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鋼の雫-02

「おい、どうした?喰わないのか?コルトバサンド冷めちまうぞ」
男の声が俺を現実世界へと呼び戻した。きっと今まで俺は口をぽかーんと開き大層マヌケな顔をしていたのだろう。
「あ…あぁ、そうだな、折角頼んだんだから喰わないとな……」
適当な返事をした俺は目の前にあるコルトバサンドに噛り付いた。
俺は今、パルムのオープンカフェに居る。
つい先程、依頼された「凶暴化した原生生物の鎮圧」を終えた所だ。
最近、益々SEEDによって起こされる事件が増えてきた。正直、面倒だ。
「何かさ、この2日間、お前、ずーっとそんな感じに上の空だよな。何かあったのか?」
「別に……」

2日間…。そう、俺がステラをGH410へと成長させて既に2日が過ぎていた。
今まで俺は、一日としてステラとの会話を欠かした事が無い。
だけど301から410へと進化した後、この2日間、一度も奴とは口を聞いていない。
俺は心底うんざりしていた。
あれだけ可愛がって、溺愛して、育てたGH301が410へ成長した途端、あんな姿になるなんて。

「おい、また、ボーっとしてるぞ」
さっきから俺に声を掛けてくるのは、今回の俺のパートナー・ガーディアンだ。
別に俺一人でも今回の仕事はこなせただろうが、上官がどうしてもと言うので着いてこさせたのだ。
一応、過去にコイツとは何度か仕事もこなした事があるしな。
「……なぁ」
「ん、急にどうした?」
「お前さ…」
「………?」
「やっぱ、イイや。やめておく」
「おい、何だよそれ」
「悪い、気にしないでくれ」
「ったく……お前、一体どうしちまったんだよ」
「別に……」
フゥ…と、今日だけで何度目かわらない溜息を付いた。
「さては…お前」
「あ?」
「女にフラれただろ?」
「……何を言い出すのかと思えば」
「何だ、違うのか?」
「俺に女が出来るとでも?」
「……だよな」

とても静かだった。街の中は死ぬほど騒がしい。人の活気で溢れ帰っている。
だけど今の俺の耳には何も届かない。…と言うか俺が何も聞きたくない。
何かが足りない。解っている。足りないものなんて。解っているけどそれを認めたくない。
非常に不愉快だ。こうなってしまったのも全て奴のせいだ。
何故成長によってドラゴンが少女へと進化する?少女の姿になる必要性があるのか?
確かに、俺を除けば大半のガーディアンズはパートナーマーシナリーの最終進化に涙モノだろう。
可愛い少女が自分の事を「主人」として敬ってくれるのだから。
だが、俺にとってそれは「不愉快な物」以外の何物でもない。

「なぁ」
と、俺が考え事をしていると、唐突に相棒が話しかけてきた。
「何だよ」
「さっきから、あそこで俺達の事をず~っと見てるパシリが居るんだけどあれ、お前のか?」
そう言って相棒は木影を指差した。俺のその指につられて目をやる。
「……何も居ないぞ」
「あれ、嘘っ。さっきまで居たんだけど…おかしいな」
「型は」
「ありゃ410かな。赤いフリルは410しか居ないしな」
「ヒトガタか」
「おうよ」
「で、俺が大のキャスト嫌いと知っていてワザと聞いてきたのか」
「いや、そう言うわけじゃないけど…」
「ならば、俺がパートナーマーシナリーをヒトガタに成長させるとでも?」
「そ、そうだ…よな。ハハ…」
相棒がわざと作った笑い顔につられて俺も顔をにやけさせる。
「あぁ、俺が作るわけ無いよな、ハハ」


非 常 に 不 愉 快 だ


今まで溜まっていた怒りの様な物が俺の中で爆発した。
まずい、そう思った。だが既に俺の体は動いていた。
倒れる椅子・テーブル。地面にブチまけられるコルトバサンドとミックスジュース。
そして、吹っ飛ぶ相棒。
他にも数人このオープンカフェを利用していた客、それに加えてウェイトレスが唐突の出来事にこちらを見て、固まった。
俺は他人の目など気にもせず、ぶっ倒れた相棒の胸倉を掴んだ。
「…知っていたのか?」
「な……何をだよ!?」
どうやら相棒は、急に俺に殴られた事に動転してファビョっている。
「GHシリーズは最終形態まで成長するとヒトガタになる事を、だ」
俺は一言一言ハッキリと、バカでも理解できるようゆっくり質問した。
「し、知ってたけど……」

俺は更に不愉快な気分になった。
既に一度言ったが、俺はコイツと過去に何度か依頼をこなした事がある。
そしてその依頼が終わるたびカフェだのレストランだので休息を取っていた。
メシの杯は大抵、お互いの自慢話だった。
勿論俺は毎回、ステラの事を話していた。
俺がどれだけステラの育成を楽しんでいたか。
俺がどれだけステラを溺愛していたか。
過保護じゃないのか、と思われるくらい、俺はステラの事を話のネタにしていた。
だから、俺がどれだけステラを育成する事を楽しんでいるのか、コイツも理解しているだろう、と思っていた。
だがコイツはGHシリーズが最終成長したらどうなるか、知っていたにも関わらず俺に教えなかった。
俺がキャストを非常に嫌っている事を知ってるのに、俺に教えなかった。

こう聞くと、GHシリーズの事を調べなかった俺にも非がある、と第三者は言うだろう。
だが、俺は一般的なメディアの情報は信用しない。この世界には嘘しか蔓延していないからだ。
そう、俺は誰一人として他人を信用していない。
何故なら、昔、信頼して信頼して信頼した人物に、裏切られたからだ。

この言葉で他人の同情を煽ろうとは微塵にも思っていない。
ただ、俺は他人を信用していない。それだけだ。

「何故、俺にその事を教えなかった?」
「し、知っていると思ったからだ…それに」
「それに?」
「お前は…誰も信用していないんだろ?例え相棒である俺でも。なら何を言った所で無駄じゃないか……」
「……そうだな」
「くそっ…話せよ!この馬鹿野郎!」
相棒は気が落ち着いてきたのか、見る見るうちに態度を変えていった。
「ふん……」
俺は掴んでいたコイツの胸倉を離し、レジに向かって歩き始めた。
「お前…自分に落ち度が無いとでも思っているのか?」
後ろで何かギャーギャー騒いでいるがそんな事俺の知った事ではない。
会計を済ませ、椅子とテーブルの弁償代を払った俺はオープンカフェを後にした。
後ろでは無視した俺に腹を立てた元・相棒が未だに何かぎゃーぎゃーと騒いでいる。

「…五月蝿い奴だ」
ナノトランサーから俺はコンパネを取り出し、ブラックリスト一覧を表示させる。
「もう、お前との付き合いにウンザリだ。お前は俺の足手纏いでしかないしな。元気でな」
俺は後ろで騒いでいた元・相棒にそう言うと、ブラックリストに相棒の名前を追加した。
これで、25人目か。

「非常に、不愉快だ」
イライラしながら俺はそう呟くと、パルムのプラットフォームへ向かって歩き出した。





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