とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

とある戦士の幻想殺し

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不幸少年、上条当麻は思わず耳を疑った。
「土御門、もう一度言ってくれ。なんだって?」
通話先の隣人に、今一度尋ねる。
「にゃー。学園都市のお偉いさん方達が、カミやんが魔術師を追っ払ってくれるのは感謝してるんだが、その度に破壊される建物の修復費用が馬鹿にならないって言ってるんだにゃー。それで、カミやんには学園都市で今秋から始まる特撮モノの主人公役をやってくれるなら、費用面はチャラにしてくれるっても言ってるんだにゃー」
土御門の言っていることを上条は頭の中で簡単に整理する。
「その、つまりなんだ?俺がヒーローになれ、と?」
「その通りだ、カミやん。日時と場所は後で詳しく伝えるから、頼んだぜい」
それだけ言うと、土御門は電話を切った。
「俺が…ヒーローに?」
次回、とある戦士の幻想殺し
『変身』
お楽しみに!



とある戦士の幻想殺し

とある建物の一室で、白髪頭の少年とアロハシャツに金髪サングラスの少年は会話を交わしていた。
「一方通行、お前は学園都市に莫大な借金があることは知ってるよな?」
「あァ、百も承知だ。けどよォ…本当にやれって言うのかァ?」
「勿論だ。お前の他に誰がやるって言うんだにゃー。…まぁ、ある人物も似たような条件でやってるが」
そう言うと、金髪サングラスの少年は懐からとある場所と日付、時間が書かれた用紙を取り出し、白髪頭の少年に渡した。
「やれば良いンだろ、やれば」
ちっ、と舌打ちして用紙を乱暴\に受け取る。
「そうだ、それでいい。じゃ、俺は行くぜぃ」
「さっさと消えろ」
白髪頭の少年がそう言うと、金髪サングラスの少年は部屋から出て行った。
「ったく、めンどくせェなァ……」
脳裏に命懸けで守ると決めたとある少女の笑顔が浮かぶ。その幻想を護る為、白髪頭の少年も部屋を後にした。



第二話

雲一つない快晴の空、上条当麻は指定された場所に到着すると、驚きで開いた口が塞がらなかった。
「す、すげぇ……」
用意周到の撮影セット、スタッフ、見る物全てが上条には新鮮だった。
「お、君が上条君か?」
呆然と立ち尽くしていると、監督とおぼしき人物が声を掛けてきた。
「あ、はい。そうです」
「話は聞いているな?」
「えぇ、勿論です」
「それなら、まずはアクションの仕方を学んでもらう」
そう告げると、監督は作業中のスタッフを呼び寄せる。
「なんでしょう監督」
「コイツに動きを教えてやれ」
「わかりました」
監督に指示されたスタッフが上条に近寄る。
「アクション監督の山下だ。君、名前は?」
「上条です。上条当麻」
「上条君、君は格闘技とかやったことは?」
「あんま無いです…つか、路地裏での喧嘩程度なんで」
あはは、と上条は笑いながら経験を語る。
「ふむ…見たところ、それなりに筋肉は付いてるようだね」
山下は上条の肉体を見回し、感想を述べる。
「感想ー!」
「どうした」
上条の肉体を観察し終えると、山下は監督を呼んだ。
「身体的にはバッチリですが、アクションの方はまだ未熟な面がありますね」
「そうか…なら、指導を頼む」
「わかりました。上条君、今日はこの後の予\定は?」
監督と話を済ませ、山下は上条に尋ねる。
「一応は暇ですけど…何か?」
「うん、ちょっと演技指導をね」
「演技って、アクションのすか?」
「そうだね。君の役は格闘主体の戦い方だから」
「格闘主体って……まさか俺が変身した後も俺が演じるんですか!?」
「あれ?聞いてなかった?」
「てっきり変身したらスーツアクターの人が頑張ってくれるのかと、」
山下から話を聞き、上条は驚愕する。ちゃんと説明しなかった土御門を恨みつつも。
「学園都市の特撮モノは『外』とは違うからね」
ははは、と笑いながら山下は上条に動き方の説明を始めた。

