有希「……私がやる」
ルリは一瞬耳を疑う。
だが洗濯籠を持つルリに手を差し出す有希は冗談を言っているようには見えなかった。
だが洗濯籠を持つルリに手を差し出す有希は冗談を言っているようには見えなかった。
ルリ「い、いいんですか?」
有希「いい」
ルリ「じゃあ……おねがいします」
有希「いい」
ルリ「じゃあ……おねがいします」
(有希姉が自発的に家事をするなんて……少しはレイ姉も見習って欲しいものね)
そう思いレイを見やるが、レイはこちらの様子に気付く気配すらなく読書に没頭している。
有希は洗濯籠を受け取ると洗濯物を干す為南の窓へ向かっていった。
その姿を見送った後、空いた時間を利用してルリは部屋を箒がけする。
当たり前だが一人より二人のほうが家事は能率が上がるのだ。
そう思いレイを見やるが、レイはこちらの様子に気付く気配すらなく読書に没頭している。
有希は洗濯籠を受け取ると洗濯物を干す為南の窓へ向かっていった。
その姿を見送った後、空いた時間を利用してルリは部屋を箒がけする。
当たり前だが一人より二人のほうが家事は能率が上がるのだ。
有希「……完了した」
部屋の掃除が終わる頃に有希は戻ってきて、爆弾の解体に成功した処理班の様にルリに報告してきた。
そしてそのままいつものポジションに座ると読みかけだった本を開く。
部屋の掃除が終わる頃に有希は戻ってきて、爆弾の解体に成功した処理班の様にルリに報告してきた。
そしてそのままいつものポジションに座ると読みかけだった本を開く。
ルリ「……」
別に姉を信用していない訳ではないが一応ルリは姉の仕事ぶりを確認しに窓辺へ行く。
行く、と言っても狭い部屋のこと、ものの数秒で辿り着いた。
そこで見たのはあくまでも有希らしい整然とした干し方だった。
でもある一点だけは注意しておいた方がいいのだろう。もしこれからも家事を手伝ってくれる気があるのならば。
そう思い、ルリは読書中の有希の元に引き返すと、姉の手を取って窓辺へと引っ張っていく。
有希はされるがままについて来た。
行く、と言っても狭い部屋のこと、ものの数秒で辿り着いた。
そこで見たのはあくまでも有希らしい整然とした干し方だった。
でもある一点だけは注意しておいた方がいいのだろう。もしこれからも家事を手伝ってくれる気があるのならば。
そう思い、ルリは読書中の有希の元に引き返すと、姉の手を取って窓辺へと引っ張っていく。
有希はされるがままについて来た。
ルリ「有希姉、これなんですが……」
ルリは干してある洗濯物を指差して言う。
有希「……何?」
ルリ「下着類を表に向かって晒すように干すのはやめてください」
有希は他の衣服と同じ様に下着類を干していたのだった。
(念のためにチェックしておいて良かった……)
もし見落としていたらと考えると冷や汗の出るルリだった。
ルリは干してある洗濯物を指差して言う。
有希「……何?」
ルリ「下着類を表に向かって晒すように干すのはやめてください」
有希は他の衣服と同じ様に下着類を干していたのだった。
(念のためにチェックしておいて良かった……)
もし見落としていたらと考えると冷や汗の出るルリだった。
有希「何故?」
ルリ「ええと……ですね」
しかし有希の場合、まずここから理解させなければいけないのだ。
ルリは多少の気恥ずかしさを覚えながらも努めて事務的に有希姉に説明する。
ルリ「ええと……ですね」
しかし有希の場合、まずここから理解させなければいけないのだ。
ルリは多少の気恥ずかしさを覚えながらも努めて事務的に有希姉に説明する。
ルリ「その……こういう物を欲しがる……破廉恥な人もいるんです」
有希「破廉恥……」
普段何事にも動じない有希が何故かショックを受けたようだった。
有希「破廉恥……」
普段何事にも動じない有希が何故かショックを受けたようだった。
ルリ「?……それでですね、盗難被害に遭わない為にこういった物は他の衣類の陰に干すか、
もしくは部屋干しが好ましいです、そうすれば変態さんに目をつけられる事も無いですから」
有希「変態……」
余程ショックだったのか心此処に在らずといった様子の有希。
普段の超然とした雰囲気は影を潜め焦燥感すら漂っている。
勿論はた目からは判別がつかない程の差異なのだが、そこは姉妹であるルリには感じ取れるのだった。
ルリはそんな姉を見て思う、そういった人々のことは有希の理解の範疇を超えているのだろうか。
しかし有希の来歴を考えてみればそれも無理はない。
今こうしてルリやレイと当たり前に暮らしているだけで驚くほどの適応能力とも言える。
もしくは部屋干しが好ましいです、そうすれば変態さんに目をつけられる事も無いですから」
有希「変態……」
余程ショックだったのか心此処に在らずといった様子の有希。
普段の超然とした雰囲気は影を潜め焦燥感すら漂っている。
勿論はた目からは判別がつかない程の差異なのだが、そこは姉妹であるルリには感じ取れるのだった。
ルリはそんな姉を見て思う、そういった人々のことは有希の理解の範疇を超えているのだろうか。
しかし有希の来歴を考えてみればそれも無理はない。
今こうしてルリやレイと当たり前に暮らしているだけで驚くほどの適応能力とも言える。
ルリ「それに、防犯の観点からいっても女性だけの部屋だと思われるのはあまり良くないですから……聞いてますか?」
有希「…………把握した」
有希はそう言うと晒してあった下着を取り込み、手際よく今度は部屋の中に干す。
(これでとりあえずは大丈夫でしょう、有希姉なら同じ間違いは繰り返さないだろうし……)
有希「…………把握した」
有希はそう言うと晒してあった下着を取り込み、手際よく今度は部屋の中に干す。
(これでとりあえずは大丈夫でしょう、有希姉なら同じ間違いは繰り返さないだろうし……)
ルリ「それじゃあちょっと休憩にしますか、お茶淹れますね」
有希は僅かに頷くと、またさっきの場所に戻り本を開く。
ルリはお茶とお茶請けを用意して運ぶと、レイにも声をかけて座卓の前に腰を降ろした。
レイは何も言わず近づいてくると本を読んだままお茶を啜る。
有希も湯呑みを受け取りつつこれまた珍しく自ら口を開いた。
有希は僅かに頷くと、またさっきの場所に戻り本を開く。
ルリはお茶とお茶請けを用意して運ぶと、レイにも声をかけて座卓の前に腰を降ろした。
レイは何も言わず近づいてくると本を読んだままお茶を啜る。
有希も湯呑みを受け取りつつこれまた珍しく自ら口を開いた。
有希「ルリ、先程の問題だが根本的解決の見込める打開案がある」
ルリ「はぁ、先程って洗濯物のことですか?何でしょうか」
有希はごそごそとポケットからチェック柄の布切れのようなものを取り出した。
有希「これを私たちが使用すれば良い」
ルリ「(ブッ!!ゴホッ!ゴホッ!)……そ、それ、男性用の下着じゃないですか!」
有希が目の前で広げて見せた物はいわゆるトランクスと呼ばれる下着だった。
ルリはあまりの予想外のことにむせ返り、お茶を噴出しそうになる。
ルリ「はぁ、先程って洗濯物のことですか?何でしょうか」
有希はごそごそとポケットからチェック柄の布切れのようなものを取り出した。
有希「これを私たちが使用すれば良い」
ルリ「(ブッ!!ゴホッ!ゴホッ!)……そ、それ、男性用の下着じゃないですか!」
有希が目の前で広げて見せた物はいわゆるトランクスと呼ばれる下着だった。
ルリはあまりの予想外のことにむせ返り、お茶を噴出しそうになる。
有希「何か問題?」
ルリ「大有りです!」
有希「何故?これを使用するなら盗難被害、防犯対策双方において懸案事項が消滅する、一挙両得」
ルリ「それはそうですが、だからといって……」
有希「何が不満?ではこちらの密着型ならばどう?」
ルリはさらに出てきたそれを見て心底うんざりした、今度はブリーフ……それも、白。
ルリ「大有りです!」
有希「何故?これを使用するなら盗難被害、防犯対策双方において懸案事項が消滅する、一挙両得」
