※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。


 日は高く昇り、地表を照らしている。
緑に映えた木々は道を挟んでいた――

「ねえ、何で急に出しっぱなしにしたの?」
スズナに不意にきかれ、ジャイアンは首だけ振り返る。
スズナは並列して歩くココドラを示していた。
「そりゃぁ、ずっとボールの中じゃ可哀相だと思ってな!
他の奴も出していいんだけどな」
すると、スズナは露骨に嫌そうな顔をする。
「先にいっておくけど、リオルだけはやめてよね」
 前の町では、リオルのある収集癖によってひどい目にあった。
スズナはずっとそれを気にかけていたのだ。
「?……別に出してもいいだろ?」
 ジャイアンは昔のことをとっくに忘れたかのようにいう
〔その顔はにやけている〕。
スズナは身振りを強めた。
「絶対、嫌!」「いや、だから何d」「何?そんなに言ってほしいの?」
「べ、別に言ってほしいとかそうじゃ」「ほら、やっぱりわかってて
言ったんじゃない!」
痛い所を突かれ、ジャイアンはしどろもどろする。
 スズナは少し頬を膨らませて先へ進み出た。
「……あ」(そういえば)ジャイアンは思いつくが速く手を伸ばす。
「?何が……ひゃぁぅ!!」
 スズナの素っ頓狂な声が響く。
ジャイアンの手がスズナの髪の束をつかんでいた。
「ちょっと、離しなさ、ひゃっ!ぁ、やめ」
(へん、俺のことこけにしやがって!)「へへ、こうすれば何も言えま……
お、おい暴れるなよ!!」
ジャイアンが叫ぶが、スズナの発狂は止まらなかった。
奇妙な笑い方と共にのけぞるスズナ。
 その時ジャイアンはスズナの足が高く振り上げられていることに気づいた。
(!!……くそ! こっち向きじゃ、見えねえ)
ジャイアンは何とか回り込もうとしたが無理だった。
‘いやいや、グッジョブですぜ、兄貴'
ココドラは丁度いい角度からジャイアンに感謝した。
 そうしている内に、一向は三叉路に踏み出た……



「ねえ、それ何で乗っけてるの?」
のび太は今更ながらにきいた。
「?乗っけちゃ悪いか?」
ハヤトは不思議そうな顔をする。
 その頭には、あの『SOS』を届けたムックルがいた。
ムックルは人のポケモンなので、ボールにはしまえないのだ。
「……いや、別に」
と言うのび太〔内心は笑いを堪えて必死〕。
 常日頃から真顔であるハヤト。
のび太の問いを気に留めた様子はさらさら無かった。
 そうしている内に、三叉路に踏み出していた。

こうして――
(ん、あれ?)
(お、もしや)
(え、ちょっと)
(な、こいつ……)
四人は――
「「「「あっ!!」」」」
 異口同音。
落ち合った――
 次の町へ続く道。
その道の始まりにて。
ゲームは狂い始めた。
誰もが予期せぬ方向へ。



 異常な事態は町へ着いてからも起こった。
久しぶりの再開で力強く抱き合ったジャイアンとのび太
〔大方ジャイアンの締め技だった〕。
二人はそれぞれの仲間に友達を紹介した。
 そして、ポケモンセンターに入ったときだった。
「あ、あなたたち紫色のボールを持っているわね」
突然ジョーイに呼びかけられ、ジャイアンとのび太は頷く。
「あなたたち、お友達が二階で待っているわよ!」
その言葉に二人は顔を見合わせる。
 紫色のボール。
 そう、ゲーム開始時に受け取り、最初のポケモンを手に入れたボール。
それが召集のキーになっているということは――
 ジャイアンとのび太は急いで二階に駆け上がる。

「あ、いっちゃった……」
スズナはそうつぶやき、ジャイアンの背中を見送った。
ふと、ハヤトとスズナの目が合う。
スズナの食い入るような目に、ハヤトは怪訝そうな顔をする。
「何だ?」
ハヤトは耐え切れなくなってきいた。
「ねえ、どうして頭にムックル乗せてるの?」
「関係ないだろ」「うん」「じゃあ何できく?」「何となくよ」
ハヤトは顔を反らした。
 言い合いが嫌になったわけでもない。
ただ、スズナの目線が気に食わなかったのだ。

「やっときたね」 まず二人を迎えた少年。
「よおスネ夫!」 ジャイアンが挨拶する。「やっぱりお前だったか!」
「ああ、それと……」 スネ夫は奥を示す。
 一人のお下げの少女が立っている。
「やあしずk」「しずちゃん!!」
のび太の言葉を切ってジャイアンが再び挨拶しる。
 一瞬無表情だったしずかも、すぐに微笑み返した。



「呼んだのは僕らじゃないんだ」 スネ夫は弁解する。
「僕としずちゃんが来たときにも、紫のボールの所持者として連れてこられた。
 おそらくゲームプレイヤー全員ここにあつまるはずなんだ」
「最初に到着したのはあたしよ。みんなを合わせて四人、来たことになるわ」
「ええと、最初にあったボールは六つだから……」 
ジャイアンは思い出すように言う。
「あと二つ。盗まれたぶんだよ」 のび太が答える。
 ジャイアンがはっとして、にやりとする。
「そうか、盗んだ奴がわかるのか……懲らしめてやんなきゃな!!」 
ジャイアンは腕を鳴らした。
 その時、誰かが昇ってきた。
全員がその人物を見る。
前言の通りなら、ジャイアンはその人物に制裁を加えるはずだったが……
「じゃ、ジャイ子!!」
ジャイアンの愕然とした声が響く。
「お兄ちゃん! 会いたかった!!」
ジャイ子は兄に抱きついた。
(……い、妹を殴るわけにはいかねぇ!)
困るジャイアンの前に更なる人物が登場する。
「やあ、兄さん!!」
その人物の軽快な返事に答えたのは、スネ夫。
「スネキチ!スネキチじゃないか!」
 スネ夫はスネキチに駆け寄った。
「お前なんで、……そういやアメリカから帰国するっていってたっけ」
スネ夫がスネキチの頭を撫でながら
「これで、六人そろったわk……」
 言葉は途切れた。
目の前に登場した人物。それは
 「出木杉!!?」
 それだけでは無かった。出木杉の後ろから彼は姿を現した。
「……ドラえもん?」
のび太は声を掛けた。小さく、しかしはっきりと。
 その姿は確かにドラえもんだった。
――挑戦者、八名――



 のび太、ジャイアン、スネ夫、しずか、ジャイ子、スネツグ、出木杉、そしてドラえもん。
 ゲーム参加者は六人のはず。だが、その場の人数はそれを超越している。
全ての真実を知っているものはまだ、八人の中にはいなかった。
 ――結局、八人が幾ら語り合っても、解決にはいたらなかった。
空が暮れなずむ。燃え盛る日は没し、青白い月が地を照らす。

 この町の名はフスリ。
町の中心には、高い高いビルが聳えていた。
月光を浴びる高層建築物。それはこの町の黒い象徴。

 突然十人分の宿泊予約が入り、ジョーイも驚いただろう。
ジョーイは八人を部屋へ案内した。
 東側に伸びる通路。それを挟む様に十の部屋の扉がある。
のび太がドラえもんに何か耳打ちして、南側の部屋に入る。
ドラえもんがその右隣。
ドラえもんの左に二つ。しずかはそこに入った。
南側の一番右にハヤト。
その相向かいの部屋に、スネ夫がスネツグに別れを告げて入る。
スネツグはスネ夫の右隣。
その隣にジャイアンが入ると、ジャイ子、スズナの順にその側が埋まる。
出木杉がスズナの相向かいに入ると、ジョーイは一息ついて消灯した。
「やれやれ、今日は変な日ね……」
ジョーイは仕事場に戻っていった。

