ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ミュウ その9

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~隊員C~

『僕は死んだのか?』
のび太は暗い闇の中で目覚めた。
「ここは……さっきの部屋なのか?」
「そうだよ。のび太君」
「!?」
のび太は寝そべった状態からすぐさま立ち上がり戦闘体勢をとった。
「さすがに動きが早いね。でも僕は敵じゃあ無いよ」
目が暗闇に慣れていき、声の主がはっきり見えてきた。
「…あなたは……タイムパトロールですか?」
「久しぶり…いや初めましてと言うべきかな。
僕はクッド。仲間からは隊員Cと呼ばれてるよ」
このクッドと名のる青年。
見た目は20歳前後。肌は白く髪は黒のショート。
初対面だが何処か懐かしい雰囲気を漂わせる不思議な青年だった。
「クッドさんが僕達を助けてくれたんですか?」
「そうだよ。ギリギリ間に合って良かった。
あと少し助けるのが遅かったら死んでいた所だよ。
僕がこの部屋に入ってきた時、君達に瓦礫が落ちてきた所でね。
僕はとっさにウルトラストップウォッチを押して時を止めて、君達をすぐに移動させたのさ」
「じゃあジャイアン達は……」
「よぉ、のび太!起きたか」
後ろにはジャイアンとスネ夫が立っていた。
「クッドさんが言ってた通りこの先にタイムパトロールは監禁されてませんでした」
「そう……やっぱりな」



状況がいまいち飲み込めないのび太にクッドは説明を加えた。
「剛田君達はあの時気絶しなかったんだ。
だからこの先に僕の仲間が捕まってないか確かめに行ってもらってたんだ」
「じゃあ今も時間は止まったままなんですね?」
のび太は周りを見渡した。
天井から今にも崩れそうな岩が顔を出したまま止まっている。
「だったらこのまま出木杉の所へ」
「それは無理なんだ」
クッドはポケットからウルトラストップウォッチを取り出した。
「これは……」
時計は画面にヒビが入り、今にも壊れそうな状態だ。
「出木杉は頭が良いみたいだよ。
僕達がこの時代に来ることを予想して未来の道具対策を用意していたみたいだ。
何の影響かは分からないけど使用した道具は使えなくなってしまうんだよ」
クッドは使い物にならなくなったショックガンの引き金を引いて見せた。

「この時計が壊れるまで後もって10分。
10分以内にここから脱出しないといけないんだ」



「おぉ!久しぶりの外だぜぇ!」
ジャイアンは外に出たことの嬉しさに思わず、叫んでしまった。
脱出はスムーズにいった。
ジャイアン達が先に罠を解除してくれたおかげで
走れば5分もかからずアジトの外に出れた。
そこから係員に見つからないようにドームの外に出たのだった。
「そう言えば凄い長い時間地下に居たからねぇ……
ん?のび太どうした?」
のび太はボーっと前だけを見ていた。
「え?……いや何でもないよ」
「きっと疲れたんだよ。明日も試合何だろ?
のび太君のお父さんには僕から言っておくからもう部屋に戻りなよ」
三人はうなずき、部屋へ帰って行った。

「……昔から変わらないな。
こんな見ず知らずの男を信用する何て……」
クッドは一人笑い、空を見た。
「でもそれが彼等の良い所なんだよな……」
クッドは少し目をつむり考えた後、裏山に向かった。

『後は……あのことを伝えるだけだな』



「……もう朝か」

のび太は早めに目が覚めた。
窓からほのかに太陽の光がさしこんでいる。
まだ熟睡中の二人を起こさないように部屋を出て
ドームの外のベンチに座り、ジュースを飲みながら周りを眺めた。
「そう言えば……こんなゆっくりの朝って久しぶりだなぁ」

