とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

第一章

最終更新:

index-ss

- view
だれでも歓迎! 編集
(1.)
上条当麻の日常を打ち壊したのは昼休みに姫神秋沙から掛けられた一言だった。

「上条君。これ食べてみて」
「え?姫神。どうしたんだ、この弁当?」
「味見して感想を教えてくれると嬉しい」
「ホントに?それじゃ、いただきまーす」

エビの天ぷらをほおばろうとした上条だったが、右手首をホールドした青髪と
チョークスリーパーを極めた土御門に動きを止められてしまった。

「カミやん。一人だけ姫やんの愛妻弁当にありつこうなんて酷いんとちがう?」
「そうそう。
 モテない俺達の前でイチャつこうなんて人の道を外れた所業とは思わないのかにゃー?
 それともカミやんは俺達の心の傷に塩を擦り込んで嬉しいのかな?」
「ホンマ。僕らを友達と思っているならお弁当の独り占めなんてありえへんよ」

「ゲホッ、テメーら俺を殺す気か?これは姫神が俺に味見してくれって言ったんだぞ」
「いいよ」
「「「え?」」」
「土御門君も青髪君も食べて感想を聞かせてくれると嬉しい」

「じゃあ、このエビ天は僕が頂きーっ。パクッ」
「こら!それは俺が今食べようとした……」
「カミやん、スキあり!」
「返せ!土御門、そのかき揚げはエビ天の次に食べようと……」
「カミやん。食事中によそ見するなんて行儀悪いなぁ。
 あっ、このサツマイモもごっつぅ美味しいわぁ」
「こら!」
「そうそう。行儀が悪いと女の子に嫌われるぜよ。
 おっと、このイカ天は頂きなんだにゃー」
「テメーら!俺の分が無くなるじゃねえか」

最後に残ったタマネギの天ぷらを巡る3匹の野獣の最終決戦(アルマゲドン)勃発を
防いだのは吹寄制理の鉄拳制裁であった。

「止めんか!この三バカども!」
「痛てっ!吹寄、何しやがる」
「貴様ら!秋沙にお弁当の感想を頼まれたのだろう?
 なら、じゃれ合ってないでさっさと感想を言いなさい」

「アー。姫やん、エビのプリプリ感は最高やったわぁ」
「それに、かき揚げのサクサク感もたまらんかったぜよ」
「このタマネギの甘みも申し分ないし。
 姫神、また料理の腕を上げたんじゃないのか?」

上条達の絶賛の声とは裏腹に姫神秋沙は暗い表情して考え込んでしまった。

「上条君。今日のお弁当変じゃなかった?」
「いや、前に食べさせてもらった天ぷら以上の出来だったぞ。
 しかしこんな手間掛けて弁当を作るんだったら姫神は一体いつ起きてるんだ?」
「…………」

「どうした?姫神」
「実は。今日寝坊した」
「へー。寝坊してもこんな弁当が作れるんだ。すごいな」
「だから今日のお弁当は私のじゃない」
「じゃあ、だれが?」
「わからない。寝坊して起きたときにはテーブルの上に何故かこの弁当があった」
「へっ?……っということはさっきのは味見じゃなくて……」

「そう、毒味よ!」
「吹寄、テメーの入れ知恵か!」
「良かったわね、秋沙。どうやらこのお弁当は秋沙への嫌がらせじゃ無かったようね」
「こらっ、吹寄!その前に実験台にされた俺達に何か言うことはないのか?」
「文句ある?
 さっきあんた達、美味しい美味しいって食べてたわよね。
 それなのに私に文句があると言う訳?」
「うっ、……ありません」

「最近私の周りで変なことが起こるの」
「え?何だって?」
「今日のお弁当もだけど。
 一昨日も寝ている間にハンカチにアイロンが掛けられてあった」
「だから私も最初は秋沙をストーカーする変質者がいるのかと思ったんだけど」
「子供達の蹴ったボールが私に飛んできた時も、当たる寸前何かに弾かれたり……」
「なんだか守護天使みたいだけど、正体が分からないと秋沙だって不安でしょ。
 だから今日のお弁当はあなた達に協力してもらったわけ」

「おい、土御門」
「おうよ。カミやん」
「ちょっとトイレに付き合え」
「了解ぜよ」

守護天使の正体に心当たりのある二人は不審の目を向ける三人を無視して教室を出て行った。

「土御門、『癒之御使(エンゼルフェザー)』ってやつは家事もできるのか?
 それともお前、まだ俺に何か隠してるんじゃねえのか?」
「俺も知らねえぜよ」
「それに姫神は自分の能力をまだ自覚していないのか?」
「最初の時は姫神自身が気を失っていたから、まだ自覚してないかもな」

「それじゃ、守護天使の正体が『超機動少女カナミン』だってことも……」
「知らないだろうな」
「知ったらショックを受けるかな?」
「……多分」
「どうしよう」
「まあ、これはカミやんの問題だからな。俺っちは知らぬ存ぜぬで押し通すぜよ」
「こら!土御門。逃げるんじゃねえ!」



(2.)
土御門に逃げられ、一人で帰ってきた上条を心配顔の姫神秋沙が迎えた。

「上条君、大丈夫?私のせいで……」
「へ?何のこと?」
「だって、お腹を壊したんでしょ?」
「いや、さっきのトイレはそんな事じゃなくて……」
「安心しなさい。上条当麻。
 そんな訳だから、今日の夕食は私と秋沙が作ってあげる」
「どっ、どういう理論展開したらそんな結論にたどり着くんだよ」
「それは私達の手料理なんか食べられないって意味?」
「いやそんな訳じゃ……」
「なら決定ね」
「…………はい」

「あのー、吹寄さん。僕も一緒に毒味をしたんやけど」
「うるさい!そんなものは気力で直しなさい」
「なんで……なんでいつもカミやんにだけ美味しい展開があるんや。
 神様はそんなに僕が嫌いなんか?
 ちくしょーっ、夕日なんか大嫌いやーーーっ」
「あいつ、まだ昼だぞ。どこまで走っていく気だ?」

青髪ピアスを欠いたまま午後の授業も滞りなく終わり下校時刻がやって来た。
上条は姫神秋沙と吹寄制理に連れられてスーパーマーケットまでやって来た。
もうすぐ特売タイムらしく入り口付近は結構混雑していた。

「あの、上条さんの経済状態は芳しくないので高級な食材を買われると……」
「大丈夫!貴様は大船に乗った気でいなさい」
「えっ、吹寄。まさか奢ってくれるの?」
「足りない分は私が貸してあげる。利子は取らないから安心しなさい」
「…………」

特売タイムへの突撃体勢を整えつつあるクラスメイト二人の後ろで上条は大きなため息をついた。
そんな上条に聞き覚えのある声が掛けられた。

「あっ、いたいた!ちょっとアンタ」
「よっ、御坂か。どうした?」
「どうしたじゃないわよ?
 この前レストランで美味しい食事をしようて言ったのに。
 それがなんでマク○ナ○ドのハンバーガーになったのよ!」

「バカ野郎、それでも俺がなけなしの金で奢ってやったんだろうが?
 お前だって『意外と美味しいかも』ってしっかり完食したじゃねえか」
「あれはアンタが奢ってくれたからつい嬉しくて……って、そんなことを言ってるんじゃない。
 あんなんじゃ、私は全然納得しないからね。
 埋め合わせはキッチリとしてもらうわよ」
「あのなーっ」

「どうしたの上条君?……あれ、貴女は?」
「うっ、あなたはこの前の……姫神秋沙さんでしたっけ?」
「嬉しい。名前を憶えていてくれてたんだ。
 私達これから夕飯の買い出しなの。じゃあ上条君行きましょ」

姫神秋沙に右手を引っ張られる上条の左手を御坂美琴はムンズと掴んで引き留めた。

「ちょっとアンタ。その女(ひと)が右手なら私は左手だって前にも言ったでしょ。
 なんで勝手に行ってんのよ。私も一緒に行くわよ」
「え?」

上条の疑問の声は無視して、目の前に現れた敵(姫神秋沙)に対して
美琴センサーが敵戦闘力のスキャンを開始した。

(この女(ひと)、美人よね。
 肌は透き通るほど白いし、髪も黒くてツヤがあるし。
 身長は同じぐらいか。
 体形は…………くっ、私よりスリムかも。
 それなのに胸は私より大きい…………でも
 私だって後2年あればあの位には。そうよ、私には輝く未来があるもの)

どうやら美琴センサーは敵戦闘力が自分以上ではあるものも逆転可能な差であると判断したようだった。
しかし、そんな御坂美琴の思考を遮るように新たな敵戦力が出現した。
人混みの中から顔を出した吹寄制理が上条に話しかけてきた。

「何をしている?上条当麻。
 なんだその子は?
 常盤台中学の制服……貴様は中学生にまで手を出しているのか?」
「バカ言うな。吹寄」
(また美人が……、一体コイツの周りには何人の強敵が……)

新たな敵戦力をスキャンし始めた美琴センサーは驚愕の戦闘力をはじき出してしまった。

「(くっ、この胸は……母さんより大きい。トップ93cmのFカップ……)
 ハハッ、いっ、いい気になってんじゃないわよ。
 いっ、今に見てなさい。私だっていつか……、うわあぁぁーーん。」

御坂美琴は泣きながら走り去ってしまった。
どうやら吹寄の胸は御坂美琴の『輝く未来』という幻想すら打ち壊してしまったようだった。

「一体何があった?上条当麻」
「さあ?俺達何もしていないハズなんだけど……」

その夜、常盤台中学学生寮208号室にて

「おっ、お姉様。一体どうしたんですの?
 牛乳パックを一気飲みなさるなんて。
 しかもその買い物袋一杯に一体何パック買って帰られたのですの?」
「うるさい!黒子。
 これは女と女の意地を掛けた戦いなの。絶対に負けるもんですかーっ」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー