121 名前:名無しオンライン[パパと412 sage] 投稿日:2010/06/30(水) 20:38:27 ID:1PKnPZ3h [2/2]
>>120
>結ばれながらも非情な終わりを迎えた、彼女の為にも。
意味深だけど、一体誰の事でしょう……
ざっと前のほうを読み返したけど、分からなかったorz
度々ども、パパと412作者です。
久々にロザリオでINしたら、部屋に出産祝いが置かれててビックリしました。
(ビックリした一番の理由が、送り主がパトカ貰ってない方だったからというのは内緒w)
ガーディアンズ女性制服(緑×白)、ありがとうございます。
当人は早速着て、喜んでます。
この場を借りて、彼女に成り代わりお礼申し上げます。
それではこの辺でノシ
122 名前:名無しオンライン[sage GH470の者] 投稿日:2010/07/01(木) 20:21:04 ID:NMuTNd53
[1/2]
>>121
出産おめでとうございます。……フリーコースなのでご祝儀は送れませんがorz
って、なんだいエル君?『どうせミクナスの黄黒を送っていつか二回目の集会に着てきてもらおうと言う魂胆でしょう』って?
バカいうな。ただ単に第二子誕生のお手伝いを……すいませんマジでメイロドウはやめアッー
エル「どうもお久しぶりです。GH470からGH465になったエルヴィアです。そして……」
女主人「(゜∀゜)」
エル「……そこで歓喜の表情のまま固まっているのがボクのマスター(小さめのビースト)です」
女主人「って、あえてあたしの状況をつっこまないのは何故かしら」
エル「知ってますよ。ヴィヴィアン・レプカですよね」
女主人「その通り!ようやく待ちに待ったヴィヴィアン・レプカ!これを着てお揃いの武器で……」
エル「……残酷かもしれませんが、マスター。ヴィヴィアン・レプカはパーツです」
123 名前:名無しオンライン[sage GH470の者] 投稿日:2010/07/01(木) 20:21:52 ID:NMuTNd53
[2/2]
女主人「百も承知よ?だからこそ、『こんな事もあろうかと!』」
エル「嫌な予感しかしませんが……」
女主人/C「どうも、女主人/Cです」
女主人「とある人にあたしそっくりのキャスト製作を頼んでおいたのよ。彼女も青髪赤眼貧乳の同志として快く引き受けてくれたわ」
女主人/C「あたしの特技は108まである!」
女主人「……性格に難はあるけどね。そこだけはちょっといただけないけど、よくやってくれたわ」
エル「……あの、末尾の『/C』って……」
女主人「…………クバラ品?」
ウソダッ! ホントウダッテ!
実際に作ってみました。……いつか、女主人と同エントランスに移す予定です。
あと、/Cは本当にクバラ品の意味ですよー。間違っても某赤いおじ様やPoのヒロインのような存在ではないですよー。
124 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/05(月) 00:12:32 ID:gfvaNnyW
/"ヽ
| | ,/^\
| | / ヘゝ
/⌒\| | | |,ヘ
/ 〃//~ ~~ . :.~ヽ.〉
./ /.:〃 ,; . ,, . ハ
/ /|.:i{l| ノヘ;,;,ハハ::...}
| . .:| |.(@:)イ-‐ ‐ ,'::.ノ <暑くなってくるので、そろそろ出番でしょうか?
| :| (;イソヘリ、 ( フ_ノイ
| . ,リ /';:'` / ̄ ̄ ̄ ̄/
. ム;ル;;リ (__〕つ/ GH-460 / カタカタ
. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\/____/ ̄ ̄
125 名前:名無しオンライン[『GH450の人』 sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:26:24
ID:RyEQJpp1
七夕のパシリネタを考えたが思いつかなかったので、
以前断念したこちらを作成してみた。出来はあんまり良くない。
GH520ファンの方々、お目汚し失礼。
つーか、欲しいパーツ探すの難しすぎるだろう・・・orz
γ-―‐‐\
/厂/─‐ ,,ノノヽ.
Σ ;〃 : :::::,;:: :::::; ;ハ
ム:i{l| .ム: ::: リソ ハ ::;}
|.(@:)ル ;リノ ‐ ,'レ´ <正直スマンカッタ
/.リヘリ;ハ;ソ ( フ_ノ
/:;ノ /';:'`.7/ ̄ ̄ ̄ ̄/
/ リ (...||つ/ GH-520 / カタカタ
. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\/____/ ̄ ̄
126 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 20:51:47 ID:pGoE29is [1/7]
>>121
一見意味深ですが、別にそんな事はなかったり…
という訳で、『彼女』が誰なのかを今から投下していきますよ。
127 名前:unsung episode03[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 20:52:23 ID:pGoE29is
[2/7]
人気のないグラウンド。レイチェルが一人、セイバーの練習をしている。
そこに近づく、もう一人のPM。フィオナだ。
「ふんっ! せいっ! やあっ!」
「ずいぶん熱心だこと、レイチェル?」
「ちゃんと、やっとかないと、デトレフの奴に、会わせる顔がないのよっ!」
「班長の事?」
「そうよっ!」
「少々いいかしら…? すぐ済ませるから」
「ぜぇ、ぜぇ…何か用なの?」
フィオナがこそこそと耳打ちをする・・・と、レイチェルの顔色がみるみる変わっていった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!? 好きになったぁぁぁぁ!?」
「しーっ! 静かにしてください!」
慌ててレイチェルの口を押さえ、きょろきょろと辺りを見回す。幸い、二人の他に誰も居ないようだ。
レイチェルはわざとらしく咳払いをし、息を整える。
「…そんで、どうしようっての? あたしじゃ大したアドバイスはできないかもだけど」
「今度、彼が誕生日を迎えるらしくて…何か贈り物をしたいのだけど」
128 名前:unsung episode03[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 20:52:51 ID:pGoE29is
[3/7]
「贈り物、ねぇ…他の誰かには聞いてみた?」
「いいえ、まだ」
「いいねぇ…面白くなってきたわ、行こっ」
「どこへ…?」
「決まってるじゃない、聞きに行くのよ!」
そう言うと、レイチェルはフィオナを引っ張って兵舎へと駆けて行った。
「練習はどうするのよ…」
「そんなん後回しっ!」
────
「プレゼント?」
「そうっ、男が貰って喜ぶものよ」
「そんなのわたしに訊かれてもなぁ…」
「食べ物だったら嬉しいなっ!」
「アンタは食い気ばっかりね…」
「エマとマリーじゃわかんないか…」
「シャーリーはどうです?」
「んー…アイツお堅いからなぁ…」
「でも、訊かないよりはいいのではなくて?」
「そうね、行こっか」
129 名前:unsung episode03[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 20:53:18 ID:pGoE29is
[4/7]
「シャーリーは何所に居るか、ご存知?」
「確か東棟の倉庫に居たと思うよー?」
「ありがとう、それじゃ」
「恋かぁ…いいもんだねぇ♪」
「そうかなぁ…よくわかんない」
────
「私にその質問をするのは得策ではありません」
「…ほらね」
「うー…」
「おちびさん達、そんな所で何してんだ?」
「あ…ベルンハルトさん」
「質問をして回っている様です」
「質問? 何の?」
「それがね…」
「わたくしから言います」
フィオナが小さい声でぼそぼそと事を伝える。
130 名前:unsung episode03[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 20:53:56 ID:pGoE29is
[5/7]
「ほぅ、そいつは驚いた。近頃のマシナリーは高性能だな」
「あっ…あの、何が良いと思われます?」
「そうだな…あいつはまだ若いし、食べ物とかがいいんじゃないか?」
「食べ物…?」
「ヒューマンには、誕生日になると『ケーキ』を贈る習慣があるらしい。
それに倣ってプレゼントしてみるってのもいいかもな」
「あっ、ありがとうございますっ」
「何、大したアドバイスじゃないさ」
「班長、ここにいらっしゃいましたか」
「どうしたウルフ。何か問題でも発生したか?」
「マリーが兵舎でショットガンを暴発させて…フリッツとファビアンの部屋がボロボロになっちまいまして」
「わかった、すぐ行く。…フィオナ」
「は、はい!」
「健闘を祈る」
「…はいっ! 頑張ります!」
131 名前:unsung episode03[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 20:56:48 ID:pGoE29is
[6/7]
「でも『ケーキ』って、どうすんの?」
「一般的には小麦粉と卵を─」
「そうじゃなくって、どうやって調達するかよ」
「そうですね…ナウラのケーキがいいと聞きましたが」
「無理無理。あたし達はお金なんか持ってないし、そもそも自由に外出もできないんだから」
「どうしましょう…」
「手作りするのはいかがでしょう。人間的な、ごく一般的な方法です」
「手作り?」
「材料は少佐か、厨房スタッフに掛け合えば調達してくれるでしょう。
ただし、もっともな理由付けが必要ですが」
「理由ね、そんなん何とでもなるわよ」
「例えば?」
「『調理訓練』とでも言えばいいんじゃない? 前線での温食の提供ができるってのは重要なことよ」
「適当ですね」
「レイチェル…シャーリー…ありがとう、わたくし、やってみます!」
「そうこなくっちゃね!」
「よい結果を期待しています、フィオナ」
「そういえば言い忘れていました。次回の演習の日時を伝えます」
「またぁー…?」
「次回の演習は…」
132 名前:unsung episode03[sage] 投稿日:2010/07/08(木) 20:57:47 ID:pGoE29is
[7/7]
今回分はこれで終了。
何か忘れてると思ったら、ナンバリングを忘れていましたね…
133 名前:名無しオンライン[sage GH470の者] 投稿日:2010/07/08(木) 21:02:39 ID:YQp5Qm21
お久しぶりです。
女主人「ちょっとフローダー乗って来た」
エル「どうでしたか?」
女主人「……エアボードだったわ。いい意味でも悪い意味でも」
女主人「そういえば、昔、進化する410の主人さんが『真剣風のソードが欲しい』って言ってたわね」
エル「とあるガーディアンのパートナーマシナリーの方ですね。それが何か……」
女主人「うん、これ(ttp://www.psuxxx.info/uploader/src/up6209.jpg)なんだけど……」
エル「……微妙ですね(ランクB)」
女主人「でも、性能としてはまずまずっぽい(PP587・攻612・命221)し、見た目から入る人にとってはこれでもいいんじゃ?」
エル「まあ、昔は真剣のようなソードはアギト・レプカ一択でしたし、幅が広がったと思えば」
女主人「あと、あたしはこれ(ttp://www.psuxxx.info/uploader/src/up6211.jpg
)が欲しいな、と」
エル「……マスターもこういうの好きですね」
女主人「でもPP量はエッジ・クオリアが一人勝ちしてるし、ちょっと悩んでるのよ」
新武器を手に入れてもグラが表示されないのが辛い所ですがorz
134 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/09(金) 10:44:37 ID:ODcTMVKQ
>>132
名前ばっかりでどのパシリがどの型番なのか
それどころか誰がパシリで誰がパシリじゃないのかわかんない…
過去投下読み直してきます
最近のはみんな固有名詞作ばっかりでごちゃごちゃになるんだ
なんで昔の作品はみんな型番や種族名での作品だったのか
その理由をちょっと考えてみるのもいいんじゃないか?
135 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/09(金) 22:32:27 ID:TEt32XFW
>>132
既に出てるけど、誰がご主人で誰がパシリか、そのパシリの型番は?
ってのが分かりにくくなってしまっていると思うよ。
次回投稿時に前置きで
イーサン=ヒューマン 男性 ガーディアン機動警備部所属
ピート =GHX-005、イーサンのパートナーマシナリー
って感じで、キャラ紹介をネタバレしない程度に軽く入れてみてはどうだろう?
136 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/09(金) 22:47:55 ID:HgGkT39l
>>132
>>134のような意見も有るし、今まで投下した分をまとめて、どっかのロダにうpするというのはどうだろ?
