とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

二章

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匿名ユーザー

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「だぁぁぁぁっ、くそがッ!!!」
「猿人類丸出しですわよおばかさん」
「てか、この状況で落ち着いてろって言うほうがおかしいと思うわよ私は」
「といいながらも落ち着いてるお姉様からは大人なにおいが…ふがっ!?」
「だがら!何でテメェらはそんな茶番やってられんだっ!?」
「茶番!?今、茶番と言いましたわねっ!?お姉様とのイチャイチャタイムは決して茶番などではな―――ぐはっ!」
「…美琴、お前、手加減とかしてるのか…?」
「ん?手加減??こいつにそんなことしたらあっさりかわされるわよ」
「お…お姉様の…本気のコブシ…ふ、ふふふ…く、黒子はそれを受け入れ…」
「いい加減黙ってなさいあんたはっ!!」
ばちぃっ!と危険な音が美琴を中心として放たれる。
まぁ、もちろん黒子はテレポートであっさりと回避するが。
「…と、とりあえずだな」
毎回毎回美琴にこんなことをされてる身だから忘れていたが、美琴の攻撃はまともに喰らったら即死級の攻撃だ。そんなものを平然と放つ女性に少し危機感を感じながらも、上条は言う。
「なんか、よくわからねぇ超能力者(レベル5)たちが、俺たちを狙いに襲ってきた。んでもってこの病院を壊し始めて、この病院が崩壊状態にある―――――OKか?」
「ぜんぜんOK。だから私たちはこうして緊張感あふれる空間を走っている―――――ってことよね?」
「…実際、そうだったら俺は何も言わないんだけど…」
はぁ、とひとつため息をつく。
「まぁ…お前らのことだから滅多には死なないんだろうけどさ…でも、相手は超能力者(レベル5)8人だろ?さすがに、どころか…普通に死ねるんじゃねぇのか?」
「そりゃあね。気がついたら死んでましたって展開でも少しも違和感ないわ」
「同じく、ですの」
「…それでも、お前らはそんなことできるのか…なんか、逆に感心したぞ俺お前らのこと」
そう上条が言ったことで、唐突に会話が途切れる。
聞こえるのは、走る音と息の音、それらを簡単にかき消す建物の崩壊音だけだ。
「…んで?」
いきなり、美琴が口を開く。
「交戦状態になったら、具体的にどうするわけ?」


「…」
上条は無言。
対照的に、黒子が口を開く。
「まずは私が様子見に出ますわ。その後にお姉様、上条さん、と続いてくださいな」
「そうね…でも、あんた一人で少しやれそうなときはやっときなさいよ」
「ええ、そうさせてもらうつもりでしたの。まぁ、戦闘不能程度にしときますが」
「…なんか、すごく危ない世界に入ってる気がする…」
上条が、場違いなことに頭をかきむしる。
「で?俺はどうしろと?」
「あんたは私らの護衛でいいでしょ?実際、超能力者(レベル5)が8人もいたら一人の能力打ち消したところで次の能力…ってことでそのうち殺されちゃうでしょうし」
「ですわね」
「…すみませんでした」
なぜか謝る羽目になった上条。
と、突然。
「っ!?」
黒子の体が中に浮かび上がった。
そしてそのまま、磁力の力でも働いているかのように病院の外に引っ張られていく。
おそらく、自分だけの現実がなんチャラかんチャラなのだろう。そこらへんは上条の専門外(専門があるかは聞かないでほしい)だ。
「黒子っ!?」
「くっ!能力者の仕業ですわね!?」
そう言い放つが、なぜか彼女の空間移動(テレポート)は発動しない。
「ちっくしょぉ!」
上条が叫び、そのまま黒子に飛びつくような勢いで走る。
元々加速している上条のほうが今は速度は速いが、どんどん黒子の体は離れていく。おそらく、加速具合が早いのだろう。
これ以上離れたら無理だ、と悟った上条は、とっさに後ろに言い放つ。
「美琴!俺の足元に電撃を打て!」
「はぁっ!?」
驚いた声を上げる美琴。
上条はその電撃がアスファルトを爆破し、一瞬の加速に身を任して黒子の体にどうにかして触れよう、と考えているだけだが、どうにも美琴には戸惑いがあるらしい。
「早く!これ以上離れたら、どうにもならねぇ!!」
「くっ…分かったわよぉ!」
まだためらっているようだったが、美琴の前髪から一気に電撃が放たれる。
「うおぁっ!?」
自分からその案を提案した上条だが、怖いものは怖い。
そのままアスファルトの爆破によって生じた爆風に身を乗せ、一息に飛ぶ。
「っ!!」
その一連の光景を見ていた黒子は、突然のことに顔を蒼白にする。
「だぁぁぁっ!!」
右手を思いっきり伸ばし、何とかなびいていた、黒子の長い髪に触れた。
その瞬間、黒子の体は重力によりアスファルトに打ち付けられる。
「ぐっ…」
小さくうめく黒子。
だが、すぐ立ち上がり、また走り出す。
「ちょ、黒子!?大丈夫なの!?」
「平気ですわ、お姉様。今のはただの念動力(テレキネシス)ですわ!」
平然とした顔で言う黒子。
「それよりも…あちら側も動き始めましたわね…」
今度は顔をゆがめて言う。
「…どいて」
美琴が、前にいる上条と黒子に言う。
「?何する気だ??」
そういい、上条が振り返ると。
ピーン、と。
安っぽいメダルゲームのコインが弾かれたような音がした。




