けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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匿名ユーザー

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  ぴっ。 ぴっ。 ぴっ。

 真っ白な部屋に規則正しく電子音が鳴る。
 私の無力を嘲るように。

  ぴっ。 ぴっ。 ぴっ。

 涙はとうに枯れた。唇を噛んで電子音を聴く事しかできない。

  ぴっ。 ぴっ。 ぴっ。

 律は一向に目を覚まさない。医者も半ば諦めているのか。

 「……律…」

 私の声はすっかりかすれていた。
 そんな声でも、静かな部屋にはゾッとするほど響いた。


 ――――りつ!

律「なんでぇ、みおしゃん。でっかい声でぇ」

澪「カレー作ろうって言ったろ!なんでルゥを買い忘れるんだ!」

律「あー…てへッ☆!」

澪「馬鹿律!」グッ

律「あー!あー!買いなおす!もっかい行くから!」ビクビク

澪「当たり前だ!…ほら、お金」

律「おお!……物は相談なんだけど…?」

澪「ん?何だ?」

律「お釣りで煙草買っていい?」

澪「」

   へへっ!いってきます!―――――




 がばっ!

澪「…っ!」

 夢だった。私と律が最後に話した日の夢。
 あの夢の続きで、律は。

 ルゥを買いに行く道すがら、律は女性が引ったくりに遭うのを見た。
 引ったくり犯を追いかけた律は、その犯人に刃物で刺されてしまった。

 引ったくりに遭った女性が見つけた律は血まみれで横たわっていた。
 私があげたジッポを握りしめて。今は私が握っている、このジッポを。

澪「……うあぁ…」

 なぜ?何故あの時私は律に着いていかなかった?

 何のために私の身体が、腕が、掌が、律より大きい?

 こんな無力な両手―――切り落としてしまいたい


 なあ神様、こんな二人きりのドリームタイムなんかいらないよ
 時間を戻してくれ、頼むから

 一生のお願いだ、今だけ、今だけ

 私たちの為だけに世界をまわしてくれよ


    ぴくん


澪「!! りつっ!」

  ぴっ。 ぴっ。 ぴっ。

澪「はは…は…うぅ」

 律の手が私の手を握り返した…気がした

澪「…ああ、そうか」

   これは罰なんだ

  律をしっかり見ていなかった私の、罰

澪「そうだろ?…神様」

 どんな罰でも受けるさ、律が目を覚ますなら

 だから、私達を引き裂かないでくれよ

  「…りつ   りつ、りつ」

 「…律」

  法律の律、旋律の律

 「り、つ」


 ああ、なんて美しい名前なんだろう


 「律、りつ、りつ」


 ――――今頃気付いたのかあ?


 そんな声が、聞こえた気がした




 季節外れの海、少し肌寒い。

 晴れ渡った空、青すぎる海


 心地良い、慣れ親しんだ煙の匂い


 確かに私の肩を抱く、やさしい旋律



 そして私は、


 そのメロディの


 「  」


 世界一、美しい名前を呼ぶ



               おわり


  • 唯「それぞれのしあわせ!」のオマケとして、少し長くしたものを百合ノートさんにまとめていただいています。 よろしければそちらも読んでいただけると幸いです。 -- これ書いた奴 (2011-03-07 17:12:02)
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