そうすれば>>135の言う人物紹介もそこに入れられると思うんだ。
137 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2010/07/10(土) 11:12:37 ID:xMDEtRbw
[1/3]
>>134,135,136
舞台が同盟軍という以上、どうしても人が多くなっちゃうんですよね…
実際、私自身もキャラの書き分けにヒーコラ言っている所です。
どうも内容をすっきりまとめられなくて駄目ですね…すみません。
とりあえず、unsung_episodeの他にも、本編も別にまとめて上げるつもりです。
しばしお待ちを。
138 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2010/07/10(土) 18:05:22 ID:xMDEtRbw
[2/3]
と言う訳で、一日で仕上げました。
unsung_episodeにはキャラ紹介の他もささやかなおまけが付いてます。
話の流れがわかんねーよ!という方や、
誰が誰だかわかんねーよ!という方はお手数ですがDLしてみて下さい。
本編まとめ PASS:ashe
ttp://a-draw.com/1/src/a-draw1_1705.zip.html
unsung_episodeまとめ PASS:shiley
ttp://a-draw.com/1/src/a-draw1_1706.zip.html
昔の作品では特別な名前の無いキャラクターが多かったですね。
読み手に自由に名前を付けたりして、感情移入しやすくするため…かもと思ったり。
ただ、私は実際のゲーム中のキャラクターをモデルにしているのと、
単に名前が無ければ物語として書きづらくなるという理由から付けています。
まぁ…名前を付けたいという私自身の趣味、というのもあるんですが。
139 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2010/07/10(土) 18:30:49 ID:xxG0KVlf
そういうのも含めて腕だよな。上手くなりたいぜ
140 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2010/07/10(土) 21:14:43 ID:xMDEtRbw
[3/3]
ちょっとunsung_episodeのおまけに書き忘れがあったのでここに上げます。
度々すみません。
『試験開発団』について の項の一番下にでも追加してください。
────
部隊は6班に分かれており、基本的に四名で構成されています。
ただ第4班だけは二名のみで構成されており、ラリーの業務の補佐を務めます。
────
以上です。連投すみません。
141 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[『GH450の人』 sage] 投稿日:2010/07/10(土) 23:23:30
ID:IwVXmK8G
>>140
GJと言いたい所だけど、unsung_episodeまとめのパスが合わないんだが、俺だけか?
GH450 『ちなみに私達にもちゃんと名前はありますよ。』
GH433 『中の人の自キャラがモデルですから、当然といえば当然ですけどね。』
GH450 『中の人曰く、「こっちも自キャラをモデルにしないとネタが浮かばん!」とかなんとか。』
GH422 『そういえば、この間の日記のアレ、GH440ってアンタの事よね?』
GH440 『・・・はい。でも、ちょっと恥ずかしかったです。(////)』
GH450 『ん、何の話です?』
GH422 『(やっば、本人は知らないんだっけ・・・)いやいや、何でもない、こっちの話よ、こっちの(滝汗』
GH433 『で、でも「自キャラがモデル」って言ってる割にはネタ少ないですよねぇ。』
GH422 『(話のすり替えGJ!)確かにね。何とかならないの?アタシらのご主人様の華麗な大冒険の話とかさぁ?』
GH450 『いや、それを私に言われても・・・』
GH422 『何いってんのよ!カンストしてるアンタの所のご主人ばかり頑張るから、
アタシらの出番が無くなるんでしょうが。』
GH433 『もうちょっと出番は欲しいですよねぇ。』
GH440 『・・・(←倉庫係みたいな物なので、関係ない)』
GH422 『こうやって話てる今だって、アンタのご主人が「極幻の大攻勢」頑張ってるんでしょ?
PMなんだからご主人を何とかしなさい。』
GH450 『いえ、ご主人はTVの前で「うひょ~w必○!仕○人ktkr!」とか言ってましたが・・・』
GH422&GH433&GH440 『ネタ考えんかい!!!!!!!!!!!!』
142 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2010/07/11(日) 13:44:49 ID:eQMYhwcG
>>141
こちらでも試してみましたが、PASSがどうも一致しないのでうpし直しました。
ご迷惑をお掛けしてすみません。
PASS:shirley
ttp://a-draw.com/1/src/a-draw1_1736.zip.html
143 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2010/07/11(日) 16:22:08 ID:PQ065ySQ
>>142
GJ!今度は落とせたぜ。今から読んでくる ノシ
144 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/13(火) 23:47:24 ID:6IE5elWj
,、vVWv,
ρノ /ヾν
/ @イ ゚ ヮ゚ノヽ <保守♪
〈ィ 〉゚〉、
<,:,:,:,:,ヾ
し'ノ
145 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/18(日) 09:33:49 ID:s5Dr0PY3
ノ^:,,∧-∧、
((({ミ((从)))
ノノ!@゚ ー゚ノj <♪
'´ | とヾy)つ
レ'.( Y.)
.し'ノ
146 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/21(水) 22:32:03 ID:/mFNqbpF
_ ノノ
ィ∩ ヘ`ヽ
ァ!ノリノノ )))〉
| @i ゚ ヮ゚ノリ <イベント中はご主人様がかまってくれません
|⊂)i卯!(つ
..!ノく/_| 」
.ζ し'l_ノ
147 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/23(金) 05:46:10 ID:a2i/dDLQ [1/2]
規制解除ならファック
148 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/23(金) 05:48:03 ID:a2i/dDLQ [2/2]
…規制解除なら再びファックを書くとか書くつもりだったごめんなさい
149 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/23(金) 19:39:01 ID:xTLFhiXq [1/5]
>>148
規制解除記念のファックですね、わかります。
最近スレが静かなので投下してみる。本当は試験期k
150 名前:unsung episode04 [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 19:39:45 ID:xTLFhiXq
[2/5]
「少佐? いかがなさいました?」
司令室から戻ってくるなり、珍しく苛立った様子で椅子に座りこんだ。
モニカが不思議に思って尋ねる。
「…PMの改造実験だよ」
「改造?」
「先程司令に呼び出されてな…」
「それで、どのような内容なんです?」
「PMに兵士10人分…あるいはそれ以上の戦力を持たせる計画だ。
姉妹達にそれぞれ別個の改造を施す。計画書も…ほら、ここにある」
ナノトランサーから取り出した書類をモニカに差し出す。
ぱらぱらとめくって目を通して行くが、徐々にその表情は曇っていった。
「こんなの…無茶ですよ。あの子達の小さな身体じゃ耐えられません」
「だろうな」
「AIにも過負荷が掛かります。人格がもつかどうか…」
「分かっている」
「あの子達を純粋にマシナリーとして扱うなんて…」
"ドンッ!"
ラリーがテーブルを激しく叩き、話が続くことはなかった。
151 名前:unsung episode04 [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 19:40:07 ID:xTLFhiXq
[3/5]
「よぅ、ハラルト。何だその箱?」
「これか? フィオナから貰ったんだ」
「ほーぅ? マシナリーにご執心か」
「そ、そんなんじゃないって!」
「開けてみろよ」
白い包装を解くと、中からこれまた白い箱が現れた。蓋を開けると…
「…ケーキだ」
「おっ、こんなんなかなか無いぞ。俺にも食わせろ」
「セルゲイ、お前が食ったらハラルトの分が無くなるだろ」
「…班長!」
黒いキャストがいつの間にか傍に立っている。5班の班長だ。
「敬礼はいい。それよりどうだ。一杯やらんか?」
「ハッピージュースじゃないですか。どこで手に入れたんです?」
「秘密だ」
キャンティーンカップに、ハッピージュースがなみなみと注がれる。
「班長、注がせて頂きます」
「おう、すまんな」
「グラスだったら言うこと無しなんだがな」
「そんなんここには無いよ、我慢してくれ」
152 名前:unsung episode04 [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 19:41:13 ID:xTLFhiXq
[4/5]
「さて、乾杯しよう」
「誕生日おめでとう! ハラルト」
「そういえば今日でしたね…すっかり忘れてました」
「お前、フィオナに夢中すぎて自分の誕生日も忘れたのか?」
「ち、違いますって…」
「聞けばお前、前回の合同演習でもフィオナに付きっ切りだったじゃないか。
お熱いねぇ、このこの」
「僕はフィオナの監督官だったから当然だろ!」
「とか何とか言ったりして。お前、反応がまるで子供だな」
「うぐ…!」
「そういじめてやるなよ、セルゲイ。ハラルトはお前とは違って顔の出来がいいんだ」
「うわ、酷いなぁ班長!」
「PMはマシナリーと言えども心を持っている。我々キャストと同じようにな。
もし彼女を泣かせるような事があれば…覚悟しておけよ?」
「は…はいっ」
「…って、キャストの私が言っても締まらんな。ハハハ、まぁ仲良くやれよ」
「どうしたハラルト、顔が赤いぞ?」
「さ、酒のせいだよ…」
153 名前:unsung episode04 [sage] 投稿日:2010/07/23(金) 19:42:23 ID:xTLFhiXq
[5/5]
今回分はこれで終了。
本編の流れを忘れてしまった方も多いかな…
154 名前:名無しオンライン[『GH450の人』 sage] 投稿日:2010/07/23(金) 20:02:14
ID:jOxvqmPS
>>147,148
____
/|_:|:::::::::: __|
/´ ::::::::: ,ノノ :.ヽ.
/ :::: :::::::,;:::: :::::;; ハ
| :: ( :::::;ヘ;;,.,:;:,ハ::::.}
|:(@:)イ-‐ ‐ ,'::.ノ <よろしい、ならばファックだ
(;イソヘリ、 ( フ_ノノ´
(イリ/';:'`.=/ ̄ ̄ ̄ ̄/
(.リ(_;:::つ/ GH-450 / カタカタ
. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\/____/ ̄ ̄
>>149
投稿乙です。乙なのだが、試験期間は試験に集中しないとw
155 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 18:09:09 ID:lqELy1TU
>>154
440「ご主人、何そのノート?」
私 「試験勉強だよ」
440「ふぅん? 間違ってるよ、ここ」
私 「えっ?」
440「ここも間違ってる。ちゃんと写したの?」
私 「ごめん…ちょっと寝てた」
440「仕方ないなぁ…よっと」
私 「わっ!? ちょっと、帽子で見えん!」
440「ここと、ここと、こことここ。ボクが直すよ」
私 「ど…どうも」
440「はい終わり。留年しないよう頑張ってね」
私 「は…はい…」
咄嗟に思いついて書いた。反省はしていない。
156 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:08:15 ID:1QNe97DZ [1/9]
>>155
試験勉強頑張って!
・・・でも続きも楽しみにしてます!