「つまり、あなたが言いたいことはこういうこと?ってミサカはミサカはもう一度確認を取ってみる」
一方通行(アクセラレータ)の背中におぶさられている打ち止め(ラストオーダー)が上機嫌な声で言う。彼はものすごくいやそうな顔を隠すことなくあらわにしているが、何も言わない。
「私たちのネットワーク―――ミサカネットワークは、お姉様(オリジナル)のクローンである妹達(私たち)によって造られている。妹達(私たち)はお姉様(オリジナル)とDNA、細胞から何から何までまったくおんなじつくりだから、お姉様(オリジナル)もおそらく、ミサカネットワークに介入することが可能。この仮定のもと、お姉様(オリジナル)をミサカネットワークに干渉させ、ミサカネットワークの力を一気に上昇させ、あなた、一方通行(アクセラレータ)に割けるミサカネットワークの力を大幅に上げて、一気に超能力者(レベル5)をぶっ潰す―――こういうこと?ってミサカはミサカは正確に確認を取ってみる」
「ああ、そういうことだ。――――できそうか?」
足の裏のベクトルだけじゃなく、体中の体表のベクトルを「反射」に設定し、降り注ぐ瓦礫を跳ね飛ばしながら考えられないほどの速さで進んでいく一方通行(アクセラレータ)が、ちらりと自分の背中に乗っているものを見て言う。
「…多分、出来ると思う。だけど、もしかしたらだめかも、ってミサカはミサカは少し不安げになってみる」
「なンでだめだと思うンだァ、てめェは?」
「妹達(私たち)は、異能力者(レベル2)、または強能力者(レベル3)の『欠陥電気(レディオノイズ)』。対してお姉様は、超能力者(レベル5)の『超電磁砲(レールガン)』。確かに細胞とかは同じだけど、能力者特有の『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』がかなり違ってると思うから、そこらへんからもしかしたら出来ないかもしれない、ってミサカはミサカは不確定要素を述べてみる」
「…」
一方通行(アクセラレータ)は黙り込む。
それは打ち止め(ラストオーダー)の言ってることが理解できないからではない。逆だ。理解できるから黙り込んでいるのだ。
「…ンだけどなァ」
一方通行(アクセラレータ)が、前を見ながら言う。


「やってみねェことには、分からねェじゃねェか」
いつもの一方通行(アクセラレータ)を見ている限り、考えられないような発言をさらっと言う。
「とりあえず、だ。やってみるぞ」
「…ま、一か八かだね、ってミサカはミサカは吹っ切れてみる」
と、そのとき。
タイミングを計ったかのように、ものすごい轟音が響いた。