あの事件から三ヶ月。
朝起きたらすぐに戦いか修行の毎日だった。
「まぁ起きたらすぐドラえもんに怒られて学校に走って行ってたんだけどね」
自分で言ったことがおかしくてのび太は笑った。
「ドラえもん……無事だよね」
あれから一度も聞いていない独特のドラ声がとても懐かしかった。
「のび太君」
声の方を向くと、クッドがこちらにやって来た。
「君に話しておきたいことがあるんだ」
「分かってますよ。
ドラえもんに聞いたことがあります。
もしもボックスの使用には2つのルールがあるって。
1つは世界の中で人を殺してはいけない。
もう1つはあまり長期間使用をしてはいけない。
この2つのルールの内どちらか1つでも破られればタイムパトロールは強固の手段をとる」
「そう……全世界の未来を変えない為に使用者を殺すんだ。
そしてその攻撃はあと数日以内に始まる。
つまり君の友達……出木杉を救うには数日以内にもしもボックスを破壊しないといけないんだ」



のび太は拳を強く握り締めた。
タイムパトロールが来た時から予想はついていた。
だけど……やっぱりこの決まりはおかしい。
「……どうして。どうして殺す必要があるんですか?」
ガシッ!
「あいつはただ母親と一緒に居たかっただけ何だぞ!」
のび太はクッドのすそを掴み叫んだ。
「あなたに分かりますか!
家族が……居なくなって…一人ぼっちのあいつの気持ちが……
僕達にはあいつを救う義務がある!あなた達には絶対殺させはしな…」
ドシャッ!
クッドはのび太を地面に叩き付けた。
「話をよく聞くんだ!
僕はまだ数日あると言ってるんだよ!
君達がどんなに出木杉のことを思ってるかは僕も知ってる。
僕が攻撃を延ばしてる間にもしもボックスを破壊しろって言ってるんだ!」
「……まさかあなたが攻撃を延ばしてくれてたんですか?」
「そうだよ。この時代のことは未来でもかなり有名になってる……
攻撃の開始はもう秒読み何だよ!」



「そうだったのか…」
のび太はクッドの言葉にショックを受けた。
いくら出木杉でもタイムパトロールの力には勝てないだろう。
それどころかきっとこの街もかなり被害を受けることになる。
只でさえ厄介なこの状況。
さらに厄介になることは間違いなかった。
「安心してくれ。僕が後5日はもたせる。
出木杉を救いたいなら5日以内にもしもボックスを破壊するんだ」
「…分かりました。必ず出木杉を…いやみんなを助けてみせます」
「頼んだよ」
のび太は無言でうなずいた。
「それと……実は君と話をしたいと言う人がもう一人いるんだ。
誰か分かるかい?」
「?……誰が…」
困惑するのび太に聞こえてきたのはあの懐かしい声だった。

「のび太君」

「!? こ…この声は…」
「通信が可能なのはこの一回だけだ。思う存分しゃべりなよ」
クッドの声はもうのび太に聞こえてはいなかった。
気付けばクッドの手の通信機は奪い取られていた。
「ドラえもん!」
「のび太君!」
「……久しぶりだね」
不思議だ。今まではしゃべりたいことが沢山あったが実際にしゃべってみると…
「何か……何しゃべれば良いか分かんないね」
どうやらドラえもんも一緒の様だ。
僕達は笑った。
ただそれだけなのに……凄く嬉しかった。



それから約五分。
何のへんてつも無い雑談が続いた。
「じゃあまたね」
といつも話し終る様に話は終わった。
正直……どんなことを話したかは覚えてない。
ただ……生きてくれているだけで良いのだ。
言葉何か交さなくても……目を合わさなくても……

生きてくれてる。
それだけで……僕は…
「それじゃあ僕は行くよ」
クッドはポケットから小さなミニチュアを取りだし、地面に置いた。
するとそれは大きくなり巨大な宇宙船…いや時空船になった。
その後地下で会ったビーが裏山の方から現れ、
のび太と軽くしゃべった後時空船に乗り込んだ。
次にクッドが時空船に乗り込んだが、何かに気づき降りてきた。
「ピンチの時はこれを使ってくれ」

タイムパトロールは去って行った。
のび太の心に不安と希望を与えて……



~のび太VS憂作~

『二ヶ月前』

「くそぉ!間に合うか!」
俺は必死で走り、商店街の花屋へ向かっていた。
ガラッ!
「はぁ…はぁ!すいません。リーガの花ってまだありますか?」
「まぁ、憂ちゃん!大きくなったわねぇ。
リーガの花って……もしかして彼女へのプレゼンt(ry」
「ははっ!違いますよ」
俺はオバサンの冗談を軽く受け流し、話を続けた。
「今日は母さんの誕生日何だよ。リーガの花は…」
「分かってるわよ。
リーガの花の花言葉は『言葉に出来ない感謝』さすが植物博士ね」
オバサンは店の奥へ行き、とても綺麗な赤色の花を持ってきた。
「運が良かったわね。これが在庫の最後よ」
俺は花を受け取り、家に急いだ。
「待っててね。母さん」

母さんは昔から俺のことを大切に育ててくれた。
父さんが借金作って夜逃げした時も……
俺が自殺しようとして学校の屋上から飛び降りた時も……
絶対に俺を裏切らなかった。



ガチャッ
「ただいま……?」
おかしい。
この時間にはいつもパートが終わってる時間の…はず
「母さん、居ないの?」
暗闇の奥から返事は無かった。
だが、リビングへ向かうとその答えを示す物がテーブルの上に見つかった。

『憂作へ 勝手な母さんを許して下さい。
お爺ちゃんの所で元気に暮らして下さい。さようなら』

チラシ裏に書かれたたった2つの文……
その2つの文は文字が崩れ愛のひとかけらさえも感じられなかった。
「何でだよ……母さん」

俺の手から落ちたリーガの花は……まるで血のように床に飛び散った。



ドンドンドン!
「…うっ!」
「憂作選手、出番ですよ!」
「すいません、今行きます」

『またあの日の夢か……』
孤独になったあの日以来……あの日の夢ばかり見ている。
俺が大会に出た目的はただ1つ。
この悪夢を終らせることだ。
きっとこんな夢を見るのは俺がまだ弱いから。母さんにまだ未練があるからだ
強くなれば悪夢は終わる。
そう思い続けて俺は特訓をしてきた。

「俺は他の甘っちょろい奴とは違うんだ」



『のび太達の控室』

僕はジャイアンとスネ夫に朝のことを伝えた(ドラえもんとの会話は内緒にしといた)。
もちろん驚き、ジャイアンに殴られた。
スネ夫にも軽くキックされた。
「何でそんなこと今まで隠してたんだよ!」
「いつ攻撃が来るか分からなかったんだよ。
って言うかタイムパトロールが来るまで忘れてたし……」
ジャイアンはまだ納得してないみたいだが、ここで話は中断になった。
《のび太選手、ホールに来て下さい》

「ごめん、行ってくるね」
僕は部屋を出て、ホールへ向かった。
すると途中でパパが待っていて、僕を呼び止めた。
「のび太、対戦相手の憂作……奴は強いぞ。
奴はずっと一人で戦ってきた。つまりお前とまったくの逆だ。
奴は…奴のポケモンには他のポケモンとはまるで違う力がある」
「……僕は負けないよ。
確かに僕はあいつと違う。
ずっとみんなに支えられてここまで来た。
確かにそれは弱さかもしれない。
でも……僕はみんなが居たからここまでこれたんだ。
憂作に見せてやるよ。
仲間が居るからこその力って奴をさ」
パパは僕の言った言葉を聞き、何かに満足したように言った。

「勝って来いよ」



……準備は良いですね。試合開始!」

二人のポケモンが同時にステージに現れる。
『ピカチュウか。俺の相手じゃないな』
『ワタッコ……厄介なのが来たな』
睨み合う二体。
先に動いたのはピカチュウだった。
「ピカチュウ、10万ボルト!」
ワタッコに向けて放たれた電撃は空を斬り、ステージの床に当たった。
「指示もないのに避けた!このワタッコ、強い!…」
「驚いてる暇は無いぞ。ワタッコ、はねる!」
「えっ!?」
のび太は2つのことに驚いた。
はねるを使ったと言うこともある。
だが真の驚きは跳ねたワタッコの体が空高く浮かび上がったことにあった。
「ワタッコが飛んだ……」
のび太は見たことも無い光景に呆然とした。
「どうだ?面白いか?ならもっと面白いもの見してやるよ。
ワタッコ、しびれ粉を巻き散らせ!」
ワタッコが体から金色の粉を吹き出し、上空を覆った。
照明の光が粉に反射し、ドーム内は金色の明かりに包まれる。
「まずい!これじゃあ避けきれない。
ピカチュウ、かみなりでワタッコを撃ち落とせ!」
金色の粉を上から何発もの雷が貫く。
だが粉に隠れて見えないワタッコに雷が当たるわけがなかった。



「ははっ、見えない相手にどうやって当てるんだ?
いくら電気で粉を焦がしても意味が無いぞ?」
「粉を……焦がす?」
『ワタッコに攻撃を当てることは出来ない。
ワタッコの攻撃を避けることも出来ない。
それはみんなあの粉のせいだ。あの粉の向こう側に行けば……』
「ピカチュウ、体中の電気を掻き集めろ!」
ピカチュウは待ってましたとばかりに、体に電気を溜める。
もう粉の壁はのび太の頭上すぐそばまで来ていた。
「一気に貫け!ヴォルテッカーだ!」
ピカチュウは光の塊となり、粉の壁に突っ込んで行った。



「自分から突っ込む何て正気か!?」
ボン!
《これは!?のび太選手のピカチュウが粉の壁を貫きました!》
「何だって!?」
粉の壁の向こうは見えないがどうやらピカチュウは無事のようだ。
「ピカチュウ聞こえるかぁ!あとは自由に戦って良いぞぉ!」
「あのネズミが俺のワタッコに勝てると思ってるのか?
あのワタッコは産まれた時から一人で、ずっと戦ってきた。
お前のピカチュウじゃ……」
「残念だったね。僕のピカチュウは絶対負けない。
あのピカチュウも産まれた時は一人だった。
でもあなたのワタッコと違うのは、産まれてすぐ僕と出会ったこと。
ピカチュウはずっとみんなに支えられてきた。
誰よりもあいつは知ってるはずだよ。仲間の大切さを……」
「こ、これは……」
のび太の頭ギリギリの所で粉は消えた。
すると上空からボロボロのワタッコが落ちてきた。
「ピカチュウ、良くやったね」
のび太の肩にピカチュウが誇らしげに着地した。



(投下省略:ワタッコを撃破した後も二人は激しい熱戦を繰り広げていた。)

「メガニウム、そのままのしかかりで押し潰せ!」
ハッサムの上のメガニウムがさらに体重を架ける。
「ハッサム、メガニウムの顔にアイアンヘッドだ!」
ハッサムの硬い頭ががら空きのメガニウムの顔にめり込む。
「とどめのギガインパクト!」
ひるんだメガニウムの体に光るハッサムの腕がヒットした。
「はぁ…はぁ。お前…やるじゃねぇか。
何だ?お前も何か目的が有るのか?」
「……僕はただ友達を助けたいだけだ」
「へっ、つまんねぇガキだな。
俺の目的はなぁ……強くなって俺を見捨てた母親に教えてやることだ。
見捨てられた奴の気持ちをさぁ!」
憂作が不気味な笑みを浮かべる。
だがのび太にはその顔が幸せそうには見えなかった。
「あなた……自分に嘘をつくのは止めたらどうですか?」
「俺が嘘を?冗談だろ?」
「あなたは本当は母親に帰ってきて欲しいんですよ」
「……違う」
「でも母親に帰ってきて欲しいと思ってる自分が許せない。
違いますか?」
「うる……さい!」

『憂作、おかえり』 『憂作、大丈夫?』 『憂作、ごめんね』
『 さ よ う な ら』「うるさい……消えろぉ!」
エルレイドがステージに姿を現す。
「ソーラビームだ!」
「しまっ…」

