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その場にいた全てのものが、その声のする方向に注目する。
そこから現れたのは、紛れもなくあの少年だった。

「で、出木杉……」

ドラえもん達の脳裏に最悪の想像が巡る。
だが、その想像を一番最初に口にしたのはドラえもんではなかった。

「ま、まさか……のび太さんが負けたというの……」

そう、この場で最もショックを受けていたのは野比しずか。
この計画はのび太の心身の成長を促し、彼が出木杉を越えるために仕立てた舞台なのだ。
だが現れたのは倒されるべき少年、出木杉。
「こ、答えなさい! のび太さんはどうなったのっ!」
出木杉はゆっくりと歩を進めると、しずかの前で立ち止まった。
「君が未来のしずかちゃんか……のび太と結婚するという未来の」
「答えろと言っているのよ!!」
出木杉は悲しげな瞳でしずかを見つめる。
だが、今は悲観している時ではない。
「以前のび太君がドラえもんから聞いた事を僕に聞かせてくれた。未来は確定されたものではなく、変わるものだと……」
「な、何を……」
「まだ僕にもチャンスがあるということさ!」
出木杉がそう叫ぶと、手に持ったモンスターボールを眼前に構えた。
「さあ、戦ってもらおう……この僕と!」



出木杉の思わぬ挑戦に、しずかは憤怒の視線で対抗する。
「……アンタの顔を見てるとヘドが出るわ」
そう、しずかの中では悪い想い出しか残っていないのだ。
そんな視線を受けながらも、怯むことなく出木杉は言い返す。
「しかし、それはあくまで君の記憶だ。現在のしずかちゃんの記憶じゃない!」
その言葉に、しずかが嘲るような笑みを返した。
彼の考えている事がわかったのだ。
「そう、そうなの……ふふふ、はははははははっ!」
しずかは人差し指を立て、ビシッと出木杉を指差した。
「現在のしずかに取り入って、歴史の流れを変えようってつもりね、なんて浅はかなの!」
しずかは刺すような視線を出木杉に浴びせかける。
「貴方のその性癖は治らないわよ、未来のカウンセラーがそう言っていたもの」
静観していたドラミが顔色を変える。
「しずかさん、そこから先は言ってはだめっ……」
だが、しずかの言葉は止まらない。

「貴方は未来で性犯罪を犯し、懲役をくらうのよ!」

全員がその発言に耳を疑った。
「ま、まさか……あの優等生の出木杉の野郎が……」
ジャイアンがフラフラと崩れ落ちる。
なんだかんだいって、彼も出木杉には一目おいていたのだ。



「……くっ!」
ドラえもんが顔を背ける。

実はドラえもん自身も知っていたのだ。
のび太の未来は定期的にチェックしている。それが本来の役目だからだ。
ひょいとした偶然でジャイ子と結婚する未来もあれば、なんとアイドルの星野スミレと結ばれるという未来もあった。
だがそんな未来もしばらくすると、結局はしずかとの結婚に落ち着くのだ。
人の未来とはそう簡単に変わるものではない。

それは出木杉の未来にも言えることだった。
彼の未来は差異はあれど、いつも行く末は性犯罪者になる。
それは簡単には変えられない、根本的な精神の問題だったのだ。
それは法廷での精神鑑定でも立証されている。
彼の性犯罪者としての基礎はすでに完成してしまっているのだ。
だから今回のように枷が外れると容易く道を踏み外す。

「だから貴方がいくら頑張ろうと、それは決して報われることはないのよっ!」
しずかは全てをぶちまけると、勝利を確信したかのように高らかに笑った。
だが衝撃の事実を聞かされたはずの出木杉は、笑顔だった。
「そうか、それは参考になったよ」
「な……」
「今までの僕はその事実を知らなかった。だが今はそれを知り、対処する準備もできる」



