第一幕【秘めた想いと学園の魔術】
青原学園高等学校。小さく閉じた集合体では、噂はすぐに広まるものだ。
「不審者が学園内をうろついているという噂を知っていますか?」
国語教師の倉山菜摘は不安そうに言う。
「怖いですね。気を付けてください。」
館田本成はそう答えながら、心のざわめきを感じていた。
噂はすぐに6人の逢魔人に伝わった。まだ、お互いをよく知らない、怪異に出会う前の彼らに。
「じゃあ、兎吊木くんはオカルトとか信じないの?」
「あ、ああ、当たり前だろ。」
兎吊木数一の頼りない言葉を聞いて、同じクラスの綾川なおは小さく笑う。
静かな夜だった。
何かに引き寄せられたかのように6人の逢魔人は夜の校庭に集まった。
突然足元が光り、校庭に魔方陣が浮かび上がる。魔方陣の光は彼らの顔を照らし、静かに消えた。
その時彼らは魔に出逢い、達成すべき使命をみつけた。
それぞれが協力し、情報を集める中、兎吊木数一は一匹オオカミを気取って完全に孤立していた。
「兎吊木くん。これ。調べているんでしょ?手がかりになればと思って。」
そう言って綾川なおは魔方陣の描かれた紙を差し出す。兎吊木数一は受け取る。
「あ、ありがとう。」
それは確かにあの晩の魔方陣だった。だが、何故…疑問に思った時には彼女の姿はそこになかった。
そして彼らは真相を突き止める。用務員の浦松正也の中に秘められた狂気。
倉山菜摘を愛するあまり、魔術により彼女を手に入れようとしていたのだ。
魔術が完成すれば悪魔が召喚されてしまう。悪魔は願いの代償に多くの人を喰らう。
なんとしてでも阻止しなくては、逢魔人の想いは今一つに…
あの夜のように静かだった。全てが終わった夜は。
浦松正也を無力化し、怯えている倉山菜摘を館田本成が支える。激しい乱闘の後の、不気味な静けさの中心で兎吊木数一は倒れていた。
「あれ?なんで倒れているの、兎吊木くん。」
場違いな明るさを持ち込んで綾川なおは言葉を続ける
「これで今回の怪事件は終わったと思いますよ。お疲れ様でした。
でも、もし、また何かあったら…よろしくおねがいしますね。」