「だから、いい加減離してって!私は10万3000冊の魔道書の原典をまるまる記憶している禁書目録だよ!?戦力になれないとでも思うの!?」
「はい、とミサカは少しあきれながらもそっけなく即答します」
御坂妹の腕の中でぎゃーわーぎゃーわーわめくインデックスを相手するのに、いい加減疲れてきた御坂妹が言う。
「あなた自身は魔力を持っていないはずです、とミサカは当然の事実を確認します」
「ぐぅっ…」
「もし持っているのなら、その10万3000冊とやらを使ってとっくに私の腕から逃げることが十分可能ですからね、とミサカは少し見下した感じの口調で発言します」
「…うう」
「結果を言うと、あなたは私の腕の中でじっとしていればいいのです、とミサカは事実を突きつけます」
「…」
もはや何も言わなくなったインデックス。
「…」
沈黙が流れる。御坂妹の少し荒い息遣いと、軽いイメージを受けるタタタッ、という音だけが聞こえる。
が、唐突に。
「!?」
インデックスの体が、ビクン!と震えた。
「?どうしましたか、とみ―――」
「止まって!」
御坂妹の声は、緊張したインデックスの声によりかき消される。
「前から、魔力が感じられる!しかも、結構でか…い…?って、え…この魔力…?」
途中からインデックスの言葉が、疑問形に変わる。
「この魔力…もしかして」
「あなたはいったい、何が言いたいのですか、とミサカは不機嫌になりながらも質問します」
と、インデックスの止まれ、という言葉をまるっきり無視して走り続ける御坂妹が言う。
「…あ、やっぱり止まって」
少し考え込むような表情を見せたインデックスが、緊張の糸を紐解きながら言う。
「多分、あの魔術師たちは仲間だよ」
「・・・ミサカは、いまだ魔術、などと言う言葉は認められない、と感じているのですが、とミサカは――――――」
「…ですから、あれは魔力を感知させないための魔術であって――――」
「そんな高等魔術を、複数同時に扱える魔術師がいるのかな?まぁ、『あの子』が人並みに魔力を持てば可能―――っと?」
御坂妹の言葉をさえぎった何者かが、こちらに気づいたように焦点をあわせてくる。
「!?インデ、ックス…?」
長い髪をポニーテールにし、ジーンズの片方を太股の根元辺りからばっさりと切って、なにより腰のベルトにむやみに長い―――見るからに2mはあると思われる―――日本刀をさしている、というパッと見いろんな意味で警察行きになりそうな女性が驚きの声をあらわす。
「…あれは、確かフィアンマ戦のときにいた…」
2mを越す長身の男が言う。その男は、髪は真っ赤、口には煙草、耳にはピアス、右目の下にはバーコードマークの刺青、両手の指10本には銀色の指輪、といういかにも神父から離れた格好をしている。だが、彼はれっきとした神父だ。さらに、ルーンを若干14歳で極めた天才魔術師でもある。
彼らは目を合わせ、そして、


「                      」




「おっ…おまえなぁぁぁぁっ!!」
上条が美琴が超電磁方(レールガン)を打ってできた穴から逃げるように全力疾走しながら、後ろにいる美琴に言い放つ。
「これくらい、予想できなかったのか!?あっちは8人!こっちは3人!!はいどう考えても狙い撃ちですねあなたのハート(心臓)を嫌な方な意味で狙い撃ちですね分かります!!!」
「うっ…うっさいわねっ!!カッときちゃったのよ!」
「学園都市第3位が少しくらいカッときたからって能力暴発するんじゃねぇぇぇぇ!!?」
「お姉様…黒子の為に、後先ためらわずに、こんなことを…」
「黒子。今はあんたにかまってやれるほど余裕ないんだけど」
「ッ!?わ、私は相手にしないというのに、この殿方はお相手するんですの!?」
「ばっ、ちがっ――――」
「ええい黙ってろ!だからお前らが喋ると緊張感がなくなるわ!!状況理解してますか!?」
うっ、と美琴が小さくうめき、ふん、と黒子がそっぽを向く。
「とりあえず、ある程度の攻撃は俺が防ぐ。その間にあいつら(超能力者)が戦いづらい地形にでもしてろ!!」
それに美琴たちが反応する前に、


「そんなに甘くはないんだけどなぁ~」


突然、上条の目の前に14、15歳くらいの少年が現れて、言葉を発した。
「ッ!?」
とっさに上条が条件反射で後ろへ飛ぶ。
「それくらいの距離をとったくらいで、僕ら(超能力者)は攻略できないよ~?」
なぜか間延びした口調で言う少年。
「あなた…空間移動(テレポート)使いですわね」
「そうだけど~?だから…」
少年が言葉を続けようとした時、
バチィッ!!!
と、その少年めがけてまったく容赦のない雷撃が襲った。
だが、美琴の能力は強大すぎるゆえ、攻撃する際、前兆のように音が響く。それを感じ取った少年は、何食わぬ顔で美琴の後ろに空間移動する。
「いきなり攻撃~?超能力者(レベル5)って、そんなに安っぽ―――」
だが、またもや少年の言葉の途中で美琴は体中から電撃を発する。やはり少年はあっさり回避するが。
「…お姉様」
黒子がつぶやく。
「…こいつは、あた―――」
「私にやらせてください、お姉様」
黒子が、『美琴の発言を遮ってまで』、言葉を発した。
「…?ちょ、黒――――」
「座標はここから北北西に47m。いいですわね?」
「へぇ~。怠慢はろうっての?」
そう少年が言ったときには、もう彼はいなかった。
「…お姉様」
黒子が、美琴のほうを振り返らずに言う。
「…私に任せて下さいな」
そういう黒子の声は、どこか震えていた。
「…」
美琴は黙る。
と、そこで突然、会話の中に入れていなかった上条が発言する。
「美琴」
ただそれだけ。それだけで何が伝わるのか。
だが、美琴は上条のほうをチラッと向く。そして、黒子の方に向き直る。
「黒子」
「なんですの、お姉様?」
「…分かってるわよね?」
「…私が、『そんな風』になるとでも?」
彼女の背中しか見えていないが、少し黒子が笑ったように見えた。
「私は死にませんわよ、お姉様」
そういって、彼女はその空間からいなくなった。




