RCT COURAGE study

 2/6 に、医学生との EBM 勉強会がありました。

昨年のWSで吟味したCOURAGEを、再度読むチャンスとなりました。

あの後、実は???が多くて、関連内容の講演会を2本企画しました ~^^;

(「狭心症の診断と治療」&「動脈硬化の退縮と再発予防」)

背景情報を知るのは本当に大切!

この論文の印象が変わりました。

 

印象が変わった点は、以下。 

・ 検査方法が現段階で推奨されている方法と違うため、安定狭心症の把握が不十分?

 

それから、勉強会で、久しぶりにPECOT(PECO+ outcome までの時間)の話が出ました。

最近、あまり聴かなかったなぁ。

 

また、PECOT(PECO)は簡潔なのが良いとのことでした。

私のPECOは長い・・・それには、理由があります。

職能柄、PECOを簡潔に書いて、すべてイメージが湧くなら、簡潔が絶対にいい。

毎回、診断方法や治療方法の見落としがないかを、薬剤師では調べるのが大変。

そこで、メモ・・・ということになるわけです。

その人の必要度に合わせるのがよいかもしれませんね。
 

(勉強会に使用したシナリオ)

      あなたは、○○○大学医学部付属病院の研修医である。
   当直中に、90歳の認知症の女性患者さんが胸痛のために搬送された。
   家族には、当直の循環器科医師からカテーテル検査について説明がなされて、

   家族は治療を希望しなかった。
      とりあえず、ニトログリセリンを投与して病棟に入院させた後、あなたは家族にばったり会った。
   「先生。やっぱりカテーテルした方が、いいんでしょうか?
  
もうおばあちゃんに、そんな痛いことさせたくないし、でも治療しないのは悪いようにも

   思うし・・・。
   私たちは素人だから、どっちがいいのかは本当はわからないんですよ。」
   もちろん大事な治療であることはわかっているが、あなたは、PCIの必要性について悩み始めた。
  

    PCIを高齢者にした場合でも、効果は高いのだろうか?
   このおばあちゃんに、PCIをする意義はどういうものだろうか?
   そのときに、ネットで検索をしているとNEJの論文が目に留まり、あなたは読んでみることにした。

 

難しいシナリオです。

患者さんや家族の思い、そして医療者側の思い。

ちなみに、うちの祖母が狭心症で70歳の時(もう20年近く前?)にPCIでないけど、

CAGを指示されるも、本人や家族が拒否し、その後随分元気でしたが、5年くらい認知症の末、

昨年 MIで亡くなりました。

ふと、この論文を読んでいて、祖母のことを思い出しました。

家族や本人の思い・・・重い論文です。

 

論文の概要は、以下。前の WS で出された意見も追加しました。

論文

COURAGE Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation

Optimal medical therapy with or without PCI for stable coronary disease.   

Boden WE et al for the COURAGE trial research group NEJM. 2007; 356: 1503-16.

 

目的    安定冠動脈疾患患者の初期治療として,至適薬物治療にPCIを併用した場合の冠動脈イベント抑制効果を検討する。

 

論文のPECO

P:  2287例。安定CADCCS狭心症分類IV度であっても薬物治療で安定症例,

1か所以上の近位冠動脈狭窄≧70%

虚血診断例(安静時or運動,薬物負荷でのST低下,陰性Tの出現)

80%以上の狭窄を有し、誘発テストにより狭心症状のある症例。

(除外基準)

・薬剤不応のCCS IV度の狭心症

・負荷試験での顕著な陽性症例Bruce protocol stage1STBP↓)

・治療抵抗性心不全または心原性ショック

EF(駆出分画)30%

6か月以内の血行再建術

PCI不適病変。

   (患者背景)

       ・平均年齢(PCI+至適薬物治療群61.5歳,至適薬物治療群61.8歳),女性(各群15%

TCho-C172mg/dL177mg/dLTG143mg/dL149mg/dL),

BMI28.7kg/m228.9kgm2),DM32%35%),HT66%67%),

MI既往(38%39%),CCS IIIII度(59%56%PCI既往(15%16%),

多枝疾患(69%70%),左前下行枝の近位病変(31%37%p0.01

EF60.8%60.9%),喫煙(両群とも23%)。

ACE阻害薬(58%60%),スタチン系薬剤(86%89%),aspirin96%95%),

β遮断薬(85%89%),Ca拮抗薬(40%43%),硝酸エステル(62%72%)。

E:  PCI+至適薬物治療群1149

       PCI前後の抗血小板治療がaspirinclopidogrel以外は至適薬物治療群と同様

       PCI成功の確認

:正常冠血流+バルーン後狭窄50%未満+ステント留置後狭窄20%未満

       ・治療成功の確認

             :血管造影法+Mによる入院I・緊急CABG・死亡・・・がない

C:  至適薬物治療1138

       ・全例に抗血小板治療(aspirin 81325mg/日),

aspirin不忍容例はclopidogrel 75mg/日,

LDL-C 6085mg/dLを目標とした積極的脂質低下治療

simvastatin単独またはezetimibeとの併用),目標LDL-C値に到達したら,

運動,niacin,フィブラート系薬剤を投与しながら(単独あるいは併用),

HDL-C40mg/dLTG150mg/dLを目指す,

・抗虚血療法(metoprololamlodipineisosorbide mononitrateなど),

・二次予防を目的としてACE阻害薬(lisinopril)またはARBlosartan)を投与。

・治療成功の確認

             :血管造影法+Mによる入院I・緊急CABG・死亡・・・がない

O:  1次エンドポイント:全死亡+非致死的心筋梗塞(MI

    2次エンドポイント:脳卒中や狭心症の入院 致死的でないMIQOL、経済評価

 

この試験の結果は信頼できるか~内的妥当性(デザイン)の吟味

無作為割付け,Permuted-block randomizationCABGをしたことがあるかで層別化),盲検?,

多施設(米国,カナダの50施設)intention-to-treat解析

 

Funding・・・Canadian Institutes of Health Research・・・デザイン、解析、解釈に関わらない。

サンプルサイズ・・・計算してある。

  3-year event rates of 21.0% in the medical-therapy group and 16.4% in the PCI group (relative difference, 22%)

 during a followup period of 2.5 to 7.0 years.

