とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 3-906

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匿名ユーザー

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「――――――つまり、あの方は上条様の友人だったのですね。とんだご無礼を!」
「いや、いいよ羽平さん。あれは土御門の方が悪いから」
「ですが!―――――――――」




午後4時11分。
ここは『風紀委員活動第170支部第七学区本部』。『学舎の園』の敷地内にある支部であり、第七学区担当の中でも上位に位置する『風紀委員(ジャッジメント)』のメンバーが集う。といっても第七学区がほこる常盤台中学の上位能力者で占められており、さらに常盤台で形成されている派閥によって上層部と他の支部とは壁は厚いことで有名である。

しかし、それは過去の話だ。現在は長点上機学園の特待生こと上条当麻がその頂点に立ったことによって、水面下の派閥抗争は見る影すら無くなっている。
と、いうのが羽平くるるから教えられた新情報であり、初めて見る『学舎の園』の内部の景色やすれ違いざまに有名校の生徒たちや教師に挨拶され、上条はドギマギするしかなかった。
職員用のスリッパを拝借して、生徒は使用禁止のエレベーターに乗り、最上階に上がる。そこで声紋、静脈、眼球、指先の微振動パターンの四種を調べる厳重なロックを外すと、学校の教室とは違うオフィスのような一室があった。各デスクには最新式のコンピュータが並べてあり、部屋の奥には上条の一際大きいモダンなビジネスデスクがある。部屋には既に四人の常盤台の生徒がおり、あの電撃お嬢様とは比べ物にならないほど気品のある挨拶を受けた。「上条様」、「当麻様」、「当麻さん」、「いいんちょ」など、四人とも上条の呼称が異なっていたが、表情から察するに彼女たちとの関係は悪いものでは無いと容易に判断できた。
『今』の上条には知らない世界だった。


そんな慣れない環境に戸惑いつつも上条は部屋に訪れた羽平くるると話していた。
「上条様に何とお詫びをすればよいのでしょう。…私に何なりとお申し付けくださいませ!どんな罰でもお受けいたします!」
心から申し訳ないという表情で頭を下げる彼女。長点上機学園で起きたちょっとした事件が起こった。学園の生徒に扮した土御門が瞬く間に捕えられ、第十八学区の『風紀委員(ジャッジメント)』支部で拷問を受けた。彼が捕えられたすぐ後に『上』からの圧力が掛かり、余計に不審さが増したらしいが上条の口添えで釈放された。上条の友人を無礼者扱いしたことに彼女は深く後悔しているらしい。
「あれは仕方ねえよ。元に土御門は長点上機の制服を着て学園内に入ってきたんだから当然の処置だろ。むしろそんなことを許容した俺の責任だ」
「っ!!駄目ですわ上条様!貴方の優しさは時には毒です。ここで貴方に許してもらっては私は貴方に甘えてしまいます!ですから、私に罰をお与えください!身を捧げろというなら喜んで貴方のものになります!」
「い、いや!本当にいいから。っていうかそれヤバいから!それに何で常盤台の皆さんは『またかよ』って顔してコッチ睨んでんのー!?」

上条たちのやりとりを見ていた常盤台の女子生徒たちが話してきた。
「上条様ったら、本当に女性から好かれますのね。白井さんから聞いた時は信じられませんでしたが間近で見ても貴方の女性運は異常ですわ。まあ、そんな上条様だから私は気に入っているのですけど」
「いいんちょ、節操無さ過ぎー。御坂お姉様だけじゃ物足りないのー?」
「……(チッ)」
「当麻さん当麻さん。女の子にそこまで言われて何もしないなんて…●●●●ですかぁ?」
「ちょっとー!!何でイキナリ放送禁止用語サラリと言っちゃてるのー!?」

てんやわんやな状態になっている時、電子音と共にドアが開いた。またもや常盤台の女子生徒。長い髪を両脇の大きなリボンで括ったツインテールの女子生徒だった。長身のスレンダーで顔立ちも非常に整っている。

「白井…?」

「…貴方に名字で呼ばれるのは久しぶりですね。他に誰がいますの?…というか『また』ですか?当麻さん」
白井と呼ばれる女子生徒は、はぁ、とため息をついた。鞄を持っていない左手で髪をかきあげるともう一回溜息をついた。
「…確か、貴女は第十八学区担当では無かったかしら?『道無き道を走る者(ロードレスライダー)』の羽平くるるさん。担当学区外での活動はこちら側の了承を得るべきでは?」
「この地区での活動をするつもりはありません。私は上条様個人に私用が有り、ここへ来たまでです」
「そうですよー。いいんちょに『体で』お礼をしたいとか何とかってー?」
ビキリ!と白井のこめかみに青い筋が入った。席に座って無言で茶を飲んでいた女子生徒は小刻みに手が震えている。上条を「いいんちょ」と呼ぶ赤髪ショートへアーの少女と黒紙ロングへアーの笑顔を絶やさない女子生徒はニヤニヤと笑っている。
「……これはお姉様にキッチリと報告してさしあげますわぁ、うふ、うふふふ」
「ちょっと待って黒子サン!これはただ羽平さんが私にお礼をしたいといってきているだけでしてね何もエッチな頼みごとをするとか死亡フラグ確定な選択肢が出現してそれを軽くスルーしてノーマルエンドを送りたいという上条さんでしてでもそれ以外の選択肢がない状況に置かれているのですハイ!」
自分自身でも意味不明なことをまくし立てている上条を見て、白井はまた大きく嘆息した。