さて、規制中に書いたものをどばっと投下します。
ちょっと長いです。
157 名前:1/7[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:09:17 ID:1QNe97DZ [2/9]
製造されてすぐ、私は「不良品」の烙印を押された。
製造ラインの不具合ではなく、噂に聞くワンオブサウザンドのような───私は「普通」の故障だが───
ごく僅かな確率での不具合らしい。
一つ狂えば芋づる式に不具合が発生するらしく、いくつかの機能が本来のスペックよりも半減、もしくは使用不可となっていた。
どの機能がそうなったのか説明は受けたが、生まれたばかりの私には理解出来なかった。
ただ、その説明をした職員の、私を、「不良品」を見る目は今でも覚えている。
その説明の中から一つだけ理解できたのは、私の廃棄処分が決定したということ。
しかしどこから聞いたのか、暴走したりヒトに害を為すタイプの故障ではないからという理由で、
私を買い取りたいと申し出た物好きな組織があったらしい。(勿論格安で、だが)
その組織というのがリトルウィングだった。
配備されてすぐ、私は酒臭いひげもじゃのビーストに呼びつけられた。どうやらこのひげもじゃが私を買い取った物好きらしい。
「あー、わかってると思うがお前は「不良品」だ。あのままGRMにいたら廃棄されてただろう。だが勘違いすんなよ。
俺がお前を買い取ったのは可哀想だと思ったからじゃねぇ。安かったからだ。その分はしっかり働いてもらうぜ」
格安とはいえ、PMの値段分の働きとはどれくらいになるのだろう。しかし私には元々選択権などありはしなかった。
出来ることはただ、「ヒト」の決定に従うことだけだ。
158 名前:2/7[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:09:39 ID:1QNe97DZ [3/9]
その日から私は、リトルウィング社内の一室で暮らすこととなった。一室、とは言ってもPM用の小さなベッドがあるだけだが。
最初の何日かは食事とその部屋の掃除以外は何もせず、ただ無為に日々を過ごした。
一般的な家事の知識は既に頭の中だし、それを実践しようにもその部屋は狭すぎた。
そして、私の、「最初の」マスターと出会う日がやってきた。
受付嬢の独特な声に呼ばれ、事務所の受付へ行くと、そこにはヒューマンの男性がいた。
熱血漢、というのだろうか。溌剌とした大きな声で自己紹介をされ、前から考えていたのだという名前をその場でもらった。
私は一礼して、「これからよろしくお願いします」と言ったと思う。
でも、その人の名前も、つけてもらった名前も、もう覚えていない。
その人の下に配属されて後、私達はフリーミッションへと出かけた。
曰く、自分も入社して初めてのミッションだからと肩慣らし代わりに簡単なものを選んだらしい。
凶暴化した原生生物に主人は囲まれるが、なるほど簡単というだけあって難なく敵を捌いている。
私が援護するまでもなかったが、だからといって何もしないわけにもいかない。
私はライフルを構え、主人を囲む原生生物の一体目掛けて、引き金を引いた。
───それが間違いだった。
159 名前:3/7[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:10:02 ID:1QNe97DZ [4/9]
「冗談じゃねぇよ!」
主人の怒声が事務所に響き渡り、周りの社員の視線が集まる。
対応しているチェルシーさんも困惑顔だ。しかし、気付いていないのか気にしていないのか、主人は怒鳴り続ける。
「敵の集団の真っ只中で背中を撃たれたんだぜ!?しかもご丁寧にフローズンシュートでだ!格下相手だったから良かったものの、
あれがヤバイ相手ならなぶり殺しにされてたとこだ!」
「しかもそれが一度や二度じゃねぇ!ミッション中両手で数え切れない程やらかしてくれたさ!
わざとじゃないにしたって、こんなヤツに背中を預けられるか!!」
説明されただけではわからなかったことも、実際に体験してみればわかる。嫌という程に。
遠隔照準の故障、射撃機能不全。本来私達GH-430はライフルやハンドガン、ツインハンドガンといった射撃武器を得意とするPMだ。
しかし私の射撃の命中率は、冗談かと思う程に低かった。それこそ、射的屋で遊ぶ子供と勝負しても負けるだろう。
ハンドガンの射程距離で命中率30%未満。ライフルに至ってはどこに弾が飛んでいくかわからない。
主人の背中を狙う敵目掛けて引き金を引いたら、打ち抜いたのは主人の背中だった。笑い話にもならない。
「とにかく他のヤツと交換してくれ!それが無理なら俺は一人でいい!味方だと思ってたヤツに殺されるよりよっぽどマシだからな!」
主人───いや、元主人ははき捨てるように言うと、私をにらみつけ、背中を向けた。
待って。行かないで。ごめんなさい。もうしないから。努力するから。捨てないで───。
泣き叫びたかった。主人の元に走ってその足に取り縋りたかった。
しかし私の目からは涙は出ず、眉一つ動くことなく、出たのは平坦な声で「短い間でしたが、お世話になりました」という
セリフだけだった。
元主人は振り返ることなく、事務所を出て行った。
160 名前:4/7[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:10:27 ID:1QNe97DZ [5/9]
感情制御機構の異常。説明された故障のうちの一つ。
PMはただの機械、マシナリーとは違い、感情を持っている。「ヒト」と同じ、喜怒哀楽を感じることができる。
私はその感情を司る機能が異常な動作をしているという。
例えば怒りを感じることはあっても、表情には「出せない」。嬉しいことがあっても笑うことが「できない」。
悲しいことがあっても涙を流すことが「できない」。
唯一自由だと思っていた言葉でさえも、感じたことを言葉にして出そうとすれば声にして喋るまでに無機質なセリフに組み替えられ、
平坦な声で出てくる。
事務所に取り残され、自らの故障を身をもって知った私にチェルシーさんが何か言葉をかけてくれたが、覚えていない。
その場に立ち尽くしていた私は、チェルシーさんに半ば引きずられるようにして以前いた部屋に戻り、ベッドの上に転がった。
それからしばらくは何をする気にもなれず、時折チェルシーさんが様子を見に来てくれる以外は誰とも接することなく過ごした。
数日して何とか立ち直った私に、新しいマスターが決まったとチェルシーさんが告げた。
今度は優しそうなオネーサンだからきっとダイジョーブヨ、と笑いかけてくれた。
私はただ頷くことしか出来なかったが。
新しい主人は、確かにチェルシーさんの言う通り温和な性格で、悪く言えば少し気弱な感じだった。
たどたどしく自己紹介と挨拶をさえ、私も挨拶を返す。
マイルームへ向かう道すがら、私の以前の戦闘の件を聞いていたようで、
私はフォースですから背中を撃っちゃう心配はありませんね、と笑えない冗談を言ってくれた。
勿論、私は笑うことも怒ることも出来ず、ただ無表情に頷くだけだった。
161 名前:5/7[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:10:51 ID:1QNe97DZ [6/9]
数日で限界は訪れた。沈黙と気まずい雰囲気を恐れる性格だったらしく、主人は何かと私に喋りかけてきた。
しかし私に出来る返事は相槌かYESかNOくらいだ。主人は次第に私を避けるようになり、一人でミッションへ向かうことが多くなった。
そして一人で行動した結果、原生生物との戦闘で大怪我を負った。
これは私だけの責任ではないかもしれないが、一人で行動することになった原因は明らかに私だし、
私との関係のことで相当にストレスをためていたらしく、身体も弱っていたという。
私は入院した主人の見舞いに行こうとしたが何故か許可が出ず、面会謝絶する程の重症なのかと思いながら一人ルームで過ごしていると、
リトルウィングの社員がルームを訪れた。
主人がPMの交換を求めているという。
仕方ない。やっぱり。主人は無事なの?またか。私が悪いんだから。
様々な感情と言葉が渦巻いたが、私の口は開かず、ただ頷くのみだった。
事務所へ戻り、また元の部屋へと向かう私に、チェルシーさんは慰めの言葉をかけてくれた。
途中、配備されてすぐに会ったひげもじゃのビースト───結構偉い人らしかった───とすれ違った。
最初に言われたことを思い出し嫌味の一つでも言われるかと思ったが、ひげもじゃの口から出たのは
「久しぶりだな。元気か?」
というただの挨拶だった。私は何も考えず、即答した。
「いいえ」
「だったら飯食って寝ちまえ。ヒトだろうがPMだろうが同じだ。飯食って寝ちまえば多少元気も出らぁ」
ひげもじゃはそう言うとさっさと立ち去っていった。私はその言葉に従い、部屋に戻って配給された食事を口へ押し込み、
ベッドに転がった。しばらくして気付いた。眠れない。
仕方なく強制的にスリープモードへと以降したが、この頃からだったと思う。
私が普通の睡眠がとれなくなり、スリープモードでしか眠れなくなったのは。
162 名前:6/7[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:11:11 ID:1QNe97DZ [7/9]
それからは何度も同じことの繰り返しだった。
新しい主人に就いては失態を演じ、返品、交換を要求される。何度も何度も、繰り返した。
いつだったか、何人目かの主人が私の顔を見て悲鳴を上げた。鏡を見て、私も悲鳴をあげたくなった。
目つきがとんでもなく悪くなっている。目の下には深い隈ができ、製造されてすぐの頃と比べると、
瞳はその輝きを完全に失っていた。
どうやらまたどこか故障したらしい。私は悲しみを通り越して笑いたくなった。
いっそ全部壊れてしまえばいいのに。
時が経つにつれて、マスターを紹介される間隔が段々と空いていき、遂には紹介すらされなくなった。
チェルシーさんが言うには新しく入ってくる社員が減っているだけ、とのことだったが、私にも嘘を吐いているのは分かった。
ひげもじゃは時折部屋を訪れては「仕事しろってうるさくてなぁ。ちょっとサボらせろ」と酒を呑んでいた。
一度私も勧められたがアルコールは飲まないと断ると、次からは酒と一緒にコルトバジュースを持ってくるようになった。
ひげもじゃが去った後、酒の匂いが残っているうちにチェルシーさんが訪れたことがあった。
チェルシーさんは珍しく眉を吊り上げると部屋を出て、直後にひげもじゃの悲鳴が聞こえてきた。
チェルシーさんは激務の合間を縫ってよく私を訪ねてくれた。主人のことや私の機能のことには一切触れず、
自分の将来の夢や日々の業務の話、ひげもじゃやその養女との話等を面白おかしく語ってくれた。
「モシ、私が自分のお店開くマデ良いマスター見つからなかったラ、私のお店で雇ってあげるカラネ」
と、冗談なのか本気なのかわからないことも言われた。
163 名前:7/7[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:11:32 ID:1QNe97DZ [8/9]
そんな日々が続いた。チェルシーさんやひげもじゃの優しさが嬉しくもあり、申し訳なくもあった。自分の情けなさに腹も立った。
しかし、ただのPM、それも「不良品」の自分に出来ること等何もないのは自分が一番よくわかっていた。
そんなある日、実に久しぶりに新しいマスターを紹介された。しかし、その報を持ってきたチェルシーさんは困惑顔だった。
「なんか、ネ。チョト変わった人なのヨ」
人のこと言えるのかとも思ったが、チェルシーさんでさえ「変わった人」と表現されるのは一体どのような人なのか。
どうせまた同じことの繰り返しだろうとしか思っていなかった私に、少し好奇心が生まれた。
チェルシーさんに連れられてきた受付にいたのは、髪色からパーツカラーまで黒でまとめたキャストの女性だった。
見た目は普通だ。しかしその人は、私の顔を見ても驚くどころか、ニッコリと笑ってすら見せた。
悲鳴を上げる人ばかりではなかったが、今まで私の目つきを見た人は例外なくぎょっとするか、顔を引きつらせていた。
肝の据わった人なのだろうか。それでも、チェルシーさんが一応のフォローを入れる。
「コノ子ネ、別に怒ってるわけじゃないノヨ。ちょっとした事情が・・・」
言いかけたチェルシーさんを、その人が手でさえぎった。
「大丈夫です。大 好 物 ですから!」
その人・・・私のマスターとなる人は、はっきりとそう言った。
チェルシーさんのぽかんとした顔を、私はその時初めて見た。
つづく
164 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/24(土) 21:12:14 ID:1QNe97DZ [9/9]
以上です。続きはまた明日にでも。
165 名前:名無しオンライン[『GH450の人』 sage] 投稿日:2010/07/25(日) 19:07:48
ID:H10yqw6c
