「セカンド その7」(2007/06/10 (日) 00:12:46) の最新版変更点
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#スネ夫サイド
ドクロッグの攻撃を受け、無様にも捕えられた僕はギンガ団のアジトに連行されていた。
相変わらず、腹部が焼けるように痛い。
そのせいか、この先どうなるかなんて考えもしなかった。
「ほら、さっさと来い」
下っ端に先導され、僕は乱暴に奥の部屋へと連れて行かれた。
「コイツか……我々の邪魔をしたのは」
奥の部屋に居たのは、ギンガ団ボスのアカギだった。
僕は痛む腹部を押さえながら、アカギを見据える。
「……なるほど、バッジを六つも持っているのか」
いつの間にか僕のバッジはアカギの手のひらの上に置かれていた。
僕は眉を顰めてそれを見る。
「……少年……スネ夫と言ったか」
アカギはバッジを机に置き、腕を組んで言った。
僕は少し虚ろになった目で相手の表情を伺う。
すると、アカギは唐突に切り出した。
「……少年、君にはギンガ団に入ってもらおう」
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「え……」
いくらなんでも唐突すぎるだろ……常識的に考えて。
大体僕がギンガ団なんかに入るわけないじゃないか。
そんな僕の心中を知ってか知らずか、アカギは続けた。
「君はギンガ団にとって必要な人材だ。恐らく幹部クラスの実力だろうからね」
僕が幹部クラスか……。
少し嬉しいような気もするが、ギンガ団には入りたくなかった。
「嫌だと言ったら?」
とりあえず聞いておく。
「もし君が断ったら……君達の仲間は潰させてもらう。
ギンガ団の戦闘員の数を持ってすれば容易いことだ」
アカギはそっけなく言い放つ。
僕が反応する前に次の言葉が耳に入った。
「……だが……もし、君が私とバトルをして勝つことが出来れば、見逃してやろう」
その言葉を聞いた僕は、心の中でガッツポーズを決めた。
「今の言葉、後悔しないでね」
僕は無言でその場を後にするアカギに着いて行った。
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少し歩いて着いたのは、何も無い閑散とした部屋だった。
「……バトルには最適な部屋だろう?」
そう言うなり、アカギは僕の反対側の方向へと移動する。
僕は一つのモンスターボールを取り出し、ギュッと握り締めた。
「……では始めよう。いけ、マニューラ」
「出て来い、クロバット!」
アカギのポケモンはマニューラ。
かなり部が悪い。
けど、クロバットのスピードなら一撃は与えれる筈……。
「クロバット、怪しい光だ!」
「マニューラ、冷凍パンチ」
だが、僕の予想は見事に外れてしまう。
クロバットが怪しい光を放つ前に、マニューラの拳がクロバットを捕えたのだ。
「レベルの差があるようだな……」
嘲笑混じりにアカギは言う。
僕はそれを無視し、次のボールを放った。
「いけ、ゴウカザル!」
出来れば、ゴウカザルは切り札として最後まで取っておきたかった。
だけど、今は出し惜しみ出来るような状況じゃない。
それは今しがた相手の力量を知った僕が一番良く分かっていた。
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「ゴウカザル、マッハパンチ!」
刹那、ゴウカザルの拳がマニューラの顔面にヒットする。
それを受けたマニューラは虚しく倒れた。
「なるほど、先制技を使って一撃で仕留めるとはな……」
今のところ失っているポケモンは両方一体。
なのに、アカギは完全なる余裕を見せつけていた。
「次は……コイツだ!いけ、ギャラドス」
咆哮を上げながら現れたのはギャラドス。
この広い部屋の中でも、その威圧感はひしひしと伝わってきた。
動揺する僕を見て、アカギは言い放つ。
「もう……君に勝ち目は無いよ」
それから程無くして、僕はバトルに負けた。
僕は結局あのギャラドスを倒せなかったのだ。
何とも言えない無力感が僕を襲う。
「今のバトルで君の力量が把握出来たよ。
君の実力は間違い無く幹部クラスだ。
後で歓迎会をしよう……それまで休んでいてくれ」
アカギはそう言うと、俯く僕を他所に去っていった。
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「なんか変わり映えしないね」
そう漏らす僕の前には、三人の幹部が居た。
今はいわゆる歓迎会の途中なのだ。
「ボス、何でこんな奴を幹部に?