この事実を知った出木杉は、もう過ちを犯さないように意識して行動することができる。
「後は僕の努力次第……努力すれば、未来は変わるというわけさ」
ギリギリと歯ぎしりをするしずか。
そんなしずかを前に、出木杉はボールを構える。
「捨てたボールを拾うんだ。いくらダークルギアといえども、僕相手に1体で勝てると思わないことだね」
しずかはボールを1つ拾うと、それを構えた。
「他のポケモンは普通のポケモンだけど、ルギアとこれだけは別物なのよ」
ボールを拾うことはしずかのプライドを幾分か傷付けたが、出木杉の所有するポケモンは強力だ。
保険はかけておいたほうがいい。
「後悔することね……」
「ふん、後悔だって?」
そう言い返す出木杉の顔には、何かの覚悟が込められているかのようだった。
そんな出木杉の顔を見て、ドラえもんは不思議な感触を受けていた。
『あの顔、どこかで……』
人間があんな顔つきになる瞬間に、何度か立ち会っているようなそんな気がしたのだ。

出木杉君、君は……

次の瞬間、相対する二人はモンスターボールを同時に投げた。



「出てきなさい、サンダー!」
しずかが繰り出したのは伝説の鳥ポケモン、サンダー。
その体は禍々しいオーラで包まれている。
そして出木杉のポケモンは……
「その速さ、そしてクレバーな戦いを見せてやるんだッ!」
出木杉の声と共に現れたポケモンはジュカインだ。
「ジュカイン……伝説ポケモン達はどうしたのかしら?」
しずかが嘲るように笑みを浮かべる。
大方、こちらがのび太との対戦で疲弊している為の苦肉の策だとでも思っているのだろう。
だが、それは違う。
しずかは余裕の表情のまま、手を天にかざす。
「サンダー、ダークウェザー!」
輝く羽を羽ばたかせながらサンダーから発せられた闇のオーラが天に延び、辺りが闇に染まっていく。
「これでバトルフィールドは闇に包まれたわ!」
「まずは天候系の技で機先を制しようというのか……だが、それはミスだよ」
出木杉のジュカインは毒毒を使い、サンダーに猛毒を浴びせる。
その直後、サンダーは毒によるダメージを受け、ジュカインは天から降り注ぐ光に焼かれてダメージを受けてしまう。
「猛毒と天候ダメージ、互いにダメージは受けるがターン数をかけるほど僕が有利になるわけだ」



「くっ……まさかいきなり攻撃をしかけてくるとは」
サンダーのダーク技を食らえば、ジュカインの大ダメージは必至だ。
だからこそ、初ターンは守るなり見切るなりして様子をみてくると思ったのだ。
『となると、次はやはり……』
続けて繰り出されたサンダーのダークラッシュはジュカインに見切られ、かわされてしまう。
互いに毒と天候のダメージを受けるが、こちらのほうがやや被ダメージが多い。
「ちっ、このままでは……」
「舌打ちとは美しくないね、しずかちゃん」
今度は出木杉が余裕の笑みを浮かべている。

『やはり秀才、計算しつくされている……しかし!』
そう、次はかわせない。
見切りは連続して出すと成功率が下がる技だ。
「次はかわせないわよ、ダークサンダー!」
サンダーの雷は確実にジュカインに直撃する、はずだった。
だが黒煙の中から現れたのは、体を反らしたジュカインと膝をついた出木杉。
「ふう、危ない危ない」
「ま、まさか……見切りを発動させたというの?」
毒のダメージで苦しむサンダーを確認しながら、しずかが歯噛みする。
クレバーな出木杉からは考えられない選択だ。
「随分危ない橋を渡るじゃない、あなたらしくないわね」



出木杉は立ち上がり、服についたホコリをはたき落とす。
「それにしても、猛毒の後はひたすらターン稼ぎ。中々エグい戦い方ね」
しずかの問いに出木杉はニヤリと笑う。
「そりゃそうさ、このジュカインの名前は「スネオ」だからね」
「スネ夫……だって?」
その場にいる全員が唖然とした。
全てを敵対視していたあの出木杉が、かつての友達の名を冠したポケモンを使っているのだから。
「コイツは僕がみんなと、そう……みんなと冒険したような気分になるためのポケモンだったのさ」

