今回予告
 ブラフォード動乱の終結から半月後、ヴァレフールの首都ドラグボロゥにて、ヴァレフール伯爵ワトホートとその娘レアの同席の上で、「七男爵会議」が開催されることになった。ガスコインの死に伴う空席を誰が埋めるのか。引退を仄めかしている騎士団長と副団長の座を誰が継ぐのか。そして、ヴァレフール伯爵の後継者に誰を指名するのか。様々な問題が山積する中、既に子爵級に匹敵する聖印を手にしているものの正式な叙勲を受けていないトオヤには、ケネスの名代としてアキレスの留守居役が命じられる。
 ブレトランドで五指に入る規模の聖印を手にしながらも「皇帝聖印なんて、いらない」と断言したトオヤは、新時代のヴァレフールにおいて何を目指すのか。そして、彼を支えてきた少女達は、どんな未来を選び取ることになるのか。激動のヴァレフールを駆け抜けた風雲児達の黙示録は、今、終着の時を迎える。

グランクレスト不定期キャンペーン「ブレトランド風雲録」最終話
「雲を払う風」
混沌を収め、聖印に至れ!

PC① トオヤ・E・レクナ
PC② チシャ・ロート
PC③ ドルチェ
PC④ カーラ
因縁:それぞれの手紙の差出人
 キミの元に手紙が届いた。その中身は、他人に見せることが憚られる内容である。その内容については、個別にメールで送られる裏ハンドアウトを参照。一部には事前に返信を要する手紙もあるので、該当するメールを受け取った者は、出来れば返信すること。なお、手紙の内容を他のプレイヤーに知らせることを全面禁止はしないが、なるべく秘密にしておいた方がセッションが面白くなると思う、というのがGMとしての見解。
 手紙の内容はこちら参照。

PC⑤〜 
因縁:応相談
 過去のブレトランド・サーガに登場したキャラを用いて乱入したい人がいる場合は、「PC名」と「やりたいこと」を書いてY武にメールすること。乱入を認めるか否かはその内容次第であり、認められたとしても、十分な出番が与えられることは保証しない。ちなみに、レベルは15。

乱入組のプレイヤーは第1話第2話を読んだ上で、出来れば以下の諸情報にも目を通しておくことを推奨
  • 一般公開情報=誰でも知っている情報
  • 機密情報=トオヤ達しか知らない情報
  • 超機密情報=トオヤ達も知らない情報
+ 一般公開情報1:これまでの各話の一行解説
  • 第1話:大陸からの船上で攫われようとしたレアをトオヤ達が救出。
  • 第2話:レアがトオヤ達の手で無事に首都ドラグボロゥへと到着。
  • 第3話:テイタニアの巨大怪獣がトオヤ達の手で火山の火口へと帰還。
  • 第4話:クーンの領主イアンの不倫疑惑問題がトオヤ達の手で解決。
  • 第5話:アントリアの銀十字旅団による長城線攻撃をトオヤ達が撃退。
  • 第6話:アキレス近隣地域で起きていた混沌災害をトオヤ達が浄化。
  • 第7話:暴徒化した傭兵団をトオヤ達とイカロス軍の共同作戦で鎮圧。
  • 第8話:タイフォンに突如現れた巨大な異界の神をトオヤ達が浄化。
  • 第9話:ムーンチャイルド近辺で発生した夢魔騒動をトオヤ達が解決。
  • 第10話:和平会談の場での騎士団長&副団長暗殺をトオヤ達が阻止。
  • 第11話:ケイの領主ガスコインに率いられた反乱軍をトオヤ達が鎮圧。
+ 一般公開情報2:後継者問題の現状
 今のところ、現伯爵ワトホートの次女レアを後継者とする方針で概ね合意に達している。彼女以外の「ブラギス直系の血族」については、以下の通り。
  • 現伯爵の長女フィーナ(レアの姉)は現在行方不明。
  • 現伯爵の弟トイバルは約一年前のテイタニアの魔物騒動で戦死。
