とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

第五話

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だれでも歓迎! 編集
□前回までのあらすじ
バレンタインデー当日にチョコレートを作成するというスタートダッシュですでに
出遅れてる感が漂う全世界のミサカ達。
だって他の連中は前日までに用意してるし・・・・でもなんとか当日までに渡すべく
[打ち止め](ラストオー ダー)はチョコレート製作を手伝ってくれる
というミサカ10032号が厄介になっているある病院へと足を運ぶ。
あと『告白儀式』(ハートトゥハート)の真相が明かされていたが土御門とステイルにとってはあんまり大変
そうには思えなかった。
インデックスが力説する中二人は同じ意見でまとまっていた。


□第5話『カミやんの鞄は魔法の鞄やね』

「ぴんぽ~んぴんぽ~ん♪ ちわーっす三河屋です御用聞きに来ました~って早く出て欲しいかもー、ミサカはミサカは背が届かなくて押せない
病院のインターホンをまるで押したかを装いながら下位個体がでてくるのを――」
「やめなさい[打ち止め](ラストオーダー)とミサカはあくまでも冷静に見た目ちんちくりんなガキンチョの上位個体に優しく注意を促します」
「ああ~、か弱い乙女のミサカはあわれにも残虐な下位個体に捕まってしまった、助けて一方通行、ミサカがアナタを待っているっていうか
ミサカの頭を掴む力が際限なく強くなっているのは気のせいかな?ミサカ10032号~ああ~あたまがわれるようにいたい~とミサカはミサカは
取り合えず泣き叫んでみたり」
 病院の裏口の前でドタバタやっている[打ち止め](ラストオーダー)の頭をガシっと右手でアイアンクローのように掴んだ御坂妹が無表情のまま言う。
「ミサカにはそのような残虐な趣味はありませんが上位個体の直接要請とあれば不本意ですが仕方ありません。 と いうか
チョコレート作りの協力者に対しての口の聞き方がなっていませんね[打ち止め](ラストオーダー)、たった今このまま掴んだ頭部に
直接電撃を叩き込んでみたりする必殺技を思いついたのですが、実験してみてもかまいませんね?そうですね?
とミサカはあくまでも冷静に現時点での上下関係を再確認させてみます」
「ご、ごめんなさいー、ミサカはミサカはミサカコレダーとか言う単語がしきりにミサカネットワークで飛び交っていてその言葉があんまり不穏な響きすぎてびくびくしちゃってみたりしつつ下位個体の下克上に激しく戦慄してみたり」
掴まれたまま器用に謝る[打ち止め](ラストオーダー)を見て10秒ほどじっとみつめると御坂妹は右手を離した。
「[打ち止め](ラストオーダー)、とりあえずここではなんです、中に入りなさいとミサカは度量の深さを示してみます」
病院の裏口のドアを開けて中へと[打ち止め](ラストオーダー)を促す。
「わ~い、お邪魔しま~す。 ををー、外から見たらまるっきり病院なのに中は結構普通な空間にミサカはミサカは言葉を失ってみたり」
「この建物は別にすべて病院というわけではなくて半分は居住区画なのです、ミサカに割り振られた個室がありますので
そちらの方でチョコレートを製作しましょう、フフフなんと個室にキッチンがついているのですよとミサカは入ってすぐにある2階への階段を
示して見た目ただのちびっ子な上位個体を案内します」
とんとんとん、と軽い音をさせながら玄関から歩いてすぐの階段を御坂妹、[打ち止め](ラストオーダー)の順に上っていく。
「ねーねーミサカ10032号?」
「なんですか?」と振り返って御坂妹は首をかしげる。
「下から見るとミサカ10032号のパンツ見えてるよ?とミサカはミサカはあくまでもさりげなく教えてみる」