こんな奴にギンガ団の素晴らしさは分からないわよ」
憎々しげな顔をしてそう吐くのは、ギンガ団幹部のジュピター。
以前、僕に負けた事をまだ根に持っているようだった。
「……黙れ。私に逆らう事は許さん」
啜っていた紅茶を置き、一喝するアカギ。
ジュピターはしぶしぶ黙りこくった。
次に喋ったのは、もう一人の女幹部……マーズだった。
「……あなた、本当に強いのかしら?ギンガ団の幹部クラスの実力があるの?」
そう言って、キッと僕を睨む。
僕も負けじと言い返した。
「……じゃあやってみるかい?僕が勝つだろうけどね」
「何ですって……?」
「いい加減にしろ、お前達」
僕達の煽り合いは、またもアカギの一言によって収まった。
「スネ夫は以前にジュピターを倒している……実力は確かだ。お前達はもう戻って良いぞ」
アカギが言い終えると、ジュピターを先頭に三人の幹部が部屋を後にした。
それを見送ったアカギは僕の方を一瞥する。
「最初は慣れないだろうが……じきに慣れてくる筈だ。
これからはギンガ団の為に働いてくれ」
そう言って、部屋を出るアカギ。
僕は傍にあった椅子に座ると、ヤレヤレとばかりに溜息をついた。
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#のび太サイド
「何だって?出木杉の奴が裏切りやがったのか……」
ポケモンセンター内にジャイアンの声が響く。
今、僕達はポケモンセンター内で話をしていたのである。
勿論、スネ夫と出木杉は居ない。
「……スネ夫さんと出木杉さん、二人がギンガ団側についたのね」
静香ちゃんが不安そうな表情をする。
そして、しばしの沈黙。
重い空気をぶち破ったのはジャイアンだった。
「とにかく!この後、俺達はアジトに乗り込む筈なんだ。今からでも行かないか?」
今からって……いくら何でも早すぎやしないか?
僕が反論しようとしたが、先に口を開いたのはドラえもんだった。
「待ってよ!僕達は誰一人としてここのジムバッジを持っていない。
それに……この状態で行くのは無謀すぎる!もっと戦力をアップさせないとダメだ!」
その言葉に頷く僕。
ジャイアンは机を叩きつけ、言い返す。
「こうしている内にもスネ夫は何されてるか分からない!そんな悠長な事言ってられっかよ!
スネ夫は……俺のせいでギンガ団に捕まっちまったんだ……。
だから!この俺が一刻も早く助けに行かなくちゃならねぇんだよ!」
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ドラえもんも負けじと弁論する。
「戦力の足りない今乗り込んでも、返り討ちにされるのがオチだ!
十分な戦力を蓄えてから乗り込むのが最良の選択なんだよ!」
その言葉に、ジャイアンは遂にキレた。
「うるせえ!もしそれが手遅れだったらどうすんだよ?
そうなったらそれこそ終わりだ!」
もう見ていられない。
絶えない口喧嘩を止めさせるべく立ち上がったのは、他でもない……僕だった。
「ドラえもんもジャイアンも落ち着いてよ!
スネ夫がギンガ団に連れ去られたって事は、多分何かに利用する為なんだ。
だとしたら殺される事は無いよ。殺すならあの場でやる筈だし……。
だから、僕はドラえもんの意見に賛成だ。
今は戦力を十分に蓄えてから……満を辞して乗り込むべきだと思うよ」
たちまち辺りが静まった。
「そうだな……確かにのび太の言う通りだ。そうするぜ」
ジャイアンはそう言うと、ポケモンセンターを出ていった。
おそらくジム戦でもやりにいったのだろう。
時計を見ると、丁度九時五十分だった。
幸いまだ寝る時間じゃない。
「じゃあ、僕も行ってくるよ……」
そう言い残して、僕はポケモンセンターを出た。
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僕がジムに着いた頃、丁度ジャイアンがジムから出てきた。
ラムパルドの力押しで余裕だったそうだ。
僕は「行ってくるね」と一言言うと、肌寒い夜風に吹かれながらジムの中へ入っていった。
ジムの中は外とは違って明るい。
けれど、寒いのは変わらなかった。
「え?またチャレンジャーなの?」
奥に居るジムリーダーの女の子が草臥れた様子で言う。
よく見るとミニスカだった。うほっ。
「私、ジムリーダーのスズナ。早速始めましょ!」
さっきの草臥れ様が嘘のようにハイテンションになるジムリーダー、スズナ。
繰り出されたのはユキカブリだった。
「氷タイプ……ならギャロップだ!」
僕が選んだのは炎タイプのギャロップ。
必殺の大文字でユキカブリを焼き尽くす。
「やっぱりユキカブリじゃ無理ね……」
瀕死のユキカブリをボールに戻すスズナ。
そのまま次のボールを取り出す。
「じゃあ次は……この子よ!」
スズナの二番手、チャーレムが現れた。
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「ギャロップ、大文字!」
大の字の形をした炎がチャーレムにヒットする。
「チャーレム、反撃の飛び膝蹴り!」
今度はチャーレムの反撃。
ヨガパワーを備えたチャーレムの攻撃を受け、ギャロップは倒れてしまった。
やはりジムリーダーだけあって強い。
「次はドラピオンだ!」
ついさっき進化したドラピオンを出す。
「まずは毒びしを撒け!」
チャーレムの周囲に毒びしが撒かれる。
それを見たスズナはチッと舌打ちをした。
「早めに決めるわ。飛び膝蹴りをお見舞いしなさい!」
勢い良く仕掛けるチャーレム。
だが、堅い装甲を持つ僕のドラピオンには大して効いていない。
「今だドラピオン、燕返し!」
ドラピオンの尾が、チャーレム目掛け振り下ろされる。
「チャーレム、見切り!」
ギリギリの所で攻撃を避けるチャーレム。
だが、僕の考えはもう固まっていた。
「ドラピオン、剣の舞だ!」
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一度舞ったドラピオンの攻撃力は凄まじい。
見切りを失敗したチャーレムを、燕返しで一撃の下に仕留めた。
「やった!」
ガッツポーズを取って喜ぶ僕を見て、スズナは薄ら笑いを浮かべた。
「これが最後のポケモン……でも負けないわ。出番よ、ユキノオー!」
現れたのは巨大なモリゾー。
ユキカブリの進化系らしき姿をしている。
「相手は毒状態……一気に畳み掛ける!燕返しだ!」
ドラピオンの燕返しで相手のユキノオーは中々のダメージを負った。
その後反撃の吹雪が放たれるも、ドラピオンはギリギリ持ち応えている。
「よし、僕の勝ちだ!トドメの……え?」
最後の指示を出そうとした僕だったが、言葉が詰まってしまった。
ドラピオンは既に倒れていたのだ。
「氷のつぶて……先制技よ」
瀕死のドラピオンを眺めながら、スズナは言う。
そういや、確かそんな技があったっけ。
僕はドラピオンを戻し、次のポケモン……ライチュウを出した。
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「ふうー、やっと勝てたよ」
ジムから出た僕は誰ともなしに呟いた。
結局、敵の切り札ユキノオーは最後に出したライチュウの一撃で沈んだ。
何と言うか、終わってみればあっけない。
僕は一刻も早くこの寒気から逃れる為に、ダッシュでポケモンセンターへ戻っていった。
ポケモンセンターに戻ると、皆はもう寝ていた。
いつの間にかかなりの時間が過ぎていたらしい。
「僕も……寝ようか」
枕を置き、布団の中に入る。
センター内に皆が居るからか、どこか暖かい感じがする。
そう言えば、ここに来るまではずっと一人だったっけ。
道理で妙に安心してしまうわけだ。
今日は、久々に心地良く眠れそうだな……。
皆の手持ち
のび太 ライチュウLv43、ヨルノズクLv41、ギャロップLv42、ドラピオンLv40
ドラえもん ムクホークLv44、ムウマージLv43、ヌオーLv41
静香 エンペルトLv46、ミミロップLv43、ロズレイドLv44、パチリスLv40
ジャイアン ラムパルドLv45、マスキッパLv43
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#スネ夫サイド
ギンガ団に入って一日目の夜が過ぎた。
空はまだ少し夜の面影があり、淡い紫と薄いオレンジとで綺麗に彩られている。
こんな空を見るのは初めてだろうか。
だが、これだけ綺麗な空を見ても僕の気分は晴れなかった。
一つはアカギに負け、ギンガ団に入ってしまった事。
そして、もう一つは……昨日の就寝前に遡る。
昨日の就寝前――
「お、お前は……!」
僕は寝る前に、アカギにある人物と対面させられた。
それも、僕の良く知っている人物。
ソイツの顔は以前と全く変わっていなかったが、どこか違う雰囲気を醸し出していた。
「やあ。まさか君が来るとはね……骨川君」
僕の目の前に居る人物……出木杉が言った。
想像だに出来ない光景に、僕は絶句する。
状況が状況なので、中々考えが纏まらない。
ただ一つ分かる事は、出木杉がギンガ団に加担しているという事――
その後、出木杉はアカギに何かを告げてアジトを出ていった。
聞く所によると、ある任務らしい。
僕は暫くの間壁にもたれかかっていたが、いつの間にか眠っていた。
そして今に至る。
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僕が部屋を出たのは、空が完全に明るくなった頃。
向かうは、組織の食堂。
表向きは普通のビルだが、やはり大きな組織のアジトだけあって設備が凄い。
僕は恐る恐る食堂の扉を開けた。
「ようこそ!幹部様!」
僕が入った瞬間、下っ端達が立ち上がって僕に敬礼する。
「あ、あぁ……」
突然のことで戸惑う僕。
幹部ってこんなに待遇受けるモンなのか?