  • トイバルの長女サラは大陸のハルーシアの貴族と婚約し、既にブレトランドにはいない。
  • トイバルの長男ゴーバンは武者修行の旅に出て(第6話〜)、現在はヴァンベルグに滞在中。少なくとも、現時点では伯爵位を継ぐつもりはないらしい。
  • トイバルの次男ドギは聖印拒絶体質を改善したが(第6話にて判明)、まだ9歳ということもあり、今のところは有力な後継者候補とはなっていない。
  • 現伯爵の妹ヴェラはブレトランドに帰還したが(第3話)、臣下に降嫁した身であり、本人も継ぐ気はない。なお、現在懐妊中(第7話にて判明)。
※上記以外に隠し子などがいるかどうかについては、公的には言及されていない。
+ 一般公開情報3:ブラフォード動乱(第10話後半〜第11話)の経緯
※余裕があれば、前提情報としてブレトランドの英霊5を読んでおくことを推奨
 カナハ村でおこなわれていた騎士団長ケネスと副団長グレンによる和平会談の最中、ケイの領主ガスコインの筆頭契約魔法師が乱入し、彼等二人の暗殺を目論むが、トオヤ達によって阻止され、その魔法師は爆死する。
 それと時を同じくして、ガスコインは、ブラフォード湖周辺の諸侯(ケイ、レレイスホト、ダイモン、マーチ)を従える形で「ブラフォード子爵領」として独立を宣言した。「ヴァレフール騎士団長ケネスと伯爵令嬢レアが、闇魔法師組織パンドラと手を組んでいる」というのがその理由である(しかし、明確な物証はなかった)。彼は「パンドラにも聖印教会にも屈しない国」を作ることを目指し、ヴァレフール内の諸侯に対しても離反を呼びかけると同時に、グリース子爵ゲオルグとの間で相互援助条約を結ぶ(ただし、この時点ではグリースもブラフォードもヴァレフールに対して宣戦してはいない)。
 また、この直前に、ガスコインの息子であるマーチの領主セシルと、ゲオルグの妹ルルシェが、それぞれ人質交換のような形で相手国の首都に「留学」していたのだが、マーチに出仕中であったセシルの従属騎士ラファエル(チシャの弟)と、実地研修中の魔法師ヴェルナ(チシャの旧友)は、このことを一切知らされていないまま、なし崩し的に反乱軍に組み込まれることになる。
 それと前後して、マーチにトーキー方面から傭兵団「暁の牙」を名乗る大兵団が訪れる(指揮官はウィルバート)。彼等はガスコインに雇われたと言ってケイへと進軍するが、ヴェルナはその中に見知ったアントリア人(シドウ)がいることに気付き、この兵団の中にアントリア軍が多数混ざっていることを察して、その旨をタクト通信でチシャに伝える。また、同時期に長城線を守るオディールの魔法師オルガも、「長城線に危機が訪れようとしている」ということを時空魔法で察知し、義妹のオデットを通じてチシャにタクト通信で通達していた。
 これらの状況から、「ガスコインがアントリアと手を組んで、暁の牙に偽装したアントリア軍をケイから水路でダイモン、更にはオーロラへと進軍させることで、長城線を裏側から破壊しようとしているのではないか」という仮説に到達したトオヤ達は、ガスコインの真意を確かめるためにケイへと進軍する。一方、危険を察知して援軍に駆けつけたグレンの孫であるレヴィアンとその契約魔法師であるロザンヌ(クーンの領主イアンの妹)には、暁の牙(に偽装したアントリア軍)による長城線への進軍の足止めを依頼した。
 トオヤ達はレレイスホトにてガスコインと対談して帰順を促すが聞き入れられず、最終的には正面衝突の末に、トオヤの手でガスコインは討ち取られる。一方、トオヤ達の予想通りに湖をオルガノンフリートを用いて進軍しようとしていた暁の牙(に偽装したアントリア軍)は、レヴィアンとロザンヌの奇策(「湖を凍らせることで船による航行を停止させ、やむなく敵が氷上を進軍しようとしたところで氷を溶かす」を繰り返す)によって足止めされたまま、やがてガスコイン戦死の報を受けて、ケイ経由でマーチへと撤退した。
 その後、ケイはトオヤ軍とレヴィアン軍によって占領されたが、マーチにはラキシスから派遣された「セシル率いるグリース軍」が駐留することになる。以下はグリース側から発表された公式見解である。

「我々は、今回のヴァレフールとブラフォードの『不幸な衝突』の結末に遺憾の意を、盟友ガスコイン卿の名誉の戦死に哀悼の意を表します。その上で、我々はヴァレフールの方々とはこれからも今までと変わらぬ友好関係を維持したいと考えております。ただ、ガスコイン卿の遺児セシル様は、父君を亡くされたことで心を乱されており、ヴァレフールへの帰順を拒んでおられます。我々は亡きガスコイン様から大切なご長男を預かった身として、今後も責任を持って『マーチの領主セシル様』のことを、後見人として支えていきたいと考えている所存です」

 この申し出に対して、ヴァレフール側はこれ以上の戦闘の継続は避けるべきだと判断し、セシルによるマーチの領有権の継続とヴァレフールからの離脱を黙認することで、実質的にマーチを「グリースの保護下」に置くことを認めた(もともとマーチは旧トランガーヌ領であり、セシルの母方の祖父もトランガーヌの貴族だったので、旧トランガーヌの実質的後継国家の一つであるグリースが同地を占領してセシルを傘下に加えることに対して、強硬に反対出来る根拠もなかった)。この結果として、それまで歪な構造にあった中央山脈の山岳街道は、ほぼ完全にグリースが手中に収めることになったのである。
+ 一般公開情報4:その他(割とどうでもいい情報)
  • 幻想詩連合の盟主アレクシスはトオヤ達とは仲良し(第3話)
  • トオヤの弟のロジャーは「ドルチェ」に一目惚れしていた(第5話)
  • ロジャーの契約相手のサルファはチシャに懸想中っぽい(第7話)
  • ムーンチャイルドにいる鉄仮面の騎士はカーラに御執心(第9話)
  • セシルの護衛としてSFCがラキシスに派遣されていた(第10話)
  • ルルシェの護衛としてKX-5がケイに派遣されていた(第10話)
+ 機密情報1:チシャの正体(第4話にて発覚)
 チシャの毋ネネは、40年前に「音也(オトヤ)という名の地球人」と「クーンの城に取り憑いていたローラという名のリャナンシー」の間に生まれた娘であった。つまり、ネネは「異世界からの投影体同士の子供」なのであるが、ネネ自身の「本体」はどこの異世界にも存在しないため、厳密に言えば彼女自身は投影体ではない(ちなみに、音也の中では「ネネ」という名は「音々」という漢字表記をイメージしていたようだが、そのことは本人には伝わっていない)。
 諸々の経緯の末に、音也とローラはネネが生まれた数ヶ月後にこの世界から一度消滅し(その後、二人は幾度も「出現」と「消滅」を繰り返すことになるのだが、それはまた別の話)、ネネは音也の友人であったアルフレッド・リンフィールドという人物に育てられ、やがてその縁から、「パンドラ均衡派」に加わることになる。
 美しく成長した彼女は、間者としてヴァレフールの内情を探るために、先代伯爵ブラギスの正妻レオリアの侍女として宮廷に潜入するが、リャナンシーの血を引くが故の「無意識の誘惑能力」によってブラギスを魅了してしまい、密かに幾度も彼の寝所に呼ばれることになる。
 だが、その事実は表沙汰になることなく、やがて騎士団長ケネスの長男マッキーからの熱烈な求愛により、彼と結婚することになるが、その時点ではネネの胎内には、既にブラギスとの子供であるチシャが宿っていたのであった。