 暫くして、一つ扉が開く。
北側の丁度真ん中の部屋。
そして南側の丁度真ん中からも誰かが出てくる。
最初に出てきた方は驚いた。
「まさか、……そうなのか?」
きかれた方はただ頷く。
「急いだ方がよさそう」
二人は通路の闇に塗れた。



 (フスリ中心公園――メールの通りか)
ジャイアンは走りながら公園を確認した。
(鋼同盟からのメール。それに書いてあった通り来たわけだ。
 まどろっこしいことしやがるぜ)
そう思いながら、ジャイアンはメールを握り締めた。

 鋼同盟からのメカニカルメール。そこに書いてあったのはこうだ。
〈鋼タイプを持っているあなたへ。
 あなたに話すことがあります。
 次の町の中心公園にて、お待ちしております。
 そこで会いましょう。
 他にも集まる方はいます。
 なお、我々は常にあなたのことを見張っています。
 もし誰かに話したら、仲間の命はありません。
 鋼同盟――『鋭羽』より〉

(俺がこのメールを手に入れたのは前の町に入る直前。
 リオルが仲間になる前だ。
 たしかリオルは鋼だが、ゲットする前にメールが来た。
 てことは、この鋼タイプってのはココドラのことか。
 見張られていたのは一日やそこらじゃないな。
 ……しかし鋼タイプ使いにくるメールなら……)
ジャイアンは先を走る姿をじっと見た。
(しずちゃんも何か鋼タイプを持ってるわけか)
 そう、しずかもメールを受け取っていたのだ。
それはあの銭湯で受け取ったメール。
鋼同盟からの召集メールを。
 公園に一人の人物が待っていた。
「待っていたぞ。君たち」
その人物が告げる。
「……あなたは」「!!……お前は!!」
二人の前に立つ人物は頭にムックルを乗せて冷静に立っている。



「確かハヤトだったよな」
ジャイアンが確認する。
 ハヤトはムックルを落とさないよう頷く。
「いかにも。そして、同盟での名は鋭羽だ。
 ポケモンを使って来なかったことはよかった。
 この町でポケモンを出すと少々やっかいだからな。
 うっかり伝え忘れてしまった」
「ということは、メールを渡したのはあなたなのね」
しずかが鋭く問う。
 ハヤトは再び頷く。
「俺の鋼ポケモンはエアームド。
 エアームドにメールを括りつけ、君たちのいる町へ届けた。
 エアームドの嘴は鋭い。括った紐を取るのは容易い。
 さて、君たちを呼んだのは、他でもない」
ハヤトは一瞬間をおく。
「我々への加入をしてもらいたい。
 さあ、もしよければ」「待ってくれ」
ジャイアンが話の腰を折る。
「あんたらの事を教えてくれ。一体なんなんだ。鋼同盟ってのは」
「確かにそうね」しずかが同調する。「まさかわけのわからないまま
連れ込むなんてことないわ」
 ハヤトは面倒そうな顔をするが、すぐに平静を保つ。
「俺が話せる限りだが、話してやろう。
 俺は鋼同盟は各地の優秀な鋼ポケモン使いで構成されている。
 鋼の如く強硬な精神の元で、正義のために武力行使する。
 それが我々だ。秘密裏に働く警察のようなものだな。
 存在は警察でも上層部しか知らない。そしてその方々は我々を認め、
 任務を送ることもある。
 その大方は、表向きには出せない裏の事件の解決だ。
 表には健全さを保っている組織などは、表向きに事件のことをばらしても
 民衆が反発する。
 そこで我々が裏から組織のボスを捕らえ、潰す訳だ」
(警察というより殺し屋のようなものね)
しずかはそう思いながら相槌をうつ。
「そして」ハヤトの話は続く。「我々が数年前に任務を渡され、
 以来梃子摺っている組織がある」



 ハヤトは指を向けた。その方向へ、ジャイアンとしずかの目が向く。
町の中心の大きな黒い建造物だ。
「『フスリの振興』と呼ばれる会社だ。実際この町の振興には欠かせない大会社。
 だがその裏である組織が働いている。それが『ロケット団』」
その言葉に、ジャイアンとしずかはピンとくる。
 ポケモンを持っているものなら誰もが知っている敵。
 ロケット団の名が耳に飛び込んできたのだから。
「ロケット団って、マジかよ」 ジャイアンが思わず口を出す。
「なんだ、名を知っているのか。なら話が速いだろう。
 そう、奴らは悪の組織だ。まるで毒薬のように、見えないところで全てを蝕む。
 フスリの名を借りて、会社を設立した。
 会社の裏で奴らは行動している。
 金儲け、そしてその資金はある研究所に運ばれているそうだ。
 我々の調査で、漸く組織のアジトがここだとわかった。
 しかし信仰者のような民衆が邪魔で会社をつぶすのは難しい。
 下級の警察は鋼同盟を知らないからな。我々を怪しい奴らと決め込んだ。
 おかげで同盟は総帥と四幹部以外全て会社に伝わった。
 警察の上層部が何とか言ってくれればよかったものを……
 おかげで民衆は我々を拒む。
 俺はこの仕事を任されたんだ。四幹部の一人として。
 暫く手詰まりだったが、ある時知らせが飛び込んだ。
 俺はジムリーダーでもあるからな、他のジムからの連絡が来る。
 その連絡によると、凄腕のジム破りが現れたらしい。
 数日もすると他のジムからも連絡が来た。ジム破りなんて滅多にないことだ。
 もしかするとそいつらは仲間なんじゃないか? 俺はふと思いついた。
 俺は自分のところにジム破りが来ることを待った。
 そして、のび太という少年が来た。ジム破りをしにな。
 俺はその少年に無理やり言い訳をして旅に同行した。
 そしてお前らのことを聞き、エアームドを送った。
 もし鋼タイプを使う者がいたらメールを届けてくれ、と命令して。
 それが、お前らのところに届いたメールの正体だ」
 長い話だが、ジャイアンはその意味を理解した。
「俺らが強いから、その、ロケット団を倒すため協力しろってのか」
 ハヤトは頷く。「返事は総帥にすぐ伝える。さあ、返事を」



「論外だ」
ジャイアンはどっかの漫画で書いてあった台詞を使ってみた。
 ハヤトは眉を吊り上げる。「なぜだ?」
「俺らはお前らの同盟に関わってる暇はないんだ。
 速くやらなくちゃならないことがあるんでな」
「あたしもそう。わざわざあなたたちに関わっている暇は無いの」
しずかの辛辣な言葉にハヤトは舌打ちする。
「総帥はお前らを欲している」
「だから何だ?無理やり連れて行くか?」
ジャイアンが問い詰めるが、ハヤトは首を横に振る。
「いや、仕方ない。今はまだ。
 だが、覚えておけ。いつか我々は再びお前らの元に現れる。
 おそらく我々がさらに困窮しているときだ。
 その時は鋼の意思で、お前たちを連れて行く」
そう言うと、ハヤトは公園を去った。
 ジャイアンはしずかと別々の道を通っていった。
一人になりたかったのだ。
 しずかも同じく一人で考えていたかった。
自分が鋼同盟を蹴ったことを。
(あたし、本当はどうしたいのかしら)
しずかは自問していた。
 実はしずかはあることを考えていた。
この世界も悪くない。それに鋼同盟に入れば秘密裏にあらゆることができる。
それはしずかが望んでいたこと。
予想通り、鋼同盟の存在は大きかった。
そして、入るのか……



数分前――
 スズナは窓を覗いた。
あるポケモンの羽ばたきが聞こえたのだ。
そこにいたのはドンカラス、それに乗った男。
そして、
「あれは、武の妹じゃない」
ジャイ子がそこにいた。
ドンカラスに乗った男と話している。
 男の名はアカギ。
スズナはその風貌を見て、前にジャイアンが話していた『悪い奴』を思い出した。
「そうだ、武の町を襲った『悪い奴』!」
それはジャイアンが旅の途中でごまかしに使ったウソだった。
 スズナは急いで階下に降りた。