スネ夫はそう考えながら、ウバメの森へのゲートへと足を伸ばす。
その時――

「よおスネ夫!」
ゲートの前にジャイアンが現れた。
確かに原作では、ここでライバルとの戦いがあるが、偶然とは怖いものである。
「や、やあジャイアン」
「おう、久しぶりだなあ。
早速だが、ポケモンバトル や ら な い か

……っと思ったが、また今度にしといてやろう」
スネ夫は安堵した。レディアン一匹では、ジャイアンのマグマラシにはかなわな
いだろう。
そういう意味では、ジャイアンの気まぐれに感謝した。
「ジャイアンは何をしているんだい?」
「俺様は、さっきからずっとカモネギを追っかけてるんだが、全然捕まらないん
だ。
そうだ! スネ夫、お前手伝え!」
「えー」
「お、なんだ?
 や り た い の か」



「分かったよ……。まあどうせやろうとは思ってたけどさ」
「よし、決まりだ!
ジャイアン探検隊、行くぞー!」
「オー」
「声が小さ~い! 甘ったれんな!」
ポカン☆
「お、オー!」
「ガハハハハハハ!」
この世界でも力に負けるスネ夫。
スネ夫の不幸は続く。
(え、続くの!?)
「歩くのが遅いぞ! シャキッとしろ!」
ポカン☆
(もう帰りたいよママー!)

そしてウバメの森へ――



「あ、カモネギいたよ」
「よーし、スネ夫。こっちまで連れてこい!」
「はいはい」
スネ夫は渋々カモネギを追い掛ける。
金銀と同じなら、回り込むようにすれば追い詰められる筈だ。

それからおよそ一時間後――

最後はあっさりジャイアンに捕まったカモネギ。
しかし、そこに至るまでにかなりの時間と体力を要した。
更にスネ夫は、最後に美味しいところを頂いたジャイアンの武勇伝を聞かされる
羽目になり、それは疲れた身体に追い討ちをかけるようなものであった。
「いやー、俺様の手の動きが素晴らしかったな!
ガハハハハ!」
「なんてったって、エースで4番のこのジャイアン様だからな!
流石俺様、カモネギを捕まえる位、何とも無いぜ!」



ジャイアンの武勇伝は更に続いた。
「俺様はガキ大将だからな、これ位の事は当たり前にやってのけるのだ!」
「俺様は天下の大歌手、そこら辺の凡人なんて目じゃないぜ!
ところで、俺様はコガネシティに着いたら、ジャイアンリサイタルを開く事にし
た。
という訳で、スネ夫にはこれを配ってもらう。
明日までに全部配れよ!」

「だが断… 「え? 何か言ったか?
因みにもし、もしも断るなんて言ったら、タダじゃ済まされないかもな。
まあ断るような奴はこの世に一人もいないがな!
ガハハハハ!」

スネ夫は泣いた。心の中で自分の不幸を嘆き悲しんだ。
大体、ジャイアン武勇伝の後半は全く無関係の話である。
それでも、スネ夫の顔に塩水が流れる事は無かった。
スネ夫はこの冒険を通して、『堪える』を覚えたのだ。
そう、スネ夫が『リベンジ』を覚えるまでこの冒険は続く。
続くったら、続く。
To Be Continue……

ここで一句

勝つまでは
 耐えてみせよう
  糞ゴリラ byスネ夫



この日はスネ夫が、
『ジャイアンに勝つ!』 という意志が明確になった歴史の分岐点として、末永く
語り継がれる事になったとかならないとか。


とまあ、スネ夫が心に固く誓いを立てている間に、ジャイアンの武勇伝は終了し
ていた。
そして二人は、とりあえずウバメの森を出て、カモネギを返しに行ってお礼を貰
いに行くことにした。

ヒワダタウン、スミ職人の小屋にて――

「ごめんください。カモネギを連れて来ました」
「おお、カモネギを無事連れてきてくれたか。
ありがとよ」
「いえいえ、とんでもない」
「よし、約束のお礼だ。受け取れい」
「あの~、手伝ってくれた奴が一人いるんですが、
そいつの分も貰えますか?」
「う~む、しょうがないなあ。特別だぞ」
「ありがとうございます。では失礼します」
「うむ、冒険頑張れよ」
「はい」