(以下の情報は第6話で発覚)
 その後、ネネはマッキーとの間で三人の子を産みつつ、パンドラへの情報提供を続けていたが、数年前にマッキーが病死し、そして自身の正体が侍女のアマンダに発覚しそうになった時点で、密かに出奔する。その後は(自身の顔が知られていない)大陸を主な拠点として情報収集活動を再開しつつ、各地のパンドラ組織との調整役という役割を主に担うことになる。
+ 機密情報2:トオヤの正体(第6話にて発覚)
 トオヤの母プリスは、レオンとの結婚以前に、音也(オトヤ)という名の地球人と、密かに恋仲の関係にあった。故に彼女は、レオンとの婚約が発表された時点で、音也と共に駆け落ちしたのであるが、その事実を隠蔽しようとしたケネスは、「パロット(オウム)」という名の幻影の邪紋使いを雇い、「プリス」に変身させた上で「彼女が帰ってくるまでの身代わり」を命じる。
 その後、プリスは音也としばらく「愛の逃避行」を続けるものの、音也が旅先で次々と他の女性に目移りする様子に愛想を尽かし、彼と別れて祖国へと帰還する。だが、この時点で既に彼女の代役であるパロットはレオンとの間に長男「トオヤ」を産んでいた。かつてのプリスの恋人と似た名を付けたのは、パロットなりの皮肉だったのかもしれない。プリスはその事実に動揺しながらも、パロットは彼女の帰還後、あっさりと彼女にトオヤを託して、彼女の前から消え去る。
 トオヤは順調に成長するが、その顔付きはレオンにもプリスにも似ていなかった。おそらくはパロットの遺伝子を強く引き継いでしまったのだろうが、パロットの「本当の顔」は誰も知らないので、確認することは出来ない。やがてそのことがプリスの不倫疑惑を発生させることになるのだが、プリスとしても「自分の方が偽物だった」ということを公言する訳にはいかないため、肯定も否定も出来ず、結果的にレオンの中でのトオヤへの疑惑が広がっていく(その後の顛末は本編第一話の冒頭参照)。
 なお、その後もパロットは「ヴァレフール御用達の影武者」として各地で活躍することになり、やがてパペットという弟子を育てるに至る。ちなみに、最近は病床のワトホートの代役を務めていることが多い。
+ 機密情報3:ドギ・ゴーバン・ケネスの諸々(第6話にて発覚)
 パンドラ新世界派の首領である召喚魔法師ジャック・ボンキップの正体は「意思を持った『混沌』そのもの(カオス・ビーイング)」である。彼はパンドラ結成の遥か以前から、様々な人間の肉体に取り憑き、その身体を支配することによって、何百年も昔からブレトランドに干渉し続けてきた。しかし、彼が混沌の力を用いる際には「依代」としての肉体に強い負荷がかかるため、「混沌への耐性の強い肉体」でなければ、すぐに物質としての限界に達して破壊されてしまう。そのため、彼は「より強い肉体」を求めて、歴代様々な人間を「依代」として使い潰してきた。
 そんな彼が目をつけたのが「エルムンドの末裔」である。英雄王の末裔の中にはより混沌への耐性が強い者が生まれる確率が高い、ということに気付いた彼は、当初はレアをその依代に選ぼうとしたが、自分達が攫おうとしたレアが偽物であることに気付いた彼は、次の標的としてチシャを選択する。だが、そのことに気付いたチシャの毋ネネ(均衡派の一員)は、娘が依代にされるのを避けるために、ドギを依代としてジャックに与える決意を固める。
 かつての夫の実家であるアキレスに潜入したネネはドギの誘拐に成功し、そしてドギはジャックの依代として、その身体を乗っ取られることになる(ジャック曰く、彼は極めて優秀な依代であるらしい)。だが、この事実が発覚した場合、今度こそヴァレフールを完全に敵に回し、パンドラ全体との泥沼の闘争が再燃するであろうことを案じたネネは、あえて先んじてケネスに真相を伝えた上で、「パンドラからの莫大な資金提供による手打ち案」を提示する。