ドラえもん達は今まで数々の大冒険を繰り広げてきた。
だが彼は、いつもその輪に入りそびれている。

誘われなかったからなのか、それとも都合が合わないのか。
理由などどうでもいい。

冒険を終え、自慢げにそれを語るのび太やジャイアン達。
出木杉は自分もそんな冒険を「彼らと」してみたかったのだ。

「仲間外れにされた心の隙間を埋めたポケモンってことかしら?」
しずかは思わず吹き出した。
この少年はそんな思いで日々を生活していたのだ。
いくら頭が良くても、容姿端麗でも、それではあまりにも惨めすぎる少年時代だ。



「いい笑い話を聞かせてもらったわ。じゃあその気持ち悪い思い出と共に、そのジュカインを葬ってあげる」
しずかのサンダーのダークラッシュがジュカインにヒットし、その体力を奪う。
ジュカインはよろよろと崩れ落ち、ボールに戻っていった。
「はい、まずは一匹……」
だが、サンダーも毒毒によるダメージを受けてかなり弱ってきている上に、天候も元に戻ってしまった。
出木杉は間髪いれずに次のポケモンを出す。
「その巨大な青き身体で敵を打ち砕け、ドラえもんっ!!」
現れたのは丸い巨体に頑丈な甲羅を備えたポケモン、カメックス。
「カメックス……水ポケモンだけど……」
しずかのサンダーはダークポケモン。
全ての通常ポケモンに効果抜群なので、相性は受けのみを気を付ければいい。
「とりあえず、その鈍重なポケモンなど動くことすら許さないわ!」
しずかの命令でサンダーはダークサンダーを撃とうとする。
しかし、そんなしずかに対し出木杉も無策ではない。
「カメックス、ねこだましだ」
サンダーが技を放つより早く、カメックスが走った。

パァン!

ねこだましの音が響き、サンダーは思わず怯んでしまう。



動けないサンダーをさらに猛毒が襲う。
かなりのダメージが蓄積されている……このままでは後3ターンももたない。
「さすが出木杉さん、一筋縄ではいかないわね」
しずかが苦虫を噛み潰したような顔をしながら賞賛する。
だが、その心中は想像を絶するものだろう。
「さあしずかちゃん。僕は次のターン守らせてもらうよ」
出木杉は更なるターン稼ぎをすることを宣言する。
このまま流されては、サンダーは間違いなくやられてしまうだろう。
『ここは猛毒の蓄積をリセットするためにダークルギアと……』
ターン事に増加する猛毒のダメージをリセットするためにポケモンを交代するのは基本戦術だ。
しずかは懐のボールに手をかける。

だが、何かおかしい。

『まるでダークルギアを誘っているようだわ……』
しずかは一度手を戻すと、再び懐のボールに手をかけた。
「!!」
出木杉の口の端がわずかだが上がったのをしずかは見逃さなかった。
『やはり、これは罠か!』
どういう戦術かは分からないが、出木杉は確かにダークルギアを出されるのを望んでいるようだ。
「ふふ、ふ……はははははは!」
しずかが突然高らかに笑いだした。



「何を笑っているんだい、しずかちゃん」
「貴方の浅はかな考えを読みきった事、そして今から絶望する貴方の顔を想像して笑っていたのよ!」
しずかはそう言うと、ポケットに手をいれた。
ポケットから引き抜かれた手に持たれていた小さな瓶を見て出木杉の顔から余裕が消えた。
「ま、まさか……」
「そう、これは……かいふくのくすりよ!」
高らかに叫んだしずかは瓶の蓋を開け、サンダーに液体を振りかける。
サンダーの顔にみるみる生気が蘇り、その羽ばたきも力強さを取り戻した。
「ダークルギアを引っ張りだそうと何やら浅知恵を巡らせていたようだけど、甘かったわね!」
出木杉がガクリと膝を付く。
「分かって……いたのか」
「所詮は子供ね、簡単に表情が読めるわ。フフフフ」
出木杉は声を震わせながらも、まだ眼光は鋭いままだ。
「だが、かいふくのくすりを消費させただけでも……」
「消費させた?消費させたですって?」
しずかは出木杉の儚い努力の功績すら打ち砕く事実を突き付ける。
両手をポケットに入れ、しずかが取り出したもの。

