とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 7-613

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匿名ユーザー

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「ふむ…」
垣根聖督が、『精神操作(メンタルコントロール)』からの報告を受け、つぶやく。
「やはり、な。超能力者(レベル5)程度では攻略できないか」
『ッ!?』
その聖督の言葉に、驚きと敵意を表す超能力者(レベル5)たち。
「なッ…」
念動力(テレキネシス)の男が、声を漏らす。
「その口調からすると、我らが負ける事が分かっていたと!?」
「ああ。もちろんな」
どうだっていい、という表情で言う聖督。
「んだったら、何で増援はなかった!?こっちは殺されかけたのよッ!!」
電撃使い(エレクトロマスター)の女が言う。
「知ったことか」
「…殺す」
聖督の言葉を受けた空間移動(テレポート)の少年が、演算を開始する。
が、

「暴れるなヨ、モルモット。さっさト情報ヲこちらニ渡してもらおうか」

脳に声が直接響いた、とその場にいた者が全員感じた。しかし、ノイズのようなものが聞こえないどころか、通常の会話よりも綺麗に聞こえる。
そんな事を考えた直後、
「ぐぇぉぁ…」
突然、少年が倒れる。
頭を必死に抑える少年。
「…何よ、これ」
電撃使い(エレクトロマスター)の女が、妙に無表情な顔で言う。
「ただの能力だ。貧弱な超能力者(レベル5)の、な」
その言葉は、聖督のものだった。
「貧弱…ネ。確かニこの世界でハ貧弱かモ知れないナッ!」
今度は、やはり脳に叩き込まれるような声が響く。
そして、
やはり先の少年と同様にして、念動力(テレキネシス)と電撃使い(エレクトロマスター)がうめき声を上げながら床に倒れふす。
「…超能力者(レベル5)で、これほどの力差があるとはな」
「いったい、どこでこんなに力の差がついてしまったのでしょう?それとも、『基』から違うのかしら?」
次は、女の声が聞こえた。
そう知覚した次の瞬間、女は聖督の目の前に現れる。
「そうかもしれんな。五感に訴えかける能力は稀だし、力も強い」
聖督が言う。
「それにしても、さすがに力の差がありすぎる気がしますが。あの戦場において、無傷のような私たちもいれば、そこに転がってるような者もいますが」
無表情な女、精神操作(メンタルコントロール)が、壁にもたれかかって半分死んでいる発火能力者(パイロキネシスト)を見て言う。
「…いや、彼の場合は相手が悪かった、と言うことも出来るが?」
と聖督が言うと、
「いや、実際の超能力者(レベル5)も、超電磁砲(レールガン)と未現物質(ダークマター)の間には埋められない空間があるけど」
ぶっきらぼうな女の声がした。
その女は、もとから聖督のそばにいた。が、それを肌で感じ取ることは出来ない。
「…とりあえず、このデータを絶対能力者(レベル6)と戦闘可能な超能力者(レベル5)に注入する」
聖督がそうつぶやき、自分の手を開く。
すると、

突然、戦闘可能とはいえない超能力者(レベル5)の体が光り、その光が聖督の掌に集まった。

「…ほう」
聖督が、感嘆の声を上げる。
「これは、本当に手強いな」
その光を握りつぶすように、手を閉じる。すると、光は収まった。
また聖督が手を開くと、そこには4つの『結晶』が在った。
彼は、それを宙高く放り投げる。
また光りだす『結晶』。
その光を浴びる超能力者(レベル5)、絶対能力者(レベル6)。
「さて」
聖督が言う。
「まずは君たちに彼らを、『本気』で潰しにかかってもらおうか」
『精神操作(メンタルコントロール)』、『視覚潰し(ライトメーター)』、『聴覚潜り(ノイズキラー)』、『触覚壊し(センサーブレイク)』。それぞれを見渡し、垣根聖督は言った。


