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ギンガ その9 - (2007/07/29 (日) 12:05:35) のソース

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新月島の奥――そこに奴は居た。
漆黒の体、無機質な蒼い瞳……ダークライ。
もう邪魔をする人間も居ない、あとはこいつを捕獲することで任務は完了する。
リュックからマスターボールを取り出し、宙に放り投げる。
ダークライは、そのボールにゆっくりと収納された。

収納されたボールを拾うと、俺の手の中で消滅する。
そうか、俺の手持ちは六体居るから、七体目のポケモンは転送されるのか。
父さんはそこまで考えて、ファイヤーとフリーザーを預けたのか。
もうここに用は無い。俺の任務は完了したんだ、とっととトバリビルに――

『待ちなさい!』

狭いこの島で、再び声が木霊する。
その声の主は……現シンオウリーグチャンピオン、シロナ。
「スネオ君にあんなことして……許さないわよ」
『黙れっ!!』
今の俺の手持ちなら……伝説のポケモン二体なら勝てる。
「ここでぶっ倒してやる、行け、ファイヤー!」

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再びその場に姿を現すファイヤー。
「伝説のポケモン……アカギめ、こんなポケモンを……」
「さぁ! 早くポケモンを出せ!」
どんなポケモンが来ようと、今の俺なら撃破することができる。
「出来れば使いたくなかったけど……仕方が無いわね、行け――」
シロナの投げたボールから出てきたのは、雷の猛獣、ライコウ。
まずい……ライコウのタイプは電気、ファイヤーとの相性は悪い。
「く、くそ…ファイヤー、火炎放射だ!」
「ライコウ、雷!」
火炎放射を撃つ前に、ファイヤーが雷に貫かれる。
その攻撃を、ファイヤーは耐えることができなかった。

まずい……ファイヤーが一撃で……
次に出せばいいのはどっちだ、ラグラージ?フリーザー?
相性的に考えたらラグラージだが、電気タイプの技を封じたところで別の技にやられるだけ。
それならフリーザーを出して、ライコウより早く攻撃すれば……
伝説のポケモンだ……相性なんて覆せるはず。
「行け! フリーザー、冷凍ビ――」
出てきたばかりのフリーザーに、激しい閃光が走り轟音と共に沈む。
その光景を俺はただ見てることしかできなかった。

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「あ……あ……い、行け! ラグラ――」
『ライコウ!』
シロナの掛け声で、ライコウは俺の元へと駆け込み、俺を押したおす。
「ついに自分のポケモンすら信用できなくなってしまったのね……」
な……なんのことだ?
「本当はこんなことしたくないけど……
 あなたがギンガ団幹部である以上見逃すわけにはいかないわ」
鋭い爪と牙を俺に向ける。
やばい……この攻撃を食らったら瀕死じゃ済まない……死ぬ。

あぁ……もう駄目だな。

「………さようなら」

ライコウの爪が、俺目掛けて振り下ろされた。

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『十万ボルトだ!』
突如、ライコウを強大な電撃が襲う。
その攻撃を、ライコウは紙一重で回避した。
「……まさか…」
起き上がった俺の目に飛び込んできたのは、伝説のポケモン、サンダー。
そしてその背に乗っているのは、ギンガ団総裁である父親、アカギ。

「そこまでだ。現シンオウリーグチャンピオン、シロナ」
「あら、久しぶりね。また私にやられたいのかしら?」
流し目で父さんをみつめるシロナ。それに対し薄ら笑いを浮かべる父さん。
「やられる? それはそっちの話だ。お前のポケモンは二、三体ほど失っているだろう
 それに対しこちらは手持ちがフルに残ってる。この時点で貴様に勝ち目はないのだ」
そう指摘され、シロナは父さんをキッと睨む。指摘されたことは間違いでは無いようだ。

「次は……覚えていなさい」
シロナは悔しそうにこちらを睨む。
「帰るぞ、ナナシ……」
手を差し伸べられる。
俺はその手に掴み、ゆっくりと立ち上がった。

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【資産家逮捕 ハクタイの森で強盗殺人】
××日午前0時32分頃、ヨスガシティ付近に在住の、資産家、ウラヤマ容疑者(54)を
強盗殺人の疑いで緊急逮捕した。

調べによると、ウラヤマ容疑者は4年前、友人である資産家××××さん(当時50歳)と
××××さんの娘の××ちゃん(当時6歳)を殺害し、金目の物を奪った疑い。

ウラヤマ容疑者は前日の午後10時40分ごろ、犯罪組織ギンガ団に襲われ
その時に容疑が暴かれる。
その後シンオウリーグチャンピオンによってギンガ団は撃退され、ウラヤマ容疑者は連行された。