>>155
主 「PMと手取り足取り、一緒に勉強だと!?」
GH450 『(何故だろう、普通の事なのにご主人が言うととても卑猥に聞こえる・・・)』
>>164
ワンオブサウザンドのように「不具合だが、ある1点の機能については良品よりも高性能」ってのはあったが、
「どこもかしこも完全に不良品」ってテーマの話は今までになかったような気がするな。
しかし、今の所悲惨って言葉に尽きる・・・今後どうなるのだろうか。続き待ってます。
166 名前:164[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:17:43 ID:ffJatvLh [1/9]
お待たせしました、続き投下します。
167 名前:1/7[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:18:30 ID:ffJatvLh [2/9]
その後、チェルシーさんから私の機能のこと、これまでの失態の数々を、時々私自身から補足を交えて新しい主人に説明した。
思い出したくもないことだらけだったが、何人もの主人に何度も繰り返すうちに機械的に淡々と説明できるようになった。
その人は、私が主人を誤射したことも、半ば私のせいで主人が大怪我をしたことを話しても、ただニコニコと笑って聞いていた。
説明を終えると、その人は「なるほどなるほど、わかりました」と事も無げに言い、私に手を差し出した。
「これからよろしくお願いしますね」
この言葉を何度聞いただろう。
私は差し出された手を握り、何度も言ってきた言葉を口にした。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
───このやり取りを、何度繰り返したのだろう。
これが最後になるのか、それともまた繰り返すのか。
その時の私には分からなかった。
168 名前:2/7[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:18:52 ID:ffJatvLh [3/9]
マイルームへの道すがら、その人───新しい主人は、ひたすらに喋った。
自分のタイプ。好きな武器。苦手な武器。流行のパーツの話。昨日見たアニメやドラマの話、等々。
決して早口ではないのだが口を挟む余地はなく、かといってこちらを完全に無視しているわけじゃないのか時折相槌を求めてくる、
妙な話し方だった。私の性格───「故障」のことを思ってそうしてくれているのか単に素なのか、私には図りかねた。
そうこうしているうちにルームへと到着し、主人がパスを打ち込む。扉が開いた。
中の惨状に、私は内心唖然とした。
配属───要は引越しだ───されてすぐのはずなのに、本棚に詰め込まれた大量の本。
それも漫画や小説───後に主人にライトノベルというのだと教えられた───ばかり。
そして部屋中にベタベタと張られているゲームやアニメキャラのポスター。ビジフォンの近くには幾つかのゲーム機。
モニターの横や窓の下、棚の上などのスペースと言うスペースに置かれているフィギュアの数々。
私が沈黙していると、主人が突然私を抱き上げた。そのまま部屋の奥へ歩き、ベッドに転がる。
「ふぅーむ」
何をされるのかと思ったが主人は私を抱えベッドに転がったまま何か考え込み、何度か寝返りの様に左右に転がった。
そしてニッコリと笑うと、
「これなら二人でも寝られそうですね」
と言い放った。
169 名前:3/7[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:19:12 ID:ffJatvLh [4/9]
主人と暮らす様になって、驚いたのはそれだけではなかった。
誤射の件を話していたにも関わらず平然と私をミッションへ連れて行った。さすがに困惑した私が何も出来ないでいると、
「撃つのが怖いなら、それもオーケーです。味方を間違えて撃ってしまったりしたら、トラウマになるのは当たり前です。
銃を持てるだけでも凄いんですよ?あなたは」
と、私に笑いかけてきた。そして真顔になると、
「今はまだ無理でしょうが、私を信じて。あなたが戦えないなら私があなたの分まで戦えば良いことです。
いいですか?私があなたを守ります。戦闘は全て私に任せなさい。大丈夫、私は強いですよ」
今まで、私の事情を聞いて同情はしてくれても、それを許容してくれた人はいなかった。
しかし、この人は自分を信じろと、全てを任せろと言う。
本当に任せてもいいのだろうか。それではただのお荷物ではないだろうか。
そんな私の思考を感じ取ったのか、主人はニヤリと笑った。
「よくあるシーンじゃないですか。主人公のピンチに、ヒロインの必死の応援を受けて主人公が何がしかの力に目覚めて
逆転勝利。私は特に今ピンチではないですが、あなたが応援してくれれば、普段よりもっと頑張れるかもしれませんよ?」
応援。たったそれだけのことでも、「故障」を抱えた私には荷が重い。「頑張って」の一言ですら、口が開いてくれない。
170 名前:4/7[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:19:37 ID:ffJatvLh [5/9]
そうこうしている内に、辺りから原生生物が湧き出る様に現れた。結構な数だ。主人は両手に持った双短銃で次々と
急所を撃ち抜いて行くが、数が多すぎる。私は思わずライフルを取り出そうとした。
しかしライフルに触った瞬間、あの、主人の背中を撃った瞬間がフラッシュバックする。
駄目だ。これだけは駄目だ。でも、でも、応援って、どうすればいいの?
「何か声をかけるだけでもいいんです。あなたなりのやり方で、言葉で」
引き金を引き続けながら主人が言う。
・・・リトルウィングのあの部屋で過ごした日々。業務の合間を縫って他愛もない話をしにきてくれたチェルシーさん。
何も言わず、ただ酒を呑むだけだったけど、一緒に居てくれたひげもじゃ───クラウチ。
二人も二人なりに私も励ましてくれていたんだ。
私にも・・・できるはず。
いや。
できる!
171 名前:5/7[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:20:17 ID:ffJatvLh [6/9]
開くことを拒む口を無理矢理開ける。歯がガチガチと鳴った。構うものか。もう既に壊れているんだ。
これ以上壊れたって構わない。
必死に声を絞り出す。
「が・・・ば・・・て」
異常動作する制御機構が邪魔をする。
「負け・・・い・・・で」
それは主人に対してではなく、自分への応援だったのかもしれない。
「がんばって・・・負けないで!!」
言えた。戦闘中だというのに、主人は私に微笑んだ。
「ありがとう。・・・あなたがそう言ってくれる限り、私は負けませんよ。絶対に」
そう言った瞬間、空が光った。次いでレーザーが降り注ぎ、原生生物を一掃した。SUVウェポン・・・。
私と主人以外に何もいなくなったと同時に、私はへたり込んだ。
172 名前:6/7[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:20:43 ID:ffJatvLh [7/9]
後日GRMで改めて検査を受けたところ、私は異常動作していた感情制御機構の制御部分を完全に破壊してしまったらしい。
そのおかげで、思ったままの言葉が出せるようになった。反面、二度と感情を表情に表すことは出来なくなったらしいが。
主人はそれを聞いても「私は無表情キャラも好きですよ」とわけのわからないことを言っていた。
余談だが、検査を受けた時のことだ。GRMの社員が私の検査結果を主人に話していた時。
「故障箇所が複数ありますね。はっきり言って「不良品」です。有償になりますがパーツか機体ごと交換・・・」
言いかけた社員の胸倉を主人が掴み、引き寄せた。
「うちの子を「不良品」呼ばわりしないでくださいね。・・・ぶち殺すぞ」
それまで聞いたことのない底冷えのする低い声だった。
私の位置からは主人の表情は見えなかったが、社員は真っ青な顔でカクカクと首を振っていた。
主人は手を話すと私へ向き直り「帰りましょうか」と言った。
「交換、しなくて良いのですか」
「こんな失礼な輩がいる所であなたの身体をいじらせたくありませんね。それに・・・」
「それに?」
「私は、「変わり者」が大好物なんですよ」
主人は、最初に会った時と同じ笑みを浮かべて言った。
173 名前:7/7[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:21:13 ID:ffJatvLh [8/9]
「・・・・」
私は目を覚ました。時刻を見ると、まだ真夜中だった。
夢を見たのは久しぶりだ。それも昔のことなんて。
起き上がり隣の主人を見ると、気持ちよさそうに眠っていた。
何気なくその頬に触れてみる。
・・・温かい。
「・・・リム?どうかしましたか?」
目を閉じたまま主人が口を開いた。起こしてしまったらしい。
「夢を、見ました。昔の夢を」
「・・・良い、夢でしたか?」
「半分は」
「ふふっ・・・それは・・・良かったです・・・」
主人は静かな寝息を立て始めた。私はその頬にそっと口付けた後、もう一度横になった。
また、今日のように昔の夢を見る日もあるだろう。
その時は半分ではなく、全部、良い夢だったと言いたい。
この人と一緒なら、言える日がくる。そう思いながら私は、また眠りに落ちた。
おわり
174 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/25(日) 22:24:18 ID:ffJatvLh [9/9]
以上です。
実は書いてて一番悩んだのがNPCの口調でした。
チェルシー難しいよチェルシー・・・
175 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/26(月) 00:36:13 ID:RhqDowPc
>>174
投稿お疲れ様です。最初の書き出しからどうなる事かと思ってたが、
無事いいご主人にめぐり会えてよかったぜ!
>>実は書いてて一番悩んだのがNPCの口調でした。
いやいや、中々いい感じでしたよ。
しかし、確かにチェルシーの口調の表現は難しいよな。
なんたってチェルシー本人がその口調をわざとやってr
おっと、誰かきたようだ。なんだよこんな時間に・・・・
ア゙ーーーー
176 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/27(火) 11:41:38 ID:e8SXNtkZ
>>174
大好物との憧れの生かtゲフンゲフン
いいキャストは変な人。
>>175
ラリー 「チェルシー…? 聞いたことのある名前だな」
シャーリー「軍で『硝煙女帝』と呼ばれていた教導官です。現在は退役しています」
ラリー 「そういえば居たな。直接会ったことは無いが、彼女が指導した兵士は精強で有名だった」
シャーリー「退役後の足取りは不明、一切の記録が抹消されている様です」
ラリー 「そのチェルシーと同名…まさか、な」
シャーリー「在籍時の外見、性格とは似ても似つきません。別人かと」
ラリー 「そうだろうな」
177 名前:174[sage] 投稿日:2010/07/30(金) 01:36:06 ID:Q4HSqKat
>>175,176
ご拝読いただきありがとうございます。
書き忘れたのですが、最後にちょこっとだけ名前出てますが
>>174は>>40と>>49のリムとアイリスの馴れ初めでした。
え、言われなくても気付いてた?すみません。
規制が長かったおかげでネタは結構あるんですが連投ってどうなんでしょうか。
178 名前:名無しオンライン[パパと412 sage] 投稿日:2010/07/30(金) 21:37:11 ID:VTUSmLA/
どうも、パパと412作者です。
お、終わったぜ……(プシュ~
最終話『A goal is the next start』
ttp://a-draw.com/1/src/a-draw1_2375.lzh.html
※DLキーが設定されています。キーは412。
注意!zipではなくlzh圧縮になってます。
179 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/30(金) 22:48:53 ID:OI5E8J4U
ズタボロになって休眠とか爆死とかヤだなぁ
180 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 00:51:05 ID:tb2voPZm
>>177
>連投
書き手が減ってる現状、2~3連投ぐらいなら大丈夫だと思われ。
>>178
ついに完結か~超乙でした。
本編ラストやおまけでその後の彼&彼女達の事が書かれていたのがよかったけど、
そのおまけで悲惨な最期になった面々がいたのは、ちと悲しかった。
書き方的にもうこの2人メインでは話が続かないっぽいが、どうなのかな?