疑問に思って見ると、他の幹部達もそれなりの待遇を受けていた。
出木杉とアカギは居ない。
「では、皆一緒にいただきます!」
下っ端の一人が大声で言い、各自食べ始める。
今日の朝食はギンガパン、ギンガ汁、ギンガ牛乳らしい。
……とはいっても、一見するとただのパンと味噌汁と牛乳。
何でもギンガつければいいってもんじゃねーぞ!
心の中で悪態をつきながらも、僕はギンガパンを手に取った。
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「ふう、食った食った」
先程悪態をついた事などすっかり忘れ、満足げに呟く僕。
味は意外にも悪くなかった。
「よし……戻るか」
僕がそう言った時、急に一人の下っ端が僕の方へ駆けつけて来た。
「幹部様……ボスがお呼びです」
「ボスだって?」
こんな朝っぱらから何の用だろう。
僕はとりあえずアカギの部屋へと向かった。
「来たな……スネ夫」
暗い部屋のデスクに座っているアカギが僕を見据える。
「朝っぱらから何の用?」
僕が聞くと、アカギは懐から黒い手帳を取り出した。
そしてアカギは言う。
「ボスである私に対して敬語を使わないとは頂けないな。
……まぁそれはともかく、今からお前に任務を言い渡す」
「任務……だって?」
捕えられて次の日から早速任務なのか?
心の中で狼狽する僕を他所に、アカギは話を続ける。
「これを見てみろ」
アカギが懐から手帳を出し、開く。
手帳にはギンガ団ブラックリストと記述されていた。
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「これは……静香ちゃんじゃないか!」
アカギが指さす所には、静香ちゃんの写真と情報が書かれていた。
「今回の任務は、この女を捕える事だ。
今までの数々の任務の障害になっているからな。
……ただ、データによるとかなりの実力者らしい。
幹部のお前が直々に出向く他無いのだ」
僕が静香ちゃんを捕える……だって?
そんな事出来るわけが無い。
でも、もう僕はギンガ団の一員になってしまったんだ。
断ればジャイアン達の命も危うい。
僕はアカギを見据え、言った。
「分かりました、ボス」
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キッサキシティに居る下っ端からの情報によると、静香ちゃんは雪原でトレーニング中。
それも単独行動をしているらしい。
任務を遂行する上で最適な条件だ。
「……行くか」
クロバットに乗り、朝の日差しを受けて飛び立つ。
向かう先はキッサキシティ付近の雪原。
そこで静香ちゃんと戦う事になる筈だ――
「よし……ここら辺かな」
クロバットを戻し、雪原に降り立つ僕。
視界は良くなかったが、何とかやれる状況だった。
僕は耳を澄まし、人の気配を探る。
「……あそこか!」
やがて、僕は前方に静香ちゃんとエンペルトを見つけた。
トレーニングの真っ最中なのだろうか。
……とにかく、もう後戻りは出来ない。
僕は意を決して、雪原の中を進んでいく。
この先どうなるかなんて、考えていなかった。
気がつくと、静香ちゃんの目の前に立っている僕が居た――
皆の手持ち
スネ夫 ゴウカザルLv44、クロバットLv43、ビークインLv43
静香 エンペルトLv47 他不明
出木杉 不明
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