とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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「…確かになァ。ここは俺が知ってる「時」とは丸一年違う」
(貴方の脳波には何の変化も無いんだけど、心拍数に乱れも無くこんな笑えない嘘を貴方がミサカに言うとは思えないって、ミサカはミサカは真面目に思ってみたり)

第七学区にある、ビルが立ち並ぶ大通り。現在は午後五時過ぎ。多くの中高生が歩いている。その中に『一方通行(アクレラレータ)』はいた。白髪の少年は紅い瞳をギョロギョロと動かし、周囲を分析していた。彼の鋭い視線に、目があってしまった通行人が震えていたりもするが。
「『artist』?ここの『ion crock』は潰れたのか。意外に気に入ってたンだがな。あの店の服のセンスはよォ」
彼と目があった『artist』の定員が営業スマイルで会釈しようとし、そのまま固まっていた。
それを察した『一方通行(アクレラレータ)』は軽く舌打ちした。
(これからどうするの?ってミサカはミサカは情報分析中はあまり動かないほうが得策だと思うけど…)


「決まってンだろ。会いに行くんだよ。――――――『ドラゴン』によ」


そう言い切ると白髪の少年は歩調を早めた。着慣れない長点上機学園の制服を身に纏って―――




五時間前。
12時30分
白髪の少年は部屋にあるディスクやUSBメモリ。スキャニングノートを徹底的に調べていた。Aクラスの『書庫(バンク)』閲覧はもちろんのこと、『グループ』が使用する極秘ソースからの情報までくまなく目を通していた。
パソコン画面から離れずに素早いタイピングをしながら少年はつぶやいた。

「ラストオーダー。俺の置かれている状況は把握できたか?」
(うーん、貴方の脳から体の隅々までスキャンをかけているんだけど何の異常もないよ、ってミサカはミサカは貴方の言動にいまだ半信半疑だったりー…)
「…俺だって今の状況が信じらんねぇンだよ」
(……そうだね。貴方が一年前までの記憶が無いとしたら、今の現状は理解できないのも無理ないってミサカはミサカは考える)
「俺の意識が一年後に跳ンだってことは有り得ねェのか?」
(そう考えるよりも「ここ一年間の記憶を喪失した」と考えたほうが納得がいくって意見にミサカはミサカは賛成の一票を投じてみたり)
「けどよォ…俺は丁度一年前の昨日のことをハッキリと覚えてんだぜぇ?ここ一年の記憶だけ抜け落ちたって言うには不審な点が多すぎる」
(それは私もひっかかる。たかだか一年前の記憶ならミサカのネットワークを通して情報を引き出すことは出来るけど、それはあくまでワタシ『達』の視点から通した情報であって、貴方の忘却された記憶を呼び起こすことはできない。って、ミサカはミサカは人の脳の働きについての謎にググーッっと首をかしげてみたりー)
「っておい!人のアタマを傾げさせンなッ!」
自分の意識とは反する体の動きに『一方通行(アクレラレータ)』は戸惑うばかりだった。
「ってアア!?パスワード間違えちまったじゃねぇかァア!!」
(ごめんなさーい!!ってミサカはミサカは少し落ち着いた貴方にちょっとしたジョークをかけようと思っただけなのにーって、アマーい言い訳を言ってみたりー?)
「ぶっ殺すぞテメェ!」

(ワタシが死んだときは貴方も死ぬよん、って可愛くミサカはミサカは残酷なことをケロッと言ってみたりっ)

「…………………クソが」
ピーッというノイズがなると画面上に『PASSWORD ERROR』と赤い文字が点滅し、既存のデータが消滅した。これは第一級機密情報のチップであり、パスワード入力を二回間違えると強制的にデータが消されるようになっている。
(!!!?それってとっても重要なチップって言ってなかったけぇ!?そんなことで破棄しちゃっていいの!?ってミサカはミサカは貴方に問いただしてみる!)
「…いいンだよ。『今』の俺には関係ねぇ」
彼の脳波を感知したのか、『打ち止め(ラストオーダー)』は黙った。