 Power 85%

 α=0.05two-sided)・・・ サブグループα=0.01

期間    追跡期間中央値4.6年。登録期間は19996月~20041月。

 

脱落や追跡

  PCI+至適薬物治療群6%PCIを受けていない。

  ・一次エンドポイント確認前または追跡期間終了前に追跡不能者は両群で9%のみ

PCI107例,Medical97例)。

 

結果は何か?

Baseline

proxymal LADの病変数は至適薬物治療群で有意に多い

proxymal LADは難しく重要な場所なので、治療効果に影響を与えた可能性もある

DM、心筋シンチグラフィーの灌流欠損像は至適薬物治療群で多い傾向

→治療効果に影響を与えた可能性もある

結果

PCI施行例のうち≧1本ステント植込みは94%1本ステント:59%),DES31例のみ。

病変成功例93%

 PCI後の血管径による狭窄:ステントなし83±14%31±34%244箇所)

                           ステント有り82±12%1.9±8%1444箇所)

 5年間の薬物治療:

ACE阻害薬(PCI66%Medical62%),スタチン系薬剤(93% vs 93%),

aspirin95% vs 94%),β遮断薬(85% vs 86%),Ca拮抗薬(42% vs 52%),

硝酸エステル(40% vs 57%)。LDL-Cは両群で低下(中央値:71mg/dL vs 72mg/dL)。

生活習慣(食事,運動,禁煙)改善度は両群とも高かった。

 ・一次エンドポイント

PCI211例(19.0%),Medical202例(18.5%)で両群同様であった

HR1.0595%CI 0.871.27p0.62)。

・死亡7.6% vs 8.3%HR 0.8795%CI 0.651.16p0.38),

・非致死的MI13.2% vs 12.3%HR 1.1395%CI 0.891.43p0.33),

・脳卒中2.1% vs 1.8%HR 1.5695%CI 0.803.04p0.19

・二次エンドポイント:死亡+MI+脳卒中

20.0% vs 19.5%HR 1.0595%CI 0.871.27p0.62),

・急性冠動脈疾患(ACS)による入院

 12.4% vs 11.8%HR 1.0795%CI 0.841.37p0.56

  ・短期の狭心症はPCI群で有意に抑制

1年後の非発症率:66% vs 58%p0.0013年後:72% vs 67%p0.02)が,

5年後の非発症率に両群間差はみられなかった(74% vs 72%p0.35)。

・再血行再建術はPCI21.1%Medical32.6%PCI群で有意に少なかった

p0.001)。

・多枝疾患,MI既往,糖尿病などのサブグループ解析でも一次エンドポイントに差なし。

 PCIは安定狭心症患者の症状の緩和(quality of life)と,ST上昇あるいは

    非ST上昇ACSの予後(quantity of life)改善効果が証明されている。

※ PCI群では94%にステント(ほとんどBMS)が植え込まれ,薬物療法ではLDL-Cに対する

    アグレッシブな治療。

 

※ 血圧・糖尿病のコントロールも良好で,厳重な薬物療法下においてはPCIpreventive interventionは意味がない,というのがメッセージか?

 

PCIのような局所治療では冠動脈全体に起こりえるプラークの不安定化や

    そこから生じるACSを予防は不明?

 

※ とはいえ、最近はMSCT等での非侵襲的な冠動脈病変の評価が中心になってきており、

    狭窄度だけではなくプラークの性状評価の重要なのか?

 

※ あるDrからの指摘

PCIAMIを起こしてから施行しても良かったのではないか?

PCI群でもPCIをしていない人がいる

・合計で、もしかしたら1000名ぐらいはPCIをしなくても良かったのではないか?

 

※ 別の Dr からの指摘

PCIの成功率が低いのではないか?

 日本は90%台後半の成功率?。PCIの成功率が低いことが評価を低く見積もった可能性あり。

Clinical Success89% 4% の追加治療が必要なことは、問題だと思われる。

・ステント使用率が低く、再狭窄の可能性が高い

primary endpointに死亡率を持ってくるのは、安定狭心症の評価としてはどうか?

・安定狭心症は、徐々に進行する疾患なので、主治医は在る程度進行したところで、

 PCIを施行することを選択するはず。つまり死亡率よりも、待機的にPCIをした率や、

  薬剤投与だけでどれほど観察可能だったかなどの方が、むしろ適切かもしれない。

・観察中にMIを起こした人は、エントリーの時とは別の狭窄を起こした可能性が高いのでは?

OMT群の3割がPCIを施行されている

  これは、PCIが効果がないというのをITT解析で言うのは早計ではないか?

・施設間の治療効果の差が大きい

・サブ解析の論文 → 心筋の血流はPCIをした方が改善することが判明。

                            当然予後はよくなるはずであり、今回の結果とは異なる。

 

ヾ(*'-'*)

最終更新:2010年02月14日 09:27