陽も落ち、すっかり闇が支配する学園都市をくたくたになった上条は歩いていて、とある学生寮に帰ってきた。
「ただいまー…インデックス」
あの後、拳や蹴りの出し方や走り方の指導を散々山下から教わった上条。
「こんなんでやって行けるのかな…」
いつもより疲労感UPで部屋に行くと、インデックスの姿が無かった。
「…………、」
自分の帰りが遅かったため、恐らく小萌先生の所に行ったのだろう。そう考えていると、書き置きがあった。
『とうまの帰りが遅いからこもえの家に行ってくるね。インデックスより』
飼い猫のスフィンクスの姿も見えない為、今は上条一人が部屋に居る。
「さっさと風呂入って飯食って寝るとしますか。…いや、貰った台本読んで台詞覚えねーとな」
ぶつくさ言いながら上条は作業を始める。
過酷な日々が始まることをその身に感じて。



第三話

翌日も実に快晴日和だった。上条は準備を済ませて、撮影現場へと向かった。
「監督ー、上条君入りまーす!」
上条が到着すると、山下が出迎えてくれた。
「よし、今日は撮影開始だ」
「台本はちゃんと覚えてきたんだろうな?」
「えぇ、でも初めてなんで…お手柔らかに頼みます、監督」
「今日は登場、変身シーンと戦闘だけを撮るから大丈夫だよ」
はぁ、と上条は山下の説明を受ける。
「よーし、行くぞー!」
監督からの指示が飛び、スタッフが慌ただしく、各自の持ち場へと付く。
「上条君、はい、ベルト」
「ありがとうございます……、これが…変身ベルト」
差し出されたベルトを受け取り、まじまじと見詰める上条。
「アクション!」
上条がベルトを見ている間に準備が終わり、監督が撮影開始の合図を出すと、上条は急いで持ち場へと付く。
「キャー!」
「うわああああ!」
エキストラの人々が怪人から逃げ惑う。
その光景に上条は息を呑む。出番が近付く。
「…上条君、出番だ!」
山下が静かに上条に合図する。
「………、」
無言で頷き、上条はついに動いた。

「おい、化け物!こっちを向きやがれよ!!」
エキストラを追う怪人の背後に立ち、叫ぶ。
「………、」
上条の姿を見つけた怪人は、上条の方へと向かってくる。
(来た来た……えーと、確か…)
次の行動を考えている間にも、怪人は距離を狭める。
(くっ…)
距離は目と鼻の先。上条は拳を握る。
「うおぉぉぉ!」
「………!」
怪人へと左拳を突き出すと、怪人は怯んだ。
(次は確か…!)
上条はおもむろにベルトを取り出し、腰に装着して、
「行くぜ、化け物!」
そう叫ぶと、両足をしっかり大地に付け、右腕を龍が天に昇るように上げ、左腕を腰の脇に置き、
「みんなは、俺が護る……、変身!」
上条が叫ぶと共に、上条の全身を眩い光が包み、姿を変えた(変身後の姿はご想像にお任せします)。
(マジで変身出来た…!学園都市の科学力すげぇ!)
いつまでも感心していられない。上条は拳を握り直し、怪人へと突っ込む。
「とりゃああああ!」
「…………!!」
上条の突進に反応した怪人も、向かってくる。
それに合わせて、上条は拳を放つ。
「はぁっ!」
「………!?」
「とぉりゃあっ!」
右、左と拳を叩き付け、これでもかと蹴りも放つ。
「………!!」
だが、怪人もただ黙っているわけではない。

「ぐはぁっ…!」
「………、」
怪人の反撃。
急所を狙ったタックルや、重い一撃をかましてくる。
「くそっ…このままじゃ…やられちまう!」
止まらぬ怪人の猛攻に、上条は焦りを覚える。
「くっ…そったれがぁっ!!」
「!」
攻撃と攻撃の隙間を狙い、上条はパンチを決めると、怪人がぶっ飛ばされた。
「今だ!」
はぁぁぁ…、と全身に力を込め、上条は飛び上がった。
「!!?」
「俺の一撃は、ちっとばかり痛いぜ!」
起き上がり、防御しようとする怪人目掛け、上条は必殺技のキックを炸裂させ、
「!!!」
怪人は爆散するのを確認すると、
「この俺が居るかぎり!平和は乱させない!」
決め台詞を叫んだ。

無事に本日の撮影が終わり、上条は帰り支度を初めていると、
「なかなかいい演技だったよ、上条君」
背後から山下が声を掛けてきた。
はぁ、と上条が答えると、山下は明日も頑張るように、とだけ伝えて去っていった。
「それだけの為に声掛けてきたのかよ」
思わずツッコんでしまう上条。
「さて、帰るか……」
撮影の前には聞いていたが、自分が変身して怪人を本当に倒すという、体験したくても体験出来ない体験をした上条は、変身後の余韻を噛み締め、学生寮を目指した。


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