 この話をネネから聞かされたケネスは、内心では烈火のごとく激怒していたが、現実問題として彼が率いる反体制派は戦費の増大による莫大な借金に悩まされており、またパンドラを相手に再び闘争を続けるだけの手段も残されていなかった(そして現実問題としてドギを取り戻す手段も皆無であった)ため、そこに更に以下のような諸条件を加えた上で、断腸の思いでその「手打ち案」を受諾する。

  • 賠償金を、当初のネネからの提案の倍額へと増加(これによって、反体制派が抱えていた負債の大半は解消)。
  • ドギのことを良く知る侍女を彼の影武者とするために、パンドラの魔法技術でその侍女の姿を「ドギ」に変え、更に年月の成長に伴って相応に成長していく作用を加える(実際にこれを担当したのは、楽園派の首領アイン)。
  • 「今後、ケネスの血族がパンドラ新世界派に危害を与えた場合、同じ痛みをケネスの心臓に与える」という呪いを、ケネスの身体に施す(実際にこれを担当したのはジャック)。

 その後、「ドギの影武者」は(もともと普通の人間であるため)聖印を受け取れる体質であったこともあり、世間に対しては「ドギの聖印拒絶体質は解消された」と公言するが、実兄であるゴーバンはドギの様子から「どこかおかしい」ということに気付き、トオヤに確認を依頼した結果、トオヤ達が真相の一端に気付いたところで、ケネスはこの事実をトオヤ達に伝える。
 トオヤは当初、「金で孫を売ったケネス」に激しい怒りを覚えるが、ケネスから、その身に宿した「パンドラとの密約の呪い(心臓の周辺に描かれた禍々しい魔法陣)」を見せつけられた上で、ヴァレフールの未来のために、どこまで泥を被ってでも自らの信念を貫き通そうとする執念に圧倒されて、彼のことを(許す気にはなれないものの)それ以上糾弾する気力を喪失する。
 だが、運悪くその話はゴーバンにも聞かれてしまった。ゴーバンは怒りに任せて城を飛び出し、「俺が今すぐドギを取り返しに行く!」と息巻くが、その直後に遭遇した投影体との戦いで自分の未熟さを思い知らされた彼は、偶然その時点でアキレスを訪れていた聖印教会所属の流浪の騎士クレア・シュネージュに弟子入りするという形で、表向きは円満な形で「武者修行の旅」に出ることになった。その後、ゴーバンは諸々の経緯を経て、現在はヴァンベルグの港町に滞在しているが、今のところ「ドギの真相」は(彼の中でそれは「身内の恥を晒す行為」でもあるため)誰にも話していない。
+ 機密情報4:レア(本物)の帰還までの経緯(第8話にて発覚)
 サンドルミアに留学中だったレアは、(本編開始前の時点で)偶然遭遇した混沌災害において混沌核の浄化に失敗し、逆に自身の聖印を混沌核に書き換えられ、「人間大のイグアナ」のような姿になってしまった。彼女は元に戻る方法を探すために出奔し、その代役としてパペットが彼女の代わりにヴァレフールに帰還することになる(それ以降のパペットの経緯は第一話参照)。
 その後、レアは各地を放浪するものの、魔物のような姿故にまともに情報を得ることも出来ぬまま、やがて海難事故に遭遇してしまい、パンドラ楽園派の拠点であるフーコック島(楽園島)に流れ着くことになる。この時点で彼女は一度記憶を失っていたが、島の子供達と仲良くなり、しばらくその地に滞在していた。