ルリ「それはそうですが、だからといって……」
有希「何が不満?ではこちらの密着型ならばどう?」
ルリはさらに出てきたそれを見て心底うんざりした、今度はブリーフ……それも、白。
すると今まで黙っていたレイが突然立ち上がり、有希に近づく。
そしてブリーフの方を有希から取り上げた。
そしてブリーフの方を有希から取り上げた。
レイ「有希ちゃん、人の物を勝手に持ち出しちゃ、駄目よ」
ルリ「あんたのかい!」
レイ「これは大切なものなの……」
ルリ「大切って……なんでそんなパンツなんかが大切なんですか……」
ルリは姉たちの頭がとうとう無視できないほど深刻な状況になったのではと不安になってきた。
レイ「だって、これは碇君の(ry」
そこまで言った瞬間レイの口を有希が手で塞ぐ。
ルリ「碇君のって……え、ええええええええ!!?」
ルリはレイがこぼしたその一言で全てを理解した。
そして座ったままの姿勢で手足をバタつかせ、一気に壁際まで後退し姉たちから距離を取った。
ルリ「へ……へんたい……」
ルリ「あんたのかい!」
レイ「これは大切なものなの……」
ルリ「大切って……なんでそんなパンツなんかが大切なんですか……」
ルリは姉たちの頭がとうとう無視できないほど深刻な状況になったのではと不安になってきた。
レイ「だって、これは碇君の(ry」
そこまで言った瞬間レイの口を有希が手で塞ぐ。
ルリ「碇君のって……え、ええええええええ!!?」
ルリはレイがこぼしたその一言で全てを理解した。
そして座ったままの姿勢で手足をバタつかせ、一気に壁際まで後退し姉たちから距離を取った。
ルリ「へ……へんたい……」
有希「……姉さんは注意力散漫、不用意な発言によりルリに事が露見してしまった」
レイ「それを言うなら有希ちゃんがルリにこれを見せなければ何も起きなかったわ」
有希「迂闊……」
ルリ「う、迂闊、じゃないでしょう、一体何考えてるんですか有希姉もレイ姉も」
有希「ちなみに、ルリの為にテンカワアキトの物も用意した……」
ルリ「……本気で怒りますよ」
レイ「それを言うなら有希ちゃんがルリにこれを見せなければ何も起きなかったわ」
有希「迂闊……」
ルリ「う、迂闊、じゃないでしょう、一体何考えてるんですか有希姉もレイ姉も」
有希「ちなみに、ルリの為にテンカワアキトの物も用意した……」
ルリ「……本気で怒りますよ」
ルリは一旦深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとする。
そしてまず何処から問うたら良いのだろうかと思いを巡らす。
そしてまず何処から問うたら良いのだろうかと思いを巡らす。
ルリ「ええとですね……色々言いたいことはあるんですがそれは置いといて、
その二枚は無断で持ち出したものなんですよね?」
ルリはできる限り冷静に姉たちに問う。
すると有希の方が僅かに首肯した。
その二枚は無断で持ち出したものなんですよね?」
ルリはできる限り冷静に姉たちに問う。
すると有希の方が僅かに首肯した。
ルリ「はぁ……まあ了承済みで持ってこられるよりは幾らかマシですが、
それでもそれは窃盗です、法律に抵触します」
とりあえず建前の部分を言っておく。だが姉たちもそんなことは承知している筈だった。
ルリ「で、なんでまたこんなものを取ってこようと思ったんですか?」
それでもそれは窃盗です、法律に抵触します」
とりあえず建前の部分を言っておく。だが姉たちもそんなことは承知している筈だった。
ルリ「で、なんでまたこんなものを取ってこようと思ったんですか?」
そうルリが聞くと有希が立ち上がり、今度は雑誌を持ってきた。
そしてページを開くと、読めということなのだろう、ルリに手渡した。
そこに掲載されている記事を読み、ルリはとりあえず安堵する。内容はよくあるまじないの類だった。
仲を深めたい相手が普段身に着けているものと自分が身に着けているものを交換するというありふれたもの。