「…で?」
目の前には、カエル顔をした医者がいる。
「何でいきなり…」
その医者を取り囲むように、少年少女(には見えない14、8歳存在)がいる。
「目立った外傷がないっつーのに…」
それらを代表して、とある少女たちが問う。
「無理矢理とうまに注射をうって眠らせたりしたの?」
その少女たち…というか、少年たちも含め、相当な面子だった。
一方通行(アクセラレータ)、打ち止め(ラストオーダー)、御坂美琴、滝壺理后、浜面仕上(…)、
神裂火織、ステイル=マグヌス、御坂妹(10032号)、インデックス…
こんな人間たち(ともいえないような化け物たち)が集えば、小さい国家くらいなら丸々一つ潰せそうな者である。
そして、そんな彼ら(彼女ら?)をここに集った理由といえば、
「…いやぁ、別に僕だってやりたかったわけじゃないんだよ?『上層部(うえ)』からの命令でね…」
冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)が、困ったような顔になる。
そう。
彼女ら(でいいのだろうか)が集った理由。
それは、たった一人の人間のため(だが、やはりその人間ももはや人間とはいえそうにない)。
上条当麻。
またの名を、幻想殺し(イマジンブレイカー)。
そのもののために、ここまでの人間が集った。
(…本格的に、『上条勢力』ってのは広がりつつあるねぇ…)
冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)がため息をつきかける。
ここにいる面子だけでも相当なものだ。それなのに、この少年を中心とした『上条勢力』は、まだまだ仲間がいる。それも、やはりかなり強力だ。
世界が彼に注目するのも分かる。
分かる、が…
「流石に、これはないと思うな…」
今度こそため息をつく冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)。
「?何の話よ?」
それに御坂美琴が、不審そうな顔になる。
冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)が言った、『これ』とは、2つの事を指す。
一つは、上条当麻を眠らせて行った『情報』の採取。
そしてもう一つは、
「それで、彼はいつ目覚めるのでしょうか?」
「いや、もういっそのこと私が起こしてあげてもいいかも」
「そうね。あの馬鹿ならそうそう死にそうにないし」
「そんな行為は、誰であろうとミサカたちが許しません、とミサカは少年を守るように立ちはだかります」
「ふふふーん。下位個体がでしゃばるというならば、上位個体である私が出向かぬとでも思ったかーっ!
ってミサカはミサカは適当なことを建前にして面白そうだから会話に混ざってみたり」
「私たちはお子様なあなたと違い、本気なのです、とミサカは経験者としての意見を述べて見ます」
「!?わ、私、たち!?た、確かに個人的に彼には借りがありますが、そこからそのような感情に無理矢理結びつけるのはいささか思慮に欠けるかと――――ッ!!」
「では、あなたは彼に何の感情も抱いてない、と?そういいたいのですね?とミサカは敵兵が一人減ったか、と少し安心してみます」
「て、敵兵…いや違いますっ!敵とかそういうところからして全く方向が違うと思うのですが!!」
「その前に、そこの二人は何故にそんなにも静かなんですか、とミサカは未知の恐怖に震えながらも
勇気を振り絞って敵兵を確認します」
「いや、何でかって言われても…ねえ?」
「うん。もはや、そういうの隠しても意味ないんじゃないかな?」
「うわぁー…なんか、大人な雰囲気?ッてミサカはミサカはちょっと退いてみたり」
「…」
もう一つは、これだった。
彼はものすごく不幸である。どれくらい不幸かというと、知らない間に摂氏3000度の剣を突きつけられていたり、その余波から生まれる羽に触れただけでも大ダメージを食らうという謎の光線を受けたり、
思ったとおりに現実を歪めることが出来る相手に右腕を切り飛ばされたり…
と、これは彼の不幸の50分の1にも満たない気がするが、これくらいの不幸レベルである。
それなのに。
(…彼自身は絶対意識してないだろうけど、本当に人気があるねぇ…そっちもそっちで危険?)
冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)が一人で考えた。


結局、その夜は戦闘のせいもあってか、全員眠りこけてしまった。12時あたりに。
…と、そう思っていた冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)なのだが。
「ッ!?って、ちょっとあんた何やってんのよっ!」
「ふふーん。これが居候の特権――――」
「何が居候の特権ですか!とりあえずあなたのことを彼から引き剥がします、とミサカは珍しく怒り口調でまくしたてますッ!!」
「…わ、私はどうすれば…?」
「…」
本当に困ったもんだ。
打ち止め(ラストオーダー)はもう寝ているだろうが、だからといってさほどの問題はないだろう。
彼女たちにとって、まだお子様である打ち止め(ラストオーダー)が居ようと居まいとかまわないであろうから。
「青春満喫?でも、彼にとってはこれも『不幸』になっちゃうんだろうけどね…」
しかしこんなに女の子に囲まれて、どこが『不幸』だ、と思わず思ってしまう冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)だが、
「…あァ。――――・・ったのは俺…がう」
聞き覚えのある声が、彼の耳に入り込んできた。
「…こっちもこっちで問題なんだろうけど…」
そういいながら、とりあえず冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)はその場を後にした。



「結局、あいつらの目的はなンなンだか」
冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)が彼の声を聞く少し前、一方通行(アクセラレータ)はその発言をした。
場所は、病院内の待ち受け、といったところか。
「インデックスをやすやすと見逃した点を見ると、おそらく魔術サイドに関係があるとは思えないけど」
ステイルが、煙草をふかしながら興味なさそうに言う。ちなみに、彼の巨体によって隠れてるだけであって、実は彼の背中には『院内禁煙禁止』とそっけなく書かれたプレートがある。その前に、年齢的な問題もあるのだが。
「私の『能力追跡(AIMストーカー)』に間違いがなければ、彼らは確実に『超能力者(レベル5)』です」
滝壺理后が、いつもの口調とは全く違った口調で受け答えする。
「その超能力者(レベル5)を使って、何をしたかったのか…だな」
浜面仕上が、神妙な表情を造り言う。
「そういやァ…テメェ、なんであン時、超能力者(レベル5)が襲ってくる、なンてことわかったんだァ?」
一方通行(アクセラレータ)が滝壺に問う。
能力追跡(AIMストーカー)。
その能力は、一度記録したAIM拡散力場の持ち主をどこに居ようとも把握、追跡が出来る、というものである。応用的に、そのAIM拡散力場を乱すことによる攻撃も出来るが、この状況では関係ない。
「…分かりません。なぜか、能力の使用がいつも以上にはかどり、超能力者(レベル5)たちの居場所が確認できたんです。彼らのAIM拡散力場は、一般のAIM拡散力場とはかけ離れていますから。
と、言っても…」
「通常なら、そンなことは出来ない、か」
一方通行(アクセラレータ)が、頭に手をやりながら言う。
「確かに、俺もあの戦いのとき、いつも以上…どころか、『絶対能力者(レベル6)』になったンじゃねェのか、って思っちまうほど能力の力は異様に跳ね上がった」
「へぇ。こっちには関係ない話だね。まぁ、僕は『あの人(ローラ=スチュアート)』の魔力を借りてたんだけど」
ステイルが、不機嫌そうに自分の懐を眺めながら言う。おそらくルーン魔術に使うカードが入っているのだろう。
「それについては、あいつらからも聞きてェンだが…」
一方通行(アクセラレータ)が、上条にあてがわれた病室をうっとうしそうににらみ、言う。
「…滝壺。悪いけど、あいつらのこと連れてきてくれないか?」
「無理だと思う。恋する乙女を邪魔する者は問答無用で処刑」
浜面が気を利かせて滝壺に頼んだのだが、あっさり断られた。しかもよく分からない説明付きで。
「…まァ」
一方通行(アクセラレータ)が頭をかきむしりながら言った。
「とりあえず、俺らだけでも戦果報告、その後作戦会議、といくか」

