「ギンガ その4」(2007/05/26 (土) 23:58:56) の最新版変更点
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食事を終え、俺は父さんに呼び出された
「いいかナナシ、お前のポケッチには、ギンガ団の一部の人間のポケッチナンバーが登録されている
これで通話が可能だ、私がお前にギンガ団として命令するとくが来るかもしれないからな。」
他にもこのポケッチには色々と機能がついているようだ。
「いざというときのためだ……お前にはこれを渡しておく」
黒いマントと青い仮面を渡される。
「お前はギンガ団の幹部を上回る実力を持っている……
だから私は、お前をギンガ団幹部として任命する、それは任務のときの変装道具だ。
任務中はソーラという偽名を使うんだ、いいな?あと旅の選別にこれを渡しておこう」
何かのディスクを渡される、それは技マシンに類似していた。
「これは卵マシン、卵から生まれたポケモンのみが覚えている技がいくつかあるのは知っているだろう?」
……詳しくは知らないが聞いたことはある。
「普通は覚えられないのだが、これを使えば覚えさせることが出来るのだ、分かったか?」
「……分かった、じゃあ……何かあったら連絡する」
俺は大きな扉を開け、部屋を出た。
----
――214番道路
『ルカリオ、電光石火だ!』
スモモを倒すべく、俺はここで特訓をしている。
このままもしスモモを倒せたとしても、また必ず自分は壁に行く手を阻まれる。
それを防ぐためには、ポケモンのレベルを上げる以外に方法は無い。
それに……いつかギンガ団幹部ソーラとして動くときも来るだろう……
その時は普通のポケモンバトルではない……命を失う危険性だってある。
まだまだ自分の力など未熟なものだ、過信してはいけない。
自分の力に過信してしまったその時は、俺の最後となるだろう……
二時間が経過し、手持ちのポケモンのレベルも上がった。
ルカリオ達の顔にも、疲労の色が見える。
少し休憩した後に、そろそろ再戦に行くか
上を見ればまだまだかもしれないが、今はこれなら十分だ……
特訓を終了し、スモモに勝利すべくトバリジムへと足を進めていった。
----
―――トバリジム
俺は再びここに来た……昨日の屈辱を晴らすために
「再挑戦しに来た、今度は負けない。」
フィールドの対極の位置に居る、スモモに叫びかける。
「昨日のあなたとはだいぶ様子が違いますね、何かが変わったのでしょう」
昨日の俺と同じと思われては困る。
「いい目をしています、これならば昨日と同じような勝負にはならないでしょう
あなたの申し出を受け入れます
ただし今度はお互い1vs1で最強のポケモン同士で対決しませんか?」
お互いの最強のポケモン……ルカリオ同士の対決になるのか、面白い。
『ああ分かった、では行くぞ、勝負!!』
俺は腰に装着しているボールを、フィールドに投げつけた。
----
お互いのボールから出てきたのはルカリオ、相手も同じだった
「昨日のリオルが進化したのですか?同じポケモン同士の戦いとは面白いです……」
「「ルカリオ、はっけい!」」
お互い同じタイミングで、同じ技を命じる。
ルカリオ同士もほぼ力は互角のようだ、押し合いとなっている。
「シャドークロー!」
もう一つの手を黒く染め上げ、切裂いた。
そのままこちらのルカリオは、はっけいで押し負け吹っ飛ばされる。
お互いの力がほぼ互角と言うことは、勝つにはスピード、テクニック……そしてトレーナーの指示
これらが重要になってくる。
「電光石火からはっけいだ!」「見切りです!」
加速し一気に間合いを詰めるルカリオ、しかし相手のルカリオに見切られ、避けられてしまう。
そして急停止したルカリオを、相手のルカリオは攻撃してくる。
避けるのを諦めたルカリオは、受身を取った。
「受身で間合いを取るとは……ルカリオ自身の技術もなかなかのものです。
しかし毎日特訓してきた私のルカリオには勝てません!」
相手のルカリオは一瞬にして、こちらのルカリオとの間合いを詰めた。
そして鋭い手刀を、こちらのルカリオの左肩に直撃させる。
ルカリオは短い悲鳴をあげた。
----
「だ、大丈夫かルカリオ!?」
ルカリオは左肩を右手で抑えている。
一瞬これ以上、戦闘を行うのを戸惑ったが
俺の考えを否定するかのように、雄叫びを上げた。
「……分かった、まだやれるんだなルカリオ、電光石火だ!」
助走をつけ再び加速する、相手のルカリオは全く動じていない。
「ドレインパンチです、相手の腹を狙ってください!」
加速したルカリオを鋭い目で押さえつける、このまま直進したら間違いなく捕らえられる……
直進したらの話だがな。
「いまだ、悪の波動!」
ルカリオは急停止し、どす黒い波状の波動を、相手のルカリオに命中させる。
突然の特殊技の使用により、スモモのルカリオ、そしてスモモ自身も驚きの表情だ。
「ル、ルカリオ、ドレインパンチを命中させなさい!」
ルカリオは動かない、悪の波動の追加効果で怯んでいる。
「今だ、はっけい!」
動けない相手のルカリオの腹に、手刀を入れ込んだ。
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腹部に強烈な一撃が命中し、抑えながら倒れこむ相手のルカリオ。
この一撃で勝利したかのように思えたが、
相手のルカリオは立ち上がってきた。
こちらのルカリオも左肩のダメージが、ピークに達している。
お互い次に攻撃を受けたら気絶してしまうだろう。
次の一撃が勝負の分かれ目だ。
「私のルカリオもあなたのルカリオも体力が限界に達しているようです……
どうです?この一撃に全てを懸けてみませんか?」
「こっちも同じことを考えてたよ……」
『『行けぇ、ルカリオ!!』』
二人の大声が、戦闘場にこだまする。
ルカリオは決死の一撃を、相手に命中させるために、雄叫びをあげながら突進した。
そして戦闘場の中心で、ルカリオ同士は衝突した。
右手がぶつかり合い乾いた音が鳴り響き、物凄い衝撃波が周囲を舞った。
数秒間押し合い、やがて両方とも後方に吹き飛ばされた。
----
お互いのルカリオは"ドシン"という大きな音を立てて壁に激突した。
そしてそのまま壁にもたれかかっている……しかしそれは一匹だけだった。