「…」
二人っきりになった上条と美琴。
なんか、途方もなく触れづらいこの空気は何ですか…、と上条は嘆いている最中である。
と、突然に。
「…あ~あ」
美琴が目をつぶって空を見上げ(建物はもう80%近く崩壊している)、吹っ切れたような笑みを浮かべて言う。
「黒子の奴…本当に、死んだら承知しないわよ…」
学園都市第3位の声が、考えられないほど弱弱しく聞こえた。
「…って事で!」
場の空気を変えるように、美琴が上条のほうを向く。
「あいつのことだから、私たちが向かっても空間移動(テレポート)で場所移動されてどうにもならないでしょうから…私たちは私たちでどうにかするわよ」
「それには全面的に賛成する上条さんですが…」
と、そこで一回言葉を切る。
「どうにかするって…具体的に何をどうするんだよ?」
この発言をした上条は、正直まともに美琴が答えられるとは思っていなかった。
「とりあえず、こっちからはちょっかい出しちゃだめね。今全力で叩かれちゃ、生きてられる可能性は限りなく低いし。まぁ、こっちに来た相手は私が適当にあしらうから、あんたはそのサポートをやって」
だが、美琴の発言は思ったいたものとはまったく違った。
「…超能力者(レベル5)ともなると、実戦経験も豊富なのか?」
「あんたほどじゃないけどね。一般人よりは遥かに多いわよ」
美琴が疲れたような笑みを浮かべながら言う。
「しっかし…」
上条が、思案気な顔を浮かべて言う。
「それにしちゃ、攻撃が少なすぎねぇか?」
「…」
これには美琴も答えられない。
「どう考えてもあっちの方が有利なんだ。こっちには一方通行(アクセラレータ)がいるとしても、俺らを潰すにはわけないはずだろ?何ですぐに潰さないんだろうな?」
「…」
やはり沈黙。
分からないのだ。相手の目的も、戦力も、能力も、何もかも。
こんな状態で、「何で相手は動かないのか」なんて聞かれても、読心能力(サイコメトリー)を持ってる能力者でもない限り、答えることは出来ないだろう。
と、そのとき。
ビュオオオ、と風が吹く音がした。
と、そう思った次の瞬間には、
「う、ぉおおっ!?」
「きゃぁっ!?」
上条と美琴の体が中に浮いていた。


「なっ…」
上条が条件反射のように右手を振り回す。
その右手には異能の力なら何でも問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。ただの風が人間の体を浮かすことなど中々考えられないため、能力者の仕業だと思ったのだろう。
だが、焦る上条たちに、


『馬鹿野郎がッ!!おとなしくしてやがれッ!!』


一方通行(アクセラレータ)の叫び声が、どこからか聞こえてきた。
「?こ、これ、一方通行(アクセラレータ)の能力でやるの?」
美琴が不思議そうな顔をしながら言う。自分の体が宙に浮いているのにパニックなどに陥らないのは、やはり戦闘経験が豊富だからなのだろう。
しかし、その上条たちを不安の中に落とすようなことが起こった。


突然、そこら中からいきなり炎が現れた。


「は…?」
突然のことにうまく反応できていない上条。美琴にいたっては発言も出来ない状況だ。
だが、すぐに上条の頭のスイッチが切り替わる。
「くそっ!また能力者かよ!?」
そう上条が叫び、それにより美琴が事態を受け入れる。
「発火能力(パイロキネシス)!?でも、どうやったのよっ!?」
今度は少しあわてる美琴。
対照的に、上条が冷静に思考し、叫ぶ。
「一方通行(アクセラレータ)!この空気のベクトル(向き)を俺のところだけ戻せ!!」
今は上空5mくらいのところに浮いている上条。もし一方通行(アクセラレータ)の能力が解かれたなら、右手(イマジンブレイカー)を下に向けて地面に着地するつもりだった。」
だが、一向に上条の体が重力により落下する気配はない。
「お、おい!一方通行(アクセラレータ)――――ッ!?」
大気を操っているはずの能力者の名を叫ぶ上条の前で、明らかに炎の威力が上がった。


「って、ちょっと待てこれはやばいだろッ!?」
5m近く浮いている上条のつま先に、炎が触れたり触れなかったりする。
「あーもう!何やってんのよっ!!」
いらついた声で美琴が言い、自身の髪の毛から電撃を生み出して上条の足元の炎をえぐる。
「ッ!?いや美琴、今のはおそらく厚意でやった(と信じたい)行動をとったが、こっちもこっちで危ないぞ!?」
「うるさいわね!そんなに火だるまにされたいならご自由にっ!」
「てか、何でお前そんなに不機嫌!?」
とか何とか、コメディじみたやり取りをやっている上条たちだったが、再び炎の威力が増すと騒ぎ出した。
「いやマジでやばいマジでやばい。美琴!この炎ってどうやって生み出してるものなんだよ!」
「はぁ!?そんな初歩的なこともあんた分からないわけ?まったく不勉強にもほどが――――」
「とりあえず説教は後!まずはこっち(炎)だろ!?」
「だから、発火能力者(パイロキネシスト)による者よ」
「…いや、あの…では、パイロ何たらさんはどうやって炎を…あぢぃっ!?」
「ったくっ!!」
美琴が先ほどよりかなり攻撃的な電撃を地面に放つ。それにより少しは炎が吹き飛ぶ。
「対象物の運動力を上昇させて摩擦熱を起こし、炎を出してるのよ。ただそれだけ」
「…あの、この場合での対象物とは…?」
「空気とか、それに含まれる塵とかじゃないかしらね?」
「…そんな物の運動を操れんのかよ…」
上条がうんざりした声で言う。
「というか、こんなにのんびりしていて大丈夫なんでしょうか?」
「じゃあ、他にどうしろっての?」
「…」
上条は無言。代わりのように美琴が口を開く。
「しっかし、相手はどうやってこっちの居場所が分かってんのかしら?視覚系能力者でもいんのかっての」
「…」
やはり上条は無言。
と、思われたが、
「あ、そういや…さっきの一方通行(アクセラレータ)の声はどうしてこっちに届いたんだろうな?」
「?何のこと言ってんのあんた?」
さっきの一方通行(アクセラレータ)の声について放したところ、美琴に不思議そうな顔をされた。
「は?お前、聞こえなかったのか?」
「…」
今度は美琴が無言になる。
「…空気のベクトルでも操ってるのかもね…だけど、そんなこと出来るんならさっさと炎のベクトルを操ればいいのに…」
半分独り言のような美琴の声。
「…って、あれ、炎って…?」
上条が、美琴の言葉で思い出した炎について、疑問を投げかける。
「なんか、消えてますけど」
あたりを見渡す限り、くすぶる程度の炎ならあるが、それ以外のものは見当たらない。
「…今の状況、どうなってんのよ…?」
美琴が不安そうに言う。
「いや、てか」
上条が、なぜかものすごく不便そうな顔をして、
「炎消えてんのに、なぜ僕たちは中に浮いてなければならないのでしょうか?」
「…」
しばらく、沈黙の時間が流れそうだな…
一応一時的に危機は去ったのに、なんか釈然としていない上条は脳内でつぶやいた。




「チッ…」
一方通行(アクセラレータ)が目の前にいる『敵』をにらみつけて、小さく舌打ちする。
目の前の敵は、3人。
「ふむ。その少女は戦力にはならないのだな?」
「あら。そちらの戦力にはならなくても、こちらの戦力にはなりそうですわよ?」
「…それは、あの少女が彼に対する人質になる、と言っているのですか?」
その全ては超能力者(レベル5)。しかも、能力などはまったく分かっていない。ここにくるのには空間移動(テレポート)を使って来ていたから、2人は空間移動の能力は持っていないだろうが。
「はン。俺に人質なンて有効だと思うのかァ?」
一方通行(アクセラレータ)は、10m程度はなれた場所に待機させている打ち止め(ラストオーダー)のほうをチラッと見、すぐに相手に向き直り獰猛な笑みを浮かべながら言った。
「ええ。まず、そのような虚勢を張るところからして効果はかなりあるものだ、と予測できます」
「…まァ、勝手にしやがれ」
ペッと、近くに唾を吐きながら言う。
正直、一方通行(アクセラレータ)だけで超能力者(レベル5)の3人くらい倒すのは分けないだろう。
もともと次元が違うような強さを持っているのだから。
だが。
打ち止め(ラストオーダー)を人質にとられれば、形勢はその瞬間に逆転するだろう。
「打ち止め(ラストオーダー)、もっと下がってろ」
「…うん」
打ち止め(ラストオーダー)が小さくうなずき、彼らに背中を見せずに小走りに下がる。
「本当に人質として有効なようだな…ならば」
一方通行(アクセラレータ)はこの能力者を同時に相手しても、打ち止め(ラストオーダー)を奪われるとは思わなかった。
しかし、そんな幻想はすぐに壊される。
「ッ!?」
打ち止め(ラストオーダー)が、声にならない悲鳴を上げ、一方がそちらを振り返ると、
もうそこに彼女はいなかった。
とっさに首を元に戻す。
そこには、
「人質ゲットー」
やる気なさそうな女に頭をわしづかみにされている、打ち止め(ラストオーダー)の姿があった。