だからここに書かれていることを鵜呑みにして実行したというだけであれば、
自分の姉たちが変わった性癖を持っている訳ではないのだ。それはルリが一番危惧していたことだった。
そしてページを開くと、読めということなのだろう、ルリに手渡した。
そこに掲載されている記事を読み、ルリはとりあえず安堵する。内容はよくあるまじないの類だった。
仲を深めたい相手が普段身に着けているものと自分が身に着けているものを交換するというありふれたもの。
だからここに書かれていることを鵜呑みにして実行したというだけであれば、
自分の姉たちが変わった性癖を持っている訳ではないのだ。それはルリが一番危惧していたことだった。
ルリ「……なるほど、これをやってみたわけですね?」
姉二人が頷く。
ルリ「何で下着なんですか?」
レイ「だって、一番体の近くにあるものだから」
ルリ「じゃあ姉さんたちはそれの代わりに何を置いてきたんですか?」
有希「呪術というものは原則として等価交換が条件」
ルリ「え……それじゃあ」
有希「そう、あなたの想像の通り」
レイ「(ポッ////……」
ルリは深い深い溜息を吐き、暗澹たる気分に打ちひしがれる。この人たちには恥じらいというものが無いのだろうか、と。
それと同時に想い人の為にそこまで盲目になってしまう姉たちに何故か苦笑が漏れてしまう自分もいた。
姉二人が頷く。
ルリ「何で下着なんですか?」
レイ「だって、一番体の近くにあるものだから」
ルリ「じゃあ姉さんたちはそれの代わりに何を置いてきたんですか?」
有希「呪術というものは原則として等価交換が条件」
ルリ「え……それじゃあ」
有希「そう、あなたの想像の通り」
レイ「(ポッ////……」
ルリは深い深い溜息を吐き、暗澹たる気分に打ちひしがれる。この人たちには恥じらいというものが無いのだろうか、と。
それと同時に想い人の為にそこまで盲目になってしまう姉たちに何故か苦笑が漏れてしまう自分もいた。
だがそれもつかの間、先程有希が言った言葉を思い出し、ルリは戦慄する。
ルリ「あああの、有希姉?さっきアキトさんのものもあるって言ってましたよね……?」
有希「言った」
ルリ「と、ということは、まさか私のパンツも」
有希「置いてきた、一番使用頻度の高い、くま柄」
有希「言った」
ルリ「と、ということは、まさか私のパンツも」
有希「置いてきた、一番使用頻度の高い、くま柄」
ルリ「…………ぃいやああああぁぁぁぁぁ!!!」
ルリは弾かれた様に立ち上がり、頭を抱えて絶叫したまましばし放心する。その間十秒。
しかしすぐに回復し矢継ぎ早に捲くし立てる。
ルリ「何してくれるんですかぁッ!!?早く!早く回収しに行ってください!」
有希「しかし、その記事によると100日経たなければ効果を発揮しないという」
ルリ「そんなの知りません!言うことを聞かないなら絶交です!姉妹の縁を切りますよ!?」
しかしすぐに回復し矢継ぎ早に捲くし立てる。
ルリ「何してくれるんですかぁッ!!?早く!早く回収しに行ってください!」
有希「しかし、その記事によると100日経たなければ効果を発揮しないという」
ルリ「そんなの知りません!言うことを聞かないなら絶交です!姉妹の縁を切りますよ!?」
そう言うと、さすがに姉たちにもルリが本気であることが伝わったらしく、
レイ「それは……困るわ、有希ちゃんお願い」
有希「了解」
意外にあっさり引き下がる。
レイ「それは……困るわ、有希ちゃんお願い」
有希「了解」
意外にあっさり引き下がる。
その後すぐ有希が回収に向かい記憶の改竄を含めた事後処理にあたった。
もちろんそこは有希の本領発揮であり何の問題も残さなかったが、
ルリは以降一週間、姉たちと口を利くことは無かったという。
もちろんそこは有希の本領発揮であり何の問題も残さなかったが、
ルリは以降一週間、姉たちと口を利くことは無かったという。
ルリ「本っ当に、バカばっか!」