こちらのルカリオは壁に激突した後、すぐに立ち上がった。
つまり……俺の勝ちだ。
「私の負けです、あなたにこれを贈呈します。」
ひし形のバッジを受け取った、これでバッジは3つだ。
「素晴らしいルカリオでした……これからも頑張ってください、ポケモンと一緒に」
スモモの視線が、俺のルカリオに向けられる。
戦闘が終わった直後に気絶してしまっていた、気が抜けてしまったのだろう。
ルカリオをボールに戻し、ジムを出た
ナナシ
ルカリオLv36 ゴルバットLv33 ロトムLv32
卵マシン説明
普通には覚えられない遺伝技を覚えさせることが出来る。
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ジムからポケモンセンターに向かって、息を切らしながら走る。
周りの景色が、次々と俺の目を通り抜けていった。
ルカリオはポケモンセンターで回復すれば、数十秒で全快になる
しかし精神の回復も必要だ、今日はもうバトルはさせないようにしよう。
そう思っていると、一人の男が俺の行く末を阻んだ。
「ちょっと待ってもらおうか……」
「お前は……スネオ。」
醜い笑顔で、こちらを見詰めてくる。
「俺は急いでいるんだ、そこを退いてくれ」
「うるさい、今ここで僕と勝負だ!」
普段なら承諾していたものの、今はルカリオが瀕死の状態
俺の手持ちは、万全ではないのだ。
「俺の手持ちは万全じゃないんだ、後にしてくれ。」
そう言うと、スネオは俺を鼻で笑った。
「プッ……それだからこそ勝負を挑んだんだ……行け、モウカザル!」
スネオの投げたボールから、モウカザルが出てきた。
「勝負は断る、俺は今ポケモンセンターに行かなければいけないんだ」
「逃げたら、君自身を攻撃するよ」
くそっ!!やるしかないのか……
俺は腰のボールを投げ、ゴルバットを繰り出した。
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「卑怯だな……ここまでして俺と戦いたいのか?」
「卑怯で結構、それが僕なのさ。火炎放射だ、モウカザル!!」
モウカザルは口から炎を吐き出し、ゴルバットを狙った。
火炎放射の技マシンは、この町のゲームセンターで手に入る。
しかしそれにはコイン一万枚が必要、金に物を言わせ入手したのか。
火炎放射はゴルバットに命中してしまった、しかし致命傷には至らない
反撃にエアカッターを発射したものの、回避されてしまった。
「モウカザルのスピードを舐めるなよ、火炎車だ」
炎を身に纏い、ゴルバット目掛けて突撃した。
「翼で払いのけろ!」
巨大な翼でモウカザルを宙に叩きつける、しかし火炎車のダメージは無いわけではなかった。
「今だ、怪しい光だ!」「そうは行くか、挑発だ」
モウカザルがゴルバットを挑発した、これで攻撃技以外使えなくなってしまった。
怪しい光が不発となり、隙を見せた瞬間に、モウカザルの火炎放射がゴルバットの羽を射抜いた。
「これでゴルバットは羽をうまく動かせなくなったな、火炎車で飛びつけ!」
火炎車の勢いを利用してゴルバットに飛びつき、地面に叩きつけた。
モウカザルが馬乗りとなっている状態で、ゴルバットはもう戦える状態では無かった。
俺はゴルバットを、ボールに戻した。
----
「くそっ……行け、ロトム!」
ロトムを出す、これが俺の最後のポケモンだ。
「なかなか珍しいポケモンだな、まぁ僕のパパならこの程度のポケモンすぐに買えるけどね。」
スネオの一言にロトムは怒りの表情を見せる。
「他人のポケモンを侮辱して楽しいかよ、腐ってるな」
「よく言うよ……僕の邪魔ばかりしてた癖にね」
……何を言っているんだ、こいつは?
「俺が何をしたんだ?」
「お前は僕がジャイアンに取り入って、旅を楽に進める計画を台無しにしてくれたんだ……
迷いの洞窟の時に、お前が余計なことをしてくれたからな」
迷いの洞窟……ジャイアンがガバイトを捕まえたあの時か。
「他人に媚売りたいとはな……それより一つ聞かせろ
ズイタウンのヒロトに俺がギンガ団だと吹き込んだのはお前か?」
『そうだよ、だからなんだよ!?火炎放射だ、モウカザル』
モウカザルはロトム目掛けて灼熱の炎を発射する。
それをロトムは紙一重で回避した。
絶対にこんな奴には負けたくない。
「怪しい……」「させるか、挑発だ!」
モウカザルはロトムを挑発した、これで補助技は使えなくなった。
『怪しい風だ!』
「だ、騙したな!?」
怪しい風がモウカザルを吹き飛ばした。
そして近くの建物に激突し、モウカザルは動かなくなった。
----
「もういいだろ……俺はこれで行かせてもらう」
「まだ僕には手持ちが二体残っている、行けトリトドン!」
卑劣な鳴き声と共に、トリトドンが姿を現した。
「ついさっき進化したんだ、すごいだろ?」
「進化したポケモンくらい、俺にだって居るさ」
「黙れ!僕のトリトドンはただ進化したんじゃないんだからな、水の波動」
リング型の水の塊が、ロトムに向かって放出される。
「電撃波で打ち落とせ!!」
水の波動に向かって電撃波を発射し、水の波動は消滅した。
周囲が水浸しになっている。
スネオとトリトドンが水で怯んでいる隙に俺は怪しい風を指示した。
怪しい風が、トリトドンに命中するものの、ダメージは小さい。
「耐久力の高いトリトドンには、そんな貧相な攻撃は通じないよ
そろそろこの勝負を終わりにしてあげるよ、ミラーコートだ!」
トリトドンの体が光だし、突然とロトムは戦闘不能になった。
「ミラーコートは特殊攻撃を倍にして跳ね返す技だ、自分の攻撃で倒れちゃうなんて哀れだねww」
スネオは俺を軽蔑の眼差しで見ながら、近づいてくる。
「おっと、お前コボルバッジ持ってるのか。まだ僕は持ってないし所持金の代わりに貰っといてやるよ」
「か、かえせ!!」
「やなこったwwwwwwwwwwwwwじゃあねwwwwwwwww」
スネオは去っていった。
ナナシ
ルカリオLv36 ゴルバットLv33 ロトムLv32
スネオ
モウカザルLv34 トリトドンLv30 残りの手持ち不明
----
「それは災難でしたね……」
「………」
俺は、ポケモンセンターで瀕死のポケモン三体を回復させ、
再びトバリジムへとやってきた。
ついさっき戦ったばかりだったので、運良く再びバッジを貰うことができた。
「しかし、本当にいいんですか?