それはさっきと同じ瓶、かいふくのくすりが両手合わせて4本。

「ふふ、同じ事をあと何回やる気かしら?」



その場にいた全員が凍りつく。
ダークサンダーの後にはダークルギアが控えており、しかも回復の薬が4本。
こちらは道具を使えないが、しずかは道具を使えるのだ。

「ダメだよ、勝てやしない……」
スネ夫が放心状態で呟く。
それは全員同じ気持ちだった。

だが。

「それを待ってたんだ」
片膝を付いたままの出木杉が足元の石を拾い、しずかに向かって投げつけた。
「きゃっ……」
不意の投石にバランスを崩したしずかは、瓶を持ったまま床に倒れこむ。
辺りの床は自らのダークルギアが放った攻撃により大小の石が散乱している。
『受け身を……っ!』
とっさにそう判断したしずかは、石のない安全な場所に手をついた。

ガシャン

しずかが受け身を取るために手放した4本の回復の薬、そしてまだポケットに隠していた予備の回復の薬全てが砕け、中の液体を散乱させた。
「まだポケットに隠していたとは姑息な事をするね、しずかちゃん」
会心の笑みを浮かべる出木杉。
「あ、あぁ……あああぁぁぁーーっ!!」
しずかの絶叫が回廊に響き渡った。
「まずは道具による戦力差を埋める」、全ては出木杉の描いたシナリオだったのだ。



「ガキが……手加減していればいい気になりやがってぇぇぇぇっっ!!」
さっきまで余裕を見せていたしずかの姿は、今や憤怒に狂う女となっていた。
「殺シテヤル、殺シテヤル……」
しずかは足元に転がっているモンスターボールを拾う。
「コイツは……ちっ、役立たずか!」
しずかは先のジャイアン&スネ夫戦で戦闘不能になったブーバーンのボールを投げ捨てると、別のボールを拾う。
「これは大丈夫か……出てきな!」
しずかがボールを投げると、そこからは曲面で構成された奇妙なポケモンが現れた。
しずかがシングルバトルの理を破ったにも関わらず、出木杉はそれを止めようとも非難しようともしない。
まるでしずかがそう動くことが分かっていたかのような落ち着き方だ。
「なりふり構わなくなってきたね、しずかちゃん」
「うるさい!さっさと死になよっ!」
そんなしずかの暴言も意に介さずといった感じで、出木杉は新たなポケモンを繰り出した。
「猛る炎の意思、圧倒的火力、顕現しろ……ジャイアンっっ!」
現れたのは背中から炎を吹き出している大型の獣、バクフーンだ。



「次はタケシさんの名を付けたポケモンなの、アハハハッ!寂しい子!」
確かに激情的で乱暴そうなところはバクフーンの印象と似ているのかもしれない。
だが、そんな感傷や思い出で選ばれたポケモンでは……
「特に耐久性に優れたポケモンでもない……襷で耐えて捨て身の攻撃といったところかしら?」
余裕を取り戻し、そう考えるしずかに出木杉が口を挟む。
「それは少し甘いんじゃないか?」
しずかの予想に反し、バクフーンがサンダーより先に動いた。
「最速バクフーンの素早さを甘く見たな!」
バクフーンはその見た目に反してかなり素早さが高い。
ジャイアンというNNも、しずかに鈍重さを錯覚させる心理的トラップだったのだ。
「ジャイアーーン、フレアァドライブゥッ!!」
バクフーンの身体が炎に包まれる。
そしてすさまじい破壊力の突進をサンダーにぶちかました。
サンダーは金切り声を上げながら弾き飛ばされ、壁面に激突する。
「くうっ、反撃のダークサンダーよ!」
だが、しずかの命令にも反応しないサンダー。
「早くなさい、サンダー!」
「無駄だよ、しずかちゃん。サンダーはひるんで動けないのさ」
バクフーンの胸には光輝く王者の印が付けられていた。