こうして、スミ職人の小屋を出た。



こうして、スミ職人の小屋を出た。
ジャイアンは、ヒワダタウンに着いた時に、
「俺様はヤドンの井戸でポケモンを鍛えるから、
スネ夫、お前がお礼を貰ってこい」
と言ったっきりどこかに行ってしまった。

相変わらず理不尽である。
しかし、ジャイアンはスネ夫にポケモンセンターに寄る事を許可しなかったので

スネ夫には反抗する手だてが無かったのだ。
という訳で、スネ夫が代わりに『秘伝マシン01』を受け取ったのである。


それから暫くして、ジャイアンがスネ夫の下に駆け寄ってきた。
「おお、これが秘伝マシンか!
じゃ、早速俺様はコガネシティに行くぜ。
スネ夫も早めに来いよ」
そう言ってジャイアンは、秘伝マシンだけ受け取って、
さっさとウバメの森に行ってしまった。

(バカな奴だ。
お礼は秘伝マシンだけじゃ無くて、『木炭』もセットで貰えたのにな。
これは後で売りさばいておこう…)

スネ夫はそこまで考えた後、
ジャイアンから解放されたという事で、今までの疲れがどっと出てきたのを感じ
た。
「今日はゆっくり休むか」
そう呟いて、フラフラとした足取りでスネ夫はポケモンセンターに向かっていっ
た。
そして日は沈む――



きゃあああ! スネ夫さんのエッチ!



……なんだ、夢か。

静香の一日は史上かつて無い、すこぶる不快な目覚めから始まった。
ここはヒワダタウン、ポケモンセンター。
昨日の夕方頃に、ヒワダタウンに到着していた静香は、きっちりジム戦を終えて
から眠りについたのであった。
しかし今朝、何故かこんな夢を見てしまったのである。
いや、見ただけならまだいい。
問題なのは、夢の内容を完全に記憶したまま目覚めてしまった事だ。

ああ、思い出したくも無い。こんな夢なんかは忘れて、早く先に進んでしまおう。

そう考えた静香は、いそいそとポケモンセンターを出て、ウバメの森へ向かおう
とする。
しかし、傷薬が切れかかっていたのを思い出して、ヒワダタウンのフレンドリー
ショップへと足を運んでいった。

「あっ、静香ちゃん」
「きゃあああああ!」

しかしフレンドリーショップには、今一番会いたくなかった“彼”がいた。
“彼”は金目の物を売りにきていただけなのだが、今の静香はいらぬ推測をして
しまう。

(ま、まさか待ち伏せ?
私に何の用があるっていうの!?)

「あ、やっぱり静香ちゃんじゃないか。丁度良かった」



(な、何なの!?
まさかあれは正夢だったの!?)

「静香ちゃんに見せたいものがあるんだ!」
そう言って彼は近付いてくる。
「いやああああ! 近寄らないで!」
露骨な拒否反応を起こし、ヒステリックになる静香と、その理由が分からない彼
、その名はスネ夫。
短い間だが、混沌とした時間が流れる。
「ん? どうしたんだい?」
喋りながら、一歩一歩さらに接近してくるスネ夫。
「いや、やめてえええええ!」
「そんなに嫌なの、これ?」
静香の異変には気付かず、スネ夫は静香の目の前にまでやって来た。
「やめて、来ないで見せないで!
思い出したくもない!」
必死に拒絶する静香。
しかしスネ夫にその意志は通じない。
「まあ、確かに思い出したくは無いだろうね。
でも僕も仕方ないんだよ」

苦悶の表情で、スネ夫がある物を出す。

「いやああああああ!
もう思い出したくも無いって言ってるじゃないいいいい!


…って、何これ?」
キョトンとした顔でスネ夫を見る静香。

「ジャイアンリサイタルのチラシだよ。
昨日ジャイアンに押し付けられたんだ」



ジャイアンリサイタル、確かに思い出したくは無い。
しかし静香は、何故だか心の底からホッとしていた。

その後、静香はスネ夫から事の一部始終を聞かされるが、
一通り話を聞き終わる頃には、哀れな運命に立たされているスネ夫を気遣う余裕
まで出てきていた。
そして静香は、最後に別れを告げようとする。
「まあ、スネ夫さんも大変ね。
けど頑張ってね~、応援してるわよ~。
じゃ、私はもう行くわね」
「待って静香ちゃん!」
去ろうとした静香を、スネ夫が腕を掴んで引き留める。

「これ、静香ちゃんも受け取ってよ」

「それは嫌よ」
肝心の事は即答で拒否する静香。
しかしスネ夫も食い下がる。
「そこをなんとか、お願いだよ!」
スネ夫の必死の呼び掛けが続く。
静香にはそれが段々鬱陶しく聞こえてくる。
「嫌って言ってるじゃない!
大体いつまで触ってるつもりなの!
この変態! ろくでなし!」

結局最後は力技と言わんばかりに、スネ夫の手を強引に振り切った静香は、全速
力で遠くに走っていった。
(あれは流石に言い過ぎだったかしら? 今度会ったら一応謝っておかないと。
そういえば私…、なんかこの世界に来てから、走ってばっかりね……)



一方のスネ夫は、かなりの暴言を吐き捨てられた上に、変態呼ばわりまでされて
しまったが故に、
猛烈にショックを受けていた。

そこまで酷い事はしていないハズなのに、何故僕はあそこまで言われなければい
けないんだ……、
と心当たりが思い浮かばないスネ夫は、とにかく自問を繰り返す。
しかし、スネ夫には答えを出すことは出来ない。

ネガティブな思考ばかりが先回りしていき、軽い鬱状態にまでなっている。
彼の精神状態は、ジャイアン、静香と立て続けに虐げられた事と旅の疲れとが重
なり、限界に達してしまっていた。

「駄目だ、もう死にたい…」

スネ夫の『生』に対する希望は、瞬く間にしぼんでいくのであった……


――――――――――

▼現在の進行状況

ジャイアン…コガネシティに到着済み
スネ夫…ヒワダタウンで停滞
のび太…繋がりの洞窟に二回目の挑戦
ドラえもん…のび太との二人旅
静香…ウバメの森を攻略中
出木杉…キキョウシティからヒワダタウンの間。詳細不明



その頃、コガネシティ。

誰よりも早く進んでいるジャイアンは、この街をスミからスミまで歩きまくって
いた。

まず初めは、ポケモンコネクションセンター。
水晶版にあったポケモンコミュニケーションセンターが、更にリニューアルされ
たようである。
新しい機械も沢山追加されている。通称PCC。

次にジャイアンが目を奪われたのは、ラジオ・テレビ塔。
金銀時代からあった、ラジオ塔が再編された物らしい。
ただ、ラジオ塔からテレビ塔へと改名した時に、昔からのポケモンファンが猛反
発して、ラジオ塔へ名称を戻す運動を行ったそうだ。
その結果、テレビ塔と呼ばれる筈だった新しい建物は、ラジオ・テレビ塔という
名称に変わる事になり、ラジオ塔でも十分通じるという。

他にも、品揃えがガラリと変わったコガネデパートや、独特の雰囲気を持ってい
る地下通路がある。
ジャイアンはそれらの場所を、かなり時間をかけて歩き回ったのだ。

そして最後に訪れたのが、コガネジムである。
「明日はジャイアンリサイタルだからな。
今日の内にジム戦を終わらせて、明日は朝からリハーサルだ!」

やけに大声な独り言で気合いを入れたジャイアンは、ジムの中へと入っていった。



コガネジム。何かいい匂いがする。

ジャイアンの率直な感想だ。
これじゃいかんと、心の中で気合いを入れ直したジャイアンは、大声で、こう叫
んだ。

「俺はジャイアン! ジム戦をしにきた!
ジムリーダーはどこだー!」
「あー、うるさいなー。
勝負ならしたげるから、デカい声出さんといて」
そう言って、耳を塞ぐようにしながらやって来たのは、コガネシティジムリーダ
ー、アカネ。
プレイヤーからも大人気で、クイズ・ペンタゴン(wiki【2】参照)でも大活躍
の、マルチタレントである。

「よし、分かった。とにかく、早く始めよう!」

しっかり声のボリュームを落として話すジャイアン。
彼にしては聞き分けがいい。
「そやな。面倒な話は抜きでええよな?
それじゃ、始めよか」
「よし、始めよう! 行け、マグマラシ!」
「ほう、なかなか育ってるマグマラシやなあ。
それならこっちはこの子や! 出ておいで、ピッピ!」

アカネサイドの一番手はピッピ。
対するジャイアンの一番手はマグマラシ。そもそもジャイアンに控えポケモンな
ど、いない。

「マグマラシ、火炎ぐるま!」 「ピッピ、指を振るや!」

いざ、バトル開始である。



先手を取って攻撃したのはマグマラシ。
火炎ぐるまの名前通り、炎をまとって体当たりする。

「あー、酷いなあ。
危うく瀕死になるとこやったわー」

結局、火炎ぐるまはギリギリの所で耐えられてしまった。
そしてピッピの指が動き出し、アカネサイドからの反撃が始まる。
そしてそれは、誰もが予想だにしなかったものとなる。

ピッピは指を振り始めてからしばらくして、何やら力を溜め出したかと思うと、
次にその力を口に凝縮し始めた。
そして――

「よっしゃ! いきなりこんな技がくるなんて、今日はついてるでぇ!
行けえ、ピッピ!
 は か い こ う せ ん!」

「な、なんだってー!?」
いきなりの大技炸裂に、流石のジャイアンもビビってしまう。
幾らレベルが高いからと言っても、タイプ一致破壊光線を喰らってしまうと、た
だ事では済まされないだろう。
しかし無情にも、巨大な光線がマグマラシに発射されてしまう。

「大丈夫か、マグマラシ!」
体力を大幅に削られたマグマラシ。
しかしその目には、燃えるような闘志がみなぎっていた。

「よし、大丈夫だな! トドメの火炎ぐ……

火炎ぐるま、と言いかけた所で、ジャイアンは少し考えこむ。



(どうせピッピは動けないんだ、今の内に回復させておいた方がいいな!)
ジャイアンにしてはいい判断だろう。

「マグマラシ、サイコソーダを飲め!」
ジャイアンの差し入れたサイコソーダを飲んで、マグマラシは再び体力全開にな
る。
そして、ジャイアンの次の命令は、当然攻撃だ。

「マグマラシ、火炎ぐるまでトドメだ!」
「ピッピ、もう一回指を振るんやー!」

硬直から解放された直後のピッピに、マグマラシは襲いかかる。
アカネもピッピに指令を出したが、どちらが素早く動く事ができたかは、言うまでも無い。

その直後、火炎ぐるまがクリーンヒットし、ピッピは戦闘不能となる。

「よっしゃああ! でかしたぞマグマラシ!」
ジャイアンは歓喜している。まるでもう勝負に勝ったかのような騒ぎ方である。
マグマラシもそれに合わせるように、喜んでいるような素振りを見せる。

そして、その様子を、感心したように見つめていたアカネ。
彼女は、ピッピをボールに戻し、次のボールを準備しながら、こう言った。

「見掛けによらず巧い試合運びをするなあ。
でも、そう簡単にバッジはやらないで。
行くんや、ミルタンク!」



そう言いながらアカネはボールを握り、フィールドに放り出す。
そして、豊満な脂肪を持ったミルタンクがボールから登場する。
俗称、ビギナー泣かせの牛とは正しくこの牛の事である。

しかしジャイアンは、一般人とは一味も二味も違う反応を見せる。

「このおっぱい星人め!
遂に出てきたか!」

「ちょwwwww
おっぱい星人ってww そりゃ無いやろwww」
アカネは耐えきれずに吹き出した。
そして、いつの間にか沸いていたギャラリーも

「おっぱい星人はねーよww」
「 お っ ぱ い 星 人
これは流行るwwwwww」
「何というネーミングセンスw  これは(ry」

といった様で、ジャイアンのセンスを嘲笑っている。
しかしジャイアンは、でもそんなの関係ねえといった感じで、ギャラリーには目
もくれない。
(おっぱい星人の攻撃力はヤバイ。早めにケリをつけねえとな)

「よし、マグマラシ。アイツに捨て身タックルだ!」

ジャイアンは現時点での最強技を命令する。
それに対し、アカネも攻撃技で応える。

「ミルタンク、そんなの構わへんでええから転がるや!」



捨て身タックルと転がるを使った二匹が、激しくぶつかり合う。
しかし、転がるの加速が不十分だったミルタンクは、捨て身タックルに力負けし
てしまい、押されてしまう。

マグマラシは、効果抜群の転がるを喰らい、それなりのダメージは受けた。
しかし、ミルタンクの受けたそれに比べれば、まだ微々たるものであった。

「よし、捨て身タックルをもう一丁!」
やはりジャイアンは、攻撃する事しか頭にないようだ。
それに対して相手は仮にもジムリーダー、力押しだけでは簡単には勝たせてくれ
ない。
「う~ん、今ので転がるが止められてしもうたからなあ。
よし、直球勝負がダメなら変化球で行くで!
ミルタンク、メロメロや!」

