とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

リレー小説

最終更新:

index-ss

- view
だれでも歓迎! 編集
「さぁ、観念したまへ、天井君。なぁに、痛いのは最初だけさ。直に良くなる。
 次に起きたとき、君は性別を克服してるだろうよ。これで第二の人生をがんばりたまへ」
「冥土返し!?待て、待て、なんだその、ぁゃιぃ機械は!?ああああああああ」
 手元のスイッチをぽちりと押す冥土返し。ごうんごうん、と静かな音をたてて、真っ暗な機械の中へと運ばれる天井。
「バストは……AAでいいか、その筋の連中が喜びそうだ。あとは……身長、これはうんと縮めるか……
130センチっと……そのほかはちょちょいのちょいっとね」
 女体化までの時間あと249秒。被験者名――天井○○。
 冥土返しの細く、長い指が滑らかにパネルを操作する。
 やがて機械の蓋が閉じられ、モニターには中の様子が映し出された。
 天井は半狂乱気味に手足をばたつかせている。
 だが拘束具を軋ませるだけで、一向に効果はあがらない。
「ああああああああああああ!!」
 モニター画面が赤みを帯びた。
 どうやら始まったみたいだ。
「さて、仕上がりが楽しみだ」

 50秒経過――。
 機械のグラフはめまぐるしく変わっている。まるで悶え苦しむミミズのようだ。
 進行状況は35%。
「ああああああああああああ!!(少し高い声)」
 まだかかりそうだ。
「よし、コーヒーでも入れてこよう。狂おしいぐらいに熱いのを」
 そう言って冥土返しは席を立った。
 天井たんの運命や、いかに!?

 進行状況が100%になり、よく解らない煙で満たされた機械の蓋が開かれる。
 煙と共に深緑色の髪の背の小さな非常に幼い少女――天井――が吐き出される。
「きゅううううううう」
 吐き出された天井は元の姿とは似ても似つかない声を上げて目を回している。
 その姿は実に愛らしく、母性本能と嗜虐心を刺激する。
「これは……予想以上だ」
 冥土返しは思わず呟く。
 彼女は自身の作った機械に絶対の自信を持っていたが、まさかここまで高性能だとは思っていなかったのだろう。
「実に良い。思わず、食べてしまいたくなる」
 口を三日月形に歪めて冥土返しは呟く。
 その邪心に反応したのか、天井が意識を取り戻す。
「コレが、生まれ変わった君の姿だよ」
 冥土返しは何処からか出した大きな姿見を天井の前に置く。
「こ……これが、私?」
 天井は姿見に映った自分の姿が信じられないようで、鏡に触ってみたり、いろんなポーズをとってみたりしている。
 まあ、それも当然だろう。研究一筋根暗で借金まみれ。美形でも無かった自分が、こんな可愛い少女に変わっているのだから。
「さて、今の自分の姿が確認できたところで……お楽しみと行こうじゃないか」
「……え? 冥土返し、これ以上何をするつもりだ? や、やめろ……手をわきわきさせながら近寄ってくるな! や、やめっアッー!!」


 天井は冥土返しが美味しく頂きました。


「うう……もうお婿に行けない」
 やけに肌が潤っている冥土返しの横で、半裸の少女――天井――が啜り泣いている。
「その体では元々婿には行けないだろう。嫁ならまだしも」
「も、元に戻せ!」
 天井は懸命に腕を伸ばし冥土返しに拳を叩き込もうとする。
 しかし、130cmという低身長ではどれ程腕を伸ばそうと届かない。
 頭を抑えられているのならば尚更だ。
 傍目から見ると、まるで物を親に強請る子供のような、もの凄く微笑ましい光景になっている。
「しかし、いいのかな? 元に戻れば借金地獄。何をされるかわからないよ?」
「う、それは……」
 天井の脳裏に極貧時代の記憶が甦る。
 借金の取り立てに怯える日々。その日の食事すら危うい。
 天井はあの生活に戻るのはもう嫌だった。
「いっそのこと、その体で新しい人生を歩んでみたらどうかな? 新しいIDはこちらで用意するよ。それに、その外見じゃ君が天井亜雄だとは誰も思わないよ」
 それは甘美な誘いだった。
 それなりに聡明な天井が裏があるかどうか考えることをやめてしまうほどに。
「ほ、本当か?」
「ああ。保証しよう。……IDを新しくするのなら、名前も新しくしないといけないか。何かリクエストはあるかい? 無いなら適当に考えるけど」
「そう、だな……」
 しばらく考えて天井は新しい自分の名前を口にした。



「ああ、アレイスター? 新しくIDを発行してくれないかな」
『いきなり何だこの馬鹿医者。IDを新しく発行だと? 色々と手続きが面倒なんだ、私を使いっ走りにするのはやめてくれないか』
「作ってくれるなら、“彼”の情報。教えてあげても良いけど?」
 しばらくの間、コポコポと液体の動く音が聞こえる。
――悩んでる悩んでる。
 かなり長い間液体の動く音のみが伝わってきたが、とても小さな声で何かを言っているのが聞こえた。
『――た』
「ん? なんだって?」
『……わかった。すぐに用意しよう』
「ああ。データは送ってあるから。頼んだよ」
 唇を三日月形に歪めながら冥土返しはそう言って、電話を切ろうとする。
『情報の件。絶対、絶対だぞ! 前回のように下らない内容だったら……』
「まったく……。そう言う風に言うんだったら、少しは自分で動いたらどうなんだい? 実際に会ってみればフラグが立つかも知れないよ?」
『くっ……ソレが出来れば苦労はしない!』
 叫び声と共にブッっと電話の切れる音がした。
「本当に、素直じゃないなぁ……いつまでも穴蔵に籠もっていたら誰かに先を越されてしまうよ。例えば、そう、僕とかね」
 誰に言うでもなくそう呟いた冥土返しは次の企みを考える。
 あの子をどの学校に編入させるべきか。
 楽しいことになりそうだ。