ソーラビームはのび太に直撃した。



「そんな、ジャイアン!のび太が!」
「良く見ろ。のび太は生きてる」

光の中から頭から血を流すのび太が現れた。
「ソーラビームの溜めが少なかったおかげだな……
だけどもし次攻撃をくらったら……」
観客が心配そうにのび太を見つめる中二人の会話は再開した。
「……どうだ。痛いだろ?苦しいだろ?
俺はこの何倍もの傷を心に受けたんだ。
母さんを恨むのは当たり前だろ?」
「はぁ……はぁ…っ!」
のび太の体が横へふらつく。
「へぇ……この程度なら僕は耐えられるけどね…」
「へっ、何言ってやがる。もうフラフラのくせして!」
「でも……僕は倒れない。
何度攻撃をくらったって僕は倒れないぞ!」
「お前は!……」

『そんなに男の子が泣いてちゃダメよ』
『でも母さん……父さんが…』
『確かに辛いわね。でもどんなに辛くても苦しくても止まっちゃダメよ。
将来私達は離ればなれになるかも知れない。
でも止まっちゃダメ。
私は必ず憂作を何処かで見てるから……』

「エルレイド、もう良い……」
エルレイドが驚いた様に憂作を見つめる。
「戦いは……もう終わりだ」



「本当は分かっていたんだ。
俺は母さんに戻ってきて欲しいんだって。
誰よりも俺の幸せを願っているのは母さん何だって。
でも……怖かったんだ!
母さんがもしもう戻って来なかったらって思うのが。
……司会さん。俺の負けにしてく…」
「 待 っ て !」
憂作の声を遮ったのはのび太だった。
「まだ勝負は着いてないよ」
「何言ってるんだ。もう勝負はお前の勝ちのようなものだろ」
「やっと本当の憂作さんが現れたのに勝負出来ない何て嫌ですよ!
僕も切札のホウオウを出します。
だから本当の憂作を見せてください!」

憂作は少し驚き言った。
「のび太……後悔するなよ!」



「……憂作」

二人の戦っている姿を観客席から見ている女性が一人。
女性は見ている途中急に目をハンカチで押さえて席を飛び出した。
「はぁはぁ…ごめんなさい……ごめんなさい!憂作」
「待ちなよ」
前には小太りの男性が居た。
「あなたは誰ですか?」
「今戦ってるメガネの子の親…かな。
まぁつまりあなたと同じですよ。憂子さん」
「!?……どうして私の名を」
「息子の対戦相手のことを調べるのは当然のことですよ。
全部知ってます。憂作君のことも…家庭のことも」
「知ってるから何なんですか?
今からあの子に謝って来いとでも言いたいのかしら?」
「そんなこと言いませんよ。でも……」
バサッ
パパはポケットから封筒を取り出した。
「ここにあなたを騙した詐欺師の住所や犯罪履歴が全て書いてあります。
好きなように使って下さい」
「待って!」憂子はパパを呼び止めた。
「私は…私は今さらどんな顔してあの子に会えば良いの?
あの子を苦しめたのは私なのに……」
パパは光の射し込む方を指さした。

「……ステージを見て来たらどうですか?」



「これは……」

ステージには楽しそうに戦う憂作の姿があった。
押されてはいるがとても楽しそうで、まるであの頃に戻ったようだった。
「メガネ君が思い出させたのね。あの子の中の優しさを……」

「聖なる炎!」
炎はエルレイドを包み、憂作の周りに広がった。
「勝者、のび太選手!」

ドサッ!
試合終了と同時に憂作は倒れた。
「憂作さん!」
のび太が駆け寄る。
「馬鹿やろう、俺はもう落っこちる。近づくなよ」
「……いい試合だったね」
「ああ。いい試合だった」
『あとは……母さんが居ればな』
「ゆ…さく」
!?
微かにに聞こえた声の方を見ると、そこにはずっと会いたかった人があった。
『母さん!』
憂作は母親に気づいたが、気づかないふりをした。
「ばいばいだな。のび太……」
のび太が憂作から離れる。
『母さん、もう俺は大丈夫だ』
憂作は落ちる寸前に憂子の方に手を突きだし、消えていった。
「……憂作、ごめんね。絶対帰ってくるから…」
その頃パパはロビーで煙草を吸っていた。
「家族……か」
上がっていく煙は止めることは出来ない。絶対に……



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