けいおん!澪×律スレ @ ウィキ

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投稿日:2010/07/21(水) 21:14:41

「律ー?」
部屋に入ってみると思ったより片付いていて、律が私を泊める気満々なんだなと直感した。
私から突然訪れると大抵部屋は乱雑なのに、律から「ウチで遊ばない?」と電話が
かかってこれば、こうしてこの部屋は片付いている。だから「ウチで遊ばない?」は
「ウチに泊まらない?」というお誘いの電話に近い。その為、小さなお泊りセットは常備している。すぐそこの家にとりに帰るのが面倒くさい、というのは単なる口実で、そんなわずかな時間でさえ律と離れたくなくなるのをわかっているから。

「お、澪ー」

部屋の主はだらしなくベッドに寝転がり漫画本から目を離さず手をひらひらと振った。
私は小さく溜息をつくと、荷物を置いて律の寝転ぶベッドの脇に座り込んだ。

「あ、澪、悪い、下に行って冷蔵庫からお茶と、あと適当に何か持って来て」
「あのなあ、私は一応客だぞ?」

そうは言いながらも、律がこの調子だとしばらくは動かないことを知っているのでしぶしぶ
立ち上がる。勝手知ったる律の家。階下に行って台所に入ると、言われたとおり冷やされたお茶と
そしてコップ二つ、それから適当に辺りを探って見つけたお菓子を手に律の部屋へと戻る。
その途中、耳をすませてみても自分の足音しか聞こえなくて、どうやら田井中家は律以外出掛けているようだと悟った。私はなぜか田井中家の合鍵を持っていて、それで中に入ったのだが、まさかおばさんまでいないなんて。律ん家はそんなに人がいなくなる家じゃないんだけどなあ、と思いながら、ドアノブに手をかける。そして「あっ」と呟いた。律が今日来て欲しいと言ったのは、
もしかしたら一人で過ごすことが寂しかったからじゃないか。そう思ったから。律はああ見えて寂しがり屋だから。

「澪ー?」

中から声がした。そしてかちゃりとドアが開いた。
私はドアノブに手をかけたまま固まっていたので危うく転びそうになった。

「何してんだよ」

律は呆れたように言って、私の身体を支えると、
当たり前のように右手に持っていたお茶とコップを持ってくれた。
けれど「ありがとう」とお礼を言うのはなんだか癪で、
私は「何も」と言うと律が抑えてくれたドアを潜り抜けた。
そしてお菓子を机に置くと、私はさきほどまで律が寝転んでいたベッドにうつ伏せで倒れこんだ。
まだ布団に律の温もりが残っている。律も部屋に入ってくると
丸テーブルに持っていたものを置き、さっき私が座っていた場所にドサリと腰を下ろした。

「律ー?」
「んー?」

律はガサゴソと何かしながら間延びした声で答えた。
うつ伏せのままなので律の様子は見えないが、鼻歌まで歌って随分ご機嫌だ。

「結局何の用で私呼んだの」
「別に」

別に、って。けれどそれが本当だということはわかっているので追求しない。
それにしても、さっきから変な感じがする。
律の香りがするベッドからのろのろと顔を上げると、
律は私の髪を三つ編みにして遊んでいた。私が顔を上げたのに気付き、間の抜けた表情をする律。

「あ」
「人の髪で遊ぶなっ」
「ちぇっ」

上半身を起こすと律はつまらなさそうに唇を尖らせた。まったく。
私は溜息をつくと律の頭に軽く拳骨を落とした。

「いひゃいっ」

かわいい悲鳴を上げると律は頭を抑えてむーっとした表情で私を見てきた。
それをつんっとすまして無視しながら立ち上がり、持ってきた鞄の中から音楽プレイヤーを取り出す。
それから律の隣に腰を下ろすと片方のイヤホンを自分の右耳に、もう片方のイヤホンを律の右耳に入れると
音楽を再生。自分の左耳にイヤホンを入れれば良かったのだとすぐ気付いたけど変えなかった。
こっちのほうが律の近くにいれるから。

「お、この曲懐かしーな!」

曲が流れるとすぐ、律は嬉しそうに言った。この曲は私が初めて律に“音楽”を教えてもらった曲だった。
だからすごく思い入れがある。
リズムをとる楽しそうな律の横顔を見ながら多分私はこの曲と同じようにずっと律のことが好きなんだろうなと思った。
こんなこと、絶対律の前では言ってやらないけど。視線に気付いたのか、ふいに律がこちらを見て微笑った。
胸の鼓動がいつもの律の走るドラムより速く早く、リズムを刻む。恥かしくなって慌てて目を逸らした。

「バカ律」

聞こえるか聞こえないかの声で呟くと、ちゃんと聞こえていたのか律が隣で
声を押し殺し笑っているのがわかった。

*

「そろそろ帰ろっかなあ」
いつのまにか夕暮れ時になっていて、
私は伸びをしながら律を横目にわざとらしく言ってみた。
案の定律は慌てたように普段より1オクターブ高いんじゃないかと
思うくらいの声で「えぇ!?」と叫んだ。

「もうちょっといーじゃん、みおー」

甘えるような視線でそういわれると思わず頷きそうになる。
なるほど、今日は甘えて「もうちょっと」作戦か。
もうちょっと、もうちょっとと引き伸ばして「もう遅いから泊まっていったら?」のパターンだ。
私は少し考える素振を見せてから「えー、でもなあ」と困ったように窓の外を見てみる。
たまにはこうやって律を弄んでみても悪くは無いだろう。いつも振り回されてるんだし。

「今日は夜歌詞書こうと思ってたし」
「私も手伝うからー!」
「でもなあ、一人のほうが捗るし」
「う……」
「ベースもないし」

律はうんともすんとも言わなくなった。よし、そろそろ……

「澪、私といてつまんないの?」
「え?」

予想外の言葉。私は返答に困って目を逸らした。
すると律は拗ねたように後ろを向いていった。
「帰れば?」
それが演技なのか本気なのかわからなくて、困惑する。
「律……?」
そっと律に近付いてみると、うわー、拗ねてる。本気で拗ねてる。
いつもはこんなことで拗ねたりなんかしないのに。
もしかして熱でもあるのかと遠慮がちに律のおでこに手をあてる。

少し熱かった。

「律、かぜ?」
ふるふると首を振る律。
「でも、ちょっと熱あるよ」
私は言うと立ち上がって、一旦部屋を出て隣の部屋から体温計を拝借してくる。
律に体温を測らせながら、我ながらよく律ん家のこと知ってるよな、と呆れてしまう。
もうほぼ我が家同然だ。ピピピっと音がして出てきた数字は37度5分。まだそんなに高くない。
今しっかり休んだら大してひどくならないだろう。律を立たせてベッドに寝かせる。
それから体温計と一緒に持ってきた冷えピタをおでこに貼り付けた。

「いつからしんどかったの?」
やれやれと律のそばに腰を下ろすと訊ねた。
「……さっき」
「今日、おばさんたちは?」
「旅行」
「聡は?」
「友達ん家」
「帰ってくる?」
「ううん、泊まるって言ってた」
「そっか」

「澪、帰るの?」

ふいに律が不安げな顔をして訊ねた。私は笑いながら首を振る。
「帰んない。今日は泊まっていこうかな」
すると律は「ふーん」と言いながらも嬉しそうな表情になった。

「ほら、一緒に居るからちょっと寝ろ」
「うん……」

私の言葉に頷き、寝返りをうって壁のほうを向く律。

「澪」
「何」
「ほんとはさ、一人で家に居るのが嫌で澪を呼ん……」
「うん、知ってるよ」
「へ?」
「家に来たときから気付いてた」

私は律の言葉を遮り頷いた。律は決まり悪そうに布団にもぐりこんだ。
少しだけのぞいている頭をゆっくりと撫でてみる。
律はしばらくそのまま動かずにされるがままになっていた。眠ったかな、と思ったとき、律が絞り出すような声で呟いた。

「……情け無いよな、この歳で一人が嫌なんてさ」

律は寝返りを打つとこちらを向いた。熱のせいか、
それとも他の理由からか、頬が少し紅潮していた。

「今日、どうしても澪に傍にいてほしくて」
「うん」
「澪に他に予定があるってわかってるのに無理に止めたりして……迷惑だってわかってるけどさ、
でも……、澪、今日はずっと一緒にいて、手握ってて」
「……、うん」

潤んだ瞳で上目遣い。自然と鼓動が早くなる。
反則な律の伸ばしてきた小さな手を両手で包み込む。
私にだけ見せる、甘い甘い律の笑顔を心に焼き付けたくて、私はそっと口付けた。

「おやすみ、大好き」



  • 原作より萌えたっ! -- 名無しさん (2011-03-27 01:33:45)
  • 俺「」ブフォッ -- 名無しさん (2012-01-05 20:40:20)
  • 俺「」ピクピク -- 名無しさん (2012-02-25 11:28:58)
  • ↑鼻血だして気絶してんじゃねぇw -- 名無しさん (2012-02-25 11:29:40)
  • かわいい -- 名無しさん (2013-11-20 23:08:20)
  • なにこれかわいい -- おけぶいん (2019-06-08 18:31:23)
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