この違反はポケモンリーグに通報すれば、奪った相手はしかるべき処罰を受けますよ」
「別に……構わない…」
……なぜだろう?
スネオは、俺が苦労し手に入れたバッジを卑怯な手で奪い取った人間。
俺にとって、とても憎い相手である。
だが通報はしなかった。名前さえも言っていない。
「あなたがそう言うなら別に構いませんが……」
スモモが、俺を心配するような目線で見ている。
「それじゃあ失礼……」
俺はトバリジムを出て行った。
----
スネオの奇襲により、俺は想定外の敗北を喫してしまった。
昨日スモモに負けた時は、純粋に悔しかったが
あいつに負けた時は納得のできない、歯痒さだけが残った。
今は214番道路を歩いている。
ここらのトレーナーとは、ほとんど戦っていたので
戦闘を行わずに済み、スムーズに進むことが出来た。
そして俺は213番道路を通過しながら、ノモセタウンの入り口にやってきた。
途中にレストランがあり、ここで食事をしてみたいとは思ったものの
金銭的な問題があるうえに、既に食事は済ませてあった。
僅かな後悔の念を押しつぶしながら、俺はノモセタウンに入った。
ノモセタウンの気候は湿っぽく、ある種、真夏の太陽よりも暑苦しかった。
ここの町にはジムがある、しかしそれよりも俺が興味を引かれたのは大湿原。
あそこはポケモンの生息数が多いうえに、珍しいポケモンも少なくない。
ジムに行く前にあそこで戦力補充をしよう。
ポケットにある小銭を握り締めながら、俺は大湿原に向かった。
----
大湿原は町の中よりさらにジメジメとしており、正直長居はしようとは思わない。
それに大湿原は地面のほとんどが泥で出来ていて、入れば確実に汚れてしまう。
ここによく来る人は慣れているようだが、俺は旅をしている身。
下手に衣類を汚したくないのだ……
泥のある部分にはキノココやゴクリンなどの、珍しいポケモンも居たが
俺は衣類の汚れを気にし、水場へと向かった。
水場には釣り人がたくさん居る、小さな女の子も一人居た。
その付近には、母親らしき女性も居る。
ここならおそらく服は、汚れたりしないだろう。
水場にはナマズンやヌオー、マリルなどが居る。
早速ポケモンを捕獲するか……
どいつにしよう、なるべく即戦力になるポケモンがいいな。
しばらく考えた結果、強力な水タイプの技を無効化できるヌオーを捕まえることにした。
----
ここではポケモンを使えないため、弱らせて捕まえるという方法はとれない。
なら茂みに隠れて、水の中から上がってきたところを
後方からモンスターボールを投げるという方法が最もいい方法だと思われる。
俺は近くの茂みに隠れて、ヌオーを監視し始めた
―――二十分後
額を一粒の滴が通り抜ける。
こんな湿地帯で、何もせず一つのものを見続けるなんてたまったものじゃない
それに大湿原は五百円で三十分、このままでは五百円が無駄になってしまう。
二十分前に考え出した結論を、俺は後悔した
すると突然ヌオーが、水辺から上がってきた。
しかも俺に背を向けている、これはチャンスだ。
足音を立てぬように、ヌオーに近づく
その距離が、もう2mというところになったときに
俺は迷彩柄のボールを、ヌオー目掛けて投げつけた。
不意を突かれたヌオーは、抵抗することも無くすんなりとボールに入った。
ヌオーの入ったボールを、俺は拾い上げる。
そのときに、俺の側で女の子が一人泣いていた。
----
「私がそのヌオー欲しかったのにぃ!」
小さな右手に迷彩柄のボールを持ちながら、俺に向かって怒鳴りつけた。
おそらくこの女の子も、水辺からヌオーが上がってくるのを待っていたのだろう。
水辺から上がってきて、捕まえようと思ったところを、別の人間に捕まえられてしまったのだ。
「こ、こら!す、すいません、家の娘が迷惑をかけて……」
「いえいえ、こちらも悪い点はありますから。」
確かに狙っていた獲物が、横取りされるのは気分が悪い。
それにたまたまこちらが、早くボールを投げただけで
この女の子が先にボールを投げていれば、結果は変わっていた。
「ブー……」
完全に捻くれてしまっている、母親の説得にも耳を貸さない。
「もうそろそろ時間切れで出なきゃいけないの、ヌオーはまた今度にしなさい」
「いやなの、あのヌオーじゃなきゃいやっ!」
首を大きく横に振りながら、俺の持っているボールを睨みつける。
俺が譲らない限り、ここを出て行くことは無いだろう。
「あの……お譲りしましょうか?」
俺の一言で、女の子の顔は明るくなった。
「い、いいんですか!?」
その質問に俺は、首を縦に振って返した。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて譲っていただきます、本当にありがとうございます」
俺はヌオーの入っているボールを、女の子の母親に渡した。
----
これで俺の五百円は完全に無駄になってしまった。
しかし俺は良いことをしたのかもしれない……そう思うと五百円など安いものだ。
「そうだ、ヒナちゃん……あのコをこのお兄さんに譲ってあげたらどう?」
あのコ?なんだろう……興味を引かれる。
ヒナちゃんは背負っているリュックの中から、モンスターボールを取り出し投げた。
中からは……見たことないポケモンが姿を現した。
このポケモンはどこかの地方で、初心者に配布されるポケモン、ミズゴロウに似ていた。
「このコはヌマクローっていってね、私の家の近くに捨てられていたの」
最近は、モラルの無いトレーナーが増えたものだろう、自分のポケモンを捨てるなんて……
「私が拾ってあげたんだけど、このコとっても暴れん坊で困ってるの……
多分このコは、旅に出て色んなポケモンと戦ってみたいと思うの。」
確かにこのポケモンは強い目をしている、少なくともペットには向いてない。
「お兄ちゃんは旅をしてポケモンマスターを目指しているんでしょ?
このコも一緒に連れてってくれないかな?」
どうしようか、これならヌオーと交換したことになるよな……
「うん、じゃあこのコを譲ってもらうよ、ありがとう」
ヒナちゃんはヌマクローをボールに戻し、俺の手に渡した。
「多分このコ進化したら凄い可哀想なことになる気がするの……
でもきっとすっごーく強くなるよ、大事に育ててね」
……なんだろう、この胸の中のモヤモヤ感は?進化したら凄い可哀想なことになる?
きっとこの娘は、適当に言っているんだろう。
「うん、分かった。ヒナちゃんもヌオーを可愛がってあげてね。」
『うん、大事に育てるよ、お兄ちゃんありがとう!!』
ヒナちゃんは笑顔で俺に返事をした。母親も俺に会釈をする。
そして去っていった。
このポケモンは珍しいポケモンだ、強力な戦力となるだろう……
ナナシ
ルカリオLv36 ゴルバットLv33 ロトムLv32 ヌマクローLv35
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[[前へ>ギンガ その3]]
食事を終え、俺は父さんに呼び出された
「いいかナナシ、お前のポケッチには、ギンガ団の一部の人間のポケッチナンバーが登録されている
これで通話が可能だ、私がお前にギンガ団として命令するとくが来るかもしれないからな。」
他にもこのポケッチには色々と機能がついているようだ。
「いざというときのためだ……お前にはこれを渡しておく」
黒いマントと青い仮面を渡される。
「お前はギンガ団の幹部を上回る実力を持っている……
だから私は、お前をギンガ団幹部として任命する、それは任務のときの変装道具だ。
任務中はソーラという偽名を使うんだ、いいな?あと旅の選別にこれを渡しておこう」
何かのディスクを渡される、それは技マシンに類似していた。
「これは卵マシン、卵から生まれたポケモンのみが覚えている技がいくつかあるのは知っているだろう?」
……詳しくは知らないが聞いたことはある。
「普通は覚えられないのだが、これを使えば覚えさせることが出来るのだ、分かったか?」
「……分かった、じゃあ……何かあったら連絡する」
俺は大きな扉を開け、部屋を出た。
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――214番道路
『ルカリオ、電光石火だ!』
スモモを倒すべく、俺はここで特訓をしている。
このままもしスモモを倒せたとしても、また必ず自分は壁に行く手を阻まれる。
それを防ぐためには、ポケモンのレベルを上げる以外に方法は無い。
それに……いつかギンガ団幹部ソーラとして動くときも来るだろう……
その時は普通のポケモンバトルではない……命を失う危険性だってある。
まだまだ自分の力など未熟なものだ、過信してはいけない。
自分の力に過信してしまったその時は、俺の最後となるだろう……
二時間が経過し、手持ちのポケモンのレベルも上がった。
ルカリオ達の顔にも、疲労の色が見える。
少し休憩した後に、そろそろ再戦に行くか
上を見ればまだまだかもしれないが、今はこれなら十分だ……
特訓を終了し、スモモに勝利すべくトバリジムへと足を進めていった。
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―――トバリジム
俺は再びここに来た……昨日の屈辱を晴らすために
「再挑戦しに来た、今度は負けない。」
フィールドの対極の位置に居る、スモモに叫びかける。
「昨日のあなたとはだいぶ様子が違いますね、何かが変わったのでしょう」
昨日の俺と同じと思われては困る。
「いい目をしています、これならば昨日と同じような勝負にはならないでしょう
あなたの申し出を受け入れます
ただし今度はお互い1vs1で最強のポケモン同士で対決しませんか?」
お互いの最強のポケモン……ルカリオ同士の対決になるのか、面白い。
『ああ分かった、では行くぞ、勝負!!』
俺は腰に装着しているボールを、フィールドに投げつけた。
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お互いのボールから出てきたのはルカリオ、相手も同じだった
「昨日のリオルが進化したのですか?同じポケモン同士の戦いとは面白いです……」
「「ルカリオ、はっけい!」」
お互い同じタイミングで、同じ技を命じる。
ルカリオ同士もほぼ力は互角のようだ、押し合いとなっている。
「シャドークロー!」
もう一つの手を黒く染め上げ、切裂いた。
そのままこちらのルカリオは、はっけいで押し負け吹っ飛ばされる。
お互いの力がほぼ互角と言うことは、勝つにはスピード、テクニック……そしてトレーナーの指示
これらが重要になってくる。
「電光石火からはっけいだ!」「見切りです!」
加速し一気に間合いを詰めるルカリオ、しかし相手のルカリオに見切られ、避けられてしまう。
そして急停止したルカリオを、相手のルカリオは攻撃してくる。
避けるのを諦めたルカリオは、受身を取った。
「受身で間合いを取るとは……ルカリオ自身の技術もなかなかのものです。
しかし毎日特訓してきた私のルカリオには勝てません!」
相手のルカリオは一瞬にして、こちらのルカリオとの間合いを詰めた。
そして鋭い手刀を、こちらのルカリオの左肩に直撃させる。
ルカリオは短い悲鳴をあげた。
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「だ、大丈夫かルカリオ!?」
ルカリオは左肩を右手で抑えている。
一瞬これ以上、戦闘を行うのを戸惑ったが
俺の考えを否定するかのように、雄叫びを上げた。
「……分かった、まだやれるんだなルカリオ、電光石火だ!」