ウラヤマ容疑者はこの事実を認め、死体の遺棄場所を供述し、
供述通りその場所から二人の死体が発見された。

警察はこの事実を踏まえ、ウラヤマ容疑者にさらなる事実を要求している。

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………これが五日前の新聞の記事、あれからもうこんなに経ったのだ。
殺人事件を起こしたウラヤマ氏は記事どおり逮捕され、今も取調べを受けている。
殺害された二人の死体は、ハクタイの森の洋館の地中から発見されたそうだ。
執事も多少の取調べは受けたみたいだが、とくに罪には問われなかったらしい。
この事件の影響は大きく、ウラヤマ氏が経営していたポケモン触れ合い広場は当然閉鎖。
他にもいくつもの団体や組織に影響があったようだ。

この情報は、全てギンガ団の諜報部員が教えてくれた。
……スネオは無事だろうか?
諜報部員に尋ねてみたが、調査することが難しいらしい。
ポケモンリーグが隠蔽工作をしており、下手したら命を落としかねないそうだ。

俺はあの後、二体の鳥ポケモンを回収され、一言こう言われた。

『力に溺れるな』

力に溺れる……なんとなく意味は分かる気がする。
ちょうどあの時、フリーザーかラグラージ、どちらを出すか悩んだ時
伝説というだけでフリーザーを出し、結果はあれだ。

なんというか……酷い無気力感に襲われた。

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いつまでも踏みとどまっていてはいけない。そう思い、俺はウラヤマさんの屋敷へと足を運んだ。
屋敷内は立ち入り禁止となっており、外から見るくらいしか出来ないが……
数日前までは人がたくさん居たようだが、今は全く居ない。
たくさん居たメイドさんも、執事のお爺さんも、主人のウラヤマ氏も姿は無い。
こんなところを訪れてもしょうがない。そのはずだった。

俺が帰ろう、そう思ったときにポケモンの鳴き声が聞こえた。

鳴き声の聞こえた茂みを探してみると、白い体毛のイーブイが居た。
こいつは、ウラヤマさんの自慢のペットだったイーブイだ。
飼い主が逮捕されて、もう世話をする人間が居ないのか……
「俺と一緒に来るか?」
手を伸ばす俺。
その手に前足を伸ばし、白いイーブイは高い声で鳴いた。

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その後、なんとなく森の洋館に訪れた。
人は居ると思ったのだが、ウラヤマ氏の屋敷周辺と同じく人は居ない。
呪い…が怖いのか?

……もうここには呪いなんて存在しない。
開放されたんだ、ここの主人も、ウラヤマさんも……

俺はリュックの中から、かつてナタネに貰った羊羹二つと、紙皿を取り出す。
それを屋敷の門の前に備え、黙祷した。

……黙祷し終わり、ゆっくりと立ち上がる。
そして、そのまま洋館に背を向けた。

これで…全て終わったんだ―――


ナナシ
ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv44、
ラグラージLv46、イーブイLv40

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『ハ…ハ……ハクションッ!』
俺は次のジムのある町、キッサキシティに行くため、217番道路を歩いている。
だがこの道路……足元にも雪が絡み付いて、動くのにかなり労力を使う。
ったく……なんでこんな不便なところにジムがあるんだ。

突然寒気が俺を襲う。悪寒と言った方が適切だろうか?
……嫌な予感がするな。もしかしたらあいつらに―――

「やぁ、久しぶりだね」

まさか、とは思ったがタイミング悪すぎだろ……
恐る恐る振り返ると、優等生面の少年、出木杉の姿があった。

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「で、出木杉!?」
まずい……既に俺がギンガ団員だというのは周知のこと。
こんなところで仲間を呼ばれたら……
「そんなに驚いて……なにかあったのかい?」
……まさかとは思うが、ひょっとして知らないのか?
「いや…突然後ろから声かけられたからさ……」
大丈夫だ…誤魔化せてるはずだ。

「お前はもうグレイシャバッジを手に入れたのか?」
「まだなんだ…これから僕も行くところだよ
 それよりナナシ君、ジム戦の前に勝負をしてみないかい?」
勝負の申し込み、環境が悪かろうと売られた喧嘩は買うしかない。

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俺の先鋒はルカリオ、相手はエレブーだ。
「炎のパンチだ、エレブー!」
拳に炎を宿し、ルカリオ目掛け突進してくる。
「電光石火で回避しろ!」
単調な攻撃は簡単に回避でk……
エレブーの右手はルカリオを捕らえ、炎が襲った。
しまった。足場が雪のせいで、素早く動くことができないのか……
だが相手も同じ条件だ。ここは単調な攻撃でも通る。

この後、ルカリオとエレブーの激しい技の応酬が続いたが
最初に受けた炎のパンチのダメージが大きく、先にルカリオが力尽きた。
俺は新たにラグラージを出し、冷凍パンチでエレブーを沈めた。

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「やるね……ナナシ君」
「そっちもな。さぁ次のポケモンを出せ」
余裕を見せてはいるものの、切り札のルカリオを失った今、かなり不利な状況に立たされている。
相手のエレブーは、おそらく切り札でも何でも無いはず。
「行け、シャワーズ!」
イーブイの進化系シャワーズ、おそらく彼の切り札だ。
「シャワーズ、波乗りだ!」
波如く大量の水がラグラージに襲い掛かる。
「れ、冷凍パンチだ!」
波に拳を当て、凍結させる。
しかし、全てを凍結させることはできずに波はラグラージを呑みこんだ。

『ハ…ハ……ハクションッッ!!』
波はラグラージだけではなく、俺にも命中し
服を濡らされてしまった。
「ご、ごめん、大丈夫かい?」
「なんとかな……」
こんな寒い中で服を濡らすはめになるとは……
「くそっ……瓦割りだ!」
腕を振り上げ、シャワーズに襲い掛かる。
しかし、その動きはどこかぎこちない。
その理由は足場の悪さ。
体重の重いラグラージは、素早く動き回ることはできないのだ。

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「シャワーズ、オーロラビームだ!」
七色の光線がラグラージを貫く。
その光線でラグラージは、白い大地に倒れこんだ。

「僕のシャワーズを甘く見ないでもらいたいね」
このシャワーズ……強い。
勝負している環境も作用しておるが、シャワーズ自身もかなり育てこまれている。
こうなったら……
「行け! クロバット」
翼を羽ばたかせ、空中を駆け巡るクロバット。
こいつなら地面の影響を受けることは無い。その素早さを存分に生かせる。
「クロスポイズン!」
クロバットは旋回しながら、シャワーズ目掛け突進する。
「オーロラビームだ!」
シャワーズは上を向き、オーロラビームを放とうとする。
しかしその攻撃は、突然中断された。
そして、隙の生まれたシャワーズに、クロスポイズンが打ち込まれた。
この攻撃と今まで蓄積されたダメージで、シャワーズは戦闘不能となった。
「どうしたんだシャワーズ!?」
「上を見れば分かるさ」
「なに……まぶしっ……そうか」
シャワーズは上を向いたとき、陽光が目に入り、攻撃を中断してしまったのだ。

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段々と風が強くなっていく、濡れた服のせいで寒い。
「シャワーズを倒されるとはね……でもまだだ! 行けムクホーク!」

鋭い眼光をクロバットに向ける。一瞬俺まで怯えてしまった。
「捨て身タックルだ!」
いきなりの奇襲、風を切裂く音が俺の耳にも入ってくる。
「応戦しろ! ブレイブバードだ」
クロバットも羽を折りたたみ、ムクホークに突撃する。
お互いがぶつかり合い、衝撃波が飛び散る。
数秒ぶつかり合い、やがてクロバットが押し負けた。
なんて攻撃力なんだ……
「まだだ! 応戦しろクロバット」
何度もぶつかり合うムクホークとクロバット。
しかし、負けるのはクロバットだ。
いくらムクホークの攻撃力が高いからって、この結果はおかしすぎる。
他の要素が……しまった。
ムクホークの特性『威嚇』を忘れてた。
これが原因で、クロバットの攻撃力が下がっていたのか。

「一旦離れろ! 今の状態じゃ――」
「もう遅いよ、とどめの電光石火!」
流星のようなスピードで、ムクホークはクロバットに一撃を加える。
この攻撃でクロバットは地に落ちた。

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「くそ……行け、ロト……うわっ」
吹雪がフィールドを襲う。
『大丈夫かーい!?』
出木杉の声が聞こえる。そっちは大丈夫なようだ。
「もう勝負は無理みたいだね……とりあえず引き分けという形でいいよね?」
こっちが三体失っていて、相手は二体失っている。
はっきり言えば負けているのは俺……だが相手がそう言っているのならばいいか。

「分かった、またいつか勝負できる機会があればいいな」
「そうだね……じゃあ!」
この場所からどうやって離脱するんだ?
そう考えていると、ムクホークが出木杉を乗せてキッサキ方面に飛び立っていった。
よし、俺もクロバットに乗って……
クロバットは、さっきの戦闘で瀕死になっていたんだ……
ここから……どうやってキッサキシティにつけばいいんだ?


ナナシ
ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv44、
ラグラージLv46、イーブイLv40
出木杉
シャワーズLv52、ムクホークLv47、エレブーLv46、残りの手持ち不明

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