「・・・・・・・」
「さりげにサイドをリボンで止めるタイプのちょっぴり大胆なタイプの下着だね?さては例の彼用なのかな?とミサカはミサカは好奇心で
わくわくしながら固まる下位個体へと聞いてみたりする」
「お子様には関係の無い事です、とミサカは冷静に切り返します。あとここがミサカの部屋です。 10m以上通り過ぎてる上位個体のスペックの
低さを心の奥で笑いつつ忠告します」
と言って御坂妹はドアを開け、中に[打ち止め](ラストオーダー)を導いた。

 御坂妹の部屋はなんいうか・・・・一言で言うなら殺風景。
 部屋にはベッドと小さなサイドテーブルがある以外はせいぜい制服を掛けるハンガーとわずかに私服を入れた大きめのダンボールが1個転がっているだけで他には何も無かった。
いや、あるといえばサイドテーブルにチョコンと置いてある小さな小物入れ。 この一つだけは殺風景な部屋の中で唯一特別な意味でもありそうな感じだ。 手のひらに乗るような可愛いサイズの木製の小物入れには小さな錠前が掛かっている。
このサイズだとアクセサリーのような小物を2、3個入れたら他に何もはいらなそうだ。 
 ベッドの置いてある一番大きな部屋の奥には小さめだがキッチンが見える。 御坂妹の個室はキッチン、バス、トイレ完備の
ほとんどワンルームマンションのような部屋だった。
 それでも小物入れ以外はなんていうかちっとも女の子の部屋と言った感じがしないのはやはり御坂妹だからだろうか。
「さて[打ち止め](ラストオーダー)、肝心のチョコレートを作るのですが、アナタはどんなものを作りたいのです?と
ミサカは気合を入れつつ自分用のお気に入りエプロンを着用しつつ確認します」
 そういってキッチンの壁に掛けてあったオレンジのエプロンを常盤台中学の制服の上から着こんで御坂妹は聞く。
ごそごそっと[打ち止め](ラストオーダー)は自分のポシェットを探ってある物を探し当てると
「ミサカはこれであの人をうならせて見せる!と無駄に気合を入れながらミサカはミサカは自分のエプロンを着てみる」
[打ち止め](ラストオーダー)のエプロンはいかにもといった感じのパステルカラーの可愛らしいエプロンだった。
その容姿もあいまってやたらと似合う。 さらに同じ柄の三角巾というかバンダナを頭に巻いて[打ち止め](ラストオーダー)の戦闘準備が完了する。 
 その手には小さな動物を象ったステンレス製の型が握られている。
「ペンギン・・・」
「あの人の前世はきっとペンギンだと思うんだよー、だって面倒くさがりだし、寒がりだし、熱がりだし、猫舌だし、すぐ寝るしとミサカはミサカはあること無いこと言いふらしてみたり」
 あの一方通行の前世がペンギン・・・・どうにも一方通行に対していい思い出が無い御坂妹には想像がつかない話だ。
「[打ち止め](ラストオーダー)。 その型へチョコレートを流し込む気ですか?とミサカは冷蔵庫から板チョコを取り出して着々と準備を進めながら質問します」
冷凍庫の蓋を開けて取り出した板チョコの包装をびりびりっと破いて露になった茶色いチョコレートの板をまな板の上へと置く。
 さっきから御坂妹の足元で「届かないー」と抗議する[打ち止め](ラストオーダー)の為に小さな踏み台をどこからか持ってきて
まな板が置いてある辺りの前へと置いてやる、すると「ひゃっほ~」とか言いながら小さな手足を振り回し[打ち止め](ラストオーダー)が御坂妹の隣へと顔を出す。 
 落ち着きのない[打ち止め](ラストオーダー)に御坂妹は右手の人差し指を立てて諭すように説明する。
「いいですか[打ち止め](ラストオーダー)、まずはそこのチョコレートを包丁でみじん切りにします。 こまかく切ったほうが早く溶けるからです。
包丁は使えますか?とミサカは少々心配ですがまあ本人やる気満々だしまあいいか、と後半投げやり気味に問いかけます」
 やる気満々な顔で胸を張る[打ち止め](ラストオーダー)へ包丁を手渡す。
 包丁を両手で受け取ると打ち止めはまな板の上のチョコをドン!ドン!とぶつ切りで砕いていく。 包丁を振り下ろす度に激しい音が室内に響く。 ついでにチョコレートのかけらも飛んでくる。
(まぁ、最終的に溶ければなんでもいいんですけどね・・・)と御坂妹も一応その様子を横目で見ながら小さなステンレス鍋にお湯を沸かす。
「ぴったん☆たんたチョコぴったん☆~ミサカはミサカはなんか楽しくなってきたので歌とか歌ってみたりー」
チョコに包丁を振り下ろす[打ち止め](ラストオーダー)の顔はやたらと楽しそうだ。 いい加減肝心のチョコレートも細かくなってきているので
「[打ち止め](ラストオーダー)その辺りでいいでしょう。 そろそろ次の工程に移ります、とミサカは加減というものを知らない上位個体に皮肉を込めて言ってみます」
 「は~い」と元気よく返事をした打ち止めは包丁を置いて御坂妹へ「次はどうするの?」といった顔をして首を傾げてくる。
「湯煎の準備もできたのでそっちに置いてあるボウルへチョコレートのかけらを全部入れてください。 それと木ベラを、はい、これです
とミサカは見守るだけのつもりでしたが実は作り方がわかってないようなのでアドバイスをしてみます」
[打ち止め](ラストオーダー)は御坂妹に言われた通りにまな板の上のチョコレートを銀色のボウルの中へと放りこむと御坂妹が次々に指示を出すので
それに従って悪戦苦闘しながら工程を進める。 三角巾やエプロンには飛んできたチョコレートの飛沫がついてところどころ茶色く変色してしまってる。
でもそんな事は気にしてないような様子で嬉々としてチョコレート製作に取り組んでいる[打ち止め](ラストオーダー)。
そんな[打ち止め](ラストオーダー)を見て御坂妹は突然何かを思い出したような顔をした後に
「あとは完全に溶けたら型に流し込んで冷やせば完成ですよ、と最後のアドバイスを送ってミサカは自分のチョコレートをそろそろ準備しておこう
かと冷凍庫の扉を開きます・・・・・!?」
 そう言うと冷凍庫の扉をカパッという音と共に開けた。
「ヤヤ・・・・」
御坂妹はなんだか知らないがそのままの体勢で動かなくなってしまった。 冷凍庫からは白い冷気がもやもやっと漂ってきている。
「あれ?あれ?ミサカ10032号?なんか冷凍庫開けっ放しって地球に優しくない気がするんだけど、あれ?あれ?本当に動かないんだけどねぇ、ねぇ
ミーサーカーいちまんさんじゅうにごうー♪、つんつん、とミサカはミサカは環境問題を考えるいい人を演出してみたり」
しばらく御坂妹をつんつんつついていた[打ち止め](ラストオーダー)だったが反応が無いのに飽きたのか自分のチョコレート製作へと戻っていった。


 ズキズキ痛むアゴの痛みで上条が目を覚ますと上から覗き込んでる美琴の顔が最初に目に入った。
「近!?」
「え!?!」
 上条が慌てて体勢を起こした為結構な至近距離にあった美琴の顔と上条の顔がゴチーンと激突した。
「痛ッ」
「いッたいわねもう、目覚ますなりいきなり起き上がるんじゃないわよ」
おでことおでこがぶつかり二人は涙目になってそれぞれ自分のおでこを抑えながら呟いた。
 地面にペタンと尻餅をついてしまっておでこを抑えながら涙目になってる美琴を上条は起き上がらせると
「わりぃ、あんまりビックリしたもんでな?」
愛想笑いを浮かべながら頭をカリカリとかき、とりあえず本音を口にしてみた。
「アンタが起きないから介抱してただけじゃないのよ~、この扱いはちょっとヒドクないかしら?」
だがお嬢様はなんだか拗ねたような表情でいらっしゃる。 ぶつけた時に変なところでも打ったのだろうか?
いつもの彼女はこんな時には言葉より先に電撃、それも10億ボルトとか割ととんでもない攻撃を仕掛けてくると思うのだが。
「わりぃわりぃ、お詫びの印にそこの広場の自販機でなんか奢ってやるからそれで勘弁してくれ」
あまり怒っていないのなら適当に機嫌を取って事無きを得ようと上条は自分にとって最大限の誠意を見せてみる。
 上条が指差す先には今居るバス停に面した小さな広場があり、さらにその先には学園都市名物の実験試作品の自販機が聳え立っていた。
美琴は少し不満そうではあるが奢られることには異論が無いらしい、立ち上がってスカートをパンパンと払ってから自分の鞄を拾い上げて
スタスタと例の自販機まで歩いていき、これから奢られる品をふむふむとうなづきながら吟味し始めた。
実際すごく近くなのだ、それこそ歩いて1分程度。上条も自分の鞄を持って美琴の後を追いかける。
「椰子の実サイダーに後光の紅茶・・・飲むナタデココって一体なんなのかしら、本当に怪しい物ばかりあるわね」
「わっかんねぇかなぁ、この選ぶ前の『天国か地獄』的な緊張感がタマラネェんじゃないか。あと安いしな」
「私にどんなリアクション期待してんのよアンタは」
「希望としては目つぶって適当に押したら地獄お汁粉あたりが出てきてソレを我慢しながら一気に飲み干すの御坂とかツボだな。
更にその際少し涙を目に溜めて必死に我慢してたりするとそれだけでご飯3杯いけそう」
「ツボって変態かアンタは。 だったらとても飲めそうに無い物が出てきたらとりあえずアンタに毒見させるからソコんとこよろしく!」
 美琴はそう言い切るとすーっと息を吸い込んで
「常盤台中学内伝 おばーちゃん式ナナメ四五度からの打撃による故障機械再生法!!」
とか大声で叫びながら目の前の自販機に対して絶妙な角度でハイキックをかました。 風を切った彼女の足がキックの勢いで露になる。
スカートがめくれるがいつものごとく下には短パンを履いているようだ。 
がっつーん!という音の後にがちゃーんという音がして取り出し口に一本のジュースが出てくる。 
「ってヲイ、なんで奢るって言ってるのにお前は自販機に捻りの利いたハイキックなんてかますんだよ!お嬢様だろ一応!」
「お嬢様よ、一応じゃなくて普通に。知らないの?常盤台中学じゃみんなこうするのよ、黒子だってやってるわよ」
取り出し口から出てきたドリンクを見て軽く顔をしかめながら美琴は言い張る。
「どう考えてもアイツだけはそれやりそうにないぞ、そういう乱暴な手段で一般的な男子が持っているお嬢様像を粉々に砕くんじゃねぇよ!」
「あんまり女の子に幻想抱いてんじゃないわよ、それになによ、アンタ随分黒子の肩持つじゃないの~、なんかムカツクわね。
あと出てきたジュースも結局怪しいし、どっちかって言うと後者の方が気に入らないわ――」
「ちょ、もがぁぁ!テメェためらいも無く怪しげなジュース押しつけんじゃネェ!! しかもホットじゃねぇか」
「もしまずかったらどうすんのよ! アタシがカワイソウでしょうが!男なら女の子が差し出す怪しげなジュースぐらい一気に飲んでやる
くらいの男気を見せなさい、ぶっちゃけ、もういいから四の五の言わずに飲めぇ!!」
上条を押さえつけながらその口に口の空いた『とろける激甘カカオスーパー』と書かれた茶色い缶を押し込もうとしてくる美琴。
上条も最初は嫌がってたのだが変に突き飛ばしたりすると美琴の手にあるジュースがえらいことになるので