「…当麻さん。いいですこと?貴方はお姉様のこ・い・び・と・なのですよ?その辺の自覚が足らなさ過ぎますわ」

「んぐっ!?」
またもや知らない事実を告げられた。今朝の美琴の様子から予想していたが他人から言われると余計に心に迫るものがある。
「?何ですの?その反応は」
「い、いや何でもない。いつも通りだなって思っただけで」
「…ええ、これがいつも通りですよね。ちょっと目を離した隙に一筋縄ではいかない女性を連れてきては親密な仲になって…お姉様の気苦労を少しは察してほしいですわ!」
「……………………………………………………………………………………ごめんなさい」
とにかく自分に非があるらしいので謝る上条。白井はそんな彼を見ながら腕を組む。上条の机の下にある大きな紙袋に目がとまった。袋に載っている銘柄はメンズファッションのブランド名。膨らみ方から大きな物が入っているのは解る。
「それはなんですの?随分と大きいですわね」
「ん?これか?これは友達に貰ったやつだよ。中身は知らないけど」
白井黒子は白い袋を指差した。
上条が左手で持ち上げて顔に近づけたとき、上条当麻は妙なことに気づいた。

カチ、カチ、カチ、カチ…

袋の中から時計の音がする。
上条の額にいやな汗が流れる。アクション映画によく出てくるシチュエーション。もしかしてもしかして…
「上条様?どうしたのですか?」
上条の表情の変化に気づいたのは一番近くにいた羽平くるるだった。
「は、羽平さん。これから、な、何か聞こえない?」
怪訝な表情を作る羽平は耳を紙袋に近づけた。
その表情がみるみる変わっていく。

「危ないっ!!」

咄嗟に紙袋を部屋の片隅の方へ蹴りつけると、彼女は上条を覆いかぶさるように抱きしめた。
突然の出来事に呆然とする常盤台の生徒たち。
「ななな…」
口をパクパクさせている白井を片隅に捕えながら床に転がる上条。

「爆弾ですっ!!」

その言葉に皆が固まった。
しかし、彼女たちは悲鳴などは上げなかった。白井は他の常盤台の生徒を掴み、テレポートしようとしたが、
間に合わなかった。

パァン!

大きな音が鳴り響き、七色の煙が噴き出した。
立ち込める煙。火薬特有のにおいでは無く、ハーブの香りが部屋中に蔓延した。
「んー!?これは、何ですの?一体!」
「ケホッ、いいにおいも濃いと、むせますわっ」
「……………(ケホッ)」
「にゅわー!何か降ってきたー!」
「何なんですかー!?この●●●●な匂いはー!まさか●●●じゃないでしょーね!」
「モガッ!?あ、あの羽平さん!?ちょっとどいてもらえマスカ!色んなトコが密着してしまって色々とヤバいんですがー!?」

5分後
煙が空気清浄機で吸い取られ一時収束した。
白いバックの中から煙と共に出てきたのは大量のコスプレ衣裳だった。どうやら魔術の類の仕掛けらしい。こんなささやかなドッキリの為に血を流す土御門の心情が掴み切れなった。
否、掴みたくなかった。
爆発音と共に部屋中に散乱した衣装をデスクの上に集めていた。20着以上あり、その光景はなんとも異様だ。
この珍事を外部に報告しようと思ったが、あまりにも下らなすぎるので報告を却下することが満場一致で決定した。土御門の報復もだが。
呆れた顔で白井は各服をチェックする。
「バニー、チャイナドレス、スクール水着、ビキニ、宇宙服、婦警、女王様、レオタード…………………ん?これ、全てサイズが同じですわね」
「…いいんちょ。こんなのが趣味だったんだ」
「…………(ゾワッ)」
「あらあら上条様って守備範囲が広いんですねぇ」
「…上条様」
(………●●●●●●が)(ボソッ)
「だから聞こえてるって!その放送禁止用語!」
女性一同から冷たい視線を受ける上条。原因は自分なので反論しようも無いが元はと言えば土御門が長点上機学園に侵入してこんな物を渡しに来たのが原因であり、やり場の無いストレスの矛先をその土御門の復讐に向けようとしたその時、
「っ!!!!!」
白井黒子は息を飲んだ。

「こ、こここれはお姉様のサイズ!」

ギロリ!と白井は上条の方を向いた。
閻魔大王でも泣きそうな怖い形相をしている。
「おのれえええぇ!!お、おおおおおおおお姉様にこ、ここここのような服を着させて何をするつもりでしたのおおおおおおおおおおッ!!」
「えっ!?い、いや私知りませんよ!ホントダヨ!?ウソジャナイッスヨ!?御坂にあんなことやこんなことを…ってするわけ――――」


「死ねええ!!この類人猿があああああああああああああああああああああああァ!!」


今、上条当麻の悲劇が始まる。

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