その、打ち止め(ラストオーダー)の呆然とした顔を見た瞬間、
「っとぉ。ちなみに、私は超能力者(レベル5)の『電撃使い(エレクトロマスター)』だけど」
足の裏のベクトルを半分操作した一方通行(アクセラレータ)の思考を先読みしたかのように、打ち止め(ラストオーダー)をわしづかみにしている女が言った。
「…テメェ。今、自分が何してンのかちゃンと理解してンのかァ?」
あくまで、冷静を保った『ような』表情をして一方通行(アクセラレータ)が言う。
「うん?それは、このこの頭ん中に今すぐ8億ボルトの電流流してほしいってこと?」
その一方通行(アクセラレータ)の表情と声をあざ笑うかのように女が言う。
くそっ、と小さく一方通行(アクセラレータ)がつぶやいた。
とりあえず、打ち止め(ラストオーダー)の奪還が最重要項目だ、と一方通行(アクセラレータ)は考える。おそらくあいつらは打ち止め(ラストオーダー)を乱暴に扱えな


「意識を逸らしすぎではないか?」


反射的に後ろを振り向く一方通行(アクセラレータ)。だが、そこには誰もいない。
「なかなかに動揺しているようだな。そんな状態では、私一人とはいえ倒せないぞ」
また同じ男の声がした。
どこにいるのか、探ろうとした一方通行(アクセラレータ)は、
「ッ!?」
とっさに足の裏のベクトルを操り、その場を飛びぬく。


次の瞬間、一方通行(アクセラレータ)が一瞬前までいた大地が爆発したかのように吹き飛んだ。


一方通行(アクセラレータ)がベクトルを操作した場合、足元の地面は確かに少しは爆発したような運動をする。だが、ここまで激しくねェ、と一方通行(アクセラレータ)は心の中でつぶやく。
「ほう、今の攻撃がかわせるか。さすがは学園都市第1位、少し見くびっていた」
またすぐ近くで男の声がした。
無言で一方通行(アクセラレータ)は声のしたほうに腕を振る。その腕が少しでも相手の体に触れればその時点で一人戦闘不能だ。
だが、その腕は宙を切った。
一方通行(アクセラレータ)は途中でその腕を止め、周りを見渡す。
だが、どこを見渡してもあの男はいない。打ち止め(ラストオーダー)を掴んでいるあのクソ女は憎たらしい笑みを浮かべて構えもしないで立っているし、能力も分からない無表情な女はその女の後ろにただ突っ立っている。
やはり、どこを見てもあいつはいない。
と、突然。
「まだ、確認してない場所があるはずだが。それさえも分からない、とはさすがに言わせぬぞ」
頭上から、あの男の声が聞こえた。