別ロダUpなのでバレの大きな無い範囲で。
>野生ディ・ラガンに別のディ・ラガンが割り込み急襲~
何この怪獣大決戦w
>「スキヤキのうらみ~」
430が思い込んでるスキヤキをジュエルズ含めルド家全員で行うと凄い事になりそうw
後、「10ヶ月目3」で430が440表記になっている部分がありましたよ。
次回作未定との事ですが、俺は楽しみにしてるぜ~
>>179
確かにおまけで悲惨な結果になっている面々がいたのはちとショックだったな。
つーか、あるキャラは暗殺云々しちゃってる事書かれてたしw
181 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:26:59 ID:HyENusVg [1/12]
では、遠慮なく投下します。
182 名前:1/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:27:52 ID:HyENusVg [2/12]
「行って来る」
「はっ!お気をつけて!」
いつも通りに敬礼して、マイはルームを出る主人を見送った。
しばらくそのままの姿勢で固まっていたが、手を下ろすときびきびとした動作で家事に取り掛かる。
部屋の掃除、洗濯・・・セシルと共にミッションへ出かける日以外は毎日やっていることだ。
そして、昼。
ルームにロックがかかっていることを改めて確認したマイは、少しだけうきうきした足取りで
キッチン───あんまり使ってない───へ向かった。
そしてナノトランサーから大事そうにある物を取り出す。ピンク色の、小さな子供用弁当箱だ。
マイは弁当箱を手に取りじっと見つめると、嬉しそうに笑った。
「ふふっ・・・♪」
PMの武器や防具もタダではない。メンテナンス代もかかるし、壊れもする。
それに一緒にミッションをこなしている以上分け前を受け取るのは当然の権利だ───と、
セシルは結構な金額をマイに与えてくれていた。
それは武具代には余るほどの額だったが、使い道を思いつかなかったマイはとりあえず貯金しておくことにしていた。
しかし先日、ショップへ同行した際に偶然欲しい物を見つけたのだ。
それがこの弁当箱だった。
183 名前:2/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:28:21 ID:HyENusVg [3/12]
こういうのも一目ぼれ、というのだろうか。弁当箱なんて使ったことがないし、これからも使うかどうかわからない。
しかし買ってしまった。小さくて可愛い形。大好きなピンク色。
───買った以上は使いたい。
そして今日はパートナーの同行が認められていないミッションに行くとかで、セシルの帰りは遅い。
絶好のチャンスだ。
こっそり買っておいた冷凍食品───残念ながらマイは料理が得意ではなかった───を暖め、弁当箱に丁寧に詰めていく。
マイは、ふと思い出して口を開いた。
「これっくらっいのっ♪おべんとばっこにっ♪」
弁当箱の使い方について調べた時に知った歌だ。意味はわからないがきっと弁当を作る時に歌うものなのだろう。
「───完成であります!」
質素だが可愛らしい弁当が出来た。さて、どこで食べようか・・・出来れば屋外の公園等で食べたかったが、
主人の不在時に無断で外出するわけにもいかない。と、その時、マイは思いついた。
そうだ、外に出られないなら部屋の中でやればいいんだ。
───室内ピクニックだ!
184 名前:3/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:29:25 ID:HyENusVg [4/12]
本来はルームグッズを置くスペースのど真ん中に、マイはビニールシートを敷いた。児童向けアニメのキャラクターが描かれた
子供用の物だ。
そして周りにサンフラワを置いていく。
セシルはミッションやクライアントオーダーの報酬でもらったルームグッズを飾らなかったが、捨てもしなかった。
あとは・・・そうだ、センプーキ。あれがいい。
すぐに設置してボタンを押す。もちろん弱だ。飛ぶ、なんて押したら部屋の外まで飛ばされてしまう。
そよそよと微かな風が吹く。マイは座ると、目を閉じて思いを馳せた。
一面の花畑にそよ風が吹く。自分の周りにいるのはセシル、ミコト、らぶ、アイリス、リム。
そう、みんなでいつかこんな風にピクニック行けたらいいな・・・。
「あの」
それでみんなでお弁当食べて、色んなお話して・・・。
「あの、マイさん」
そう、あんまり喋ったことのないリムさんともこうやってお話して・・・え?
目を開けると、リムの仏頂面が目前にあった。
「ほにゃあぁぁぁぁっ!?」
185 名前:4/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:29:49 ID:HyENusVg [5/12]
奇声を上げて飛び上がったマイを、リムがじっと見つめる。
「セシル様に頼まれていたハンドガンのカスタマイズが終わりましたので届けに来たのですが。
・・・ご不在のようですね」
「は・・・はっ、ごごごごしゅご主人様は」
「いえ、ご不在でしたらそれで良いのです。預けていきますのでお戻りになられましたらお渡ししてください」
「は、はっ、はい、了解です」
「それで、何をされていたのですか?」
マイはぎくりと体を強張らせた。そして思わず言ってしまった。
「ピ、ピクニック・・・を・・・」
しまった・・・!言った瞬間マイは後悔した。一人でピクニックなんて。しかも室内で。
こんなにサンフラワ並べて、センプーキでそよ風の演出までして・・・!
マイの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
絶対笑われるに決まってる。リムが笑うところなど想像できなかったが。
どうしようどうしよう。マイは内心半泣きになっていたが、リムの口から出たのは意外な言葉だった。
186 名前:5/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:30:13 ID:HyENusVg [6/12]
「そうですか。では、私もご一緒させてください」
「は・・・はっ?へっ?」
どういうことだ?もしかしてニヤニヤと笑いながら観察されるのだろうか。
室内ピクニックってぇ~、どんな事するんですかぁ~?(笑)
あ~、サンフラワ見ながらお弁当とか食べるんですかぁ~(笑)
とか言われたりするんだろうか。
マイのネガティブ思考は止まらない。
「今日はうちの人も留守なので、ルームに戻っても私一人なのです。無理にとは言いませんが」
リムの平坦な声に現実に引き戻される。
正直遠慮したい。しかしここで断っても角が立つし出来れば弁解しておきたい・・・!
「わ、わかりました。自分で良ければ、お供致します」
「ありがとうございます。・・・シートは二人分座れそうですね。お邪魔します」
「ど、どうぞ・・・あ、でもお弁当・・・」
「ご心配なく。こんな事もあろうかと手作り弁当を持参しています」
こんな事ってどんな事なの・・・!?
マイはますます混乱していく。
187 名前:6/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:30:37 ID:HyENusVg [7/12]
「丁度お昼ですね。いただきましょうか」
「あ、は、はい。そうですね」
リムが取り出した弁当箱は、一回り大きい大人用の物だった。
マイが自分のものと見比べていると、リムが言った。
「可愛いですね、お弁当箱」
「あ、は、ど、どうも・・・」
声も表情も全く変わらないせいで嫌味を言われているのか純粋に褒められているのかわからない。
蓋を開けたリムがふと動きを止め、口を開いた。
「以前うちの人から聞いたことがあります。友人とお弁当を食べる時の作法を」
「さ、作法・・・ですか?」
「おかず交換の儀式です」
儀式・・・!マイは軽く衝撃を受けた。
188 名前:7/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:31:05 ID:HyENusVg [8/12]
リムがマイの弁当をじっと見つめる。
「私はそのから揚げを所望します。マイさんもお好きなものを」
「あ、じゃ、じゃあ・・・えっと、そのタコさんウィンナーを・・・」
「わかりました。では」
リムが箸で器用にタコさんウィンナーを掴み、マイの顔の前に持っていった。そして
「あーん」
「は?」
「口を開けてください。あーんです」
「えぇっ!?」
「これも儀式の一環です」
マイは顔を赤らめながら「あーん」をして、タコさんウィンナーを食べた。
「美味しい・・・です」
「それは良かったです」
リムがじっと見つめてくる。そうか、次は自分の番だ・・・!
マイは弁当箱と一緒についてきた可愛らしいフォークをから揚げに刺した。
「あ、あーん・・・」
「あーん」
ぱくり。
189 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 09:47:46 ID:B1nue5G0 [1/2]
支援
190 名前:8/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 10:31:20 ID:HyENusVg [9/12]
「美味しいです」
「よ、よかった・・・です」
儀式はそれで終了らしく、黙々と弁当を食べ始めたリムを見てほっとしたマイも自らの食事を進めた。
程なくして二人とも食べ終わると、リムが改めて室内を見回した。
「以前来た時はルームグッズの類はなかったと記憶していますが、これはマイさんが?」
「あ・・・はい、少しでもピクニックの雰囲気が出ればと・・・」
「・・・センプーキ」
「あ、それは・・・」
なんて言おう。そよ風の演出、なんて恥ずかしすぎて言えない。室内ピクニックの時点で相当恥ずかしいが。
マイがあれこれ考えていると、リムがセンプーキに近づいた。
「あ”ぁ”~~」
「!?」
「ワレワレハ~」
「あ、あの・・・リムさん、何を・・・」
「センプーキを使うときの作法です。さあ、マイさんも」
私もやるの!?とは言えず、渋々とリムの隣に並び、頬がくっつきそうな距離で一緒にセンプーキに向かって声を出した。
「あ”ぁ”~~」
「あ”ぁ”~~」
「ワレワレハ、ウチュウ、ジンダ~」
「ワレワレハ、ウチュウ、ジンダ~」
あ、ちょっと楽しいかも・・・。知らないうちにマイは少し笑っていた。
191 名前:9/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 10:31:56 ID:HyENusVg [10/12]
「・・・何をしているんだ?」
聞き間違えるはずのない主人の声に、センプーキの前でマイは固まった。
時計を見ると、セシルが帰ってくる時刻をとっくに過ぎていた。いつの間にこんな時間に・・・!
マイが固まっていると、隣にいたリムがすっと立ち上がり、セシルに向き直った。
「頼まれていたハンドガンのカスタマイズが終わりましたので、お届けにきました。
その後、マイさんと二人で室内ピクニックを楽しんでいたところです」
「・・・そうか」
よくわかっていない顔でセシルが返事を返した。
「では、私はこれで」
「ああ、アイリスによろしく伝えておいてくれ」
「はい。・・・では」
ルームのドアの前まで行ったリムは足を止めて振り返ると、
「ピクニック、楽しかったです。今度はみんなで行きたいですね」
といつも通りの平坦な声で言い、出て行った。
192 名前:10/10[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 10:32:27 ID:HyENusVg [11/12]
セシルがサンフラワを見渡し、センプーキを見て首を傾げた。
「す、すみません!すぐに片付けます!」
「ああ・・・いや、構わないよ」
「え?で、でも・・・」
「たまには、花を見るのもいい」
そう言うとセシルはマイの隣に腰を降ろした。
「湖畔公園でいいか?」
「えっ?」
突然の問いに意味がわからず、マイが聞き返す。
「ピクニック。私は室内ピクニックは知らないが、外でやるピクニックなら多少は知っている。
リムもああ言っていた事だし、今度ミコト達も誘ってみんなで行こう」
「・・・!はい!」
おわり
193 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 10:33:22 ID:HyENusVg [12/12]
以上です。
分割しなくてもいけるかなーと思ったら投稿しすぎって怒られましたorz
194 名前:名無しオンライン[パパと412 sage] 投稿日:2010/07/31(土) 13:17:02 ID:vDmswvfj
[1/2]
>>179、>>180
ご拝読いただき、有難うございます。
怪獣大決戦(笑)は、あのディ・ラガンも成長しているという事を書こうとしたら、ああなってしまったのですよ。
ある意味、作者が振り回されてますw
430とスキヤキは、以前に鍋物のSSを読んでから是非ともいずれやらねば!と思ってた話でもあります。
自分の知る事実がある意味間違いだと知った430はどう動くのか。
俺が書くと、ああなりますw
>430が思い込んでるスキヤキを(ry
もしやったら?(脳内会議を招集してシミュレート中……)……ハッΣ(-д- ;)
いかん、いかに肉をゲットして、ルドに「はい、あーん」をするかという、恐ろしい修羅場がガガガガ……
(作者がオーバーフロー中、暫くお待ち下さい)
……失礼しました。
おまけに関してですが、明るい未来ばかりでは無いということで……
昔から「習いは性になる」と言うとおり、『凶戦士』はすっかり諜報部のやり方に染まっています。
だから、ああいった事を平然とやるようになった訳です。
それと同じ理由で、自然と真面目な性格になってしまったオリビン。
AIの成長に影響を受けやすい時期(彼女はロザリオに次いで“若い”のです)に周囲の環境があれでしたからねぇ……
ただ、それゆえに悲惨な結末を迎えてしまったという、なんとも皮肉な話なんです。
ちなみに、ジュエルズのなかで一番したたかで陰険なのは、実はウラルです。
彼女は、負傷を理由に休眠することで他のジュエルズが稼動停止、つまり死ぬのを待ち、いずれルドを独り占めにしようと画策してるのです。
恋に暴走する女(パシリですが)って、実に恐ろしいですねぇ……
最後はああいう引きをしましたが、あの二人が主人公の本編を書く可能性はゼロじゃありません。
というか、気が向いたら書きますw
もしかしたら、某種死みたいに脇で出て主人公の座を奪ってく可能性が……(苦笑
それから>>180様、誤字情報有難うございました。
いずれ、全話まとめて再うpを予定していたので、早速修正しました。
チェックしたはずなんだけど、よくよく見ると数箇所間違ってたし……
校正に時間がかかると思うので、全話まとめは暫くお待ち下さい。
>>193
なにこれかあいいっ!マイかあいい!
おかず交換の儀式のくだりが何とも言えませんっ!
しかも叫び声が「ほにゃあぁぁぁぁっ!?」ですよ奥さん!
うちのロザリオに叫ばせてみt……
(背後から妙な殺気)
……え? 何ですかロザリオさんそのペギータは、え、ちょ、メギドらめぇ! アッー!
195 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 18:36:39 ID:B1nue5G0 [2/2]
こっちでも楽屋オチやるレベルにまで落ちないでほしかったな
196 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/07/31(土) 18:45:58 ID:PtS8j0h7
同意 楽屋オチは楽屋でやってこそだろ
197 名前:名無しオンライン[パパと412 sage] 投稿日:2010/07/31(土) 20:51:19 ID:vDmswvfj
[2/2]
>>195、>>196
言われてみれば確かにその通りですね、今後は自重します。
198 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 00:54:02 ID:clhaabuz [1/2]
>>193
投稿乙です。
分割は・・・まあ、どんまい。
>「こんな事もあろうかと~」
いやいや、準備万端すぎるだろうw
>「ワレワレハ、ウチュウ、ジンダ~」
扇風機といえばこれですな。
ありきたりだが、定評のあるシチュエーション。だが、それがいいw
199 名前:主従逆転 1/3[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 06:42:39 ID:09gfZzuF [1/4]
「はひ、はひ、はひっ…待ってよぉ~!」
小さな体ですたすたと最適化されたルートを歩いてゆく431。ってあんにゃろ!
ゲートコンソールの上に座って足ぷらぷらさせてやがる!まるでいかにも暇だな
時間が余っちゃったなとでも言わんばかりに。声かけてるのにこっちを見もしない。
私がゲートにたどり着かんとしたそのきっかり2秒前にぴょんと飛び降りて
またすたすたとスペースポートの奥へと歩いてゆく。こっちを見もしないで!
まったくかわいくないったら!
「こんの、待てったら~!」
歩幅はこっちの方が有利なはずなのに憎たらしい。GRMめ。
200 名前:主従逆転 2/3[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 06:43:03 ID:09gfZzuF [2/4]
『当機はまもなく、惑星ニューデイズへ出発します。』
アナウンスの流れるスピーカラインを目で追う様に見上げながら、礼儀正しい姿勢で
431はシートに座っている。
こっちはと言えば、かいた汗が引かないもんだから手で顔をぱたぱた、服をぱふぱふ
シートになんか座ってられなくて通路をうろうろしてる。
「これに着替えてシートに座って下さい。フォトンドライブの衝撃で座席最後尾まで
吹っ飛びますよ。」
サンダルとハーフパンツ、ユカタウェアをこっちのナノトランサーへ勝手に転送し
なんと勝手に装着変更を実行する。
「ちょ、ちょっと!ばか!何やってんのよ!ばかっ!」
「バカなのはマスターの方です。発信のレッドシグナルが点灯していますよ。」
ぐいっとかなりの出力でひっぱられて、私は座席の上にどすんと置かれた。
201 名前:主従逆転 3/3[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 06:43:57 ID:09gfZzuF [3/4]
「着きましたよ。マスター。起きてください。」
ユカタウェアのひんやりとした感触にすっかり汗もひいて、いつの間にか眠って
いたみたい。
窓の外を見るとまだスペースポートの中だ。
「ニューデイズのスペースポートへ到着したんです。降りますよ。」
ヒトの寝ぼけまで先読みしててきぱきと行動指示。ほんとに出来た子だこと。
よだれを裾でふいて、よっこらせとシートから立ち上がる。
「裾でよだれを拭かないで下さい。マスターはビースト族なのですから、唾液が
匂いますよ。」
余計なお世話だ!と言い返す間もなくユカタウェアの色がヒュインと変わる。
「あーっ!また勝手に!失敗して脱げたらどうすんのよ!」
「見られて減る体型ではないでしょう。それに装着変更の失敗確率は0%です。」
「あんった女性型のクセに女心解ってないよねぇ~…」
「でしたら女性らしい振舞いを心がけて下さい。」
「く!ああ言えばこう言う!」
スペースポートを出る。外は夜。
ドーンという空を包む様な音と共に、ちょうど一発目のハナビが上がったところだった。
- end -
202 名前:名無しオンライン[] 投稿日:2010/08/01(日) 06:46:06 ID:09gfZzuF [4/4]
ニューデイズで行われる花火大会の開始時刻にマスターを間に合わせようとした感じの話です。
スレが沈下していたのでドーンと一発ちいさな線香花火をあげておきます。
203 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 13:02:23 ID:5WcLPnSl [1/6]
>>178
遂に完結かぁ…ロザリオがまだPMだった頃の事を考えると、何だか感慨深いですね。
次回作、私は絶対に読みますよ。濃ゆい設定が特にたまらnゲフンゲフン
>>193
今回は長めでしたね、お疲れ様です。
最近私の方が何か殺伐とした話になりそうなので、こういうほのぼのは癒しになっていいですね。
>>202
世話の焼ける主人ってのはかわいいもんです。
長編は好きな人嫌いな人にハッキリ分かれるので、こういった短編は私としても嬉しいですよ。
さてと、unsung episodeばかり書いてましたが、ようやく本編投下です。
(またアッシュの出番が無くなっちゃったけど…)
204 名前:過去 1/4[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 13:03:03 ID:5WcLPnSl [2/6]
私の家はニューデイズでも有数の資産家なの。
ヒューガ・ライトには及ばないけど、GRMの主要株主のひとつでもあるのよ。
私には5歳上の兄が居てね、本当は兄が家を継ぐはずだった。
でも兄は家を飛び出してガーディアンになったのよ。
嫌気が差したんでしょうね。私も小さい頃から兄の姿を見てたけど、
家庭教師がつねにつきっきりで、いつも勉強させられてた。
それにスクールでも友達はまったく居なかったみたいね。そりゃ飛び出したくもなるわよ。
兄は17歳になった時に家出した。
そりゃもう家中てんやわんやの大騒ぎよ。大事な跡取りが居なくなったんだからね。
お父様は血眼になって兄の行方を探したけど…
分かったのは兄が殉職した後だった。
SEED事変の時だったわね、私の兄は暴走したキャストに殺された。
それを知ったお父様の落胆ぶりと言ったらなかったわよ。
いっつもお酒に溺れて…家の者も気が気でなかったみたいね。
でもある時、突然思い付いたようにこう言ったのよ。
『ケイ、お前が家を継げ』
205 名前:過去 2/4[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 13:04:09 ID:5WcLPnSl [3/6]
それまでは結構自由にできてたんだけど、今度は私が縛り付けられた。
この時お父様は何処から手に入れたのか、私にPMを付けたのよ。
私の事を四六時中見張って、身の回りを世話する役目。
食事もPMが出すし、勉強だって教えるのはPM。
お父様は分かってやってたのかしら。兄が家出した原因なのに…
その後は言うまでも無いわ。この通りよ。
リトルウィングは身分を隠すのも容易だったし、丁度よかったわ。
でも私にPMが支給されるのにはちょっと時間が掛かったの。本当はPMなんて要らなかったんだけど、
会社の規則となっちゃ仕方ないと思って待ったわ。
それでやっとの事で私の元に来たPMは─
『宜しくお願い致します、お嬢様』
私に付けられたPMとあまりにそっくりだった。
勿論見た目は違ったわよ。家に居たのはGH-413、支給されたのは当然だけど410。
206 名前:過去 3/4[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 13:05:00 ID:5WcLPnSl [4/6]
でも見た目なんて関係ない。その子の口調や…何より雰囲気で分かる。
追いかけて来たのよ。
大方、お父様に言われて来たんでしょう。私を監視する為に。
「ケイ、それは考えすぎじゃないのか?」
私には分かるのよ。
私は知ってるんだから。真夜中にビジフォンでどこかと連絡を取ってるのを。
「PMだってキャストと変わらん。本心があるんだろうよ」
「PMの事なんかどうでもいいの! 私は貴方に知ってもらいたいのよ!」
突然凄みを増したケイに、ジョニーが少したじろぐ。
「私…初めて貴方に会った時に、貴方と居れば変われるかもって感じたの。
一緒に居てほしいのよ、私と…」
「俺はお前が思ってる程いい人間じゃない。…そろそろ帰らなくちゃな」
ジョニーが立ち上がり、遠くを見る様な目でそう言うと、ケイも無言で立ち上がった。
207 名前:過去 4/4[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 13:05:34 ID:5WcLPnSl [5/6]
マイルームに入ると、一体のPMが出迎える。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「…ただいま」
「いかがなされました? ご気分が優れない様子ですが」
「何でもないわ」
「分かりますよ、私には。ジョニー様の事ですね」
「…」
「何があったかは存じませんが、その様に沈んだお気持ではますます辛くなるだけです。
そういう時こそ、明るく務められた方がよろしいかと」
「…ありがとう」
「夕食の用意が出来ておりますが」
「先にシャワー浴びてくるわ」
「かしこまりました」
「明るく、ね…そういえばあの子をジョニーに会わせたこと、無かったなぁ…」
服を脱ぎながら、ケイはぼんやりとそう思った。
そして思い立った様に、脱衣所の外に声を掛ける。
「エリ! 今度ミッションに出る時、ついて来てくれない?」
208 名前:過去[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 13:07:24 ID:5WcLPnSl [6/6]
今回分はこれで終了。
ちょっと実験的な描写も含んでますが…伝わりましたでしょうか。
209 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 20:25:52 ID:clhaabuz [2/2]
>>202
線香花火なんてとんでもない!綺麗な打ち上げ花火なのぜ。
しっかり物のPMと大雑把そうな主人。だからこそか、とても相性がよさそうでほのぼのしました。
>>208
>実験的な描写
過去語りの部分かな?
ケイのPMに対する冷たい態度が気になってはいたが、そういう事か。
ただ、PMそのものを嫌悪してるというよりは、
家に縛られる事を嫌悪し、その嫌悪の矛先としてPMを嫌悪しているって感じだな。
210 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:12:05 ID:FWGfRxC4 [1/8]
>>194
ありがとうございます。口調こそアレですがマイは登場人物中ではきっと一番女の子。
>>198
リムのナノトランサーはきっと四次元ポ○ット。ほら、430って服も青っぽいですしね。
>>202
たーまやーっ!!
ユカタ着て涎たらしながら寝てるビーストとか違う意味で涎が出t ゲフンゲフン
>>208
こんな馬鹿話で和んで頂けたなら幸いです。
ケイさんのPM,口調から勝手に執事型だと思ってました。410さんだったんですね。
最近スレがにぎやかでいい感じですね。この勢いを絶やさないように本日も投下します!