 その後、諸々の経緯の末に記憶を取り戻した彼女は、楽園派の首領アインの魔法によって強引に外見だけを「本来の自分」の姿に戻した上で、(島の子供達の手助けを受けて)ヴァレフールへと密かに帰還し、トオヤ達と合流した上で影武者(パペット)と入れ替わる。しかし、この時点ではまだ彼女の体内には「混沌核」があるため、父の聖印を継承出来ない状態であった。
(以下は第10話の冒頭のエピソード)
 その後、ケネスが和平会談に臨もうとした際、彼が(上述のパンドラとの密約の影響で)心臓発作を起こし、出席が難しくなってパペットに代役を頼むことになり、その際にパペットが交換条件として、ケネスが密かに所有していた「本人がイメージ出来る理想的な体質へと身体を作り変える薬」(その入手の経緯はブレトランドの英霊6参照)を要求した結果、ケネスはその薬をパペットに差し出し、それをレアが用いたことで。彼女は「本来の自分の身体(より正確に言えば、以前よりも健康な身体)」を取り戻し、再びその混沌核は聖印として復活した。
+ 超機密情報:ブラフォード動乱におけるグリースの策謀
 ゲオルグの契約魔法師の一人であるマーシー(その正体はパンドラ均衡派の首領)の建国時点での戦略の基本は「グリースとヴァレフールの連携によるアントリアの勢力拡大の阻止」であった。ところが、神聖トランガーヌの勃興、クラカラインの魔境化、ダン・ディオードの北方遠征、マーチの浄化、ヴァレフール内乱などを通じて、徐々にその計画に狂いが発生していた。
 昨今はグリースと神聖トランガーヌが交戦によって疲弊し、ヴァレフールもまた内乱によって混乱が続く中、それまで連戦で疲弊していたアントリアの国力が子爵代行マーシャルの手で回復しつつある。表面的には彼女の悲願である「均衡」が保たれているように見えるが、この状況は長期的にはアントリアの軍事的優位を高めることになると考えた彼女は、あえて復興途上のアントリアを再び戦争状況に陥れるために、長城線を破壊することでヴァレフールとの本格的な交戦状態を生み出す戦略に転じたのである(その上で、ヴァレフールが本格的に危機に陥った時点でグリースがアントリアに宣戦する、という思惑であった)。
 そのために彼女は、アントリア内の主戦派と内通した上で、長城線を裏側から破壊するための通路を確保するために、まずケイの領主ガスコインの離反を画策する。情報収集に長けた彼女はパンドラの他派閥の動きも概ね察知しており、ガスコインに対して「ケネスとレアがパンドラと通じている」という情報を匿名の手紙で漏洩し、(マーチでのセシル誘拐以来)パンドラに対して強い嫌悪感を抱いていたガスコインに離反を決意させることに成功する(なお、ガスコインがその手紙の内容を真実と確信したのは、次席契約魔法師であったヒルダが時空魔法師の能力である「賢者の予言」で確認したからであった)。
 その上で、ゲオルグの許可を得た上で密かに「人質交換」を前提としたガスコインとの同盟交渉を進めると同時に、アントリア領クワイエットの主戦派と共謀して「暁の牙に偽装したアントリア軍」と「クワイエット軍」による両面作戦で長城線を破壊するという作戦を計画し、トーキーの領主エディにも「『暁の牙』が来たら通行許可を出すように」と通告する。
 ただ、彼女はこの計画が失敗する可能性も当然考慮していたため、ケイにはルルシェ本人ではなく、彼女と瓜二つの外見を持つ地球人のリナを影武者として派遣した上で「いつでも逃げる準備を整えておくこと」を通告し、ガスコインが敗戦した場合は最悪でもマーチの領有権だけは確保出来るよう、いつでも自らの空間転移の魔法によって同地を占領するための準備は整えていたのである。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2018年07月27日 11:13