「ムグググ!普通の女の子は怪しげなジュースを無理やり飲ませないっての! も~!?飲めばいいんだろ飲めば!!ほら貸せ」
 口を閉じて抵抗を続けていた上条だがそう言うとキョトンとする美琴の右手から茶色い缶を奪い取って口へと運び、一言感想を口にした。
「甘ッ!? なんだこれ、この世のものとは思えないくらいに甘い・・・」
美琴、ワリィこれは一口しか無理だわ、きっと全部飲んだら胸焼けしそう、と付け加え缶を美琴へと差し出す。
「え!? あ、そ、そう? じゃ、じゃあ無理して飲まなくても私甘いの大丈夫だから、も、もらおうかしら、勿体無いし、そう勿体無いから」
殺人的な甘さに顔をしかめて口を押さえる上条が差し出す茶色い缶を両手で受け取って美琴はしきりに「勿体無いから」を連呼する。
 上条は口直しにと自販機に硬貨を突っ込んで一番無難そうな『後光の紅茶レモン』を選び、取り出し口に手を突っ込む。
「ただひたすらに甘いココアだなそりゃ、冷めると余計にキツイぞ美琴、飲まないのか?」
「う、うっさいわね!? 私は、そう、ね、猫舌なのよ。熱いの苦手なの、だから冷めるまで少し待ってんのよ!」
上条は小さなペットボトルを片手に興味無さそうに、ふーん、と相槌を打つと落ちていた自分の鞄と美琴の鞄を左手で拾いあげて
自販機の横にあった白いベンチに座り込むと美琴も両手でココアを持ったままちょこんと隣に腰を下ろす。
10分経過―――
ベンチの半分を大胆に占領し脱力する上条とその横でココアの缶に熱い視線を送りながらぴくりとも動かない常盤台のお嬢様という
図式が出来上がり、なんだか他の通行人が時折暖かい視線を送ってくれる。
 その時「なぁ、御坂―」と隣の美琴に話しかけようとした上条の視界が不意に暗くなって、
「カミや~んめっけ、そしてしねぇ!!」
 そんな陽気で聞き覚えのある声が響くのと上条が行動を開始するのはほとんど同時の事だった。

ドガァァァ!! 

 間一髪で美琴を抱えて上条はベンチから飛びのいたがその直後破砕音を轟かせてさっきまで座っていたベンチが真っ二つになった。
アスファルト舗装のはずなのにもうもうと土煙が立ち込めてベンチのあった場所に背の高いシルエットが浮かぶ。
「ちょ、ちょっと!?」
と上条にお姫様だっこされた美琴が驚きに目を白黒させながら声を上げるが
「黙ってろ!舌噛むぞ」
それだけを美琴に言い放つと上条は美琴を抱えたまま、ベンチがあった場所を凝視する。
 煙の中からは上条の予想通りの声が響く。 もうもうと立ち込めていた砂煙は一陣の風によって綺麗に吹き払われる。
「か~み~やーん、そろそろ鬼ごっこはお終いやでぇ?」
ムカツクほど爽やかに白い歯をキラリとさせた長身の若者がそこに居た。 ついでにいえばその髪は不自然なくらい青く耳にはピアスをつけている。
当然上条はその人物に心当たりがあり、何度も何度も作中で説明するのもおこがましいが
その人物は上条当麻のクラスメイトであり、吹寄制理曰く『クラスの3バカ』の一人、通称青髪ピアス(本名不明)、その人だった。
「よりにもよってアイツかよ、青髪!公共物を壊すな!!あと自販機の上にのぼるな!せめて本名名乗れ!!」
「カミやんボクの名前はトップシークレットやねん。 きっとこの先の原作でも一回として語られるなんてことはこれっぽっちも期待してないんよボク。でもだからと言って青髪ピアスという名前で過ごすなんてまっぴらごめんやぁぁ!! 
せやから、せやからやで・・・・・・大人しく投降してチョコレートの贈り主を吐けぇカミやん!!
今ならどっちかっていうと死に近い割合の半殺しで勘弁したるわー」
 青髪ピアスはそう言うなり指をパチンと鳴らす。 途端辺りの植え込みや自販機の陰から見覚えのある連中が顔を出した。
「うはぁ!?どんな理由だよそれ。それとそれは半殺しっていうかそれほとんど死んでるだろ! 最後に一言、お前ら一体どこに隠れてたのさ!!」
「はっはっはっは、愚問愚問、カミやん達がラブラブとした桃色空間を展開している隙に『背後の植え込み』とか『自販機の陰』とか『ベンチの下』とかいろいろやぁ!!カミやん 君は完全に包囲されとるで!!」
そこまで言って青髪ピアスも上条も美琴もその他のクラスメイトも気づいた、もはや跡形も無いベンチの破片に紛れてなんかぐったりしてる人間に。
たっぷり30秒ほどこの世界の時計が針の動きを止めた、あくまでも比喩的に。
「今のなーし!!」とか言って青髪ピアスが両手でバッテンを作る。 
時間は動き出し青髪ピアスの後方でテキパキと担架で運ばれるクラスメイトA
「思いっきりお前の攻撃の犠牲者じゃねぇか!! すっげーぐったりしてるぞアイツ」
「多少の犠牲はつきものやでぇ、あいつは資料も無いことだし丁度ええやん。そんなことより、この後に及んでまだボクらに見せ付けるか!!」
あん?とよく判らない顔をする上条に周りからブーイングが飛ぶ。 青髪が両手を挙げブーイングを止めると
 上条に―否、お姫様だっこ状態の美琴をビシィと指差して大声で宣言した。
「うらやましすぎるんじゃボケェェッ!!しかもその子夏休みの最終日にカミやんにタックルかまして攫ってった常盤台中学の子やん
普段駄フラグ駄フラグ連呼しとる癖にちゃっかりフラグを回収してるやんかぁ!さてはその子からもチョコレート――ぐ、うぬぅぅぅ」
青髪ピアスの台詞は後半はなんだか聞き取れないかった。
それでも青髪ピアスの言葉に上条を包囲していたクラスメイト(男子)が一同にうんうんと頷き、
上条はそれを見て、お前らなぁ、と疲れた顔で呻くのだった。
「アンタ、さっきからウルサイ」
 上条の腕の中に居た美琴が突然キッと顔を上げ青髪ピアスをロックオンすると、美琴の前髪から青白いスパークが飛び散り
青髪ピアスに雷撃の槍が炸裂した。
電撃を喰らって一瞬で黒こげにされた青髪ピアスを見て包囲していたクラスメイト達に動揺が奔る。 ついでに上条にも動揺が奔る。
「お、おいそれはやりすぎなんじゃ?」
「ちゃんと手加減してあるわよ、なんか耳のピアスにやたらと集中したみたいだけど」
黒こげになった青髪ピアスがクラスメイトの手によってテキパキ担架で運ばれる。 手加減してあるみたいだから多分死んではいないはずだ。
最悪の場合、あの医者にでも任せればいい。
 たぶんあの医者なら「こりゃひどい、ザオリクするか」とか言って死人でも生き返らせそうだ。
ため息をつきながら周囲を見渡せば青髪ピアスがベンチを吹っ飛ばした時にでも飛ばされたのか
すぐ近くの植え込みの上に上条と美琴の鞄が乗っかっていた。
「俺の鞄?でもなんがかすっごく膨らんでないか?」
いや問題はそこじゃないだろと突っ込みを入れるクラスメイト達の視線は無視して植え込みの鞄に手を伸ばそうとして気づいた。
『・・・・・・』
上条と美琴の目が合う。 彼女は両手でココアの缶を持ったまま赤くなって上条を見上げている。