と、いうわけで。
(少し、とある事情で参加できなかった人間がいたが)戦闘報告は終了した。
「…しっかし」
一方通行(アクセラレータ)が、ポツリとつぶやく。
「意外にあっけなかったよなァ、『超能力者(レベル5)』」
「…いや。そんな発言は普通では考えられませんが…」
滝壺が、引き気味に言う。
「だけど、実際そうだね。これだけで『上条勢力』を潰そう、なんて考えてるんなら、それはまさしく自殺行為だよ」
ステイルが、やはり煙草をふかしながら言う。
「…テメェ、『そっち側』の人間じゃなかったかァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、ステイルをにらむ。
「今は、イギリス清教と学園都市が手を組んでる、って事ぐらい知ってるだろう?ってことは、能力の発現をどのように促すか…こんなところまではいかないけど、ある程度の事情は『上層部(うえ)』には報告されるわけだ。これでも一応、『必要悪の教会(ネセサリウス)』のエージェントだから、これくらいなら知っている」
つまらなさそうに言うステイル。
「大体、どれくらいまで分かってるんだ?」
浜面仕上が問う。
「本当に基本的なことだけだね。能力者とは何か、レベルとは何か、強力な能力者のちょっとした情報、
あとは学園都市が抱えるいくつかの組織のようなもの…まぁ、『グループ』とか『上条勢力』といったものをさすらしいけど」
「…オイオイ。いつのまに『グループ』はそこまで安っぽくなっちまったンだァ?」
一方通行(アクセラレータ)が疲れたような表情を浮かべる。
「んじゃ、次は作戦会議、か?」
無理に笑顔を作った浜面が言う。『グループ』という言葉に少しは聞き覚えがあるらしい。
「…実際、相手の『能力』さえも分からない状況で、作戦会議なんてそうそう出来ないと思う」
滝壺が、無表情に言う。
「の前に」
ステイルが、一度話を中断させて言った。
「次の敵についてなんだけど」
その言葉に、
「…あァ。『あいつら』か」
一方通行(アクセラレータ)が、吐き捨てるように言った。おそらく、一方通行(アクセラレータ)の思考には『精神操作(メンタルコントロール)』の顔が浮かんでいるだろう。
「滝壺の話が本当だとすると、超能力者(レベル5)は後4人残ってる、ってことになるな」
浜面が言った。
「で、その超能力者(レベル5)たちの能力は、少しは分かるかい?」
ステイルが、なるべくやさしげな表情を造り、滝壺に聞く。しかし、それが全くの逆効果であることはステイルには分からない。
「い、いえ…な、なんか見えない『壁』のような者で、私の能力が錯乱されてしまって…」
浜面が、ステイルをにらみつける。まぁ、当然のようにステイルはスルーだが。
「一人は、精神系能力者だ。『精神操作(メンタルコントロール)』とか名乗ってやがった」
一方通行(アクセラレータ)が発言する。
「それ以外は全くの不明だが…」
舌打ちをする一方通行(アクセラレータ)。
「そんな状況で、作戦会議…ねぇ」
ステイルが、少し笑いながら言う。
「でもまぁ、何もやらないよりはましじゃねえか」
浜面が、場の雰囲気を和ませるように言う。
「…チッ」
一方通行(アクセラレータ)が、なぜか首筋にある電極のスイッチを入れる。
「ッ!?」
とっさに滝壺を庇うように前に出る浜面。
滝壺は、能力使用のための演算をもう開始している。おそらく、AIM拡散力場を乱そうとしているのだろう。
ステイルは、忌々しそうな表情になり、なんと滝壺の後ろに隠れてしまった。
そんな面々を見た一方通行(アクセラレータ)は、
「…マジで潰すぞコラ」
ため息とともに言う。
「…?」
その発言を、深く理解できない一同。
「…このスイッチを入れると、能力が使えるってのは、テメェら分かってンだろォ?」
一方通行(アクセラレータ)が問うが、なぜか誰も答えない。仕方がないので、一人で話を進める超能力者(レベル5)。
「能力が使用できるってことは、複雑な演算が出来る、ってことだ。つまり、頭の処理能力が跳ね上がる」
一方通行(アクセラレータ)が、首の間接をゴキゴキ鳴らしながら言う。
「もう一度、一から話を聞かせろ。俺が最善の策を立ててやるよ」