とっさに、一方通行(アクセラレータ)が天を仰ぐ。
そこには、
空中10m近くを浮いている人間がいた。
「10mくらいならなんともないと思っていたが…少々酸素濃度が薄いな」
『そこ』にいるのが当然、とでもいいたげな口調で言う男。
「…念動力(テレキネシス、か」
「ご名答。しかし、一般のものとは違うが」
そう男がいい、いきなり一方通行(アクセラレータ)の頭めがけて急降下してくる。
普通なら頭を庇うか、その場を逃げるかするだろう。しかし、一方通行(アクセラレータ)はその能力ゆえそれをしない。むしろ、今男が行っている行為は地獄の口に自分から飛び込むようなものだ。
『一方通行(アクセラレータ)』に触れられたら、それでおしまい。
だが、一方通行(アクセラレータ)はその光景を見て目を細めた。
一方通行(アクセラレータ)の髪に触れる寸前のところで、男が『停まって』いる。
どういう原理でそうなっているかは一方通行(アクセラレータ)には分からない。だが、例えどういう原理があろうとも、一人の少年の右手を除けば一方通行(アクセラレータ)の皮膚は『殺人兵器』だ。
その『殺人兵器』である右手を一方通行(アクセラレータ)は無造作に伸ばす。
…はずだった。
「…あァ?」
一方通行(アクセラレータ)の腕が動かせない。
いや、冷静になってみると体中が動かせなくなっていた。
さらに冷静に現状を分析しようとする一方通行(アクセラレータ)に、
「だから、貴殿はいささか緊張感がかけすぎではないか?」
少し怒ったような口調で男が言った。
「緊張感ン?そンなもン、一般人にしか必要とされてねェだろォが。何で俺がわざわざテメェごときに『緊張』なんて面倒くさいことしなきゃならねェんだよォッ!」
後半部分を叫ぶように言い放った一方通行(アクセラレータ)の腕が開放される。
どういう理論で腕が動かなくなったのかは分からなかったが、とりあえずベクトル操作で解除できた以上、『向き』はあるのだろう、その原因には。
だが、一方通行(アクセラレータ)はそんなことをまったく考えずに、勢いよく天に向かって手を突き出した。
まるで、勝利を勝ち取った者のように。
だが、
また、一方通行(アクセラレータ)の手は宙を切った。


だが、
今回はそれで終わらない。
そのまま、一方通行(アクセラレータ)は周りの大気のベクトルを操作し、自分を中心にして突風を巻き起こす。もちろん、打ち止め(ラストオーダー)がとらわれている場所を除いて。
ズゴォォォォッ!!!
もはや風が起こす音か、と疑いたくなるような音があたりに響いた。


しかし、
やはりあの男は無傷だった。
服にかかった埃を払い落とすような動作を男がする。
そしてため息をつき、
「まさか、もうこれで手札(カード)を使い果たした、とは言わんな?」
瞬間。
男が消えた。
その事実が一方通行(アクセラレータ)に知覚できた瞬間、


一方通行(アクセラレータ)の体が真後ろに10m近く吹っ飛ばされた。


「え…?」
打ち止め(ラストオーダー)が、悲鳴でもなく間の抜けた声を漏らす。
「はん。学園都市第1位っつっても、所詮はこの程度、ってとこなの?」
打ち止め(ラストオーダー)の頭をわしづかみにしている女が言った。
「まあ、詰まる所ただの『人間』であることには変わりませんから」
隣にいた無表情な女も言う。
そして、
「…失望したな。こんなものが『1位』ならば、絶対能力者(レベル6)は必要な―――――」
男の声が、途中で途切れた。


目の前で、一方通行(アクセラレータ)が起き上がったからだ。


今、この地帯は両者の激突、特に一方通行(アクセラレータ)が起こした突風により、地面のアスファルトは地震が起きたかのように亀裂が入っている。そこにかなりの速さで打ち付けられれば、少なくとも『人間』ならば戦闘不能には陥るはずだ。
だが、
一方通行(アクセラレータ)は傷ひとつすら負っていない。むしろ、その口元には避けるような笑みが浮かんでいる。
「さァて」
その口から、心底楽しそうな声が発される。
「ンじゃァ、そろそろ時間も稼げただろうし…」
さらに一方通行(アクセラレータ)の口が不気味に開いていく。
「それよりも、俺のほうが持たねェ。…弱者のふりするなンざァ、考えられるかってのォッ!!」
その一方通行(アクセラレータ)を見た男が、思わず後ず去りする。
「そろそろ終いだぜェ!雑魚どもォォォ!!!」