助走をつけ再び加速する、相手のルカリオは全く動じていない。
「ドレインパンチです、相手の腹を狙ってください!」
加速したルカリオを鋭い目で押さえつける、このまま直進したら間違いなく捕らえられる……
直進したらの話だがな。
「いまだ、悪の波動!」
ルカリオは急停止し、どす黒い波状の波動を、相手のルカリオに命中させる。
突然の特殊技の使用により、スモモのルカリオ、そしてスモモ自身も驚きの表情だ。
「ル、ルカリオ、ドレインパンチを命中させなさい!」
ルカリオは動かない、悪の波動の追加効果で怯んでいる。
「今だ、はっけい!」
動けない相手のルカリオの腹に、手刀を入れ込んだ。
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腹部に強烈な一撃が命中し、抑えながら倒れこむ相手のルカリオ。
この一撃で勝利したかのように思えたが、
相手のルカリオは立ち上がってきた。
こちらのルカリオも左肩のダメージが、ピークに達している。
お互い次に攻撃を受けたら気絶してしまうだろう。
次の一撃が勝負の分かれ目だ。
「私のルカリオもあなたのルカリオも体力が限界に達しているようです……
どうです?この一撃に全てを懸けてみませんか?」
「こっちも同じことを考えてたよ……」
『『行けぇ、ルカリオ!!』』
二人の大声が、戦闘場にこだまする。
ルカリオは決死の一撃を、相手に命中させるために、雄叫びをあげながら突進した。
そして戦闘場の中心で、ルカリオ同士は衝突した。
右手がぶつかり合い乾いた音が鳴り響き、物凄い衝撃波が周囲を舞った。
数秒間押し合い、やがて両方とも後方に吹き飛ばされた。
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お互いのルカリオは"ドシン"という大きな音を立てて壁に激突した。
そしてそのまま壁にもたれかかっている……しかしそれは一匹だけだった。
こちらのルカリオは壁に激突した後、すぐに立ち上がった。
つまり……俺の勝ちだ。
「私の負けです、あなたにこれを贈呈します。」
ひし形のバッジを受け取った、これでバッジは3つだ。
「素晴らしいルカリオでした……これからも頑張ってください、ポケモンと一緒に」
スモモの視線が、俺のルカリオに向けられる。
戦闘が終わった直後に気絶してしまっていた、気が抜けてしまったのだろう。
ルカリオをボールに戻し、ジムを出た
ナナシ
ルカリオLv36 ゴルバットLv33 ロトムLv32
卵マシン説明
普通には覚えられない遺伝技を覚えさせることが出来る。
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ジムからポケモンセンターに向かって、息を切らしながら走る。
周りの景色が、次々と俺の目を通り抜けていった。
ルカリオはポケモンセンターで回復すれば、数十秒で全快になる
しかし精神の回復も必要だ、今日はもうバトルはさせないようにしよう。
そう思っていると、一人の男が俺の行く末を阻んだ。
「ちょっと待ってもらおうか……」
「お前は……スネオ。」
醜い笑顔で、こちらを見詰めてくる。
「俺は急いでいるんだ、そこを退いてくれ」
「うるさい、今ここで僕と勝負だ!」
普段なら承諾していたものの、今はルカリオが瀕死の状態
俺の手持ちは、万全ではないのだ。
「俺の手持ちは万全じゃないんだ、後にしてくれ。」
そう言うと、スネオは俺を鼻で笑った。
「プッ……それだからこそ勝負を挑んだんだ……行け、モウカザル!」
スネオの投げたボールから、モウカザルが出てきた。
「勝負は断る、俺は今ポケモンセンターに行かなければいけないんだ」
「逃げたら、君自身を攻撃するよ」
くそっ!!やるしかないのか……
俺は腰のボールを投げ、ゴルバットを繰り出した。
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「卑怯だな……ここまでして俺と戦いたいのか?」
「卑怯で結構、それが僕なのさ。火炎放射だ、モウカザル!!」
モウカザルは口から炎を吐き出し、ゴルバットを狙った。
火炎放射の技マシンは、この町のゲームセンターで手に入る。
しかしそれにはコイン一万枚が必要、金に物を言わせ入手したのか。
火炎放射はゴルバットに命中してしまった、しかし致命傷には至らない
反撃にエアカッターを発射したものの、回避されてしまった。
「モウカザルのスピードを舐めるなよ、火炎車だ」
炎を身に纏い、ゴルバット目掛けて突撃した。
「翼で払いのけろ!」
巨大な翼でモウカザルを宙に叩きつける、しかし火炎車のダメージは無いわけではなかった。
「今だ、怪しい光だ!」「そうは行くか、挑発だ」
モウカザルがゴルバットを挑発した、これで攻撃技以外使えなくなってしまった。
怪しい光が不発となり、隙を見せた瞬間に、モウカザルの火炎放射がゴルバットの羽を射抜いた。
「これでゴルバットは羽をうまく動かせなくなったな、火炎車で飛びつけ!」
火炎車の勢いを利用してゴルバットに飛びつき、地面に叩きつけた。
モウカザルが馬乗りとなっている状態で、ゴルバットはもう戦える状態では無かった。
俺はゴルバットを、ボールに戻した。
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「くそっ……行け、ロトム!」
ロトムを出す、これが俺の最後のポケモンだ。
「なかなか珍しいポケモンだな、まぁ僕のパパならこの程度のポケモンすぐに買えるけどね。」
スネオの一言にロトムは怒りの表情を見せる。
「他人のポケモンを侮辱して楽しいかよ、腐ってるな」
「よく言うよ……僕の邪魔ばかりしてた癖にね」
……何を言っているんだ、こいつは?