これでサンダーもかなりのダメージを受けたはずだ。
後はカメックスのハイドロポンプでトドメを刺すだけ。

『ここで畳み掛けないと、僕は負ける』

数の優位を保ったままダークルギアを引きずりださない限り、出木杉に勝ち目はない。
だが、そんな出木杉の計算を狂わせる要因がしずかの手の内にはあったのだ。
「まぁ、構わないわ。でんじは」
もう1体のポケモンから電撃が発射され、カメックスに直撃する。
電磁波を受けたカメックスは麻痺してしまい、ハイドロポンプを発射できなくなってしまった。
「ちっ、想定外の事態に……」
出木杉は舌うちをするが、次のターンに先に動けるのはバクフーンだ。
まだこちらの流れで戦いは進んでいる。
「ジャイアン、トドメのフレア……」

「遅いわね」

不意にバクフーンの前に現れたのはさっきカメックスに電磁波を食らわせたしずかの2体目のポケモンだ。
「そんな、なぜこうも速く動けるっ!」
出木杉がそう叫ぶが、その理由はすぐに判明した。
「トゲキッス、しんそく!」
「しまったあああっっ!」
トゲキッスと呼ばれたポケモンは、目にも止まらぬ踏み込みでバクフーンに体当たりを食らわせる。



先のフレアドライブで少なからず反動ダメージを受けていたバクフーンはその先制技の一撃を受けて戦闘不能にされてしまう。
「くっ、ドラえもん……」
「遅いわ!」
カメックスの名を呼んだ出木杉だったが、ただでさえ遅いカメックスが麻痺しているのだ、満足に動けるわけもない。
「ダークサンダー!」
サンダーから放たれた闇の雷がカメックスに直撃する。
効果抜群のダーク技を食らったカメックスだが、かろうじて体力を残している。
「は、ハイドロポンプッ!」
出木杉にとって幸運だったのは、ダークサンダーを受けたことにより激流の特性が発揮された事だろう。
破壊力が増したハイドロポンプにより、サンダーがついにその羽ばたきを止め、地に身体を横たえた。

だが、状況は芳しくない。
むしろ悪い方向に向かっている。

「あらあら、サンダーも落ちちゃったわね……」
しずかが邪悪な笑みを浮かべる。

ついにアイツが来るのだ。

『だがこちらの手持ちは瀕死のカメックスと、この手の中のポケモンだけ……』
2体ではアイツには勝てない。
アイツ……ダークルギアには範囲攻撃のダークストームがある。
トゲキッスというあのポケモンの神速も脅威だ。



しずかはゆっくりとした動作でボールを取り出すと、それを放り投げた。

「姿を見せなさい、ダークルギア……」

闇のオーラを纏った巨体が宙を染める。
自我を抑えられ、怒りのみが感じられるダークルギアの感情は破壊衝動となってその力を強くしているのだ。
「くっ……なんという……」
辺りを支配する重苦しい風に出木杉は必死で耐える。
ダークルギアを眼前にした瞬間頭をよぎった事。

勝算はなくなった。

だが、出木杉は最初から薄々と気づいていたのだ。
元々勝算などほとんどなかったことに……
『やはり、最初に決意したようにシナリオを進めるしかないか』
出木杉は最後のモンスターボールを構えた。
「僕の最後のポケモンはこれさ、しずかちゃん!」
光と共に現れたのはメガニウム。
その優しい眼差しはしずかにそっくりだと思い、このポケモンを選んだのだ。
「私の名前も使ってたのね。気持ち悪い」
しずかがそう吐き捨てる。
出木杉は膝を付くとゆっくり呼吸を整え、そして眼前の敵を見据えた。

『これが、ラストターンだ!』