そんなこんなで。
ある程度の作戦は立った。
つまり、
「最初には、俺と上条、神裂の3人で行く」
「…何故だか、とりあえず説明してもらおうか」
一方通行(アクセラレータ)の発言に、ステイルが問う。
「俺は科学サイドのトップクラスの『超能力者(レベル5)』として。神裂は魔術サイドのトップの
『聖人』として。そして上条は、敵の戦力が未知数な分、連れてって損した、なんてことは起きないだろうからとりあえず。安心しろ。俺と神裂が援護する」
一方通行(アクセラレータ)が、電極のスイッチを切りながら言った。
「…ふむ。一理あるが、魔術側の人間は必要ないんじゃないかな?」
「いいや。能力者には能力者なりの『弱点』があるからよォ。その『弱点』を突かれると、正直俺でも戦闘は出来ねェ。そんな状況の中、魔術サイド側の人間…しかも、世界に20人といない『聖人』なんつー莫大な戦力があれば、とりあえずその場を脱し、『弱点』を突いてくるシステムをぶっ壊す、くらいのことが出来れば、殆どの状況に対応できるだろォ?」
これが、学園都市最良の頭脳が導いた結果。
だが、
「それくらいなら、別に少し頭の回転がよければ出来るんじゃ…?」
浜面が、余計な事を言う。
「ちょ、はまづら――――ッ!」
滝壺が、あわてて浜面の前に出る。癇に障った、とでも思ったのだろう。
しかし、
「馬鹿にしてンのかァ?これだけなはずねェだろ」
一方通行(アクセラレータ)が、浜面を睨み付けながら言った。
「…だけど、それ以上に何考え――――」
「今言ったのは、『戦線』に出る奴のことだけだぜ?それ以外にも、こっちには有力な戦力が、ゴチャマンとあるじゃねェか」
「あ」
思わず、浜面が声を漏らす。
「まァ、この状況で、ほかの戦力分配を考えても良いんだがなァ…」
そこで、一方通行(アクセラレータ)の言葉がとまる。
「?」
ステイルが、怪訝そうな顔つきをする。
「いや、今回の戦いは、俺らが負ければ学園都市側は多大な損害を負うことになる」
「たとえば?」
「一つ。俺たちが負ける、ということは、『上条勢力』の敗北を意味する。それ以外にも、有力な『超能力者(レベル5)』や『大能力者(レベル4)』を投入してくるだろォ。そいつら全員がやられちまえば、学園都市の戦力は大幅にそがれる」
一方通行(アクセラレータ)が、ここで一息ついて続ける。
「二つ。俺たちが負ける、ということは、つまり敵勢力にさらに学園都市を荒らされることを意味する。
敵がどンな思惑で今回の事件を起こしてるのかは知らねェが、学園都市をよくは思ってねェはずだ。
戦線が崩壊しちまえば、さらに侵攻をするに決まってる。つまり、それほど学園都市はさらに損害を負う」
「…結構なものだな」
浜面が、ため息をつきかけて、
「まだある」
一方通行(アクセラレータ)がとめた。
「三つ。俺たちの敗北は、つまり『学園都市の敗北』を意味する。結果的に『学園都市』が勝っても、
それまでには多大な時間を要求するはずだ。学園都市の『内』と『外』では技術がかけ離れてるっつっても、学園都市が交戦状態になれば『外』だって嗅ぎ付ける。それをニュース沙汰にされれば、学園都市の状況がほかに露営される。この隙にローマ正教側が仕掛けてくるかも知れねェし、学園都市と手を組んでる組織がその関係を断つかも知れねぇ」
そこまで言った一方通行(アクセラレータ)は、
「…一言でまとめると」
そして言う。

「…『俺たちの敗北』は、直接的に『学園都市の敗北』になっちまう、ってわけだ」

「…へぇ。たいそうなことだ」
ステイルが、あまり興味なさそうに言う。
「って…」
あまりのことに反応を鈍らせていた滝壺が、一気にまくし立てる。
「それだったら、なおさら念蜜に作戦を練らなきゃじゃないですか!本物の指導者を呼んだほうが―――」
興奮した滝壺とは対照的に、
「違ェ。そんな重大な戦闘に、学園都市が応援をよこさないわけねェだろォが」
「…そうか」
浜面が、理解したように言う。
「殆どの確立で仲間が追加されるのに、その仲間を考慮しないで立てた作戦なんて、まったく意味を成さない、ってことか」
「まァ、そういうことだな」
一方通行(アクセラレータ)が、つまらなさそうに言う。
「無駄なことするンだったら、各自メンテナンスや睡眠をとった方がマシだろ」
そう言い放つと、なんとその場に横になる一方通行(アクセラレータ)。
「…だからって、それはない気がする」
浜面が、ため息をつきながら言う。
「じゃあ、僕は僕で仕事があるから」
そう言って、ステイルはさっさと病院を出て行ってしまった。
「…」
なんか、
やっぱりいきなり二人きりにされた滝壺と浜面。
「あ、お前も寝るか?」
「うん、そうする」
滝壺が、その場を立ち上がる。
「え?」
と、浜面が思わず声を出したときには、滝壺は自身の病室に足音も立てずに入ってしまう。ご丁寧に、ガチャン、と鍵をする音もした。
「…」
浜面が、何だか腑に落ちない表情を作る。
「だからって、男と一緒に寝るのはごめんだぞ」
そういいながら、浜面も立ち上がり、どっかに行ってしまう。おそらく、開いている病室を勝手に使うつもりだろう。

「…」
その一部終始を見ていた冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)は、
「なんとも勝手な患者たちだ」
そんなことを言いながら、毛の少ない頭に手をやり立ち上がる。
彼も彼で、適当な場所を見つけて寝るつもりだった。
…なんともいえない夜が、さらに更けようとしていた。

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