週末に、EBM WS に参加させていただきました。
なんと・・・論文がnoninferiority trials (非劣性試験)。
■シナリオ
私は某病院の研修医。
2月20日現在、ERをローテーションしている。
ERに見学に来ていた医学生A、Bと、インフルエンザ疑いの患者の診察をする事になった。
私、医学生A,Bは共に秋頃インフルエンザのワクチン接種を受けている。
私はいつも通り、サージカルマスク、手袋をつけて診察をしたが、診察を
終えた後に学生から質問を受けた。
学生A「新型インフルエンザが流行り始めたころ、WHOはサージカルマスク
でいいとしていましたが、CDCはN95マスクを推奨していましたよね。
先生の施設ではどうしてN95マスクをつけないのですか?」
学生B「そ、そうなの???僕、先月妻が妊娠したんでインフルエンザにかか
りたくないです。診察する時はN95マスクを準備してもらえませんか?」
そういえば先日、ER研修をしていた同僚の研修医がインフルエンザ陽性とな
っていたのを思い出した。
私はとりあえずN95マスクを学生に渡しその日の診察を終えたが、今後自分
が診察をする際に今まで通りサージカルマスクでいいのか不安になり調べてみる事にした。
■疑問を定式化して整理
■PECO
(surgical23.6% vs N95 22.9% absolute risk difference, ―0.73%;95% CI, ―8.8 - 7.3%; P=.86)
P値は、Fisher's exact test!
・Influenza-like illnessa→flu
・咳、鼻閉、咽喉炎、頭痛、副鼻腔炎、筋肉痛、倦怠感、耳痛、耳感染
・fluと診断された各群44人のうち、
・Drの診断を受けた
・欠勤者
・インフルエンザ様発熱疾患の検出(38℃以上の発熱、咳)
・インフルエンザ様疾患の発症率、RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)、
メタニューモウイルス(metapneumovirus)、パラインフルエンザウイルス、
ライノウイルス‐エンテロウイルスまたはコロナウイルスへの感染に、
有意な群間差は認められなかった。
・インフルエンザ様疾患を有する配偶者/同居人(22.4%対25.9%)または子ども
(22.6%対20.5%)への曝露率も同等。
■適用について考える
その結果は自施設の医療スタッフに当てはめることができるか?
・基本はサージカルマスクでいいと思う。
・隔離室や次期外れ、渡航帰りの高熱患者では、場合によっては、N95がよいかも。
・隔離室での診察や吸入指導はN95?でも、N95で指導できる?
→ 実は、サージカル2枚にバリエールを挟んでで対応している ~^^;
・開放空間なら、サージカル?
現場で、どのような事前の説明が必要か?どのスタッフにするべきか?
・各職種の状況(ワクチンも含めて)に応じた使用を薦めると思う。
・マスク以外の標準予防策の徹底も指導する。
その他気付いたこと
・N95:165円
・サージカルマスク:10円前後
飛沫核として空中を漂うサイズを5μmとすると、インフルエンザウイルスのサイズは、
約0.1 to 100μm (Toward understanding the risk of secondary airborne infection:
emission of respirable pathogens. J Occup Environ Hyg. 2005;2(3):143-154)だから、
サージカルマスクでも対応ができる可能性。
今回の研究でも、N95マスクもサージカルマスクも、fit testを行っている。
・結核患者のマスク・・・患者に接触する際には基本的に医療従事者はN95マスクを着用。
・・・結核患者の移動、搬送の必要がある場合は、患者に処置用マスクを
装着し、飛沫が極力拡散しないようにする。
・・・結核患者の吐血等、大量のスプラッシュがある場合は、
液体防御性能が優れたN95フルイドシールドタイプのマスク、
ゴーグル、プラスチックガウン、グローブといったPPEを装着。
・Reporting of Noninferiority and Equivalence Randomized Trials An Extension of
Gilda Piaggio, PhD; Diana R. Elbourne, PhD; Douglas G. Altman, DSc; Stuart J. Pocock, PhD;
Stephen J. W. Evans, MSc; for the CONSORT Group JAMA. 2006;295:1152-1160.