「……なぁ、ラストオーダー」
彼女は答えない。



「――――――――――――――――――――――――俺はお前を、守れなかったのか?」




(そんなことないっ!!)
『打ち止め(ラストオーダー)』は「叫んだ」。今の彼女は肉体すら無いけれど、
(貴方はよくやった。頑張った!私を助けるために多くの人を犠牲にしたけど、それでも貴方はワタシですら不可能と思った絶体絶命の状況からワタシを救ってくれたっ!)
(貴方は、貴方は、そのせいで死にかけていた。ワタシは息すらしていなかった。でもでもっ、私は貴方を死なせたくなかった!ワタシは貴方と共に生きたかった!だからだからっ、損傷した貴方の脳にワタシの脳とミサカネットワークを可能にするチップを移植したの!これはワタシの望んだ結末。だからワタシは貴方の傍にずっといられる。……だからだからぁ、貴方は自分を責めないでぇ。ミ、ミサ、ミサカはミサカはっ!)

バン!

白髪の少年は強く握りしめた拳をキーボードに叩きつけた。画面上には規則性のない文字が表示された。奥歯を強く強く噛みしめながら。
「『この』俺はよォ………一体、何やってたんだ」


(貴方は、できることをした。いや、それ以上のことをして、今のワタシたちがある。だから貴方は、誇っていいんだよ?)


「………………納得できるかよ」
白髪の少年は呟いた。これ以上の言い合いは先ほどの繰り返しになってしまって怒り以外の何も生みださない。
守るべきものも守れなかった自分の無力さに、嘆いたのだ。


(…あの時はどうしようも無かった。ローマ正教を主とする勢力の総攻撃に十人の『聖人』を相手に『絶対能力者(レベル6)』の貴方でも絶望的な戦力差があったから…)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は?


今、聞き逃せないことをラストオーダーが告げた。
「おい、ラストオーダー。今、何ていった?」
(え?だから『絶対能力者(レベル6)』の貴方でも絶望的な戦力差があったからって…)
「…オレは、『絶対能力者(レベル6)』なのか?」

(うん、この学園都市に二人しかいない『絶対能力者(レベル6)』の一人。学園都市第二位。人類史上初、人の身でありながら『神』の領域に到達した能力者。それが今の貴方だよ?)

「……基準は一体何だ?二位のメルヘン野郎も相手にならなかったが、どうゆうことで格上げになったんだよォ、俺は」
(…そこのところも記憶が無いんだね貴方は。ってミサカはミサカは貴方の脳の深刻なダメージに危機感を募らせてみる)
「まだそう決まったワケじゃ無ェだろがよぉ。ンなことより教えろ。全部だ」
(学園都市での『超能力』開発が魔術の一つだってことは説明したよね?ってミサカはミサカは情報確認をとってみる)
「あァ。アレイスターは元魔術師で、脳開発ってェのは術式?だっけか?それを脳に直接ブチ込むことによって、魔術に用いる詠唱や文字が必要無しに非科学的な現象を任意で発動できる固有魔術。それが『超能力』の正体なんだろ?別に驚きはしねェが…」
(そうゆうこと。魔術は魔力というガソリンの下に詠唱や文字によって『この世』の世界の力を利用する『凡人が使うために作られた技術』。でもその習得には膨大な知識と長期間の鍛練が必要になる。
その上、その力は生まれ持った才能やその日の精神の強弱によることが大きい不安定な代物。
それに比べて科学の方は誰でも扱うことができてその用途、応用も幅が広く、その力は魔術より強大。
だから科学は産業革命以降、全世界に普及したんだけど、一方で科学を嫌う宗教国家やその地域では魔術の開発が進んでいた。最も、科学の方が圧倒的に強いけどね。ってミサカはミサカは慣れない口調にミサカキャラの崩壊の危機が!って心配してみたりー)

「…………………で?」

(ちょ!?それヒドッ!)
「分かった分かった―――――って、オイィッ!また体を浮かすんじゃネェ!」
(説明続けるね。って自己承諾を取ってみる。
…学園長アレイスターは自身の魔術回路を元に、現在行われている『超能力』開発を立案した。
人間の肉体にある魔力の流れ方や魔力量や質、一人一人違うから学園都市の脳開発の適合者と非適合者が出てくるのは当然であって、強い能力を引き出せるほど、その人の魔術回路はアレイスターの魔術回路に似ているということ。
そして、同じ術式でも、人によってその効果が十人十色なのと同じように、同じような魔術回路で同じ術式を組み込んでも一人一人全く異なってくる。これが能力の『性質』と『強弱』の差違が発生する理由」
「……じゃあ、何だ?俺はアレイスターとよく似た人間だったってことか?」


(うん。異常なまでに似すぎていた。同じ遺伝子を持つ人間が一〇〇億人の中に一人存在するように)


白髪の少年は沈黙した。
(彼が一番得意とした魔術は風や水、はたまたは人の意識すら範疇に入る『流れ』を読み取り、それ操作し、干渉する魔術『神の真似事(マスター オブ アカシック)』。貴方の『ベクトル操作』の汎用性は彼の魔術には劣るけど、その威力はアレイスター以上のものだった。そして『神の物質(ゴッドマター)』の発現。貴方はアレイスターにとって、アレイスターが『神上』に位置する『神』や『魔神』となるための道筋を示すキャラクターだった)

「アァ?『神の物質(ゴッドマター)』ってのは一体…」

(かつての学園都市第二位の超能力『未元物質(ダークマター)』の正式名称。あれは本当にこの世に存在しない物質で、人の『心』のみが干渉できる『神の世界(ヴァルハラ)』に存在すると言われている物質なの。時折、貴方が強烈な感情によって『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉した際に引き出す『黒の翼』もそう。それが『神の物質(ゴッドマター)』。今回の『戦争』で貴方はある程度の『神の物質(ゴッドマター)』の制御方法を得た。今でもその実態は謎に包まれたままだけど…)
学園都市最高峰の頭脳開発を受けた『一方通行(アクレラレータ)』ですら会話に付いていけなくなってきた。魔術だの神だのと魔術側の存在は知っていたが情報量は圧倒的に少ない。機密情報にすら載っていなかった情報をこの「打ち止め(ラストオーダー)」が湯水のように垂れ流してくるのだ。真偽を確かめることよりも内容の咀嚼で精一杯だった。

(その物質の発現と制御方法を知ることがアレイスターの狙いであり、貴方の『役目』だった。そしてこの存在こそが一つ存在の証明となった)
白髪の少年はふと思いつく。一つの仮説を。
「…………まさか」



(そう―――――――すなわち、『魂』の存在の証明)



(足の先から髪の毛一本まで『超能力者(レベル5)』の御坂美琴と同じ『欠陥電気(レディオノイズ)』を二万体量産してもお姉様(オリジナル)と同等の力を持つ個体は一つも出来なかった。
それは製造過程に問題があったわけでは無く、『魂』の影響が一番強い『精神力』や『心』といったものを計算に入れていなかったから。
元は『低能力者(レベル1)』だったお姉様(オリジナル)が学園都市第3位、今は『超能力者(レベル5)』の第一位だけど、そこまで上り詰めることが出来たのは、心の内に秘められた向上心と『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が人一倍強かっただけのこと。
現在、一〇〇三二号のミサカは『とある』感情の出現で強い自我が形成されて、『大能力者(レベル4)』クラスの能力を有してる。ミサカネットワークの新たな管理者としての責任感もあるみたいだけど、これは些細なことだと思う。

そして私たちが量産された理由は、軍事的な意味合いも大きかったけれど、それはお姉様(オリジナル)を含む私たちミサカシリーズが絶対に『絶対能力者(レベル6)』に到達できない優秀な『欠陥品』だったから。

「力」というのは自分の意思で『物事を動かす』もの。自然界では存在しない物質を生み出すことが出来ても、それは所詮、物と物との『合成』であって、詰まるところ「力」というのは荷物を運ぶローラーのようなものでしかない。その点に関して言えば、それは魔術も同じ。魔力と術式をブレンドして、世界の理に準じた現象を発生させているだけ。『有』と『有』から『有』を生み出しているにすぎない。

しかし、『神の物質(ゴッドマター)』は違う。『この世』では無いところから引き出される『モノ』。
『無』から『有』を生み出すような神の如きチカラ。
貴方と垣根帝督は一八〇万の能力者を有する学園都市の中で、唯一『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉できる能力者。だから貴方たちの能力は『格』が違うの。もし彼らが量産されていたら二万人の『絶対能力者(レベル6)』が登場する可能性が出てくる。これを科学兵器に例えるなら、意志を持つ『核』兵器を二万個作り出すことになる。そんなことになればいくらアレイスターでも制御しきれない。だからミサカたちの量産は『魂』の存在の証明と、貴方の『絶対能力者(レベル6)』へのシフトの供物という役目だけで十分だった。

もう分かるよね?『絶対能力者(レベル6)』とは『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉でき、かつそこから引き出したモノを制御できる能力者。すなわち『神』と呼ばれる領域に到達した人のことだよ)



「………大体は把握できた」
(ホントに―!?ミサカの知識は主に、今魔術にハマってるエジプト在住のミサカ一七七五〇号の知識とミサカ―〇〇三二号が集めた情報を分析したもので信憑性はかなり高いかもーってミサカはミサカは自分の優秀さを自慢しつつ貴方の情報処理能力の速さを疑問視してみたりー!)

