、サンダー。
「雷よ」
雷鳴が轟き、ボスゴドラの巨体をとらえる。
そして、それに直撃したボスゴドラはひとたまりもなかった。
「くそ、次は……ネンドールだ!」
土偶、ネンドールが姿を現す。

ドーム観客席。
「リン……あいつは伝説の鳥ポケモンを持っているのか……」
口元を押さえながら呟くスネ夫。
「おそらく、フリーザーも持っているだろうね。ダイゴさんは勝てるのかな」
出木杉が言った。
他の皆も、不安そうな顔をして闘技場を見つめている。
「大丈夫だよ、出木杉。勝負はまだ始まったばかりなんだからさ!」
無理に明るい顔を作り、皆を元気付けようとするのび太。
当然、彼も内心では緊張していた。
『絶対に勝ってね。ダイゴさん……』



「原始の力だっ!」
三撃目を食らい、倒れるサンダー。
ここまでダイゴは互角の戦いを見せていた。
『元はといえば、僕がコイツを止められなかったのが原因なんだ。僕がやらないとダメなんだ……』

数日前――
この日、チャンピオンリーグ前日に、ダイゴはある人物を呼び出していた。
「あら、久しぶりね……御曹司さん」
長いオレンジ色の髪をなびかせながら、一人の少女が歩いてくる。
「ああ、久しぶりだな……リン」
ダイゴはリンを先導し、砂浜を歩く。
「で、何の用?」
面倒くさそうに聞くリン。
だが、その顔はすぐに青ざめた。
「教えてやろうか?それはな……こういうことだよっ!」
ダイゴがナイフを振りかざし、それはリンをとらえ――



「あら、御曹司にしては危ないことするのね」
ナイフはリンの手によって止められていた。
必死に切りつけようとするダイゴだったが、ナイフは動かない。
「……で、何?父の仇とでも言いたいわけ?」
ダイゴの手をナイフから離し、海のほうへ放り投げるリン。
すると、ダイゴは口を開いた。
「やめてくれ。もう……」
「チャンピオン・リーグのこと?なら、あなたが私に勝てばいい話じゃない」
冷たく言い放つリン。
「もう……変な考えを持つのはやめてくれ……」
うつむきながら言うダイゴ。
「嫌よ」
そう言うと、リンは立ち尽くすダイゴを他所に砂浜を去っていった。

舞台は戻る。
『だから……コイツは僕が絶対に倒す!』
決意を固めるダイゴ。
リンはサンダーをボールに戻し、次のボールを放った。
「フリーザー!」
繰り出されたのは三匹目の伝説の鳥、フリーザー。



「フリーザー、吹雪よ」
氷の翼を羽ばたかせ、吹雪を起こすフリーザー。
サンダー戦の蓄積ダメージもあってか、ネンドールはあっけなく倒れてしまう。

ドーム観客席。
「実力はほぼ互角……か」
ボソッと呟くスネ夫。
それに出木杉が反論する。
「いや、あいつ……リンは、まだ切り札を隠してる。そんな感じだ」

一方、闘技場では激しいバトルが繰り広げられていた。
「ユレイドル、原始の力!」
ダイゴはアーマルドを犠牲にし、やっとユレイドルでフリーザーを倒したところだった。
「中々やるのね、御曹司さん」
リンは一つ一つのボールを掴み、その中から一つのボールを選ぶ。
「でもね、もう飽きちゃったの。だから……もう、終わりにするわ」
そう言うと、リンは空高くボールを放り投げる。
「こ、これは……!」
そのポケモンを見た瞬間、ダイゴの体中に戦慄が走った。
繰り出されたのは紫色の破壊神――ミュウツー。



観客席からどっと歓声があがる。
ミュウツーなんて滅多に見られるポケモンじゃないからだ。
「やはり、持っていたか……」
ダイゴの表情が、少し強張った。
「ええ。これは作り物じゃなくて、オリジナルよ……」
そう、このミュウツーはデボンの研究員達が使っていたのとは全く別の個体。
つまり、オリジナル。本物なのだ。
「冷凍ビーム」
冷気を帯びた光線が発射される。
それは、ユレイドルの体力を奪い切るのには十分な威力だった。
『くそ、残りはメタグロス一体……』
苦しげな表情をするダイゴ。
そして、ついに最後のボールを放った。
「出ろ、メタグロスッ!」

ドーム観客席。
「伝説の鳥ポケモン三匹にミュウツー……勝てるはずがないわ」
首を横に振り、諦め気味のしずか。
その時には、あの出木杉さえもが自信をなくしていた。
「本当に、勝てるのか……僕は……」
辺りに暗い雰囲気が漂った。



対峙する二匹のポケモン。
先に動いたのは、スピードに勝るミュウツーだった。
「火炎放射」
メタグロスに灼熱の業火が放たれる。
だが、メタグロスはギリギリの所で持ち応えていた。
「コメットパンチ!」
繰り出される反撃のコメットパンチ。
だが、こちらもミュウツーの体力をゼロにするには至らない。
『くそっ!ここまでか……』
敗北を悟り、天を仰ぐダイゴ。
『ここで僕が負けたら……くそっ!』
ダイゴは顔をうつむけ、自らの拳を強く握り締める。
握った拳はプルプルと震えていた。

ドーム観客席。
「負けるのかよ?あのダイゴさんが……」
信じられない、というような表情のジャイアン。
だが、闘技場にある現実が全てを物語っている。

敗北を悟り、顔をうつむける元リーグチャンピオン・ダイゴ。
勝利を確信し、満足げな表情で最後の命令を降そうとするリン。
次の瞬間、バトルは終焉を迎えた。



「終わりよ、火炎放射」
ミュウツーの右手から、燃え盛る炎が放射される。
それはメタグロスだけでなく、ダイゴをも射程範囲内にとらえていた。

「終わりだ、メタグロス」
悲しげな表情をするダイゴ。
その間にも、炎はどんどん迫ってきている。
「もう終わったんだ。僕の戦いも、僕の人生さえも……」
ダイゴの両目には、涙が溜まっていた。
滅多に見せない、元リーグチャンピオンの涙が――
「僕は終わった。……だが、まだ終わっちゃいない」
迫り来る灼熱の業火を目の前にして、一人呟くダイゴ。
『僕が死んでも、きっと……きっと……』
ダイゴは一縷の望みを託し、観客席の方を見る。
のび太達が座っている所だ。
「後は頼んだよ、ノビタ達……」
次の瞬間、紅蓮の炎がダイゴを包んだ――

その場に残ったのは含み笑いをするリンと、ミュウツーだけ。
炎の洗礼を受けたダイゴは、跡形も無く消え去っていた――



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