「しっかしさぁ、あんたも馬鹿だよね~」
目の前にいる少年が言う。
「何がですの?」
無表情な顔をした黒子が問う。
「人(他人)のために自ら命を賭ける、って言う行為が、だよ!まったく、何でそんなことしたかなぁ!?もしかして、僕(超能力者)に勝てるとか思っちゃった!?ハッ!その気になれば今すぐにでもあんたを殺せる相手に対して!?もうほっんと―――――」
「お黙りなさいな。おしゃべりな男はあいにくタイプじゃないんですわよ」
…じゃあどんな男がタイプなんだ、と聞かれたらいろいろと話がまずい方向に進みそうな発言を黒子がした。
それを聞いた少年は、
「…ああ、だめだ。だめだねもう。救いようがないって言うか…もう殺さなくちゃ気がすまねぇな。
ってことで、とっととはじめちゃっていい?」
完全な無表情になった少年が言った。
「どうぞご自由に。そもそも、私はあなたに『戦闘を始めるな』なんて言葉はかけてないと思いますが?」
その言葉と同時に、
黒子が空を仰ぎ、わけの分からない言葉を発した。
「ッ!?」
何かを感じた少年が、とっさに防御体制を取ろうとする。
と、そこに。
黒子のあまり脂肪も筋肉もついていない足が現れた。
そのまま黒子の足は少年に叩きつけられる。
少年は1m程度後ろにのけぞり、その場から消えた。
それと同じタイミングで、黒子も空間移動(テレポート)を発動する。
結果、一瞬前まで黒子がいた空間に少年が忽然と出現し、その少し横に、いつの間にか金属矢を手中に収めた黒子が出現した。
その『予想外』な事実に少年は思考、行動を停止し、その『予想通り』の事実に黒子は金属矢を空間移動(テレポート)させる。
少年が後ろに縫い付けられるように倒れこむ。
その少年に、黒子が覆いかぶさるようにのしかかる。
華奢な少女とはいえ、『人間』の体重だ。
少年は『ぐっ』とうめいて口から空気を吐き出した。
そして黒子はスカートを一切躊躇することなくめくり、太ももに巻きつけてあるベルトから金属矢を数本取り出し、さらに少年を縫いとめるように空間移動(テレポート)させる。
ギンギン、と不自然な音が響き、少年の服が地面に縫い付けられる。
と同時、黒子の足が地面を思い切り叩きつける。
それにより少年の演算が途中で途切れ、空間移動(テレポート)が失敗する。
誰がどう見ても、大能力者(レベル4)の白井黒子のほうが圧倒的に有利だった。


そして黒子はそのまま少年の右手首を掴み、強引にひねる。
「!?」
少年がとっさのことに手を振り解こうとするが、なぜか振りほどけない。それほどに少年の精神状態はボロボロだった。
ゴギッ
という音と共に、少年の悲鳴とも雄叫びとも捉えられる叫びが響いた。
だが、黒子は興味なさそうな顔をし、あろうことか今度は左足の足首を掴みにかかる。
「ふっふざけんじゃねぇぇぇぇぇっ!!!!」
少年が叫び、その左足を黒子の顔に打ちつけようとする。
ガスッ
今度は黒子の顔から音がした。
にたぁ、と笑う少年に対し、黒子は
ゾッとするような笑みを少年に返す。
そして、自分の顔に触れている足を掴み、一回勢いをつけるようにひざを後ろに曲げ、そのまま――――
ブチブチッ、という音が両者の耳に届いた。
あまりのことに少年は無表情になる。
黒子はその手を離し、少年の足は支えを失い地面に打ち付けられる。
その、トン、という音と呼応して
やはり同じような声があたりに轟いた。
おそらく少年の足は、筋肉と神経が千切れたのだろう。黒子の腕力では、それが精一杯だ。
だが、もちろんそれでも十分な威力がある。
もはや、少年は戦意を失っていた。いや、失うほかなかった。


ここで少年が戦う意思を持っているならば、あの『悪魔(少女)』に何をされるか、分かったものではない。
「…なんでだよ」
少年がポツリと呟く。もはや痛みは感じていないようだった。
「何で、空間移動(テレポート)が出来なかった」
独り言のような問いかけに、黒子は静かに応える。
「学園都市には様々な能力者が存在していますが、どれも『演算』する必要がありますの」
一泊置き、黒子は続ける。
「もちろん、能力や使用者のレベルによって、その演算の高度は違ってきますわ。その中でも私たち、空間移動(テレポート)を持つ能力者は、最高級の演算能力を求められますの。それこそ、少しの不安、痛みだけでも演算が中断されるほどの。もちろんいきなりわけの分からない言葉を発せられたり、近くで地面をならされたり、などされては演算など出来はしませんわ」
黒子は淡々という。
「チッ…だからあの時…」
黒子の行った行動には、そのような意味があったのだ。
だが、ふと疑問に感じたことを少年は問う。
「だけど、何であんたは僕が空間移動(テレポート)を使うタイミングが分かった?」
「直感、状況、表情、その他諸々…特にあなたは自分の行動を気にしていないようでしたから、タイミングを計るのは簡単でしたわよ」
なんでもないことのように黒子が言う。
「…ハハッ。それに同じ能力者だしな…だから超電磁砲(レールガン)に任せなかったのか」
「いえ」
少年の言葉を、黒子は即座に否定する。
「あの判断を下したとき、そんなところまで私は思考がいってませんでしたわよ」
「…じゃあ、何で」
「決まってますわ」
黒子が、やっと表情を緩めながら言う。
「これは、あなたにも言えることなんですが…」
そう前置きし、


「人間は、人を傷つけることを目的として行動するときより、人を守ることを目的として行動した方が、チカラが出るものなんですわよ」

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