邪気眼を持たぬものには分からぬ話 まとめ @ ウィキ

夏の日のヤエミグサの話

最終更新:

jyakiganmatome

- view
メンバー限定 登録/ログイン
引き続き七月。
暑い日々が続いているが、クーラーの利いた豪邸の中にいたらそんなこと関係ないんだよね。
ただ、おかげですっかり出不精になってしまって運動不足が心配だ。
少し体を動かしたほうがいいと思って、アリスに二人でできる単純運動の話を持ちかけたら首を絞められた。
だが我々の業界ではご褒美です。

そっけない反応が返されたんで、部屋に戻ってゲームでもしてようかと思ったら「暇。」とただ一言告げられて
結局アリスの部屋に居座ることになる。
だから暇なら生命に等しく与えられた娯楽の原点をだね嘘ですごめんなさい。

でも、それなら何して遊ぼうか。
なに?何か面白い話はないのかって?
そうだなぁ…ここ最近じゃシュセプを連れてきたのが面白い話筆頭だからな。
あまり愉快な事件も起きてないし、ちょっと昔の話でもしようか。
どのくらい昔かって?そうだね。
俺が文目と初めて会った時の話だから、割と前になるんじゃないかな。


その頃の俺はヒノモトを旅していて、なんとなく適当に暗殺業で生計を立てながら諸国を漫遊していたんだよ。
その時に立ち寄った、イブスキって温泉街で泊った宿にあいつが居たんだね。

イブスキについた頃はもうすっかり夜になってて、妖の手を交わしながらひいこら言って、命からがら近場の宿に駆け込んだんだ。
そうしたら、看板代わりの提灯の下に眼鏡をかけたチビが佇んでるもんだからさ。
妖が出る時間なのにわざわざ外に出てるのが気になって、ちょいと声をかけてみたんだよ。
しとしと霧雨もちらつき始めてたし、子供が一人で出歩いてるのは変な話だろう?俺も人のことは言えないけどね。

なんでも、一緒に来ていた知り合いが…知り合いといっても齢80ちょいの爺さんだったけど、とにかくその爺さんが部屋で自殺したらしいんだ。
毒を飲んでちゃぶ台に突っ伏してたらしく、傍らには遺書が置いてあったんだってね。
その時の文目は大事そうにそれを握りしめて、ぼけーっと雨に濡れてつったってたんだよ。
聞くところによると著名な物書きだったらしくてね、文目もファンの一人だったから相当ショックだったんだろうな。

でも俺はそんなこと別に関係ないからさ、ちょっとした知的好奇心で、その手紙を見せてもらったわけよ。
文面はそう…若干うろ覚えだけど、要点は抑えてある。
たしかこんな感じだった。


幸せな日々というのは長く続かないものらしい。今年の8月を見ることなくして私は逝く。
はたして私の人生が幸福だったかといえば、一概にそうも言えないだろう。
にわかに信じがたいかもしれないが、3人の子供たちの誰ひとりとして私を愛していたとは思え
んのだ。親子の情などせいぜい四歳くらいまでしか通用してくれなかった。全ては、この私じし
んが招いた種なのだが、二度目の人生があるなら違う道を歩みたいかというと、そうでもない。
山しかない田舎、六甲で生まれ育った私はこれだけ莫大な富を築けたというだけで満足すべきだ。
助けてくれた人もたくさんいる。私はその人達の恩に報いるため、この9億の財産を生まれ育った
村に寄付することにした。子供たちには親の七光りで楽をするようなことはさせぬ。勿論薄情と
は言われても構わない。悔しければ私の作った財産の5割でもいいから自分で稼いでみることだ。



読み終わって思ったよ。
この話、これじゃ終わらないなってさ。

とりあえず俺は文目に、その爺さんの知り合いについてある程度問いただした。
ビンゴだったよ。爺さんは自殺なんかじゃない。
そう言った時の文目の眼光は、ちょっと俺もたじろぐような威圧感があったな。

そこから先は文目と俺とで犯人探しの大捕り物さ。
また、相手が能力者だったのが厄介だったね。
俺か文目、どちらか一人でも欠けてたら負けてたかもしれない。

ともかく、結局犯人を懲らしめて、俺はもうとっとと殺しちゃおうと思ったんだけど文目がそれを止めるからさ。
なんだかんだ俺と文目で戦うことになっちゃってー………。

んー、細かく話すにはちょっと長すぎるんだよね。
あとはベッドでどうだろう?
はい嘘です冗談です。庭の草むしり行ってきます。
記事メニュー
目安箱バナー