211 名前:1/6[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:13:19 ID:FWGfRxC4 [2/8]
「彼」は、この草原一帯の主ともいうべき存在だった。
同じ種族の配下とも呼べるモノ達は「彼」には一切逆らわなかったし、
縄張りを侵してきた愚か者共は自慢の爪で八つ裂きにしてやっていた。
しかし今、「彼」は、怒り狂っていた。
「彼」の縄張りを侵した愚かな侵入者を、いつもの様に引き裂いてやろうとしたのだ。
しかしどういうわけか、気がつくと「彼」が連れていた配下のモノ達が逆にズタズタに斬り裂かれて息絶え、
侵入者はいなくなっていた。
あの侵入者・・・確か、「ヒューマン」とかいう種族だった。
か細い身体で爪も角もない下等生物だ。それがどうやって配下のモノ達を倒したのかはわからないが、
所詮は格下の存在だ。「ヒューマン」などという下等生物に倒されても仕方のないことだろう。
しかし自分は違う。自慢の爪で引き裂けない物はなかったし、万一傷を負っても癒す術も持っている。
あんな爪も持たぬ下等生物に負けるわけがない。
「ひゃぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーッ!!」
突然の叫び声に、「彼」は驚いて辺りを見回す。何もいない。と、足元に影が出来た。
不思議に思って空を見上げると、先程「彼」が下等生物と呼んだ存在が、空から落ちるように向かってきていた。
それが、「彼」の見た最後の光景になった。
212 名前:2/6[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:13:48 ID:FWGfRxC4 [3/8]
「ふふっ、うふふふふふふっ、あはははははっ」
少女が笑いながら仕留めた獲物───ゴ・ヴァーラと呼ばれていた───を、両手に持ったツインクローで切り刻む。
何度も何度も、最早原型を留めていない「それ」に執拗にクローを叩き込んだ。
腕を振り下ろす度に返り血とも言える体液が飛び、顔や身体に付着するが、少女は気にも留めなかった。
頬を紅潮させ、恍惚とした目でクローを振るう。
「はぁっ、んっ、んぁっ、あぁっ」
笑い声が段々と嬌声へと変わり、少女は両腕で自らを抱きしめ、空を見上げた。
しばらくそのまま虚空を見つめていたが、ふっと我に返ったように視線を下ろし、ゴ・ヴァーラだったモノを見た。
少女は口をとがらせると、拗ねたように言った。
「ちぇっ、壊れちゃった」
立ち上がり、次の獲物を探そうかと思った時、少女は自身の空腹に気がついた。
「・・・帰ろっと」
そう呟くと、少女はその場から掻き消えるように居なくなった。
213 名前:3/6[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:14:18 ID:FWGfRxC4 [4/8]
「たっだいまぁ~~~っ!」
元気な声が響き渡る。このルームの主人の声だ。
声の主に仕えるPM、GH-412は主人を出迎えた。否、出迎えようとした。
「お帰りなさ「メガネちゃぁぁぁん寂しかったよぉぉぉぉ」
そう言いながら主人───ヒューマンの少女はPMに抱きついた。
メガネと呼ばれたPMは、抱きつかれた拍子にずれた眼鏡を直し、少女の頭を撫でた。
「お帰りなさい、ご主人様。随分汚れていますが、お怪我はありませんか?」
「うん!ぜぇーんぶ悪いヤツのだよ!」
少女はミッションに出かけると毎回必ず敵の血や体液にまみれて帰ってくるが、一度も怪我をしたことがなかった。
「メガネちゃん、お腹空いたぁ~」
「はい、お昼にしましょうね。でも、その前にお風呂です」
「えぇー、お腹空いたぁ~」
汚れ放題の少女に思い切り抱きつかれたことで、メガネの服も相当に汚れてしまっていた。
メガネはため息をつくと、「私も一緒に入りますから」と言った。
「ほんと!?じゃあ入るー!」
少女は先程とは打って変わってご機嫌になった。
214 名前:4/6[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:14:50 ID:FWGfRxC4 [5/8]
メガネが少女の頭を優しくシャンプーで洗う。
「目、開けちゃだめですよ?」
「うー」
メガネがシャワーで泡を洗い流すと、少女は犬の様に首をぶるぶると振った。
「はい、次は身体を洗いますからね。・・・ご主人様?どうしたんですか?」
少女はメガネの胸の辺りと、自分の胸を見比べていた。
「あたしもメガネちゃんみたいになるかなぁ?」
「・・・私は生まれた時からこのサイズですから。ご主人様は・・・まだ成長期です。きっとこれから大きくなりますよ」
「大きくなったらぼんきゅっぼーんになれるかなー?」
「・・・どこでそんな言葉覚えたんですか」
身体を洗い終わると、少女はメガネを抱きかかえて湯船に飛び込んだ。
お湯が辺りに飛び散った。
「ざぶーん!」
「きゃっ!・・・ご主人様、お湯もったいない・・・」
「えへへー」
少女はご機嫌でメガネを抱きしめる。聞いていない。
メガネは少し困ったような笑みを浮かべた。
215 名前:5/6[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:15:30 ID:FWGfRxC4 [6/8]
風呂から出ると、通信端末に着信が残っていた。
少女がおぼつかない手つきで端末を操作する。相手はすぐに出た。
「何をしていた、定時報告の時間を過ぎているぞ」
「メガネちゃんとお風呂入ってた~」
「・・・またPMか。まぁいい、報告をしろ」
「えっと、草原で、ヴぁ、ヴぁ・・・悪いヤツいっぱいやっつけた!」
「・・・もういい。こちらで計測するから映像データを送れ」
「はーい」
少女は通信端末を放り出すと、脱ぎ捨てていた服から録画用の端末を取り出し、データを転送した。
「・・・確認した。いいか、報告は時間通りにしろ」
「はーい」
少女の投げやりな返事に相手は忌々しげに舌打ちすると通信を切った。
「ご主人様、終わりました?」
「うん。遅刻だーって怒られちゃった」
ちっとも悪びれていない様子で言う少女にメガネは苦笑した。
しかし・・・とメガネは考える。自分はガーディアンズ所属PMだ。今いるルームもガーディアンに与えられるものだ。
しかし、先程の通信の相手はそうではないだろう。そして・・・恐らく、主人も。
ガーディアンとして登録されてはいるが、正規の手続きを踏んでいないはずだ。
ガーディアンズに入るにはまず2ヶ月間、養成学校に通い、卒業しなければならない。
しかし、少女がそこに通った記録はない。恐らく通信相手か、相手の所属する組織が何らかの手段で登録したのだろうとメガネは考えていた。
主人が話さないならそれもいいと思っていた。事情を無理に聞こうとも思わないし、聞いたからといってただのPMである自分に
何かできるわけでもない。自分にとって大事なのは、主人と一緒に居られることだった。
216 名前:6/6[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:16:03 ID:FWGfRxC4 [7/8]
「全く・・・」
「どうした、またアイツか」
「ああ。あのクソガキ、定時報告をしないからどうしていたのかと思ったら、PMと風呂に入っていた、だと。
あんなおもちゃのどこがいいのかね」
「所詮は子供って事だろ。まぁ戦闘データもだいぶたまってきた。もう少しの辛抱さ」
「あのPMはどうするんだ?戦闘には一緒に出してないとはいえ、ガーディアンズにデータ残したらまずいだろ」
「ああ、戻す時に廃棄する予定だ」
「あのガキ、相当執着してるぞ。大丈夫か?」
「なに、その時はGRMから代わりの同型機を買って与えればいいだけだ」
「まぁ、それもそうか───」
つづく
217 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/08/02(月) 23:19:42 ID:FWGfRxC4 [8/8]
以上です。
いつもと違ってほんのりシリアス風味にしてみたんですがいかがでしょうか。
「つづくって事はうちらも出るんかな」
「そのようですね」
「うちら使ぅてシリアスやるとか・・・」
「無謀にも程があります」
アーアーキコエナーイ!
218 名前:名無しオンライン[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 03:30:30 ID:/lfwkUuN [1/7]
ただいまー。なかなか余裕ができないので、書き手が増えて活性化しているのは嬉しい限りです。
>>193>>202>>208>>217の作者さんの、まとめ読みしたいw
>>178
長い連載、お疲れ様でした。妙な発言できっかけ作っちゃって申し訳ないようなw
個人的にはこういう終わり方は嫌いじゃないですw幸も不幸も、すべてを飲み込み時は流れる、と。
ていうか深遠なる闇w
続いて投下。
あと2回ぶんで終了のPSUチャレンジモードです。最後はもうほぼできあがっているので、2,3日中にできると思います。
終わったら過去のも加筆修正分があるので全部まとめてうpします。
宇宙論に足を突っ込んだ内容のため概念的な事柄が多くややこしいですが、今回はなんとなくわかったって程度で見てもらえれば幸いです。
それではどうぞ。
219 名前:継承 VI 未来へと続く空(中編) 1[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 03:33:35 ID:/lfwkUuN
[2/7]
モタブの預言書という本がある。テクニック、そしてその礎となったマジックの秘密が書いてあるといわれる本だ。
噂と違い、そこにはマジックそのものの解説は書いていない。書いてあるのは歴史のみ。
しかし、その歴史は本が編纂された時期よりも未来のことまで書いてある、開くたびに違うことが書いてあるという奇妙な書物。
「預言書か…私も、これで練習したわね」
人は今という時間を過ごすときに、常に無限の選択肢からひとつを選び出す。ただ歩くだけでも、どこに足を踏み出すか、どのタイミング、
どんな力の入れ方をするか、場合によっては立ち止まって何もしないなど選択肢は無限にある。
ほとんどはその後すぐに収束するが、それぞれにほんのわずかに違う未来が作られる。
『歩く』に対して『何もしない』など、ある選び方をして未来の方向が決定的に変わったとき、そこが歴史の枝となる…
なんともなしに本を開けば、ランダムに選んだ事実から未来が決定され、毎回書かれていることが違うが、意志をもって開けばある程度決められる。人が道を選ぶ時代ゆえの預言書である。
これがすなわちマジックの本質。ある意味で、この預言書にその秘密が書いてあるというのも間違いではないだろう。
「あなたと同じように練習させればいいと思ったのですが、アルバムの写真ばかりに気をとられて手にも取りませんでしたからね、あの子は。そのために余計な苦労を背負わせてしまいました」
「さしのべられた手を払いのけて辛い道のりを選んだのだから、そうさせればいいわ。やり方は一つではないでしょう」
亜麻色の髪の女が本を開くと、そこには魚の息、猫の足音、鳥の唾が存在する歴史が書かれていた。それらはかつてある究極の封印術を創る代償に、この宇宙から消滅したものだった。
「本当に変わりましたね、あなたは。優しいだけの娘ではなくなった」
「優しさは時に残酷よ。子供はいつか大人にならなくてはいけないもの」
彼女はありとあらゆる動物の皮となる可能性のある革装丁の本を閉じた。すると本は最初からなかったかのように消え失せた。
「ルツ、あなたは自分の両親のことを覚えている?」
「もちろんですとも」
「私もよ」
220 名前:継承 VI 未来へと続く空(中編) 2[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 03:37:38 ID:/lfwkUuN
[3/7]
「SEEDが人の裏の姿だというのは聞いたな?お前だけでなく人間というのは誰もが少なからず都合の悪い事実から目をそらす。これ自体は心を病まないための防衛本能といえるだろう」
「だから人がSEEDを生み出すと…人と闇とは切り離すことはできないと?」
「そうだ。だがその歪みは積もりに積もって、古代文明さえ滅ぼした!現実を受け入れて問題に対処する、たったそれだけのことができないばかりにな!
それだけではない、フォトン利用をあきらめたヒューマン、真実を隠蔽されたまま500年続いた戦争。やっと訪れた平和の中でさえ、キャスト至上主義、狂信的なグラール教団、無法そのものなビーストの社会…
何一つ反省していない。SEEDの出現は必然ではないか。あまつさえその対処方法が劣化した封印などとは」
「イルミナスという組織、掲げているにしては不自然なヒューマン原理主義…『光』はヒューマンに発現しやすいから、必要になる状況にまで追い込んで、できたものだけ生き残らせると?」
「いかにも!このハウザーがただの傷の嘗めあいの組織でしかなかったイルミナスを乗っ取り目指したのは、人が自ら現実を認め、自分の力で立ち向かうのが当然の社会を作ることよ!