 天井の実験に大成功を納め、すっかり気を良くした冥土返しはアレイスターへの直通回線を繋いだ。
「やぁ、元気にしてるかい?」
『いままで元気だったが、たった今気分が最悪になったところだ。切っていいか?」
「おやおや、それは大変だねぇ。 
 ところでアレイスター、実はボクは画期的な実験に成功してね、人間の性別を五分程度で反対にしてしまう装置なんだけど」
『また酔狂な物を作ったものだな、それが私とどう関係があるのだ? 
 例のIDならもう貴様の病院宛に送ってあるだろう? 
 与太話ならもう切るぞ』
「ああ、それなら確かに受け取ったよ。本人はあまり乗り気ではないみたいだけど、上条当麻の学校へと転入手続きをしてくれるかな?」
 電話口の向こうでガラスの壁にでも頭をぶつける音がした。 おそらく冥土返しの想像は合っている。
『――――断る!』
「それでは経過が研究できないじゃないか」
『そんなはた迷惑な研究止めてしまえ!』
「君がそれを言うかい?」
『ッ!』
「別に上条当麻をどうこうしようっていうんじゃないんだ、転入手続きぐらい簡単なものだろう?」
『常盤台中学でも、霧ヶ丘女学院でも長点上機学園でもいいだろうが!!なんであの高校なんだ』
「そりゃあ、面白いからさ。あ、いま君は病院へ向けて特殊部隊を送り込もうとか考えてるね?
 止めておきたまえ、この病院にはまだ上条当麻が居るんだよ?」
『それがどうした、猟犬部隊なら上条当麻を確保しつつ、お前を蜂の巣にする事なんて造作も無い』
「いいのかい?
 もしそんな事をしたらボクはこのスイッチを押してしまうよ?」
 冥土返しの手は例の機械のスイッチにかかっていた。
 液晶パネルに表示されているデータを、ゆっくりと読み上げる。
「性別変換対象――上条当麻」
 電話口の向こうの空気が不穏な物へと変化し、あらん限りの罵声が届いた。
 かるーく無視して、言葉を続ける。
「設定身長――百五十六センチ。
 設定体重――四十三キロ。
 培養効果で髪をロングヘアーに、いっそ目の色も青にしてしまおう。
 そうだな、あと声のサンプルは……、ああ丁度いい。妹達のデータがあった。あれを使おう。
 胸のサイズか……C、いやBあたり……Aで貧乳なのを気にしてると、いうのも萌えるな。よしAで行こう。
 ウエストはうんと細く、ヒップはまぁそれなりに……おぉ、まさにパーフェクトだ」
 頭の上にPってつけたいぐらい完璧な女神の完成予想図が液晶パネルに表示された。
 電話口の向こうが本格的にうるさい。
『貴様という奴は!!やって良いことと悪いことが!!
 何が望みだ、コンチクショォォォォッォオ』
「いや、なに、天井君を上条当麻の学校へと、転入させるのと……
 もうひとつ、上条当麻の代わりに性別変換機に入れても構わない人間をニ、三体欲しい。
 そうだな……犯罪者とかいいな、後腐れなくて。
 君のお抱えの記憶剥奪能力者を使って記憶を抹消しておいてくれると手間が省ける。
 どうだい? この条件飲むかい?」
『グヌヌヌヌヌヌヌヌ……待ってろっ、即日送りつけてやる! だから上条当麻に手を出すなよ! 性別変換なんて持っての他だ!」
「おーけー、それでいい。楽しみにしているよ、それじゃ、おやすみ」
 冥土返しは受話器を置いて、液晶パネルを見やり、少しだけ残念そうに溜息をついた。


 翌日正午、例の機械は稼動中だった。
「エンゼル様!?エンゼル様!?えんぜぇぇるさぁぁまぁぁぁ!」
 中の様子は液晶モニターの半分に映されている。
 後日、冥土返しの病院に急患を装って搬入されて来たのは、連続殺人犯である火野神作だった。
 さっきつっこんだばかりだから、作業ゲージは十パーセント程しか進んでいない。
 コンディションを示す波形もひっきりなしに位置を変えている。
 冥土返しはコーヒーのカップを片手に机の上に置かれたノートパソコンに目を落とす。
 完成予想図、と銘打たれたフォトデータが表示されている。
 薄桃色の髪の毛に、不思議な薄紫の瞳。
 抱きしめればぽっきりと折れてしまいそうな華奢な体つき。全体的にスレンダーというか、未発達な感じで起伏は少ない。
「はふぅ……たまらん」
 機械の中で暴れているアレがコレになるのだから、まさに魔法の箱といったところだった。
「名前は、そうだな……ヒノタンでいいか……記憶消去は同時進行っと……」
 エンターキーを押し込んで、コーヒーを啜る。電波系少女ヒノタンが完成するおよそ四分前の事だった。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー