第1話「二人の歌姫」

1.1.1. 蠢く亡霊

 神代(かみしろ)ヤマト[PC]は、恐怖に震えていた。彼は、武蔵坂学園に通う小学2年生である。エクソシストの家系に生まれた彼の目の前で、その彼の宿敵である屍者の王(ノーライフキング)が、彼の両親や級友達を、次々と虐殺していく。その圧倒的な力の前に、彼は為す術も無く立ち尽くすだけだった。やがて、気付いた時には彼の周囲は亡者の群れによって覆い尽くされ、その中心に立つノーライフキングが、彼に向かってこう言い放つ。

「あとは貴様だけだ。貴様さえ倒せば、我が復讐は完遂する」

 その言葉と共に、彼に向かって不浄の凶刃が振り下ろされそうとしたその時、彼は目を覚ました。そこは、カーテン越しの朝の陽光に照らされた、見慣れた自分の部屋であった。そう、全ては夢だったのである。しかし、(生来の能力であるエクソシストとしての力とは別に)精神世界でダークネスと戦うシャドウハンターでもある彼が、このような夢にうなされ、しかも何も出来なかったということからも、どれほどの圧倒的恐怖であったかが伺える。
 このおぞましい光景が夢であったことに安堵しつつ、母親に呼ばれて朝の食卓へと向かった彼であるが、そこには彼以上に憔悴した表情の父親の姿があった。

「お父さん、何かあったの?」

 ヤマトがそう問うと、父は少し表情を和らげながら、事情を話す。どうやら、父もまたヤマトと同様の悪夢にうなされていたらしい。父は武蔵坂学園の教員だが、灼滅者としての力には目覚めていない。それ故に、精神的に受けたダメージも相当大きいようである。
 ただ、それでもなんとか父が堪えることが出来たのは、ある程度の「心の準備」が出来ていたからであった。というのも、エクスブレインである高等部2年の五十嵐姫子が、彼に対して「神代家の祖先によって封じられた巨大なダークネスが、蘇ろうとしている」という予言を伝えていたのである。そのダークネスの正体までは心当たりがないようだが、いずれにせよ、警戒する必要があるということを確認した親子は、そのまま二人で学園へと登校することになった。

1.1.2. 闇堕ち検診

「おい、スサノオ、起きろ。今日は『闇堕ち検診』の日だぞ」

 ルームメイトの鴻崎翔(下図)に起こされ、スサノオ・ビヨンドルメーソン[PC]は目を覚ます。


 翔は中学2年生、スサノオは小学4年生であり、二人とも「殺人鬼」をルーツとする灼滅者である。闇堕ち検診とは、闇堕ちもしくはそれに近い過去を経験したことがある生徒達を相手に、学園側が定期的に早朝に開かれているメンタル・ケアのことであり、二人とも学園側から「要検診」と判断されている身であった。

「あー、もう、面倒くせーなぁ」

 アメリカ育ちで日米ハーフのスサノオは、年上の翔に対しても、平気でタメ口で答える。本来ならば、日本で生きていくためには、多少の礼儀を仕込むのが年上の者の務めである筈だが、残念ながら、翔もまた、後輩に礼儀を教えられるほどの品行方正な少年ではなかった。

「そう言うな。今日は倉槌先輩も一緒に受ける日だ」
「え? 緋那も?」

 そう言われて、しぶしぶ彼は出かける準備をする。「倉槌緋那」とは、スサノオの幼馴染みの高校2年の女子生徒である(下図)。


 彼女のルーツは、姉のヴァンパイア化に伴う感染で目覚めたダンピールの力であるが、同時に、殺人鬼としてのポテンシャルの持ち主でもあった。どうやら学園側は「殺人鬼」の生徒に対しては特に強い警戒心を持っているようだ。そして実際、彼等自身もまた、自分達が学園側に警戒されることを「仕方がないこと」と割り切っていた。自分の中にどれほど強い殺人衝動があるか、ということは彼等自身が一番理解しているからである。
 そして、学校に到着して、検診を受けることになった二人であるが、スサノオは自らの心の闇を隠すことなく、堂々とカウンセラーの先生にぶつけることになる。

「最近、何か変わったことはあるかい?」
「うーん、人を殺したくなることですかね」
「何か悩みとかないかい?」
「とにかく、人を殺したいです」

 そんなやりとりを終え、いつも通りに「要監察」の烙印を捺されたスサノオであったが、検診の時間の終了間際になって、ドタドタと激しい足音を立てながら、幼馴染みの緋那が、髪と服を乱しながら駆け込んでくるのが見えた。

「すみません、遅くなりました」

 息を乱しながら彼女はそう言いつつ、自分の周囲を警戒しながらキョロキョロと見渡す。何があったのかと心配する先生に対して、彼女はこう答える。

「ここに来る途中で、いきなり見知らぬ女の子達に囲まれたんです。で、『アンタ、クラウス様に選ばれたんだから、光栄に思いなさい』とか言われて、無理矢理引っ張ってどこかに連れて行かれそうになって、抵抗しようとしたら、『生意気』とか『身のほど知らず』とか、訳の分からないことを言われて、いきなり殴り掛かってきて……。数が多かったのと、相手がダークネスかどうかも分からなかったので、ひとまず逃げてきました」

 やや混乱した様子でそう話す緋那であったが、それを聞いた翔は、何か心当たりがあるようである。

「聞いたことがあるな。最近、そういってウチの女生徒を襲う集団がいるらしい。俺達はもう検診が終わってる。スサノオ、探してみるか?」

 そう問われると、スサノオは目を輝かせながら問い返す。

「殺していいの?」
「…………大丈夫だ。一応、日本にも『正当防衛』という言葉はある」

 無論、それと同時に「過剰防衛」という言葉もある訳だが、現実問題として、彼等が誰を殺そうとも、バベルの鎖の力によって、その殺人の事実自体が世間に知れ渡ることがないので、その罪は問われない。あとは、彼等自身の良心の問題だけである。

「とりあえず、手分けして探そう。見つけたら電話してくれ」

 翔にそう言われて、スサノオは意気揚々と駆け出していったのであった。

1.1.3. 鳳凰院英雄の優雅な朝

 武蔵坂学園高等部の1年生・鳳凰院英雄(ひでお)[PC]は、今日も優雅に目を覚ます。ファイアブラッドの灼滅者である彼は、かつては「覇王」として多くの灼滅者を率いて世界中で戦っていた人物である。そんな彼が暮らしているのは、この学園内でも最高級の設備と家賃を誇る「白泉寮」の一室を、更に絢爛豪華にデコレーションして、国籍も時代も超越した雰囲気を醸し出している摩訶不思議な部屋であった。
 そんなゴージャスな雰囲気の中、身支度を整えていた彼の耳に、寮の食堂からのインターホンの音が聞こえてくる。

「本日のお食事は、ビーフになさいますか? フィッシュになさいますか?」
「うむ、余は豚が食べたいのう」
「そうですか。でしたら、今からベン●マンにご注文下さい」

 本来ならば、こんな時間にベ●トマンが開いている筈もないのだが、おそらく学園御用達の特別店では、彼のための特別要員が待機しているのであろう。
 そんなこんなで無事に朝食を終えた彼は、自家製の馬車に乗って学園へと向かう。すると、その途上で一人の女性(下図)の姿が目に留まった。


 彼女は何かを探しているように、キョロキョロと周囲を見渡している。彼はすかさず馬車を止め、優雅に降り立ち、その女性の前に傅きながら手を差し伸べる。

「おぉ、麗しの君よ。まさにそなたこそ、余にふさわしい」

 そう言って彼が手を差し伸べた先にいるのは、高校生2年生のエクスブレイン・五十嵐姫子である。彼女こそが、この「覇王」を自称する彼が、わざわざこの学園へと転入してきた理由そのものであった。

「あら、英雄さん、ごきげんよう」

 まともな神経の女性ならばドン引きするこのシチュエーションも、彼女は笑顔で受け流す。これがこの二人の日常会話である。姫子は裕福な家に育ち、何不自由なく暮らした身であるせいか、滅多なことでは動じない。多少の非常識程度であれば、「世の中には、色々な人達がいるのですね」という程度の気持ちで受け入れられる度量の広さと楽天的な思考の持ち主なのである。

「もしよろしければ、観澄りんねさん、という方を探すのを、手伝って頂けませんか?」

 観澄りんねとは、ギター片手に学園内で路上ライブを繰り返している中学生の女子生徒である。彼女はサウンドソルジャーで、音楽の力で世界を救うことを信じて戦っており、昨今は朝の通学路でバンドメンバーを探している姿を何度か目撃されているという。どうやら、姫子の未来予知によると、これから起ころうとしているダークネスとの戦いにおいて、彼女の力が必要となるらしい。

「うむ、分かった。余に任せておけ」

 そう言うと、彼は全力で周辺の通学路を駆け巡り、ローラー作戦で彼女を捜し出そうとする。そんな彼を、頼もしそうに笑顔で見つめる姫子であった。

1.1.4. 風来坊とギター少女

「先輩、いい腕してますね。バンドやりませんか?」

 英雄と同じ高校1年生の男子生徒・平福政次[PC]は、突然、見知らぬ少女(下図)にそう声をかけられた。


「あ、いや、そういうのはいいから」

 そう言って、彼は少女の横を通り過ぎようとする。彼は天涯孤独の身で、幼い頃に(どういった経緯かも分からぬまま)ダンピールの力に覚醒し、ストリートファイターとして戦うこと以外何も知らないまま、この学園へと流れついた身である。いきなり、バンドなどと言われても、興味を示せる筈もない。

「大丈夫ですよ。ベースなら簡単ですから、すぐ覚えられますから」

 なおも食い下がるその少女の名は、観澄りんね。姫子が探していたサウンドソルジャーの中学3年生である。彼女は念願のバンド結成に向けて数日前から路上勧誘を続けているものの、未だに一人も賛同者が現れず、焦っている様子であった。
 そんな二人が押し問答をしていると、やがて、その二人を取り囲むように、見覚えのない制服の少女達が現れる。

「アンタね、観澄りんねって。喜びなさい、私達のクラウス様が、アンタをご所望なの」

 リーダーらしき少女が妖しく微笑みながらそう彼女に告げるが、りんねにも、政次にも、この状況が全く理解出来ない。

「は? 何言ってるの? そんなことよりさ、ねぇねぇ、バンドやらない?」
「いいから黙って、こっちに来なさい!」

 そう言って、その少女がりんねの手を掴もうとすると、政次が割って入る。

「いや、急にそう言われても、これから学校も始まる訳だから……」

 彼は事態を飲み込めないまま、なんとか少女達をなだめようとするが、少女は冷笑しながら、りんねに改めてこう告げる。

「そんなものに出る必要はない。これから先、お前は私達と共に永遠の時を生きるのだから」

 彼女がそう言うと、少女達から禍々しい闇のオーラが発せられる。その気配を察した政次は、スレイヤーカードから日本刀を取り出し、戦闘態勢へと入る。そして時を同じくして、この場に偶然、ヤマト、スサノオ、英雄の3人が遭遇することになる。
 これが、彼等四人と、この世界を救う力を持つ「歌姫」達の、長い闘いの始まりであった。

1.2.1. 「一人目」

「おぉ、あれが『観澄りんね』か」

 彼女の姿を発見した英雄は、りんねが謎のダークネスの集団に取り囲まれていることを察知し、他の誰よりも早く彼女達との間合いを詰め、スレイヤーカードからロケットハンマーを取り出し、りんねを取り囲む少女達へと振り下ろす。しかし、間一髪でその攻撃はかわされてしまった。
 だが、それに続いて、政次が繰り出した日本刀の一撃が少女の一人を捉え、痛烈な一撃を浴びせる。彼女達は、ダークネスの力によって人体改造された一般人であり、その身体能力は通常の人間を遥かに上回るものの、本気を出した灼滅者達には遠く及ばない。
 更に、そこに間髪入れずに放たれたのは、遠方からヤマトが光臨させた聖なる十字架の光である。彼は今のこの状況を全く理解出来ていなかったが、少女達がダークネスによる強化人間であること、そして彼女達はもう救うことの出来ない状態となっていることは察知していた。だからこそ、今、自分の傍らにいる父親に危害が及ばないようにするためにも、早急に灼滅する必要があると考えたのであろう。そして、その光に怯んだところに、英雄と政次が一気に連撃を加えた結果、一瞬にしてその少女達は塵と化してしまった。
 この一連の動きに出遅れたのは、最も戦いに飢えていたスサノオである。彼は翔との約束を守り、彼女達の姿を見つけると同時に、すぐに彼に電話をかけたのだが、その電話の要件を伝える前に、戦いが終わってしまったのであった。
 こうして、結局、何がなんだか分からないままに少女達を灼滅してしまった彼等であったが、その戦いの音を聞きつけて、姫子がその場に到着する。当然のごとく、彼女もまた、ここで起きている状況については全く理解出来ないままであったが、この場に、彼女が探していた少女がいることだけは確認出来た。

「あなたが、りんねさんですね。一曲、何かあなたの歌を聞かせてもらえますか?」
「え? うん、勿論いいよ。どんな曲がいい? 何でも歌うよ」
「あなたの魂が一番込められた歌を、お願いします」

 姫子にそう言われて、彼女はギターを片手に歌い始める。それは彼女自身が作詞作曲した、ポップなガールズロックであった。おそらく、それは姫子が日頃好んで聞くようなジャンルの音楽ではなかったと思うのだが、りんねがその曲を歌い終えると、姫子は歓喜の表情で、彼女の手を握りしめる。

「見つけました……、あなたです! ようやく、一人目。やっと一人目が見つかりました!」

 彼女がそう告げると同時に、学校の予鈴の音が鳴り響く。

「詳しい話は、放課後、改めてお話ししたいので、よろしければ、高等部の2年4組の教室まで来て下さい。出来れば、皆さんも来て頂けると嬉しいです。もう既に、色々と巻き込んでしまったようですし」

 そう言って、彼女はその場にいる英雄達に頭を下げ、校舎へと向かっていく。残された者達もまた、後の処理はこの学園の教員であるヤマトの父に委ねた上で、それぞれの校舎へと向かっていった。

1.2.2. もう一人のエクスブレイン

 武蔵坂学園の授業は、学生達が灼滅者であるということ以外は、他の一般的な学校と何も変わらない。この学園が実質的に灼滅者専用の学校であるとはいえ、教員達はあくまで一般人である以上、灼滅者としての彼等の戦闘能力を鍛えることなど出来る筈もないからである。彼等に出来ることは、灼滅者達に「普通の学生と同じ日常」を提供することだけなのであった。
 そんな中、真面目に授業を受けて先生に褒められる者、これまで義務教育すら受けていないが故に授業内容が全く理解出来ない者、己の中の破壊衝動を抑えるのに必死で授業どころではない者、覇王として周囲の者達に危害を与えぬように配慮しつつもどこか浮いてしまっている者、それぞれに自分のペースで授業を受けつつ、昼休みを迎えることになる。
 そんな中、中学2年生のエクスブレイン・須藤まりん(下図)が、幼馴染みの政次の教室を訪れた。


 どうやら彼女は、先輩である姫子に関する不吉な未来を予知してしまったらしい。彼女曰く、姫子は今、巨大すぎるダークネスに対して無自覚のまま立ち向かおうとしている、とのこと。そして、そんな彼女と共に戦う者達の中に、政次の姿も見えたという。

「五十嵐先輩は、とても優秀なエクスブレインだけど、ちょっと楽天的すぎるというか、自分自身に危機が及んでいることにすら気付かない時が多いようだから、少し心配なの。あの人は学園にとって、無くてはならない人だから」

 本来は、まりんもどちらかと言えば楽天的というか、怖いもの知らずな性格であり、ダークネス関連の事件に対しては、いつも積極的に自ら足を踏み入れるタイプである。その彼女が強い警戒心を抱くほどに、今回の姫子が戦おうとしている相手は、強大な存在らしい。

「分かった。警戒はする。だが、お前だって、この学園にとって必要なエクスブレインの一人であることは忘れるなよ」

 そう言って、彼は教室へと戻っていく。聞いても全く理解出来ない授業を聞き続けることで、少しでも「高校生としての日常」を手に入れるために。

1.2.3. 姫子が予知した未来

 そして放課後、姫子の教室に、英雄、政次、スサノオ、ヤマト、りんねの5人が集まると、彼女は自分自身が予測した未来について、語り始める。

「今、巨大なダークネスが、蘇ろうとしています。それはおそらく、数百年前に神代家の方が封印した屍者の王・ノーライフキングではないかと思われます。私の未来予知では、その者を止める方法は一つしかありません。それは、『聖なる歌』の力です。闇を封じる力を持った『12人の歌姫』が、聖なる歌の力によってその者を封じる場面が見えたのです」

 ブレイズゲートの影響もあり、その「12人の歌姫」が何者なのかは、はっきり分からないが、その歌声の音色だけは明確に彼女の耳に残っているため、学園中のサウンドソルジャーの少女達の歌声を聞いて回りながら、その人物を捜していたらしい。そしてようやく見つけた一人目がりんね、ということである。
 ただ、学園内のサウンドソルジャーの能力を持つ生徒については、既に殆ど確認済みとのことで、それで今まで一人も見つからなかったということは、必ずしもその歌姫はサウンドソルジャーとは限らないのかもしれないし、そもそも灼滅者かどうかも分からない、というのが、今のところの彼女の見解である。
 この話を聞いた上で、英雄は「学内のど自慢大会」の開催を提案するが、姫子の目測では、おそらくダークネス側はこちらの動きをまだ察知していないので、あまり大々的に調査に動くことに対しては、彼女は難色を示す。

「とはいえ、りんねさんがダークネスに襲われている以上、既に彼等が『歌姫』の存在に気付いている可能性もあります。逆に言えば、その場合、彼等が狙っている少女こそが歌姫である可能性も高いので、こちらが彼等の動きを利用して歌姫を探し出すことも出来るかもしれませんが……」

 その話を聞いたスサノオが、自分の幼馴染みの緋那が同じ少女達に襲われているという話を告げると、姫子はその話に興味を示し、スサノオから彼女の連絡先を聞いた上で、明日にでも直接確認してみることにした。
 一方、唐突に自らの「重すぎる使命」を聞かされたりんねであったが、彼女はあっさりとその運命を受け入れる決意を固める。

「なんかよく分からないけど、あたしの歌で世界が救えるっていうなら、もちろん、協力するよ。まず、敵の正体を知る必要があるなら、あたしが囮になろうか? それが一番手っ取り早いだろうし」

 さすがに、この場にいる者達としては、彼女のこの提案をあっさりと承諾する訳にはいかなかったが、こちらが意図的に囮として設定しなくとも、敵が再び彼女を襲う可能性は十分にある以上、彼女を護衛する必要があるという点では、皆の見解は一致していた。
 そんなこんなで、今後の方針を語り合いつつ、いつの間にやら、

「ところでそなた、バンドメンバーを探しておると言っていたな。余はフルートを嗜むが、どうだ?」
「僕、カスタネットなら、得意だよ」

といった雑談を交わす程度にまで親交が深まったところで、ひとまずこの日は解散することになった。と言っても、姫子やりんねを一人にしておくのは危険だということで、英雄が自身の馬車で彼女達を女子寮まで送り届けることを提案する。日頃から英雄の非常識な言動に馴れている姫子はともかく、りんねはさすがに一瞬戸惑ったが、「一度くらいは、乗ってみるのも面白そう」ということで、あっさりとその提案を受け入れたのであった。

1.2.4. 情報屋との取引

 こうして、英雄の馬車に乗ることになったりんねが、初めて体験する馬車からの風景を楽しんでいると、道端の茂みの中から、カメラのシャッター音が鳴ったことに気付く。そのことを英雄に告げ、英雄が馬車を止めてその場へと向かうと、そこには見慣れた一人の女子大生(下図)の姿があった。


「あっちゃー、すぐバレちゃったか。さすが、ムー大陸の戦士は違うねぇ」

 彼女の名は猫玉ニトロ。サイキックパワーを感知することが出来ない一般人の女子大生であるが、オカルトマニアで、街で起きる様々な事件を調査しているうちに、英雄を初めとする何人かの灼滅者の存在に気付き、彼等のことを「取材」と称してストーキングするようになった。ちなみに、「ムー大陸の戦士」とは、不思議な力を用いる灼滅者達を彼女が勝手に勘違いしてそう呼んでいるだけである。
 通常の灼滅者から見れば、ただの厄介なストーカーにすぎないのだが、英雄とは変わり者同士ウマが合うようで、彼とは妙に仲が良いらしい。

「何かまた事件とかあった? 私が知ってることで良ければ、協力するよ」

 そう言われて、英雄は現時点で唯一の手掛かりである(灼滅した少女達が離していた)「クラウス」という人物名について訪ねてみると、どうやら彼女には「クラウス様親衛隊」と呼ばれる集団について、心当たりがあるらしい。ただし、その情報を提供する代わりに、英雄達自身に関する情報を教えることを要求する。英雄は一刻も早く敵の正体を知るために、二つ返事でその申し出を了承する。

「まず最初に聞きたいんだけど、あなたは何者なの?」
「余は覇王である」
「じゃあ、あなたの前世は? やっぱり、ムー大陸の戦士?」
「今も昔も、来世に至るまで、余はこの世界の覇王である」
「覇王かぁ。じゃあ、僕(しもべ)も沢山いるの?」
「僕はおらぬが、妻はおる。この者が我が妻じゃ」

 そう言って、彼は傍らにいる姫子を指す。姫子は否定も肯定もせぬまま、ただ黙ってニコニコと微笑む。否定しても無駄だと思っているのか、否定しない方が目的達成のために得策だと思っているのか、別に彼にどう思われようがどうでもいいと思っているのか、そもそも彼が言ってることを理解していないのか、それは彼女以外誰にも分からない(もしかしたら、彼女自身も無自覚の行動なのかもしれない)。
 そんなこんなで、全く何の役にも立たない情報を手に入れて満足したニトロは、約束通り、自分の知っている情報を彼等に伝える。

「榊原クラウス、という絶世の美男子が、気に入った美少女達を集めてハーレムを作ってるらしいのよ。正体は分からないんだけど、華族の末裔か、どこかの大富豪の御曹司じゃないかって言われてる。とりあえず、私の方でも彼について、もう少し調べてみるわ」

 そう言って、ニトロはその場を後にする。そして、先刻からの一連の奇妙なやりとりに関して、こういった光景を見慣れていないりんねだけは、さすがに最初は強い違和感を感じていたが、やがて「まぁ、本人達が納得してるみたいだから、それでいっか」と、あっさり状況を受け入れた。おそらく、この「気にしない感性」こそが、非常識と不条理の溢れる武蔵坂学園で青春を謳歌する上では必須条件なのであろう。

1.2.5. 健やかならざる幼年期

 一方、いち早く家に帰ったヤマトは、母親に今日あったことを全て話した。本来ならば、情報を拡散することは極力避けるべきなのだが、小学2年生の優等生である彼にとって、「母親に話すこと」は「日記を書くこと」と同レベルの「日課」であり、それが「情報の漏洩」に繋がる可能性自体を、そもそも想定出来ていない。
 そして当然、そんな話を聞かされた母親が、平静でいられる筈もない。

「いい、ヤマト、あなたはまだ小学二年生なのよ。いくら灼滅者の力があるからって、世界のために戦うとか、そんなこと考える必要ないからね。確かに、お父さんの家系はそういう家系らしいけど、別にお母さんはお父さんがそういう家系の人だから結婚した訳じゃないから。お母さん、ヤマトが灼滅者として戦ってほしいなんて、思ってないからね」

 しかし、母親にそう言われたところで、彼としては戦いから手を引く気は全くない。現実問題として、この日も彼の力がなければ、父親がダークネス達の戦いに巻き込まれていたかもしれない。自分の両親を守るためにも、自分の力が必要だということは彼が一番よく分かっていた。
 そんな激動の一日を終え、ようやくベッドで休息の時を得た彼であったが、この日の夜もまた、彼は悪夢に襲われることになる。

「ば、馬鹿な! なぜ余が、このような下賎な輩に…………」

 巨大な魔物に身体を貫かれた英雄のそんな断末魔を聞きながら、翌朝、ヤマトは目を覚ました。前日以上に生々しい惨劇の夢にうなされた彼であったが、もう今更、後に退くことは出来ない。
 そして、この日は、父親が前日の事件に関する調書の作成のために先に学校に行っていたため、一人で登校することになった訳だが、そんな彼を狙う怪しい視線の存在に気付く。それは、彼にとっても馴染みのある灼滅者ストーカー・猫又ニトロの気配であった。彼はまっすぐにその方向へと向かい、彼女に声をかける。

「お姉ちゃん、おはよう」
「うーん、最近、不調だなぁ。二日続けて、あっさり見破られるなんて」

 彼女の中では、ヤマトは英雄と同じ「伝説の戦士の一人」として位置付けられており、これまでに何度も彼へのストーキング行為を続けてきた。本来ならば、幼児を付けねらう変質者として逮捕されても文句は言えない状況だが、幸いにして、ヤマトにとって一般人である彼女は何の危険性もない存在であり、おそらくは「かくれんぼの相手」程度にしか思っていない。

「ところで、君、鳳凰院君の知り合い?」
「うん、あのお兄ちゃんはお友達だよ。すごくカッコいいよね」

 彼の中では、一度共に戦ったら「友達」らしい。その上で「カッコいい」という感想を抱くあたり、色々な意味で将来が心配な感性だが、そんな彼の情操教育にとって更に不適切な内容の「名刺サイズの紙」を彼女は手渡す。

「これ、渡しといてくれるかな。例の榊原クラウスがよく目撃される店らしいから」

 そこには新宿歌舞伎町の高級クラブ「リヒテンラーデ」の店舗情報が書かれていた。彼女が昨晩、必死で夜の街を歩き回った結果、辿り着いた貴重な情報なのだが、少なくとも小学生に渡して良い代物ではないということくらいは、良識ある女子大生ならば理解出来る筈であろう。もっとも、それが理解出来ない感性だからこそ、英雄達とも対等に付き合えているのかもしれない。

1.2.6. 作戦会議

 そしてこの日の放課後、姫子の招集により、再び高等部の2年4組に5人が集められた。

「今日の昼休みに、倉槌さんにお会いしてきたのですが、残念ながら、彼女は『歌姫』ではなかったようです」

 残念そうにそう告げる姫子であったが、実はスサノオだけは、この顛末を予見していた。というのも、昨日、寮に帰った時点で翔から「一度だけ、倉槌先輩とカラオケに行ったことがあるが、正直言って、歌は……」と聞かされていたのである。
 とはいえ、歌姫ではない彼女が襲われたということは、敵はまだ歌姫の存在に気付いていない可能性が高い、ということでもある。気を取り直した上で、ヤマトから手渡された高級クラブ「リヒテンラーデ」について、ネット上で情報収集してみることにした。
 その結果、この店が歌舞伎町の中でもそれなりの老舗であること、一杯数十万円レベルの高級酒が並んでいること、経営母体が不明で怪しげな団体と関わりがあるという噂があること、などが明らかになるものの、やはりバベルの鎖の影響で、核心的な情報にまでは辿り着けなかった。
 そうなると、直接現地に赴いて確認するしかない訳だが、このような店に、学生である彼等が入れる筈もない。そこで、歌舞伎町で人通りが最も少ないであろう翌日の早朝に、5人(英雄、政次、スサノオ、ヤマト、りんね)で強引に押し掛けてみるという作戦を選択し、そのための手段として、英雄はリムジンを手配することになった(本人曰く「馬車は日本国の道路交通法に反するから、武蔵坂以外では使えない」とのこと)。

1.3.1. 夜明けの歌舞伎町

 そして翌朝、陽が昇り始めた頃、「夜の街」としての役割を終えて、安らぎのひと時を迎えようとしていた歌舞伎町に、黒塗りのリムジンが現れる。目的地である「リヒテンラーデ」の目の前で止まった彼等は、店の裏手口からゴミを出そうと外に出た従業員の姿を発見する。
 とりあえず、どうやって彼から中の情報を引き出そうかと政次が思案を巡らせている間に、英雄がいち早く動きだし、その人物に直接声をかけた。

「この店に、榊原クラウスという者はおるか?」
「…………貴様、どこの組のモンだ!」

 当然のごとく、いきなり一触即発となり、中から拳銃を手にした黒服が次々と出てくるが、その直後に、柔らかな女性の声が店の中から聞こえてくる。

「無駄ですよ、皆さん。この人達相手に、銃なんて通じません」

 その声の主は、学生達の前に現れるには不適切なバニーガールのような姿をした女性である。しかし、通常の攻撃が通じないこと(=バベルの鎖の存在)を理解している以上、彼女がダークネスの類いであることは明らかであった。

「マスターは、そちらの女性をご所望です。このまま、中に入ってもらいましょう」

 りんねを見ながら、そのバニーガールはそう告げるが、英雄達としては、りんねに一人で行かせる気は毛頭ない。再び衝突の機運が高まったが、最終的にはバニーガールが「マスター」に確認を取った結果、彼等全員が店内へと入ることを許された。もしかしたら、5人のうち2人が小学生ということで、甘く見られたのかもしれないが、いずれにせよ、こうして彼等は敵の本拠地に踏み込むことになったのである。

1.3.2. 地下室の淫魔

 中に入ると、そこは薄暗い、どこか淫靡な雰囲気の漂う内装の店であった。そして、5人は、その壁の一角に、バベルの鎖によって覆われた隠し扉があることに気付く。バニーガールがその扉を開けると、そこには地下室へと続く階段があった。彼女に案内されるがままにその階段を下っていくと、その奥から、美しい女性の歌声が聞こえてくる。

「あれ? なんだろう、この声……。すごく私の心に響く。私の中の何かが、高まってくる」

 りんねがそう呟くのを聞きながら、皆で声の発生源となる方向へと向かっていくと、その先には大規模な地下室が広がっていた。そこにいたのは、コウモリの翼と尻尾を生やした金髪碧眼の美背年(下図)と、その傍らで歌う「目の焦点が合っていない少女」、そしてバニーガールの姿をした女性従業員が数名であった。


 この姿と状況からして、この美青年こそが榊原クラウスであり、その正体が、女性を悦楽の海に溺れさせて堕落させる淫魔・インキュバスであることは明白であろう。

「下賎の者共よ、ここで何をしている?」

 英雄がそう問いかけるが、その淫魔は彼を無視したまま、りんねに語りかける。

「おぉ、来てくれたか。フロイライン観澄。どうやら、招かれざる客人もいるようだが」

 そう言いながら、淫魔は両手を広げて、りんねに対してのみ、歓迎の意を示す。

「私は美しい女性が好きだ。特に、声が美しい女性がな。君のその歌声、ぜひ私のものにしたい。このミラと君の声が重なり合えば、きっと極上のハーモニーが生まれる筈。さぁ、私の元に来なさい」

 完全に自分を素通りされた英雄は、その淫魔が「ミラ」と呼んだ「目の焦点の合っていない少女」に一瞬目を向けつつ、再び淫魔に問いかける。

「この二人の声を重ねることで生まれるハーモニーとは、どういうことだ?」

 おそらく、英雄としては、この淫魔が「歌姫」の存在を認識しているのかどうかを確認しようとしたのであろう。しかし、淫魔はまともに相手をしようとはしない。

「すまんな。私は男に興味はないんだ。邪魔しないでもらおうか?」
「そうか、ならば安心しろ、私も貴様のような下賎の輩に興味はない」
「……どうやら、先にゴミ掃除をしなければならないようだな」

 そんな二人の一触即発の空気に割って入るように、りんねが口を開く。

「ごめんね。あたし、デビュー前に特定の男性と親しくなる訳にはいかないんだ。ほら、プリクラとか流出すると、色々面倒なことになるじゃん」

 そう言って、一瞬の間を作った彼女は、「目の合ってない少女」に目を向けながら、仲間達に密かにこう告げる。

「あたしのギターであの娘の歌声を封じるから、その間に、皆で奴をどうにかして」

 どうやら、サウンドソルジャーの彼女には、この少女の歌声が淫魔を支える力になっていると感じ取れたらしい。その提案に頷いた4人は、次の瞬間、一斉に淫魔に向かって襲いかかった。
 次の瞬間、彼等の前に、バニーガールの姿をした淫魔の眷属が立ちはだかろうとするが、英雄のロケットハンマーの繰り出した一撃と、そこに加えられた連撃によって、一瞬にして彼女達は灼滅させられてしまう。それに対して、淫魔が彼等全員に向けて放った一撃は彼等に大きな打撃を与えたものの、その直後にヤマトとスサノオの連続攻撃が彼の身体にクリーンヒットし、淫魔は深手の傷を負う。
 更に、彼をサポートする筈だった傍らの少女が、りんねのギターによる音波攻撃で動きを封じられたことで、淫魔は一瞬にして自分の優位が崩れ去ったことを理解する。

「くっ、やむを得ん。今日のところは退く。だが、私は諦めんぞ!」

 そう言って彼は、奥の扉を開いて何処へかと消えていく。英雄達が彼を追おうとした時には、既にその姿は消え去っていた。おそらく、ダークネスの力による転移術の類いを用いたのであろう。
 そして、淫魔が消えると同時に、傍らにいた少女は意識を無くして、その場に倒れ込む。りんねはすぐに彼女に駆け寄り、そのオーラを確認すると、歓喜の声で叫んだ。

「この娘、まだ闇堕ちしきってない! 今なら、元に戻せるよ!」

1.3.3. 「二人目」

 その後、高級クラブ「リヒテンラーデ」には「一時休業」の看板が掛けられることになる。歌舞伎町でも有数の人気店だけに、本来ならばマスコミが食いついてもおかしくない事態だが、バベルの鎖の力により、なぜ人々の話題に上ることもなく、その日の夜には何事もなかったかのように、歌舞伎町はいつもの顔を取り戻す。
 一方、クラウスに囚われていた少女・奏(かなで)ミラ[PC]は、ひとまず武蔵坂の保健室へと担ぎ込まれ、そこで目を覚ますものの、囚われる以前の記憶は残っていなかったため、どのような経緯でクラウスが彼女に目をつけたのか、ダークネス達が歌姫の存在に気付いているのか、といった点についても、結局、結論は出なかった。
 そんな中、学校で歌舞伎町突撃班と合流した姫子が、目を覚ましたばかりの彼女に、こう問いかける。

「歌っていただけますか?」

 そう言われて、ミラは自分の記憶の中に(なぜか)残っていたクラシックの歌曲を披露する。自分の名前以外、何も覚えていなかった彼女だが、どういう訳かこれまでに自分が習得した歌だけは、全て記憶に残っていたようである。その歌声は、英雄達が地下室で聞いた時よりも更に美しく、朗らかで、心地よい響きであった。

「間違いありません。あなたが、二人目の歌姫です。その力、この世界を救うために、貸して頂けませんか?」

 この世界が「ダークネス」に支配されていること。自分がそのダークネスを倒せる「灼滅者」であること。まもなく巨大な屍者の王が蘇ろうとしていること。自分がそれを封じることが出来る「歌姫」であること。唐突にこれだけの事実を突き付けられ、さすがに混乱状態の彼女ではあったが、それでも気丈にこう答えた。

「私に出来ることであれば、協力させて下さい」

 こうして、彼等は「二人目の歌姫」を手に入れた。ひとまず、学園側に事情を(簡単に)話して、彼女もまた武蔵坂へと編入され、女子寮にも入館手続きを済ませ、りんねと同部屋で新たな生活を送ることになり、更に学校のクラスも彼女と同じになるように手配させたのであった。

 屍者の王の復活を阻止する歌姫が揃うまで、あと10人。


第1話の裏話

 ということで、後期のスタートとなる第1話だった訳ですが、読んで頂ければ分かる通り、いきなり初回からPCが一人(ミラ)欠席した状態でのスタートとなりました。前期の反省を踏まえた上で、「途中参加した人が話に入りにくい雰囲気」だけは作らないようにしたかったので、色々と考えた結果、その欠席者のミラのライフパス(淫魔の奴隷として音楽を奏で続けていた)を第1話の主軸にした上で、その後も彼女と他のPCが協力しやすい関係を作れるようにするために、彼女自身が物語の鍵となるようなキャンペーンにしよう、ということで、こんな設定が作られることになった訳です。
 実は、当初は「ご当地ヒーロー大戦」をやるつもりだったのですが、プレイヤーが誰一人として「ご当地ヒーロー」を選んでくれなかったので、それなら(ご当地ヒーローの次に「サイキックハーツならではの職業」と言える)「サウンドソルジャー大戦」にしようかな、ということになった訳です(ただ、実際には、この後出てきたサウンドソルジャーの数はそれほど多くはなかった訳ですが)。
 ちなみに、なぜ「12」という数なのかというと、当初は「12音階」に引っ掛けて、それぞれの歌姫ごとに得意な音がある、という設定を考えていたのですが、結局、キャンペーン中にその要素を組み込む余裕が無くなってしまったので、なんとなく立ち消えになってしまいました(初期の段階では「メジャー7音階」vs「マイナー5音階」の対決、という構想もありました)。
 そして、このサイキックハーツというゲームには、それぞれのルーツごとに「宿敵」という設定が用意されており、各PCの宿敵となるダークネスが「イフリート(英雄)」「ヴァンパイア(政次)」「ノーライフキング(ヤマト)」「殺人集団六六六人衆(スサノオ)」「淫魔(ミラ)」だった訳ですが、この中で「キャンペーン全体のラスボス」にふさわしいのはノーライフキングに思えたので、「物語全体の主人公」をヤマトに設定して、第1話からその伏線を張ろう、ということで、あのオープニングから始まることになった訳です。
 ただ、この時点ではそのノーライフキングが何者なのかは全く決めておらず、後の「四天王」の設定も無かったため、「榊原クラウス」という名前も、「なんとなく、貴族っぽいキラキラした名前」として付けただけでした。ついでに言えば、12人の歌姫を集めた上で、具体的にどうやってノーライフキングを封印するのかについても、この時点では全く何も考えていませんでした。まぁ、私のキャンペーンって、いつも大体そんなカンジです。
 なお、各PCの初期設定NPCは、実は英雄とヤマトが「ニトロ」(姫子はそれとは別枠でライフパスから発生した関係)、政次が「まりん」、スサノオが「緋那」、そしてミラが「翔」だった訳ですが、ミラを物語に絡める都合上、先に翔と他のPCの接点も作っておいた方がいいだろうということで、スサノオのルームメイトに設定することになった次第です。ただ、結果的に、彼は緋那よりも翔との関係の方が深くなってしまったんですけどね。

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最終更新:2014年01月05日 04:13