「俺が何をしたんだ?」
「お前は僕がジャイアンに取り入って、旅を楽に進める計画を台無しにしてくれたんだ……
迷いの洞窟の時に、お前が余計なことをしてくれたからな」
迷いの洞窟……ジャイアンがガバイトを捕まえたあの時か。
「他人に媚売りたいとはな……それより一つ聞かせろ
ズイタウンのヒロトに俺がギンガ団だと吹き込んだのはお前か?」
『そうだよ、だからなんだよ!?火炎放射だ、モウカザル』
モウカザルはロトム目掛けて灼熱の炎を発射する。
それをロトムは紙一重で回避した。
絶対にこんな奴には負けたくない。
「怪しい……」「させるか、挑発だ!」
モウカザルはロトムを挑発した、これで補助技は使えなくなった。
『怪しい風だ!』
「だ、騙したな!?」
怪しい風がモウカザルを吹き飛ばした。
そして近くの建物に激突し、モウカザルは動かなくなった。
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「もういいだろ……俺はこれで行かせてもらう」
「まだ僕には手持ちが二体残っている、行けトリトドン!」
卑劣な鳴き声と共に、トリトドンが姿を現した。
「ついさっき進化したんだ、すごいだろ?」
「進化したポケモンくらい、俺にだって居るさ」
「黙れ!僕のトリトドンはただ進化したんじゃないんだからな、水の波動」
リング型の水の塊が、ロトムに向かって放出される。
「電撃波で打ち落とせ!!」
水の波動に向かって電撃波を発射し、水の波動は消滅した。
周囲が水浸しになっている。
スネオとトリトドンが水で怯んでいる隙に俺は怪しい風を指示した。
怪しい風が、トリトドンに命中するものの、ダメージは小さい。
「耐久力の高いトリトドンには、そんな貧相な攻撃は通じないよ
そろそろこの勝負を終わりにしてあげるよ、ミラーコートだ!」
トリトドンの体が光だし、突然とロトムは戦闘不能になった。
「ミラーコートは特殊攻撃を倍にして跳ね返す技だ、自分の攻撃で倒れちゃうなんて哀れだねww」
スネオは俺を軽蔑の眼差しで見ながら、近づいてくる。
「おっと、お前コボルバッジ持ってるのか。まだ僕は持ってないし所持金の代わりに貰っといてやるよ」
「か、かえせ!!」
「やなこったwwwwwwwwwwwwwじゃあねwwwwwwwww」
スネオは去っていった。
ナナシ
ルカリオLv36 ゴルバットLv33 ロトムLv32
スネオ
モウカザルLv34 トリトドンLv30 残りの手持ち不明
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「それは災難でしたね……」
「………」
俺は、ポケモンセンターで瀕死のポケモン三体を回復させ、
再びトバリジムへとやってきた。
ついさっき戦ったばかりだったので、運良く再びバッジを貰うことができた。
「しかし、本当にいいんですか?
この違反はポケモンリーグに通報すれば、奪った相手はしかるべき処罰を受けますよ」
「別に……構わない…」
……なぜだろう?
スネオは、俺が苦労し手に入れたバッジを卑怯な手で奪い取った人間。
俺にとって、とても憎い相手である。
だが通報はしなかった。名前さえも言っていない。
「あなたがそう言うなら別に構いませんが……」
スモモが、俺を心配するような目線で見ている。
「それじゃあ失礼……」
俺はトバリジムを出て行った。
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スネオの奇襲により、俺は想定外の敗北を喫してしまった。
昨日スモモに負けた時は、純粋に悔しかったが
あいつに負けた時は納得のできない、歯痒さだけが残った。
今は214番道路を歩いている。
ここらのトレーナーとは、ほとんど戦っていたので
戦闘を行わずに済み、スムーズに進むことが出来た。
そして俺は213番道路を通過しながら、ノモセタウンの入り口にやってきた。
途中にレストランがあり、ここで食事をしてみたいとは思ったものの
金銭的な問題があるうえに、既に食事は済ませてあった。
僅かな後悔の念を押しつぶしながら、俺はノモセタウンに入った。
ノモセタウンの気候は湿っぽく、ある種、真夏の太陽よりも暑苦しかった。
ここの町にはジムがある、しかしそれよりも俺が興味を引かれたのは大湿原。
あそこはポケモンの生息数が多いうえに、珍しいポケモンも少なくない。
ジムに行く前にあそこで戦力補充をしよう。
ポケットにある小銭を握り締めながら、俺は大湿原に向かった。
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大湿原は町の中よりさらにジメジメとしており、正直長居はしようとは思わない。
それに大湿原は地面のほとんどが泥で出来ていて、入れば確実に汚れてしまう。
ここによく来る人は慣れているようだが、俺は旅をしている身。
下手に衣類を汚したくないのだ……
泥のある部分にはキノココやゴクリンなどの、珍しいポケモンも居たが
俺は衣類の汚れを気にし、水場へと向かった。
水場には釣り人がたくさん居る、小さな女の子も一人居た。
その付近には、母親らしき女性も居る。
ここならおそらく服は、汚れたりしないだろう。
水場にはナマズンやヌオー、マリルなどが居る。
早速ポケモンを捕獲するか……
どいつにしよう、なるべく即戦力になるポケモンがいいな。
しばらく考えた結果、強力な水タイプの技を無効化できるヌオーを捕まえることにした。
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ここではポケモンを使えないため、弱らせて捕まえるという方法はとれない。
なら茂みに隠れて、水の中から上がってきたところを
後方からモンスターボールを投げるという方法が最もいい方法だと思われる。
俺は近くの茂みに隠れて、ヌオーを監視し始めた
―――二十分後
額を一粒の滴が通り抜ける。
こんな湿地帯で、何もせず一つのものを見続けるなんてたまったものじゃない
それに大湿原は五百円で三十分、このままでは五百円が無駄になってしまう。
二十分前に考え出した結論を、俺は後悔した
すると突然ヌオーが、水辺から上がってきた。
しかも俺に背を向けている、これはチャンスだ。
足音を立てぬように、ヌオーに近づく
その距離が、もう2mというところになったときに
俺は迷彩柄のボールを、ヌオー目掛けて投げつけた。
不意を突かれたヌオーは、抵抗することも無くすんなりとボールに入った。
ヌオーの入ったボールを、俺は拾い上げる。
そのときに、俺の側で女の子が一人泣いていた。
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「私がそのヌオー欲しかったのにぃ!」