言ったはずだな、SEEDは受け入れるべきなのだと!このハウザーのようにSEEDを御することはできるということだ!それさえできれば、旧文明も滅ばずにすんだのだ!」
「だからこそ私はハウザー様に身も心も捧げたのさ。もっとも、私には不完全にしかできなかったし、実験に使ったマガシは『支配を受けない』というだけの幼稚な自我になってしまったけれど」
「そのために何千人も犠牲を出して…過ちの歴史は繰り返される、ですか。正しいと信じて神を作ろうとした人たちがいましたが、それとそっくりですね」
「誰が正しいなどと言ったか。淘汰は必要だが、それは必要であって善ではない。それを悪と呼ぶのなら、イルミナスは喜んで悪であろう!そこに一片の悔いもありはしない!」
「そうとも、ガーディアンズが私たちを殺して人類の本当に求めるべき未来を壊したのはただの歴史の選択で、間違いじゃないのさ。私たちも何も間違っちゃいないけどね、ハハハ!」
カール・フリードリヒ・ハウザーとヘルガ・ノイマン。彼らの弁を最後に、グラールの歴史は見終わりました。
「いいか、逃げようなどと考えるなよ。お前はまさに、イーサン・ウェーバーやヒューガ・ライトが失敗し、このハウザーが求めた一つの理想を体現できる領域に踏み込もうとしているのだからな!」
「わかりましたから自己主張はここまでにしてください。あなたに言われるまでもないことです」
221 名前:継承 VI 未来へと続く空(中編) 3[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 03:38:47 ID:/lfwkUuN
[4/7]
何もない空間の中で、わたくしは今まで得てきたことを刻みつけていました。
「何をしているのですかなァ…闇にとらわれた貴女がァ…ふほほほほ」
「…翼を描いています。わたくしの翼を」
「翼ですとォ。まだ数枚羽を描いただけですなァ」
「ええ、でも数枚描けました」
「無駄なことをなさるゥ」
「あなたもこれの一部になるんですよ」
目でとらえた瞬間に、その闇の存在は一つの情報に変換されて、わたくしに『食べられ』、わたくしの思い描くものの一部になりました。
パシリが何かを食べて能力を上げる際に何が起きているのか、今まで疑問に思わなかったそれを研究しての応用です。
今やわたくしは物質に限らず概念やその記録を摂取して自らのものにするということを覚えていました。
しかし、600年以上あるグラールの歴史でさえ、ほんの数枚にしかなりません。自分の『光』たる翼のことをまるで理解していなかったわたくしは、
ゆっくりとしかそれを描き出していくことはできませんでした。でも、それはとても充実してやりがいがあることでした。
次は、リュクロスから垣間見えた平行世界。ラグオルにまつわった歴史。
「モンタギュー博士、おひさしぶりです」
「やあ、無限エネルギー制御の補助プログラムは役に立ってるかい」
「…いいえ、残念ながら」
「即興だったからねえ。いいさ、不完全なのは僕自身が一番よくわかってるよ、ウフフ…で、どうして僕を呼んだんだい。まさかこいつを改良してほしいのかい」
「違います。改良するのはわたくしです」
「そうか。その様子だと、もうわかっているようだねえ。僕はもう新しいものを作ることはできない。歴史の中の僕は、そこまでの存在にすぎない。もう終わった人生なんだから」
「ええ、ですから…すみません。あなたをください」
「謝ることじゃないだろう。僕の生きた記録を君が取り込むことで、僕は君の中で生き続ける。なあ、人はなんで生きるんだと思う?
僕はね、何かを残すために生きるんだろうと思っているんだよ。遺伝子しかり、技術しかり…僕に子供はいないから、それで何かを残していけるのなら、喜んで君に僕をあげるよ」
「ありがとうございます」
「僕にとってはかけがえのないものだ。あせらずゆっくり味わってくれよ。ウフフ…オラキオの剣よりも情報量は多いからね。無理して一気に食べるとまた調子を崩すよ」
222 名前:継承 VI 未来へと続く空(中編) 4[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 03:40:18 ID:/lfwkUuN
[5/7]
人に、ものごとに触れるたびに、得たものが自分の中のプログラムを書き換えて、可能になることがどんどん増えていくのがわかります。
もっと知りたい。もっとできるようになりたい。学ぶことがこんなに楽しいことだっただなんて。
気づけば、わたくしは自ら進んで記録に向かい、解析に没頭していました。
遠く遠く、さらに遠く遠くへ。
止まった時間の中で、もうどれだけ体感時間が経過したかなんて、わからなくなっていました。
無限の時間の中で悠久の時の彼方までを食べ尽くし、これが最後。立ち向かうべきものを乗り越え、この空間から出るためにひたすら学習に徹してきました。
目を服の袖でごしごしこすって、大きく息を吸い込んで自分を落ち着けてから、わたくしは意識を宙に解き放ちました。
どこにでもあるけれど普段は見えない、薄壁一枚を隔てただけのように、ちょっとしたことで堕ちてしまう深淵。この宇宙が生まれた頃からの、すべての人の、幾度も繰り返されてきた業の領域へ。
黒の巨人が力としていたもの、恐怖を固めてできたような、ダークファルスよりもさらに危険さを感じる名状しがたい絶対の真理に、かつて見た『深遠なる闇』に、もう一度わたくしは対峙しました。
頭の中でアラートが鳴り響きます。パシリをそのように造っているシステムによる警告は止めようがありませんが、わたくしにとっての本能といえるそれを押さえ込み、その禁断の世界に飛び込みました。
それはありとあらゆる偶発的事象、ありとあらゆる不条理を放り込んだ混沌そのものでした。
増殖することだけを目的とした不確定なままの重力やエネルギーがわたくしを痛めつけ、あっという間に巻き込まれた体が破壊されていきます。
とても処理し切れるものではありません。ですから、わたくしがそれを取り込むのではなく、わたくしもその一部であると考え、溶け込もうとしました。
(そうだ受け入れろ!それが生き物のサガだ!)
すると今度はそこにさらされた人たちの意識の濁流が襲ってきました。
痛い辛い苦しい悔しい憎い悲しい嫌だ嫌だ嫌だ…
エゴ、エゴ、エゴ、エゴ、エゴ。
なんと醜いのでしょう。一歩踏み外せばそれ自体を嫌い、鏡写しのように自分も飲み込まれそうです。これではラシーク王やリコさんがそうなるのも無理はないでしょう。
しかし、わたくしは一度そうなって、主に助かる方法を実践されています。流されず踏みとどまり、少しずつですが動き始めました。
狂った野獣のように暴れ回る『闇』の手綱を必死で握り、闇の淵の深く、深くへ。そこにある何かを求めて、深く…
今度はその意識はわたくしに向けられ、明確な悪意となってわたくしを責めさいなみました。苦しくて、思わず目を閉じて耳をふさいでしまいました。
(目の前のもの、今という時間だけにとらわれてはだめよ)
主を死なせたことの記憶が何度も何度もフラッシュバックし、そのたびに胸の中からわき上がるやり場のない憤りが身を焦がし、悪鬼のように顔が歪みます。
どこからか今まで出会った人たちの声が聞こえて、かろうじて理性を保ちました。
(お前の重ねた努力は無駄ではない。思い出せ、巨大な樹を)
わたくしは歴史の記録の中で数え切れない生と死を見てきました。そして避けえぬ運命としてそれに向き合った人たちの哲学も…
だから。
わたくしは。
「もう、逃げません!!」
つぶっていた目を見開いて、何かをつかもうとするように手を伸ばしたそのとき。
荒れ狂う嵐の中心に入ったかのように、負の感情が急に止まったかと思うと、肌触りの良い黄金の衣のようになり、
時空間の乱れと重力に打ちのめされてぼろぼろになったわたくしを抱きとめ、最深部へと下ろしてくれました。
そこにあったのは、砂漠の砂の一粒よりも小さく縮こまった、もうひとつの宇宙でした。
223 名前:継承 VI 未来へと続く空(中編) 5[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 03:41:11 ID:/lfwkUuN
[6/7]
それはとてもちっぽけですが、畏怖すら感じるほどの存在感でその場にありました。
手に取ろうとすると、それはすっとわたくしの体におさまり、今まで感じたことのなかった、脈打つ感覚を放ち始めました。
見えました、可能性。見えました、確固たる自分。
絶望の中で輝く希望と、それを作り出してきた意志。暗くて、醜くて、歪んでいて、それでも美しく輝いている、人という存在。
広がり続ける無限大の力、『深遠なる闇』。それに向きを与え、形にする『大いなる光』。それぞれにつながりを持つものだけが、そうなることができるのです。
この宇宙を支配する気まぐれな法則の中を流されず踏みとどまり、何度失敗しても挑んで理解したものが得る、知恵と勇気の力。
それがわたくしの光の翼や、伝説のハンターズたちが使っていた黄金のフォトンの持つ意味。
だから、翼。わたくしの『光』は。飛翔する主を見て憧れた、わたくし自身の可能性。
「立ち直ったな。さあ、飛び立つがいい」
「この宇宙の創生の時から、空を飛びたいと願った者が何人いたと思う?飛行機が作られてからも、人は自らの力で翔ぶことを夢見たほどなのだ」
洞窟に鳥を描き、空に憧れた人。
空を飛ぶ道具を思い描いた芸術家。
短い時間の飛行を可能にする簡単な機械を開発した兄弟。
まだ見ぬ宇宙へと飛ぶために、ロケットエンジンでの宇宙船を作ったチーム。
そんな時代においても、自分の体力任せに簡単な道具で滑空を試みた人たち。
さまざまな人が飛ぶことを夢見ていました。
それはとてもささやかな願い。でも、小さな願いは幾万幾億となって絡み合い、『人は空を飛べない』という世界の摂理を覆す力となったのです。
224 名前:継承 VI 未来へと続く空(中編) 6[sage] 投稿日:2010/08/03(火) 03:42:02 ID:/lfwkUuN
[7/7]
わたくしの翼は、わたくしだけのものではない希望でできている。
そう理解した瞬間、どこからか舞い落ちた、砕けたガラスのような光の欠片たちが集まり、一つ一つが翼となってわたくしのちっぽけな翼に結合しました。
大きな翼、小さな翼。夢を叶える力を持つ人の翼は、力強い風切り羽根として。力及ばない人の翼は柔らかな羽毛として。
見る間に翼は巨大でありながら重さを感じないものに変貌しました。巨人の剣を受け止めたときよりも、さらに大きく、力強く。
翼のひとつひとつが羽根となって構成され、先端がまったく見えない、長く巨大な、白銀の光でできた異形の翼。それは、周辺のエネルギーの方向を、混沌が支配する確率を操作し、自在に変える力。
黒の巨人と戦っていたときに光の翼を手にして、なんとなくこうすればこうなるという程度で使っていましたが、無限に時間を使った地道な分析からやっと見つけ出したこれが本来の使い方なのでした。
翼を動かそうと思う前から、すでに体は浮いていました。
「そうよ、あなたは飛べる」
羽ばたくまでもないと、そう言っているかのように。
「飛べ、無限の長さ持つ光の翼で。運命は君のものだ!」
重力の方向を逆にしてやるだけ。光の速度でさえ出ることのできない強大な重力の空間から抜け出すことなど、たやすいことでした。
動く、動きます!わたくしの思うがままに、軽やかに!
ただ飛んだだけなのに、今までとは比較にならないほどの開放感に高揚しながら、そのまま空間をねじ曲げて途中を飛ばし、第9の天をさらに越えたその場所、神の御座へ。
止まっていた時間が、動き始めました。
-続く-