両手塞がってますね。 それも結構特殊な状態で。  
 数秒経過・・・・・・
 自分の手が置いてある場所をたどってみる。 
右手は美琴の膝の裏辺りを掬うように抱えあげている。
左手・・・美琴の背中から左肩に掛けてをやはり抱えている。
左手を通して美琴の心臓の音が伝わってくるがそれ以上に自分の心臓の音がバクバクとうるさい。
「あっと、済まない!ごめん!わりぃ!許せ!」
 途端に早口になって美琴から手を離す。 途端に手の中に居た美琴は支えが無くなって万有引力の法則に従って自由落下を始めた。 
「え!わ!きゃあ!」
突然の事に大事そうに持っていたココアの缶を慌てて投げ捨てて両手をバタバタと振りながら美琴は植え込みの上に落下した。
バキバキと植え込みの木が折れる音とカァンというココア缶の音が鳴り響く。
「あ゛~」
ギャラリーの皆さんも「あーやっちゃったよこの人」って視線を送ってくる。
「へ、へぇ、アンタはさっきまでの雰囲気をこうやって粉々にしてくれるんだぁ・・・・」
植え込みに体を半分以上突っ込んで美琴が目を閉じて静かに言う。 そのこめかみに青筋が見えた。
「ひぃ! これはと、と、とんだ粗相を!平に平にご容赦を!」
上条が地面にゴツンと頭を押し付けて土下座しながら謝ってくるのを見て美琴も怒る気が失せた様な顔で
「あーもういいから、とりあえず起こしてよ。 うまいことはまっちゃって出れないんだからこれ」
とりあえずそこまで本気で怒ってはいないようなので美琴を植え込みから引っ張り上げて地面に落ちた鞄を拾う。
 なんだか膨らんでる、というか異様だ。 明らかに持って来たときよりもかなり重たい。
「開けてみればいいじゃないの、ほらッ!!・・・・・!?」
「ありえねぇ・・・」
 鞄を見て悩みこんでる上条から美琴が鞄を奪って開けて中にあった物を目撃した。 
 上条はアゴが外れそうな顔をしてるし美琴はなんだこれは?と言った表情をしている。
結論から言えば上条の鞄の中にはぎっしりと綺麗にラッピングされたチョコレートらしきものが詰まっていた。 
「アンタの鞄は魔法の鞄なの・・・・・・?いくらチョコレートが好きっていっても
ってかこんなに食べたらアンタ糖分過剰摂取で死ぬわよ、多分」
 呆れた顔をして美琴がジト目で上条に突き刺す視線を送る。
美琴の、あんたまだ懲りてないみたいね?といった視線から逃れるため上条は自分の鞄を逆さにしてみた。
 逆さまにされた鞄の中明らかに上条の予想と鞄の内容量をはるかに超える量の『茶色い甘そうな菓子』や
『赤いリボンでラッピングされた長細い箱』とか『メッセージカードがついたハート型の箱』とかが
わんさか出てきた。 
ドサドサドサドサドサドサドサ
上条は鞄の中から出てきたものでできた山を指差してその光景を呆然と眺める美琴に猛然と抗議する。
「どこの世界に学生鞄の中身が全てチョコレートなんて高校生が居るんですか!!ていうか絶対異常ですよこの事態!」
必死に抗議する上条の叫びは虚しく、美琴をはじめ周辺に居た通行人を含めてその場に居合わせていた全員が躊躇うことなく上条の事を指差していた。 ここにいるじゃないか?と。
「いろいろ反論はあるだろう、でもそれは一回置いといて欲しい!!なんていうか不幸だ、もう一回言うぞ、不幸だ―――!」



次回に続く、そろそろ終盤に行きたいな。


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