小さな右手に迷彩柄のボールを持ちながら、俺に向かって怒鳴りつけた。
おそらくこの女の子も、水辺からヌオーが上がってくるのを待っていたのだろう。
水辺から上がってきて、捕まえようと思ったところを、別の人間に捕まえられてしまったのだ。
「こ、こら!す、すいません、家の娘が迷惑をかけて……」
「いえいえ、こちらも悪い点はありますから。」
確かに狙っていた獲物が、横取りされるのは気分が悪い。
それにたまたまこちらが、早くボールを投げただけで
この女の子が先にボールを投げていれば、結果は変わっていた。
「ブー……」
完全に捻くれてしまっている、母親の説得にも耳を貸さない。
「もうそろそろ時間切れで出なきゃいけないの、ヌオーはまた今度にしなさい」
「いやなの、あのヌオーじゃなきゃいやっ!」
首を大きく横に振りながら、俺の持っているボールを睨みつける。
俺が譲らない限り、ここを出て行くことは無いだろう。
「あの……お譲りしましょうか?」
俺の一言で、女の子の顔は明るくなった。
「い、いいんですか!?」
その質問に俺は、首を縦に振って返した。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて譲っていただきます、本当にありがとうございます」
俺はヌオーの入っているボールを、女の子の母親に渡した。
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これで俺の五百円は完全に無駄になってしまった。
しかし俺は良いことをしたのかもしれない……そう思うと五百円など安いものだ。
「そうだ、ヒナちゃん……あのコをこのお兄さんに譲ってあげたらどう?」
あのコ?なんだろう……興味を引かれる。
ヒナちゃんは背負っているリュックの中から、モンスターボールを取り出し投げた。
中からは……見たことないポケモンが姿を現した。
このポケモンはどこかの地方で、初心者に配布されるポケモン、ミズゴロウに似ていた。
「このコはヌマクローっていってね、私の家の近くに捨てられていたの」
最近は、モラルの無いトレーナーが増えたものだろう、自分のポケモンを捨てるなんて……
「私が拾ってあげたんだけど、このコとっても暴れん坊で困ってるの……
多分このコは、旅に出て色んなポケモンと戦ってみたいと思うの。」
確かにこのポケモンは強い目をしている、少なくともペットには向いてない。
「お兄ちゃんは旅をしてポケモンマスターを目指しているんでしょ?
このコも一緒に連れてってくれないかな?」
どうしようか、これならヌオーと交換したことになるよな……
「うん、じゃあこのコを譲ってもらうよ、ありがとう」
ヒナちゃんはヌマクローをボールに戻し、俺の手に渡した。
「多分このコ進化したら凄い可哀想なことになる気がするの……
でもきっとすっごーく強くなるよ、大事に育ててね」
……なんだろう、この胸の中のモヤモヤ感は?進化したら凄い可哀想なことになる?
きっとこの娘は、適当に言っているんだろう。
「うん、分かった。ヒナちゃんもヌオーを可愛がってあげてね。」
『うん、大事に育てるよ、お兄ちゃんありがとう!!』
ヒナちゃんは笑顔で俺に返事をした。母親も俺に会釈をする。
そして去っていった。
このポケモンは珍しいポケモンだ、強力な戦力となるだろう……
ナナシ
ルカリオLv36 ゴルバットLv33 ロトムLv32 ヌマクローLv35
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一日休み、俺はノモセのジムにやってきた。
ノモセのジムはフィールドの中心にプールがあり、両端に足場があった。
そして向こうの足場に居たのは、上半身裸のおっさんだった。
「挑戦者か……いい目をしているな、俺様はマキシマム仮面!!」
いい年して覆面レスラーか?確かこの町のジムリーダーはマキシさんとか……
多分これは言ったら負けなんだろうな、気づかなかったことにしよう。
「勝負のルールは2vs2だ、どちらが勝っても楽しかったと言える勝負にするぞ」
使えるポケモンは二体か、先鋒はとりあえず水に強いロトムで行くか。
『では行くぞ、行けフローゼル!』「行け、ロトム!」
相手のポケモンはフローゼル、こちらはロトムだ。
フローゼルはボールから出た瞬間すぐにプールの中に潜ってしまった。
「ハハハハハどうだぁ!これでは攻撃できまい」
確かに水中に潜っているフローゼルを攻撃するのは、至難の技かもしれない
しかし相手が悪かったな。
「電撃波」
一筋の電撃が水中に潜む、フローゼルを貫く。
電撃波は必中技、相手が見えれば絶対に当てることができる。
元々耐久力の低いフローゼルに弱点の電気技がヒットし
次の攻撃を食らえば、間違い無く瀕死という状態にまでなっていた。
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「くそぅ……電撃波が飛んでくるとは、フローゼル塩水だぁ!」
プールの中から水が噴出しロトムに命中した。
「怯むな、電撃波だ。」
しかしロトムは電撃波を放とうとはしない。
塩水が目に入って、開けられなくなってしまったのか……
『今だ、ロトムを噛み砕け!』
フローゼルがプールから出てきてロトムに噛み付いた。
ロトムは弱点の攻撃を受け、致命傷を負ってしまった。
だが俺はこの瞬間を待っていた……フローゼルが水中から出てくる瞬間を!
『フローゼルが逃げていった方向目掛けて、電撃波だ!』
水中に逃げて行ったフローゼルを、ロトムは的確に射抜いた。
そのままフローゼルは気絶し、プールの水面に浮かび上がってきた。
「塩水で目が見えなかったはずなのになぜ……」
「音だ、フローゼルが水中に逃げて行った方向の音を聞けば分かる」
「ぬぅ……やるな少年、しかし次の俺様のポケモンには勝てるかな?」
マキシさ……マキシマム仮面は次のモンスターボールを水中に投げ込んだ。
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マキシマム仮面の、最後のポケモンがナマズン
こいつは水、地面タイプで電気技は通らない、ロトムでは不利か……
だがロトムの得意な技は、攻撃ではない。
補助技や変化技で、相手を惑わすことだ。
「怪しい光だ!」「泥爆弾でプールを泥水に変えろ!」
泥爆弾でプールの水が濁っていく、これでは怪しい光をナマズンが見ることは無い。
それと同時にロトムからは、ナマズンが見えなくなってしまった。
ただしそれはナマズンも同じだ、そちらからもロトムは見えまい……
「マグニチュードだぁ」
ジム全体が揺れ始めた、立っていられない……
思わず座ってしまう、プールの水が波のように……まさか!?