「ようするに『この問題』とは何の関係も無い話だったってことだ」

(ちょっとー!?あれだけワタシに喋らせておいて、『そんなの関係ねえ!』なんて何処かの芸人の一発ギャグ的な発言で完結されるのはムカツクー!ってミサカはミサカはー!!)
「うおおおっ!?逆サマにすんじゃねぇ!アブねえだろうがァ!大体そのタリィ話を聞いてる最中もずっと俺を宙吊りにしたまんまだっただろォオ!?」
パソコンがある書斎で、空中でタロットカードのハングマンのようになっている白髪の少年は叫んでいた。
(うがー!!貴方の記億だけを1年後に跳ばしてしまうだなんて、そんな非科学的なことを出来る人が一人いるって言おうとしたのにー!もう教えてやんない!ってミサカはミサカはプリプリ怒ってみるー!)
「…ンだとォオ!!?じゃあ前置き無しに言えってんだ!ってオイッ!ベッドまで持ち上げてんじゃねェ!俺を殺す気かァ!?」

それからが凄まじかった。ベクトル操作の主導権を握られた『一方通行(アクセラレータ)』
は三〇分間も地面に着地できずに、空中で少女の思いのままに動かされていた。

ようやく、ベッドの上に戻してもらった白髪の少年は
「ヒイ、ヒィ…ハア、ハア、ハアァ…な、なかなか、やるじゃ、ねーか。ラスト、オーダーァ。ハア、ハァ…」
(まだまだ序の口だよー?ってミサカはミサカは貴方の疲労ぎみな姿にちょっぴり優越感に浸ってみたりー)
「…テメェは、サドか、フゥ、フゥ、フゥ―――ッ!ゴホッ!」
彼は自身の強力な能力のあまり、生身の人間としての身体能力は極端に低い。その上、無重力状態のような感覚で、何回も体を回転されたり、壁に超特急で激突させられそうになるなどハードな悪戯は肉体よりも精神的ダメージが大きかった。
「フゥー、ハァー…。ハァー」
(…何かいうことは?)
何も無ぇよ、と言ってしまいたかったが、そうすると先程の二の舞になることは明らかだった。自分のプライドなんか殴り捨てて、チッ!っと舌打ちすると覚悟を決めた。
「…かった」
(んー?何て言ったのかなー?ってミサカはミサカは悪戯心たっぷりな口調で貴方に聞いてみたりー?)
「……なかった」
(んんー?聞っこえないなー?ってミっサカはミっサカは~)


「……………………………………………………………………………………すまなかった…」


(うん!許す!)
「打ち止め(ラストオーダー)」は即答した。

(でね!そんなことが出来る人物ってのはね、貴方と同じ『絶対能力者(レベル6)』で!貴方のクラスメイトで!お姉様(オリジナル)の恋人で!そしてそしてワタシ『達』の命の恩人!)

(上条当麻―――――――――――『ドラゴン』を宿す『神上』だよっ!)

「………………」
(あれー?ビックリしたー?って仕方無いよねー。彼はミサカシリーズ全員の想い人だしー。能力なんて貴方が一〇〇人いようが勝てっこないしー。天然の『神上』だもんねーって、ミサカはミサカは反則すぎる彼の設定に世界の不条理を訴えてみたりー)
「………………」
(あ、あれー?大丈夫―?ってミサカはミサカは貴方の驚きっぷりに少々…)

「ラストオーダー」

(な、な、なに?)
唐突に名前を呼ばれたことで危機感を覚える『打ち止め(ラストオーダー)』だったが
次に来る彼の一言は、彼女の心を打ち抜くのには十分すぎるものだった。



「ありがとよ。愛してるぜ」


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