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第二回 「暗黒の時代」

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――生者は決して死者の心を理解し得ない。

第二回 「暗黒の時代」

「今回のチャンネル1942ではゲストに激戦区と言われたヘレンドーン攻防作戦の生き残りである元連合国軍所属のTossyさんにお越しいただきました」
「どうも、Tossy=Akeyです」
「TossyさんはNetwork Battlefield Systemの兵士でもあられたわけですが、どのようなことを考えて戦っていらっしゃったんですか?」
「そうですね、私は終戦まで生き残り、本国に帰還しました。戦中に考えていたことは……絶対に生き残る、これですね。
 祖国のために?家族のために?そんなものは最初の一月で吹き飛びましたよ。
 戦場に居る時、本当に私を慰めてくれるのは仲間の存在だけですからね、そんな仲間達も次々に戦死して行きました。
 そして最後に残るのが自分の存在、無能な上官はあてにならないので、いかに考え、いかに生き残るかを第一に考えました。
 祖国に帰ったら酷い有様でしたよ、そこに言論の自由は無かった、私達の見たことは全て忘れろ、ですからね。
 すずめの涙の除隊金を貰って、職に就こうかと思えば凄い不況で食い扶ちを探すのにも一苦労、最初はかなり絶望しました。
 でも、生きていくには働かなければいけませんから、必死になって炭鉱で掘ってました、本当、これが最悪でね、身体がガタガタになるわけですよ。
 賃金は安い挙句きつくて長い。死ぬかと思った矢先、私の人生を変える出来事が起りました。
 Network System Battlefield、築き上げられた冷戦構造の中で、二つの大国がぶつかり合うのは危険と判断した両国政府が共同で開発した皆さんご存知のゲームですよ。
 そう、ゲーム、人の死なない仮想戦争ですからね、でも、画期的だった。人間を殺さなくて良い、殺される心配も無い。
 ファイマンを代表し他にも様々な素晴らしいバケモノと呼ばれる天才が揃って生み出した一台の量子コンピュータによって制御される架空空間。
 カプセル状の物体に入って我々はそのバーチャル・リアリティの中で戦い合いました。するとですね、感覚が麻痺するんですよ。
 自分の生と死が曖昧になって、生きる実感を失い不思議な浮遊感を味わう。これを脱することが出来ないヤツはどんどん自殺して行きました。
 これをまずいと思ったのか、痛覚すらも味わうことが出来るようにしたんだ。撃たれたら本当に痛い、カプセルから出るまでが本当に現実。
 それで上手いもんですよ、意識のコントロールを行い外と内を区別するようにして、徐々に自殺願望者が減らして行った。
 給料を貰って擬似体験とは云え戦争を引き摺ってる、私は苦笑しましたよ、結局は私は戦争を止められないんだ、と。
 友人に言わせて貰えば『お前は戦争に行っちまたまんまなんだな』ってね」


以上某国営放送局テレビ放映五十周年企画より


1946年01月02日、奇しくも世界は戦場で初めて核が投入された日に落ち着きを取り戻した。
その日mヨーロッパの小国ベルギーにて円卓が用意され連合国、枢軸国の主要各国の首脳陣が集まり席についた。
この会議において核兵器縮小の協定「スタートⅡ」が結ばれることとなる。最もこれは護られること無く、世界は核兵器開発競争へと進む。
カウンター・ウェポンとしての存在を認めるものの、決して使うことを許さない、各国は睨み合いを利かせ暗黙の了解を行う。
各国は軍を自国へと撤退させ、表面上の平和が訪れようとしていた。

だが、決して春を迎えることは無かった。

連合国は核兵器を使用、否、存在を知り得た者をつぐんだ。決して言うこと無かれ、その代償は命であるぞ、と監視を行った。
これは核兵器の存在があまりにも『正義』より逸脱していたがためである。連合国にとって最も必要なのは国民の賛同であり、それを得るのに必要なのが正義である。
この国は若い、若いがゆえに活気がある。そして独立して間もなく、孤独主義である。自国だけで賄えるならそれで良しと思う国民性を持つ。
しかし、これでは先の大戦を行うことは出来なかった。よって、枢軸と言う『悪』が必要だったのだ。
明確な悪を挫くのが、正義の勤め、極東の島国にハルノートを突きつけたことによって始まったあの戦争は悪を打ち倒すための聖戦だった。
結果として泥沼となり、勝者無くして終わった戦いであるが、一つだけ問題が残った。
非人道的にして、最強最悪の兵器、『核』である。これがある以上、枢軸国に強く出ることが出来ず、また枢軸も連合に強く出ることが出来なかった。
対等の存在となり、自国民達は先の大戦についての是非を問うこととなる。そして、言及されて最も困るのが悪魔の核、これこそが壁だった。
これの実体が知れれば大統領以下、何十人もの首が飛ぶ。勝利していれば何ら問題は無かったが、引き分けに終わった以上、連合に正義は無い。
機密文章は闇に葬り、実体を知る人の口を塞ぐの精一杯だった。これが過剰となり、独裁政権へと進む。

1948年07月07日 極東危機

ユーラシアの巨大な国が分裂し、核戦争一歩手前の状況へと陥り、連合軍、枢軸国軍が大規模な軍事的な介入を図りこれを終結。
これにより二つに分断統治されることとなり、両国間の緊張は高まった。緩和政策として国境の境に自由貿易地帯を設ける。

『The Baby』完成

同年、世界最初の量子コンピュータが誕生した。これは世界を震撼させることとなる。連合、枢軸両国の天才の生んだ発明品を巡っての主張。
そこで『スタートⅢ』が決議された。これは両国が戦争を行える状態では無いため、代理戦争によって事を終結させることにする。
しかし、それでは誰も納得はしない。だが、現存技術で特出した技術がそこにはあり、使わない手は無い。
よって、電脳世界を構築し、そこで戦争をし、事を決める。Network Battlefield Systemの始まりである。
各国は腕利きの兵士を集め、疑似体験によって世界のパワーバランスを定める、地球に優しく、金の掛からない最も最善の方法。

後の枢軸国解体後もこのNetwork Battlefield Systemの稼動が止まる気配は無い。
解体後、連合国の政策は再び自由へと向かうこととなる。圧制による支配は国力を衰退させ、逆効果であることを学んだからである。
結局のところ、人間は恐怖で支配されるよりも、生を実感している方が発達すると云うことだ。

2001年の01月02日、全ての機密文章の公開。世界に波紋を生んだ。しかし全ての真実を知る人々の多くはこの世には居ない。

次回、バトルフィールド1942「電脳戦争」

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