マグニチュードによって発生した波がロトムに襲い掛かる。
その波にロトムは呑まれて、戦闘不能となってしまった。
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『フハハハハどうだぁ、俺様のナマズンは!?』
このナマズン、フィールドとマグニチュードを利用して新たな技を生み出してる。
先ほどの濁流でプールの両端にあった足場が水浸しになってしまった。
ここは水タイプのヌマクローしかないな。
「行け、ヌマクロー!」
投げたボールから、ヌマクローが出てきた。
「ナマズン、アクアテールだぁ!」
ナマズンが尾を大きく振り、巨大な波が発生する。
「水に飛び込め!」
ヌマクローは指示通り、巨大な津波に飛び込んで行った、やはりこいつは戦闘向きのポケモンだ。
しかし濁った水の中に入ってしまい、こちらからは指示ができない。
「思念の頭突きだぁ!」
そちらからもプールの中は見えないはずだ……!?
「ヌマクロー、正面に冷凍パンチだ!」
正面に冷凍パンチをしたものの、空振りに終わり、思念の頭突きがヌマクローにヒットした。
一瞬水が大きく揺れ、ヌマクローがプールの壁に激突した。
思念の頭突きはエスパータイプの技、視界が悪くてもある程度は敵の場所が分かるのか。
「まだまだ甘いぞ少年、俺様のナマズンは中途半端な攻撃は当たらん!」
……フィールドの条件がいいだけだ、ナマズン自体はそれほどは強くないはず。
しかしこのフィールドをどうにかしないかぎりは勝利は難しい……
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「ナマズン、一度離れるんだぁ!」
ナマズンはヌマクローからどんどん離れていく、攻撃を当てさせないためだろう。
ヌマクローも立ち上がった、まだまだ勝負はこれからである。
「アクアテールで津波を起こせぇ!」
先ほどと同じ戦法だ、尾を大きく振り、津波を起こしてきた。
水中に深く潜り、ヌマクローはそれを回避する。
しかしその瞬間、再び揺れが発生した。
これはマグニチュード……ヌマクローが水に深く潜り込んだときに、攻撃するつもりだったのか
アクアテールによる津波は囮か。
さすがはジムリーダーと言ったところか。
「思念の頭突きでぶっ飛ばしてやれぇ!」
大きな水音を立てて、ヌマクローに迫り来る。
「避けろ!とにかく避けてくれ!」
ヌマクローは俺の指示を聞き、ナマズンから逃げていった。
しかしナマズンのほうが僅かにスピードが速い、このままではいずれ追いつかれてしまう。
ヌマクローは、プールの壁に手がついてしまった。
ナマズンがどんどんとヌマクローに近づいていく……もうそろそろだ。
『今だ、壁を蹴って冷凍パンチ!」
ヌマクローはニヤッと笑い、壁を蹴って加速した。
ナマズンとヌマクローはぶつかり合ったが、一瞬で決着は付いた。
冷凍パンチによってナマズンは致命傷を負った。
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致命傷を負ったナマズンは、顔が紅潮し怒り狂っている。
このナマズン……どうやらある程度ダメージを受けると怒りが爆発するようだ。
「俺様のナマズンがこうなってしまうともう手が付けられなくなる、どうするかな?」
「勝負に勝つまではそれは分からん、行けヌマクロー!」
ヌマクローは一気に攻め込んだ、ここで勝負をつけるつもりだ。
「泥爆弾だぁ!」
ナマズンは泥の塊を、ヌマクロー目掛けて発射する。
ヌマクローはそれを回避しようとした瞬間には、ヌマクローの顔をすり抜けていった。
「くそっ、こいつ速い……」
泥爆弾のスピードが、最初に撃ったときよりもかなり速い。
これも怒りの感情による力か?
「まだまだぁ泥爆弾を連射しろぉ!」
ナマズンは命令通り泥爆弾を連射し始めた、どんどんとプールが濁っていく。
「ハイドロポンプで対抗しろ!」
ヌマクローはハイドロポンプで、泥爆弾をどんどんと打ち落としていく。
こうなるとどちらの攻撃がさきに相手に命中するかで勝負は決まってしまう。
完全な運頼みだが……面白い!
やがてナマズンは体力が尽き、乱射していたハイドロポンプが命中し瀕死となった。
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「よくやったぞヌマクロー、お前のおかげで俺は勝つことができた。」
泥塗れのプールから上がってきた、ヌマクローの頭を撫でる。
するとヌマクローの体は輝きだした。
どんどんと体が大きくなっていった――進化だ。
俺は進化に胸が高まってきた。
巨大で水色の体、黒いヒレ……そしてやや鋭い目。
……こいつは……どこかで見たことがある。
確か……キモクナーイとか言ってたよな……
「おぉ!お前のヌマクローがラグラージに進化したか」
ラグラージっていうのかこいつ……
「こいつは見た目もいいし、扱いやすく強いポケモンだぞ」
見た目はいい……?
「おっと、こいつを渡すのを忘れてた。ほらフェンバッジだ」
丸いバッジを渡された、まぁ……とにかくジムバッジ四つ目ゲットだ。
「久々の楽しいバトルだったぞ、お前さんはきっといいトレーナーになる」
俺も久々にバトルを楽しんだかな……
「じゃあな少年、そういえばつい最近まで行方不明だったメリッサが帰ってきた
またすぐ出かけるかもしれんから、早めに挑戦しにいくといい」
「ああ分かった、ありがとうマキシマム仮面」
俺はノモセジムを出た。
それにしてもまさかヌマクローがラグラージに進化するとは、全然想像がつかなかった。
ヒナちゃんの元に居る間に、進化しなくてよかったなお前…
ナナシ
ルカリオLv36 ゴルバットLv33 ロトムLv32 ラグラージLv36
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