かたや、捨て身タックルで猛接近してくるマグマラシ。
かたや、それを受け止めるように待ち構えるミルタンク。
二匹の間は急速に縮まっていく。
そして、マグマラシがミルタンクの下までたどり着いた時、ミルタンクは耳元で
こう、囁く。

(捨て身タックルをしてる時のあなたって格好いいわね。
私にも教えて欲しいな…)

マグマラシは、戦いとはまた別の意味で一発で落とされた。



今来た人にも分かるように、流れをもう一度三行で説明しよう。

  • マグマラシは、捨て身タックルの勢いを殺しきることは出来ずにミルタンクへ突っ込んでいった。
  • しかし、それをミルタンクはガッチリと受け止めた。
  • そして二匹は抱擁し、もう離れないのである。←今ココ

そう、今陸上グループ同士で、確かな愛が生まれたのだ。
ツッコミ所満載の展開である。



バトルに戻る。

「よし、メロメロになったみたいやな。
ミルタンク、もういっぺん転がるや!」

しかし、ミルタンクは動こうともしない。
『メロメロ』は本来、相手を片想いにさせる技だが、この二匹は両想いになってしまっている。
この時点で、両サイドとも戦闘不能と言っても過言では無くなってしまっていた

アカネはそれを悟って、こう告げた。

「終わりやな。負けだわ」

しかし状況がよく理解出来ないで、唖然としているジャイアン。
それとは対照的に、ギャラリーは予想外の展開に騒ぎ始める。

「うはw 神展開wwww」
「ミルタンクはお持ち帰りなのか?w」
「これなんてエロゲ?」

アカネは、いきり立つギャラリーを鎮める意味合いも兼ねて、声を張り上げてこう宣告する。

「もう私のミルタンクは戦えないわ。私達の負けや!
ジムバッジもプレゼントするでー」



ジャイアンはやっぱりよく理解できなかった。
しかし今度は、自分が勝ったという事だけは理解できた。

「そうか、俺は勝ったんだな」
「ああ、そうや。
ほな、ジムバッジと技マシンのプレゼントや」

そう言われてジャイアンは、アカネからバッジを受け取った。
初めは勝った実感が湧いてこなかったジャイアンだが、いざバッジを貰ってみるとなると実感が湧いてきたようだ。
そうしてジャイアンは、勝ったらやろうと思っていた事を思い出す。

「アンタに頼みたい事がある。
これを、受け取ってくれ!」
ジャイアンはそう言いながら、ある紙の束を見せる。

「これ何や?」
「ジャイアンリサイタルのチケット兼チラシだ!
明日見に来て欲しいんだ!」
「ふうん。  まあ、別にええよー」

あっさり承諾するアカネ。
よく考えてみれば、ジャイアン自慢の歌唱力を、アカネが知っているハズもない。
だが、ジャイアンにとってそんな事は重要では無かった。

「じゃあ、俺はそろそろ去るぜ! じゃあな!」
目的を果たし、満足げに退場しようとするジャイアン。
その時、ジャイアンを呼び止める者がいた。

「待ちな!」



去ろうとするジャイアンを引き留めようとする一つの声。
そしてその声の主は、アカネでは無い、男の声だ。
「残りのチラシを配ってやるぜ。寄越しな!」

突然の申し出に戸惑うジャイアン。
しかし彼はジャイアン、まず始めに、一番気になる事から尋ねてみる。

「お、お前は誰だ!」

「んあ、ただのしがないギャラリーだよ。
空を飛ぶでお前さんの『チラシ』とやらを配ってやるって言ってるんだ」

状況はやっぱりよく理解出来ていないジャイアンだったが、目の前の男が協力者である事は分かった。

「おおお! 頼むぜ相棒!」
「何時から相棒になったんだよw まあいいけどさ」
そう言いながら、二人は固い握手を交わした。
この男、実にノリノリである。
「どうやら決戦は明日か、よく分からんけど頑張れよー」
「おう! 恩に着るぜ、相棒!」

ひょんなきっかけから、こうしてジャイアンリサイタルは、全世界に宣伝される事となる。
果たして、これは吉と出るか凶と出るか。
ジャイアンスペクタクルは、まだまだ続く――